謀略編・第十三話
謀略編・第十三話更新します。
今回は加賀と備前での一コマ。
作者曰く『忠臣w』が動き出します。
永禄四年(1561年)十月、加賀国、金沢城、ゆき――
想定外の事態が起こってしまいました。つい先ほど、慌てて駆けつけてきた長次郎殿によると、越後長尾勢は収穫期に撤退しなかったというのです。いえ、これは正しくありませんね。
正確には、収穫を終えた兵を越後から連れてきて、交代させたというのです。
これには知恵者として名高い二郎様も、全く予想すら出来ておりませんでした。
「まさか長尾が撤退せずに戦い続けるとはな。常備兵ならともかく、百姓兵でそれをやるなどと。となると、この状態で長尾が冬前に撤退する事は考えられん。間違いなく上野での越年を視野に入れている。だが、対価として来年の収穫は間違いなく減る。種蒔きに支障が出るからな」
「しかし二郎様。越後には銭が御座います」
「越後上布を売った対価で、収穫量の減少には対応するだろうな。俺ならそうする。だが此度の軍神の采配、どちらにとっても問題が生じるぞ」
二郎様は眉間に皺を寄せながら、腕を組まれて考え込まれました。
北条家にとっては、間違いなく大問題では御座いますが。
「武田家としての基本方針。これについては予算を追加して北条家支援を継続する。これで当面の問題は解決できる。ただ間違いなく北条は劣勢を余儀なくされるな」
「何ゆえにで御座いますか?」
「理由は二つ。一つは長尾景虎という男が、覚悟を決めて関東征伐に望んでいる事が明らかになったからだ。此度の長尾の姿勢を間近で見る事になる宇都宮・佐竹・里見は、長尾が茶を濁す程度で戦を終わらせるつもりが無い事を理解せざるを得ない。となれば漁夫の利狙いではなく、早い段階で長尾側に与する可能性が出てくる」
確かに仰る通りかもしれません。
軍神とまで呼ばれる男が、不退転の覚悟を見せる。
厄介なのは、敵として対峙する者達でしょう。となれば、味方となって被害を減らす、というのは十分に考えられます。
「二つ目は北条側の百姓兵の動揺だ。心は帰り支度を整えていた筈。それが戦の延長継続だ。収穫にも問題がでる。北条家は頭が痛いだろうな」
「二郎様。長尾は兵糧をどうするつもりで御座いましょうか?三国峠を越えて越後から運んでくるのは厳しいと思われますが」
「……このままでは関東の民から徴発する以外に手はないだろうな。秋までの間に十分な量を運んでおけば、話は別だが。いや、さすがにそれぐらいは手を打っていて当然か。仮にも軍神と呼ばれる男。そこまで馬鹿ではないだろう」
これまでの報告によれば、長尾景虎が関東へ侵攻を開始したのは夏前の五月。上野を足掛かりとして、上野の反・関東管領派を掃討。厩橋城を拠点に武蔵国へ進軍したのが七月でしたか。
北条家は上野での撃退を目論みましたが、押し込まれてしまっているとの事。現在は武蔵国を戦場として、迎撃戦を展開しております。
武田家が裏から兵糧を提供していますので、最悪でも小田原城籠城で長尾勢の攻撃を凌ぐ事はできるでしょう。ただその対価は領内の田畑の荒廃。戦火によって、間違いなく全滅状態になるでしょうね。
「考えられるのは下野の宇都宮、常陸の佐竹、安房の里見、上野の長野、越後の長尾連合軍か。おまけに里見や佐竹は、武蔵ではなく相模に直接攻めこんでくるだろう。二正面作戦を強制される事も考えねばならん。最悪、だな」
「仮に二郎様ならどうされますか?」
「武蔵を捨てる。そして相模で全兵力を終結して籠城戦を展開。連合軍解散後に領地奪回だな。北条家は三万以上の兵を動員できるだろうが、相手はそれを超える。将も有能揃いだ。わざわざ相手に有利な土俵で戦う必要はない」
たまに思うのですが、二郎様の御判断は私には理解出来ない時が御座います。
武蔵を捨てる、という御言葉。
何故、こうもあっさりと土地を捨てる御決断が出来るのでしょうか?武蔵と言えば、相当に広い国だと聞いた覚えがあるのですが。
