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謀略編・第十一話

 謀略編・第十一話、更新します。


 今回は越前・京・加賀が舞台。

 再び、暗躍が始まります。

永禄四年(1561年)六月、越前国、一乗谷城、武田信親――



 三郎(武田信之)の婚儀は無事に終わった。一つ年上とはいえ、俺から見れば高校生の夫婦だ。口の悪い者は福姫の事を嫁き遅れなどと言っていたが、これぐらいの年の方が出産という面を考えれば、遥かに利が有ると思う。

 改めて考えてみると、ゆきが月を産んだ時の年は……いかん、盛りのついた動物じゃあるまいし、俺は何を考えていたんだか。

 春齢を正室に迎える時は、その辺りの事を典侍様に伝えておくようにするか。

 夫婦仲が悪いと思われては、面倒な事になるからな。


 それにしても、もう六月とは早いものだ。梅雨に入り、ジメジメとした不快感が肌を刺激する。

 本当なら、三郎の婚儀を済ませた後、軍神殺しの策を信玄パパに伝えてすぐ加賀へ舞い戻る予定だったのだが、月を跨ぐほどにずれこんでしまったのだ。

 その理由。それは越前で秋に行われる予定の祭りだ。加賀での祭りを参考にしたいと言われて、知る限りの事を教える間に、月が変わってしまっていたのである。

 さすがにそろそろ加賀へ帰らないと。そう考えていた頃に、名前だけは聞いた事のある男が、俺に面会を求めてきたのだ。


 「私が武田加賀守信親だ。話があるという事だが」

 「はは。お初にお目にかかります。某は美濃国人衆、安藤伊賀守守就と申します。とは言え、今は所領も失い御本家に侍大将としてお仕え致しておりますが」

 「美濃と言えば、確か六角家と抗争中だったな」

 六角家の定秀さんを騙し討ちにしようとして、失敗して逃げ出したんだっけか?その後で美濃西部は六角に支配され、今は稲葉山城が前線拠点になっているとかなんとか。

 蝮と言われた道三の息子、長井某という男が総大将だったか。


 「稲葉山城に戻らず、越前へ来たのか?」

 「蒲生殿を討てなかった時点で、美濃側の敗北は決まりました。本来なら、坂田郡を経由して、今後の塩の調達を行う予定でいたからで御座います。しかし」

 「坂田郡、正確には不破関の割譲か」

 『仰る通りに御座います』と守就さんが返してくる。

 美濃に塩を運ぶには、不破関以外だと武田領を通る必要が有る。

 だが武田家は六角家と同盟中だ。塩を運び込む事を許す訳が無い。

 ……相応のメリットがあれば融通してやったんだが。どうやら美濃の連中は、武田と六角の同盟関係を額面通りに受け取っていたみたいだな。

 まあ良い。


 「某が武田家にお仕えしたのには、美濃斎藤家家臣団が稲葉山を失った後、落ち延びる先を確保しておく、という意味合いも御座いました。これは稲葉山の主、長井様も御承知の事で御座います」

 「武田家としては家臣が増えるのは有難いからな。その点についてどうこう言うつもりは無い。だが斎藤家、というか長井殿に殉じる者はおらんのか?」

 「少数で御座います。長井様がそれを許さなかった為に。長井様は実の御父君、道三様に反旗を翻した事を悔やまれておいでで御座いました。斎藤家の復興はその贖罪。しかし、それも潰えようとしている今、無意味に自分に付き合う必要はない、と」

