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103ストライク チチシリフトモモ


 またまた来てしまった貧民街。

 相変わらずどんよりとした空気に嫌気がさすが、文句は言ってられない。ここに来た理由はオーウェンの知り合いに会いに来た為……ミアの問題を解決する方法を知っている人物に会う為なのだから。



「で、どこにいるんだ?そいつは。」



 小道の石ころを蹴飛ばして俺が尋ねると、オーウェンはなぜか自慢げに腕を組む。



「ククク……もう少ししたら会えるさ。彼はこの貧民街じゃ有名人だからな。」



 なんでお前が偉そうなんだ……

 オーウェンの面倒くさい性格に呆れ果てて、もはやツッコむ事すら諦め、「あ、そう……」とだけ呟いておく。

 だが、話の流れにシルビアが乗ってきた。



「今から会う奴の名前……ヒルモネ=ガーランドだっけ?確かに界隈じゃ有名人よね。」


「シルビア、知ってるの?」



 俺が問いかけると、シルビアはなんだか嬉しそうに笑っていて気持ち悪い。

 そんな引き気味の俺の横でミアが疑問を投げかける。



「シルビアさん、その人ってどんな人なんだにゃ?」


「ふふふ……教えてあげましょう!」



 その言葉を待ってましたとばかりにシルビアが意気揚々と口を開いたので、俺は小さくため息をついた。



「ヒルモネ=ガーランド。もともとは稀代の天才と呼ばれた名医で、確か帝国や宗国でも専属の医療責任者として仕えていたくらい超のつく有名人よ。もちろん、腕も凄くて魔力の知識にも長けていたから、彼に治せないものはないとまで言われていたくらいよ。でも、ここ十数年は名前すら聞かないわね。」


「へぇ、そんなすげぇ人なんだ。でもさ、なんでそんな有名人がこんな貧民街にいるわけ?」


「え〜っと、私も詳しい理由は知らないんだけど、確か彼、宗国に仕えている時に重大な医療ミスをしたとかで業界を追放されたんじゃなかったかしら?」


「ふ〜ん、なるほどな……ていうかさ、そんな奴のところにミアを連れて行くつもりだったのか?ねぇ、オーウェン?」



 腕は確かでも問題がある人物に大切な友人を預けられはしない。その人物が本当に信用に足るかは、会ってから俺自身が直接決めるつもりだったけど、そんな話を聞いたからにはオーウェンにはちゃんと説明してもらわないとならん。

 だが、俺のこの問いに動揺するだろうなと思っていたオーウェンが、予想外にも真面目な顔で答えた事には驚いた。



「いや、あの人は信用に足る人物だ。それは僕の命を賭けてもいい。」


「そ……そうなんだ。」



 シンプルだがどこか説得のある回答。

 その雰囲気から本気さが伝わってきて、少しだけ見直してしまう。それに、珍しく真面目な顔をしたオーウェンにミアも少し驚いている。



「ま……まぁ、オーウェンがそう言うならとりあえずは信じよう。だけど、ミアに危険な事はさせるなよな。」


「当たり前だ!僕のイデアでありメシアたる唯一の女神ミアちゃんに危ないマネなんかさせる訳ないだろ!」



 ちょっと何を言ってるのか分かりませんが……

 まったく……ミアの事となるとすぐこの調子だ。せっかく見直してやったのに、俺の気持ちを返してもらいたい。

 だけど、逆に考えてみればこいつはミアの事には嘘はつかないだろうな。誤解されやすいけど、案外根は真面目でいい奴なのかもしれない。ちゃんと信念を持っていて、それを貫く強さを備えている。そういう奴なのかも……



「なんにせよ、早くその医者のところへ急ごうぜ。ミアの体質改善を診てもらわなきゃ。」


「慌てるな。彼の住まいはすぐそこだ。」



 オーウェンはそう告げて、ボロボロのドアの前に立つとノックを等間隔に3回行った。

 それはまるで合言葉のようにも聞いて取れた。

 しばらくして、カチャリという小さな音とともに扉が少しだけ開き、中から男の声が聞こえてきた。



「……オーウェンか。今日は何の用だ?また怪我でもしたんか?」



 その声はイメージしていたものとは随分とかけ離れていたので驚いた。稀代の天才と言うからもう少し知的な人物を想像していたが、その声はどちらかと言うと小汚い錆びれた声色で貧民街に相応しいものだ。



「いや、今日はあんたに客を連れてきた。」


「客……?そんな酔狂な奴がまだこの街におったんか。」



 オーウェンの言葉に男は物珍しそうにくつくつと笑う。そして、ドアを先ほどより少し開いて片手を出すと、入って来いとでも言う様なジェスチャーをした。



「さぁ、みんな中へ入って。」



 オーウェンがそう言いながらドアを開けて中へ入る。

 シルビアもミアも少し躊躇っている様なので、俺が率先して中へと足を踏み入れる事にした。



「お邪魔します。」



 中は少しカビ臭いがこの辺は想定通りだ。使われていない椅子やテーブルには埃がかかっており、衛生面はお世辞にも良いとは言えない。

 明かりも少なめでところどころに暗闇が広がっていて、目が慣れてオーウェンの姿を捉えるのに少しだけ時間がかかった。



「あれ?ヒルモネさんは?」



 てっきりオーウェンの隣にいると思ったが、その姿は確認できなかった。疑問に思ってオーウェンに尋ねてみるも、彼も肩をすくめるだけでその表情は暗くてよくわからない。

 どこにいるのかと辺りを見回してみたが、初めて来た建物の構造などすぐに把握できる訳もなく、無駄にキョロキョロとしてしまった。


 と、その時だった。



「久々の女じゃ!!チチシリフトモモォォォォ!!!」



 突然、後ろから抱き付かれてゾッとした。

 それに変なところを惜しげもなく触れてくるその感触に嫌悪感を感じ、俺は反射的に力づくで変態を投げ飛ばしてしまった。



「どこ触ってんだ、ゴルァァァァァ!!!」



 叫び声と同時に、背負い投げたものを叩きつけた床から鈍い音が聞こえた。

再び貧民街へやってきたソフィアたち。

そして、オーウェンが信頼を置く医者…


さっさと見つけてミアを治したいところですが、現れたのはまさかの!!


エロジジイでしたwww

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