「早めに武蔵を捨てれば、武蔵の田畑の被害は減る。そうなれば領地を奪還した際に、復興も早く進められる。民には耐えて貰うしかない。だが、北条にとっては時間が味方だ。戦が長引けば、必ず連合軍内部で不和が生じる」
「有利なのに、で御座いますか?」
「有利だから、利害の『不一致』が致命傷となる。宇都宮・佐竹・里見は関東管領の為に動く訳ではない。あくまでも己の利益を追求して動くのだ。当然、手柄を上げた対価として所領を求める。だが、景虎がそれを認めるか?関東管領に敵対する北条家を討伐した以上、北条家旧領は関東管領の物である、という大義名分も成り立つ。関東管領上杉憲政に全て捧げると言い出しても不思議は無いと思うがな」
そのまま二郎様は思索に入られた。此度の事態に対して、今後、武田家がどう動くべきかを考えておられるのだろう。
「この情報が周辺国に伝わっておらぬ筈が無い。特に会津の蘆名だ。蘆名は長尾とは犬猿の仲と聞くが、越後侵攻を行ったという報告もない。国境沿いの守りがよほどに堅いか、或いは権威を盾に不介入を余儀なくされたか……どちらであっても、長尾は蘆名侵攻の心配はする必要が無い状況という事か」
畳んだ扇子を掌に何度も打ち付ける。二郎様が思案されている時の癖だ。
二郎様によれば、一定の拍子で叩いていると心が落ち着くのだそうです。
「盤面……関東は越年で戦争継続……北条が劣勢……能登侵攻は受け身からの反撃が上策。越中は現状維持……西と六角は本家・浅井・松平……本願寺と三好は関係悪化……能登の不満を爆発させて状況を動かす……或いは長尾が文句をつけられぬほどの大義名分を持って攻め込む……流言で攻め込んでくるように仕向けるか」
「能登との戦を行うので御座いますか?」
「そうだ。越後は関東に夢中。となれば警戒は若干、甘くなる。策を仕込むには、絶好の機会だろう。まず俺が能登の民を加賀へ移住させて高笑いしているという噂を流す。そうすれば畠山家としては動かざるを得なくなる。やらなければ当主は頼りない、怯えている、と見限られるからな」
民に逃げられて何の手も打たなければ、確かに見限られて当然です。
何の為の主なのだと、国人衆は不満に思うでしょう。
「であれば、今から噂を流したとして、田植え後に攻め込んでくる計算になるか。だが畠山家臣の中には切れ者もいるだろう。俺の思惑を見切る事も考えられる。ならば国人衆に働きかけて揺さぶらせるか?新しいやり方に戻せ、国人衆を飢えさせる気か、と」
「当主に苛められた国人衆であれば、動くかもしれませんね」
「少なくとも、他の国人衆よりは確率が高いだろう。そうなると、伝手が必要だ。なら温井や三宅にやらせるか。まずは国境沿いの国人衆。それから知人・縁者を通して新しいやり方の利を理解させる。そうすれば畠山家としては、意に背く者として断罪に動かざるを得ん。誰か、長次郎の代理を呼び出せ。仕事だ、とな」
二郎様の呼びかけに、待機していた近習が御命令を伝えに走り去る。
さすがに武蔵から戻ってきたばかりの長次郎殿を呼びだして命じる訳にはいかぬ、という事で御座いましょう。
疲れも相当、溜まっているでしょうから。
それにしても温井に三宅ですか。能登から逃げてきて、加賀で庇護されている者達ですが、私にはあまり好ましく思えません。
やはり国を追い出された理由が、当時の当主が専横を極めていた、という点が納得できないからなのです。
その事を恨みに思っている限り、正直、信用は出来ませんね。ただ二郎様の事ですから、その点には注意を払われているとは思いますが。
「あとは椎名だな。越中は現状維持でも構わないが、出来る事なら椎名を何とかしたい所だな……長尾が関東に長居をすれば、椎名としては不安・不満が溜まるだろう。加えて神保という犬猿の仲の相手が隣にいるのだ。こちらも不安を煽る為に流言を仕掛けておくか。長尾の関東滞在は長引く。神保に不穏な気配有り、とでも流しておけば後は向こうが邪推してくれるだろう」