 武田家としては悪い話ではないんだよな。

 美濃が六角一色に染まれば、六角を武田が吸収した時に、自然と傘下に収まるからだ。

 おまけに美濃の不満は六角に向いている。武田が吸収合併した後、仁政を心がければ、民の忠誠心は右肩上がりに上昇するだろう。

 その事を考えると、六角家には頑張って貰いたい、というのが本音だ。


 「美濃の思惑は分かった。それで、安藤殿はその事を伝えに面会を望まれたのかな?」

 「いえ、それとは別に御座います。此度は加賀守様に仲人をお願い致したく。某の娘である月を、加賀武田家家臣、竹中道祐殿の嫡男、半兵衛殿に嫁がせたく」

 「半兵衛に、か?」

 これは予想外だ。確かに重親さんはまだ独身。嫁を紹介するのは可能だし、こちらとしても伝手があれば紹介してあげようとは考えていた。

 だが、まさか安藤家からとは。

 確か史実でも夫婦だった気がするんだが。まさかの偶然だな。


 「可能ではあるが、理由は?」

 「まだ幼かった半兵衛殿に会った際、相当な才がある、と感じていたからで御座います。そして竹中家は加賀武田家でも重臣として名を馳せつつ御座います。であるならば、これは好機であると判断致しました。某は嫡男と共に御本家で、娘は加賀に。こちらに何かが起きても、安藤の血が絶える事も無く、万が一の際には養子を迎え入れる事で家名の存続も叶います」

 「ふむ、私としては悪い話ではないな。もともと半兵衛に嫁を紹介しようとは考えてはいた。互いに父親同士が顔見知りであれば、話も早い」

 そういう事なら、話を進めようか。

 とは言っても、今、二人は武蔵国にいる。すぐに、と言う訳にはいかんな。

 とりあえず文を送って、そういう話が来ているがどうする?と確認だけしてみるか。


 「ただ今すぐ、と言う訳にはいかん。私が道祐に密命を与え、半兵衛も学ぶ好機として共に役目に赴いているからだ。それが終わった後に、話を進める事になるだろう。ただ安藤家から半兵衛宛てに婚儀の話が来ている事だけは、先行して伝えておく」

 「有難き幸せに御座います。どうかよろしくお願い致します」

 「うむ。道祐からの返事が来たら、必ず其方に伝えよう」

 思わぬ事ではあったが、懸案事項の一つは片付きそうだな。

 重親さんは数えで十七歳。この時代の常識としてなら、結婚するには良い歳だ。

 あと、加賀武田家で結婚相手を紹介する必要が有るのは……長親(河田長親)ぐらいかな?

 まだ学び舎だし、それほど急がなくても良いとは思うんだが。



永禄四年(1561年)六月、山城国、京、二条御所、京極高吉――



 ジメジメとする梅雨が続く中。

 公方様が我らを呼び出された。剣の稽古に付き合え、と。

 当然の如く、準備をして稽古場に赴く。当然の事だが、普段は公方様の監視の為に傍に控えておられた太閤殿下や、慶寿院様の姿はない。


 「来たか。まずは軽く汗を流そうではないか」

 半刻程、皆で木刀をあわせ、稽古に励む。

 汗が流れるうちに、いつの間にか梅雨特有のジメジメとした鬱陶しさを忘れる事が出来た。


 「よし、一息つくとしよう……で、様子は?」

 「御二人とも、自室に居られるようで御座います」

 「よし、動きがあれば、すぐに報せよ」

 はは、と近習が姿を消す。話の流れからして、この場にいない御二方。恐らくは太閤殿下と慶寿院様の事であろう。

 御二方が公方様が暴走しない為に、お目付け役を自認されているのは、皆が知っている事だ。

 確かに兵部大輔(細川藤孝)殿が越後まで謝罪に出向いた一件を考えれば、御二方が用心されるのも理解はできるのだが。


 「其方達、知りうる限りで良い。まずは畿内の情勢、特に三好家について余に教えよ」

 「然らば某から。三好家は現在、畿内の掌握に専念している模様で御座います。先年、武田家との共同戦線により丹波を得て以降、対外的な侵攻作戦は行っておりませぬ。これは三好領内に不穏な気配が有る為と考えられます」