「椎名を揺るがすだけに留めるのは、やはり越後で御座いますか?」
「その通りだ。他にはわざとらしく加賀でも米を購入しておくか。その上で椎名に縁故のある寺院経由で情報が手に入る様にしておく。実行するなら椎名の菩提寺経由が一番だが……それなら越中の商人を呼び出し、聞き取りがてら兵糧の購入依頼もしておけば良いな。どうせ能登で兵糧は必要だ。今は椎名と長尾の間に、見えない亀裂が入れば十分だ」
二郎様の狙いは、越中椎名家と、越後長尾家の離間。その為の仕込み、という事なのでしょうね。
両家の繋がりは非常に強いと聞いております。いずれ戦う事になるのであれば、少しでも繋がりを弱めておこう、という事なのでしょう。
「二郎様。能登と越中、両方を同時に攻める御積りですか?」
「いや、能登だけだ。二正面作戦は絶対にやらん。軍神に攻め込まれるだけの大義名分を与えるなど愚者のやる事だ。俺は戦に疎いが、それぐらいは理解できる」
いつになく強い口調で二郎様が断言なされました。
能登畠山は弱体化しつつありますが、それでも二正面作戦は行わない。
それだけ、越後長尾家、いえ長尾景虎を危険視している、という事なのでしょう。
「ただし、一つだけ例外を想定している。仮に、だ。神保と椎名の間で戦端が開かれても、俺は動くつもりはない。あくまでも神保と椎名の争いで終わらせる。そして地力は神保の方が上だ、椎名は自滅する事になるだろう。そうすれば神保が越中東部まで勢力を伸ばす。それを嫌がって長尾が介入した場合、それは長尾が武田との同盟を反故にした事になる。神保は三年ほど前から武田を頼むようになっている事は誰もが知っている。武田は手を出さなかったのに、長尾が同盟を破棄して手を出してきた、と向こうの非を訴える事が出来るのだ」
「大義名分としては、これ以上ないほどの理由で御座いますね」
「そして軍神が居ない隙に、大御屋形様に御出陣頂き、同時に信濃から真田殿を村上へ攻め込ませ、国境に砦を作らせる」
そういうお考えであったのですね。軍神が関東に出陣している状態で、越後の留守を預かる者達だけで介入してくるなら、越後を恐れる必要は無いという事でしょう。軍神のいない越後勢は、油断の出来ない強敵に成り下がるからです。そうなれば大御屋形様の敵では御座いません。
仮に軍神が関東征伐を諦めて越後救援、或いは上野から甲斐侵攻を目論んでも、背後から北条が襲い掛かる事になります。もっとも、その様な隙を晒す軍神とも思えませんが。
仮に越中の騒動が長引き、椎名への直接支援を、軍神が越後へ帰還後に行ってきた場合はどうなるのでしょうか?ちょっと考えてみましょうか。
まず甲斐の守りを気にする事は無くなりますね。関東は北条家による領土奪還戦で大騒ぎになるでしょうから。
西からは大御屋形様率いる武田本家と加賀武田家、南から真田様。率いる御大将が互角となれば、あとは兵数の差になります。留守の時より苦戦する事にはなりますが、代わりに道祐(竹中重元)殿によって軍神の手の内を研究済になるので御座います。分が悪いとは到底思えません。
ですが、そのような事態は起こらぬでしょう。
長尾景虎は上洛しなければならぬ身なのです。越中で騒ぎが起きていては、上洛も出来ません。
であれば、長尾が椎名に働きかけて、休戦に持ち込むでしょう。そして恐らくは、京の公方も仲介役として口を挟んでくる事は明らかです。
となれば、やはり越中の騒動が長引く可能性は考えずとも宜しいでしょう。
「あとは神保家次第で御座いますか」
「こちらも冬は動けんからな。春まで待たねばならん。そして来年の秋までには、さすがに軍神も越後へ帰国を果たしているだろう。上洛の事もある、あまり関東に長居は出来まい。来年秋までに戻り、再来年の春以降に上洛。俺はそう判断した」
そこへ荒々しい足音が聞こえてきた。二郎様もすぐに気づいたのか『何事だ?』と会話を止めて顔を上げられた。
現れたのは、風の構成員の一人。一体、何が起きたというのでしょうか?
「申し上げます!竹中道祐重元様、十月二日に武蔵国で急逝されまして御座います!死因は不明!ただ暗殺等の可能性は無いとの事!御役目は後継ぎの半兵衛(竹中重親)殿が受け継がれたとの事に御座います!」
「道祐が死んだ、だと!?このような時に……半兵衛に急使を出せ。竹中家は半兵衛が嫡男として後を継げ。半兵衛が帰還するまで竹中家の差配は留守役に任せるが、悪用されぬよう俺が監視しておく、と。あと道祐の葬儀は仮葬儀として行い、半兵衛が帰還後に改めて加賀で執り行う。荼毘に付した遺骨は、風に託して竹中家へ届けておけ。竹中家へは俺が責任を持って話を通しておく、と」
「直ちに使者を走らせます!」
すぐに走り去る背中を見ながら、厄介な事態になってしまったと思いました。
道祐殿は、加賀武田家を支える主要な柱の一つと言える御方。明智殿と並んで、知恵働きの出来る御方であったというのに。
これから軍神を相手に戦わねばならぬ、というこの時期にお亡くなりになるとは……
「……これは想定外の事態だ……無念であっただろうな……ゆき、使者を二人用意させろ。一人は竹中家留守居役へ。至急、登城せよ、と。一人は信濃真田家の管理する学び舎で、道祐の次男が学んでいる筈だ。事情を説明して、仮葬儀の為に戻ってこいと連絡を入れるのだ」
「心得ました。直ちに取り掛かります」
文を用意し、使者を走らせる。こればかりは全く予想も出来なかった一大事だ。
道祐殿という穴は大きい。嫡男の半兵衛殿は、穴を埋めるだけの実力をお持ちなのでしょうか?
噂によれば、暇さえあれば書物に目を通している、という事ぐらいしか聞かないのですが。
「痛すぎる損失だ。だが足を止める訳にはいかぬな。ゆき、筆と硯を用意せよ。竹中家を半兵衛が継ぐ事を書面をもって示さねばな。後は待遇だ。道祐は部将待遇であったが、半兵衛はまだ足軽大将だった筈だ。半兵衛はまだ若いが、才はある。軍神の手の内を暴く事が出来れば、道祐に匹敵する才を持つとし部将として抜擢する。出来なくば足軽大将からとするか」
「その事は竹中家へお伝えになられますか?」
「伝えるとも。そうすれば竹中家としても、半兵衛を全面的に支援するだろう。例え半兵衛が後を継ぐ事に対して、不満を持つ者がおったとしてもな。後は俺の監視もある。竹中家で御家騒動が起きる事は無いだろう」
これ以上、加賀の力が削がれる事は御免被るという事なのですね?だからこそ、竹中家へ手厚い支援を決められたのでしょう。
ただし、加賀武田家当主として厳しい面も見せねばならないのが二郎様の御立場。故に御役目を果たせば部将に抜擢、失敗すれば未だ部将の器にあらず、という御判断なのでしょう。
「嫌な役目だが、これは俺がすべき役目だ。全く……道祐!あの世で楽隠居を決め込むには早すぎるぞ!この戯けが!」
永禄四年(1561年)十月、備前国、天神山城、宇喜多直家――
「武田が動いたというのは真なのだな?飛騨(明石行雄)」
「ははっ。収穫時に合わせて因幡へ侵攻を開始。因幡国人衆は次々に降伏している模様で御座います。尼子側の大将、立原源太兵衛尉久綱は鳥取城に兵とともに籠り、尼子本家に援軍を頼んでいると推測されます」
まさか、武田がこの時期に動くとはな。
収穫時に因幡へ侵攻。これをやられては、尼子としても堪ったものではないだろう。完全に隙を突かれた筈だ。
ただ、気になる点がある。
「御報告中に申し訳御座いません。気になる点があるのですが、お訊ねしても宜しゅう御座いますか?」
「ふむ、八郎(宇喜多直家)、何が気になると申すのだ?」
「二つ御座います。一つ目は因幡国国人衆の動向。二つ目は美作国の動向に御座います。某の懸念は、武田が因幡を短期間で落とした後、調略によって美作に足場を作ってしまう事に御座います」
私の懸念を御理解されたのだろう。殿(浦上宗景)も飛騨殿も、苦虫を噛み潰したように表情を歪められた。
もし武田が美作に足場を作れば、来年は美作だけで済むとは限らない。加えて、こちらが埋伏を志願したとしても『不要』と断じられる可能性もある。
全く、面倒な事になって来たわ。
「飛騨、八郎の問いに対する答えはあるか?」
「申し上げます。まず因幡については、旧・山名寄り国人衆が武田に着きました。これにより因幡の東半分は、すでに武田の領土と化しております。加えて、武田の軍勢の中に、二つ引両の旗印を確認したという報告も上がって御座います」