 「続けよ」

 『ははっ』と応じられる式部少輔(一色藤長)殿。

 本来は丹後国の守護大名、一色家に名を連ねる御仁であり、自身も郡代を務めておられた。

 だが公方様の御供衆を務めている間に、武田家が丹後に侵攻。留守にしていた領地は武田家の支配下に入ってしまった。

 以来、式部少輔殿の武田家に対する心証は、すこぶる最悪と言える。その憎悪という矛の向く先は、武田家と同盟を組んでいる三好家にも向けられているのだ。

 であるならば、三好内部の情報集めに力を入れていたというのも、不思議な事ではない。


 「不安要素は二つ御座います。一つは丹波国の内情。国人衆を中心に、三好家の支配を面白く思わぬ者達は多く居ります。彼らは公方様に忠義を誓っていると聞き及んで御座います」

 「うむ、実に良き話よな。真の忠臣と評すべき者達よ」

 「その御言葉を聞けば、彼等も心の底から喜びましょう。話を戻しますが、もう一つの不安要素は和泉国。修理大夫(三好長慶)の弟、鬼十河(十河一存)が四月に没しました。その為に、和泉国の支配が揺らぎつつ御座います。修理大夫が武田家とともに播磨へ出ないのは、それも理由の一つであるかと」

 公方様は上機嫌に、力強く何度も頷かれておられる。

 確かにお気持ちはよく分かる。公方様の修理大夫殿に対する心証は、お世辞にも良き物とは言えない。

 心に期するものがあったのだ。喜ばれるのはある意味、当然ではある。

 外聞は良くないがな。


 「公方様、丹波と和泉、双方を動かすべきで御座います。同時に事を起せば、修理大夫も冷静ではおられぬでしょう」

 「良き案よ、すぐに行動に移すのだ。次に武田であるが、兵部大輔?」

 「恐れながら申し上げます。武田で御座いますが、現在の所、隙が御座いませぬ。但馬攻めも但馬守護である山名殿が因幡に撤退した所を尼子に討たれた結果、武田家は但馬を支配するに至って御座います。まだ駿河を任されている三郎信之殿と浅井家の福姫との婚儀も済んだ事により、浅井家は武田家の支配下に入ったと、某は判断致しております」

 兵部大輔殿の報告は、私も耳にした。

 西国は但馬まで武田が勢力を伸ばし、因幡を獲った尼子、山名の残存勢力が支配する美作によって三竦みになりつつある、と。

 当主・越前守(武田義信)殿の弟、三郎殿の婚儀も先月、執り行われたばかり。

 だが三竦みとなっている以上、武田は手を止める事になる。それはこちらにとっても好機と呼べるのではないのだろうか?


 「其方が申すには、武田は西国進出を目論んでおるのであろう?ならば手はある。尼子・毛利・大友・本願寺に余の名において同盟を組ませるのだ。さすれば武田は余計に西に注力せざるを得なくなる。となれば背後が手薄になる。長尾の上洛が容易に進むであろう?」

 「公方様、恐れながら長尾による関東征伐は、まだ終わっておりませぬ」

 「何を申すか。成り上がり者の北条如き、何を恐れるというのだ。出自を辿れば、北条早雲は政所執事の伊勢家の出であり、今川の家臣に過ぎなかった。その孫程度に、どれほどの事が出来るというのだ」