「……もしかして、山名は武田に降伏した、か?武田は山名旧領奪還と、山名の名による国人衆調略を!?いや、まて!仮にそれが事実だとする!そうなると、武田はそれなりに前から調略を仕掛けていたと考えるべきか?」
飛騨殿が頷かれた。
これには私も同感だ。武田は但馬を七月に落とし終えていた。それまで静かにしていたが、それは擬態に過ぎなかった。裏で山名家復興を名分として、国人衆調略を進めていたとしても、何の不思議もなかった、という事だ。
武田の総大将は当主越前守(武田義信)、副将は叔父の典厩(武田信繁)という情報は得ている。
当主は温厚で真面目、叔父は名将・武田信玄の弟であり片腕とも呼ばれる男。となれば、此度の仕掛けは、典厩信繁の企みと見るべきか。
「飛騨!美作はどうだ!」
「美作国は、今の所は静かに御座います。しかし、先ほどの話を考えれば、国人衆が静かにその時を待っている、と考えるべきでは御座いませぬか?」
「尼子と、それに与する兄が立ち上がった時に、国人衆が息を合わせて背後を突く事もあり得る。これはどうするべきかな」
国人衆に、我らが埋伏を考えている、等という情報が回ってくる事など有り得ぬからな。
それどころか浦上、という名前だけで『敵だ』と判断されかねん。
美作における浦上は、尼子に与する浦上家だからな。
評定の間は、喧々囂々の状態だ。
誰が何を口にしているのかも、よく分からんほど。正直、煩いだけだ。
口に出す前に、少しは考えろ、と言うのだ。
だが、ここでどう動くか?それが重要になる。
武田に与する。これは最低条件だ。尼子はもともと敵だが、毛利と縁を切ってでも武田に与する必要が有る。
……動くか。
「殿、某に考えが御座います。献策しても宜しゅう御座いますか?」
「申せ」
「ははっ。まず尼子と政宗殿に使者を出し、共同戦線を張る事を提案。伯耆からも兵を呼び、決戦を行うのです。そして殿が先陣を受け持つ事を約束します」
周りからどよめきの声が上がる。
誰がどう見ても、愚か極まりない策だ。だが、死中に活を求めるなら話は別。
「兵は限界まで連れて行きます。そして決戦前夜に、全軍揃って逐電致します」
「「「逐電!?」」」
「当然、尼子側の防御は当てが外れて隙を晒します。そこに武田が朝駆けで突っ込む。先陣であれば、反尼子の国人衆に背後を突かれる事も御座いません。背後には本陣である尼子や、政宗殿の軍勢がおりますからな」
殿が『うむ!』と力強く頷く。
兵を多く連れていくのも全て策。僅か百程度が居なくなるのと、千程度が居なくなるのとでは、晒す隙の大きさは大きく変わる。だから、多ければ多いほど、武田にとって有難い状況になるのだ。
勿論、武田に話を通しておかなければならんがな。
「尼子の兵が削れれば削れるほど、武田が尼子を攻めるのに都合が良くなります。その点も説明すれば、武田としてもこちらの提案を拒んだりはせぬかと存じます」
「伯耆の兵が少なくなれば、武田にとっても都合は良いな」
「必要なら、使者は某が向かいます。他に希望する御方がいなければ、いつでもお命じ下さい」
殿は乗り気のようだ。あとは私が背中を押す必要すらないだろう。
武田も、無理に今年中に美作まで手を伸ばそうとはしない筈だ。こちらの提案を武田に話せば、武田も美作を攻めるのは容易くなると理解出来る。それなら来年に攻めよう。国人衆にも来年に機を合わせて立ち上がれ、と焚きつけようと考えるだろう。
これで良い。
私も励まねばならんな。
御家を大きくする為に。
今回もお読み下さり、ありがとうございます。
まずは加賀から。ゆき視点。
【長尾越年の報告】
ついに報告が届きます。主人公は言うまでもありませんが、幻庵さんも頭が痛いのは間違いないでしょう。
ただし主人公は、以前から想定していた連合軍の結成が早まるだろうと推測。理由は軍神がマジになった以上、みんな下手な動きは出来んだろう?という物です。史実のような展開になります。或いは史実より、攻撃側が本腰入れてくるかもしれません。
【武蔵放棄】
普通の戦国大名なら、国丸ごと放棄は考えないでしょうね。間違いなく、城に籠って徹底抗戦するでしょう。
ただ広い目で見れば、佐竹や里見が相模に攻め込んでくる状況で、武蔵を死守する意味があるのか?という所です。
【利害不一致】
軍神様:お前ら関東管領様に忠義を示す為に参戦したんだろ?ガタガタぬかすな!