 周囲からは公方様に同調する声が上がりだす。

 兵部大輔殿に同意している者はおらぬようだ。

 確かに公方様の仰ることには一理ある。西国の大名を束ねて時間を稼ぎ、後背を突かせる事で武田を滅ぼす。間違いなく必勝の策。軍略として正しいと断言できる。

 何故、その才を認められる兵部大輔殿が賛同なされないのか?それが分からん。


 「公方様、太閤殿下がこちらにお越しに!」

 「む、皆、鍛錬を再開する。これまでの事は他言無用ぞ」

 再び、威勢の良い声を上げながら鍛錬を再開する。

 太閤殿下が顔を出した時には、すでに先ほどまでの密談の気配は完全に消えてしまっていた。



永禄四年(1561年)六月、加賀国、木曽義昌――



 「井伊殿。この村では生糸を作られぬ、と聞いたのですが?」

 「ああ、その事で御座いますか。その理由ですが、この村では効率が悪いので御座います。この村は山間の盆地にあり、どうしても平野部は米などに使われております」

 「確かに。こうして山から見下ろすと、よく分かりますな」

 加賀の地へ来て三ヶ月ほど。俺は加賀で内政を一手に取り仕切っている井伊藤吉郎殿の下で、内政のイロハについて学んでいた。

 今は、金沢の城から少し離れた山間の村に来ている。

 目的は、この山間の村での、冬場の産業を興す事。その計画を立案する為、山から村を見下ろして、地の利と言った情報を確認しているのだ。


 「冬場の生糸作りには、桑の木が必須となります。ただ問題は、炭焼き小屋の排煙を熱源と出来る距離に、桑の木を植えられるだけの土地の余裕が無いという点なのです」

 「そういえば、桑の木を玻璃で覆うのでしたか?」

 「木曽殿の申された通り。その点を解決できない為に、冬場に蚕の餌となる桑の葉を確保できないのです。春から秋までなら問題は無いのですが」

 井伊殿は百姓の出身だと聞いた覚えがある。人相も、こう言っては失礼だが、文字通り猿のような顔だ。

 言葉遣いもどことなく遜った感じがし、上役と言う自覚が感じられない。

 だがこうして内政の手際を見る度に、その実力を見せつけられてしまう。

 槍働きの経験が無いと聞いたが、それを補って余りあるほどの実力だ。


 「木曽殿、ちょうど良い機会です。もし木曽殿でしたら、この村の冬場にどのような仕事を与えられますか?皆様と相談して色々と考えてみて下さい」

 「ひょっとして井伊殿には答えが?」

 「ええ、既に考えついております」

 俺とともに来ていた連中と顔をあわせて、ああでもない、こうでもない、と意見を交わす。

 井伊殿は答えに気づいているようだ。

 となれば、ここに来るまでの間に答えに至る為の手助けに気づいた、という事になる。

 

 「ここに来るまでに、気づいた事はあるだろうか?」

 「下曾根殿、まずは川では?山奥ではありますが、船を使えば、運ぶのは容易いかと」

 「三枝殿が申した通りであるな。であれば、重かったり、嵩張っていても運ぶのに問題は無いという事」

 これは重要な気がする。本来、山から運び出すなら、軽くて小さい方が運搬の手間がかからない。だがその問題が解決されたとなれば、話は大きく変わる。

 材料さえ確保できれば、何を作っても問題は無い、という事になるからだ。


 「ここは山。山で手に入るとなれば、木に土。木であれば炭や細工物。土であれば焼き物だろうな。江馬殿はどう思う?」

 「木曽殿。炭は外して良いかと。炭は金沢を中心にどこでも使います。材料も井伊殿が竹から作れるように、各村に竹を植えさせた、という話を聞いた事があります」

 「細工物では、川で運ぶ際に壊れそうだな。しかし焼き物でも割れそうな気がするが」

 これは難しい問題だ。

 答えに至る一助が必要な所だが。


 「流石に厳しゅう御座いましたか。ならば助言を。焼き物であっております。ただし、出来上がる焼き物の形は限定されます」

 「形が限定?」

 つまり同じ物を焼き上げるという事か?

 だが全く同じ形のものを延々と焼き上げて、誰が買うというのだ?