他:ふざけんな!
大まかに言えばこんな感じ。文句言わんのは箕輪長野家ぐらいでしょう。
景虎が上杉憲政の養子という点も、間違いなく喧嘩の要因になりますしね。いずれは関東に長尾家が一大勢力を築く事になりますから。
【蘆名家】
これは公方が口を挟んだから。軍神様に同行している関白殿下の影響もあります。
蘆名は京都扶持衆なので、公方は直接の主にあたりますしね。
【能登への仕込み】
上策の為に、暴発させようと流言工作を仕掛けます。
今からやれば、すぐに冬。行動に出るとすれば、田植え後、という考え。
【温井・三宅】
温井景隆・三宅長盛。史実通り、弘治の内乱(史実:1555~1560年)が起きておりますが、加賀一向衆が主人公によって壊滅(1559年)している為、史実よりも早く内乱は終結。反乱軍勢力は加賀へと逃げ出し庇護されてました、という状況でした。
【椎名への流言工作】
菩提寺経由で流言を仕掛けます。越前を牛耳っているのは武田家。
【二正面作戦の例外】
軍神様が居ない状況下で、留守居役が同盟を破棄して介入してきた場合です。
その場合は信玄パパに出陣を依頼。最低でも笹川を堀に見立てて防衛できるようにする。可能なら境川まで出る、という構想です。
この二つの川はガチで重要な地形だと思います。長尾が椎名に肩入れしていた理由が良く分かります。
その上で村上家を落として、国境に砦建設。
こうなると、軍神様も上洛なんて言っていられなくなり、公方とともに面目丸潰れです。
【竹中重元急逝】
半兵衛パパ亡くなりました。史実より一年早いです。
これはサイコロ振って決まった結果w作者も諦めましたwサイコロの神様のお告げです。
次は備前・浦上家。宇喜多直家視点。
【因幡】
西半分を尼子、東半分を武田というイメージ。
鳥取城に尼子三傑の一人、立原久綱さんがこもって援軍要請中。でも、これから冬なんですよねw
下手に援軍寄こした日には、どこで寒さを凌ぐんだろうかw
【国人衆の動き】
武田の武威と、山名に対する恩義、尼子への反感から、武田に靡く国人衆は三割という所。五割は尼子。二割は様子見。
ただ武田はそんなに甘くは無いw収穫時に攻め込んだので、まともに交戦できず、降伏⇒僻地左遷or領地没収コンボが発生中w
【美作】
最早、国全体が埋伏状態。どこに地雷が埋まっているか、分かった物じゃありませんwこんな所で戦なんてやってられんでしょうね。
【作戦:大軍で来て逐電】
実際、やられたら滅茶苦茶困ると思うんですよw
夜の内に、適当な山の中に逃げ込んでしまうだけで良いですからね。領地追加を狙うなら話は別ですが。
逃げ込んだ後は、武田菱の旗を準備しておきましょう、国人衆対策の為にw
【必要なら、使者は某が向かいます】
他に居なけりゃ、自分で向かいますよ、宣言。
武田はともかく、尼子・浦上政宗方面に行きたがる奴はいないでしょうね。仇敵だし。
なので、後者は直家さんが向かうでしょう。
『御家を大きくする為に』
何という忠臣ぶりでしょうか!さすがは宇喜多直家さんです!
今回もお読み下さり、ありがとうございました。
また次回も宜しくお願い致します。