 よく茶の湯を嗜む者が茶器を買いそろえると聞くが、わざわざ同じ物を買おうとはしないだろう。

 だが、同じ物を焼き上げると申していた。

 となれば、同じ物を大量に必要とする……


 「井伊殿、屋根瓦か!」

 「正解で御座います。この加賀国に限らず、北陸地方は雪に悩まされます。であれば質の良い屋根瓦は引っ張りだこと申せましょう。幸い、以前に村の戸籍を作った際に、村人から粘土が採れるという話を聞いております。であれば、屋根瓦を焼きあげるのも一つの手段と考えられます。また技術力を向上させれば、他の焼き物に鞍替えするという選択肢も出てきます」

 「それは良い案……お待ち戴きたい。戸籍を作った時に粘土が採れる、と申しましたな?もしや、その時から考えていたので?」

 井伊殿は『御見事』と言わんばかりの笑みを浮かべてみせた。

 だが、そんな時から考えていたとは。

 そっと周囲を見回せば、皆揃って呆気に取られていたようであった。


 「それには理由が二つ御座います。一つは加賀守様の御考え。内政には才等欠片ほどにも必要ない。知識を蓄え、情報を集め、私的感情を排して落ち着いて考える事。それだけが出来れば良いのだ、と。特に二つ目の情報、これが重要でしてな。分かりますか?」

 「戸籍を作りに来た時に、いずれ村を発展させる為に情報を集めておいた、と?」

 「そういう事で御座います。戸籍を作る際、加賀守様から炭にする為の竹を植える場所に目星をつけておくように、と御指示を受けておりました。某はその指示を遂行する際、更に一歩、踏み込んでおいたのです。それが村を発展させる情報。この村は日頃から使う茶碗が木ではなく、焼き物であったのです。そこで確認してみた所、自分達で焼いている、というではありませんか。そこで土産に一つ、譲って貰いましてな。焼き物の職人に見て貰ったのです。質はどうだろうか?と。答えは見栄えは悪いが、非常に壊れにくい、と」

 それで、か。

 加賀守様の御指示を守るだけではなく、その先を見据えて情報を集めていた。

 これは兵法にも通じるものがある。まさか内政を学ぶにあたって、戦の知識を利用できるとは思わなかったな。


 「あとは加賀守様の内政の指南書……おお、この一文で御座います」

 「……金になる物は作ればよいという訳では無い。土との相性や水源の確保、加えて作った物を欲してくれる者が近場にいるか、いなければ遠くまで運ぶ手段があるのか?また輸送する間に質が低下する可能性、更には周辺に同じ物を大量に作っている商売仇のような者の有無。これら全てを総合的に判断しないといけない……」

 「考えてみて下さい。確かにこの村で屋根瓦を作ったとします。ですが、周辺でも作ってしまっては、生活の糧にはなりません。互いに客の奪い合いとなります」

 なるほど。確かにそうだ。

 屋根瓦を欲しがる者は多いだろうが、それでも屋根瓦が余ってしまえば、安く買い叩かれる事になる。

 結果、この村の者達が得られる銭は少なくなる。

 ちゃんと考えてみれば、当たり前の事ではないか!


 「故に計画が重要なので御座います。某は全ての村で情報を集めました。この村は屋根瓦ですが、川下の村では砂地が目立つ為、サツマイモを奨励して焼酎を。山向こうの村、確か菩提、でしたかな?そこでは瑪瑙が見つかったので、瑪瑙の細工物を。更に山向こうでは砂金が採れるというので、山師に探索をさせておりますな。そこで大々的に採掘が始まれば、人が集まる。となれば焼酎も、そこで売る事が叶います。瑪瑙細工も金沢だけでなく、鉱山で働く者達が土産として買っていくようにもなりましょう」

 「潰し合いを無くしたのは、その辺りを考慮されている、という事ですか」

 「その通りで御座います。木曽殿は話が早くて助かります。今から申す事は加賀守様が、信濃の真田弾正様の三男、喜兵衛殿にお伝えした事でも御座います。加賀と信濃は漆器を作れる。だがそのまま作ったのでは潰し合いになりかねない。だから潰し合いにならぬようにする事が肝要。漆器に拘るなら作風や用途の違う物を作る。相手の漆器を利用するなら、その漆器を使用する物、例えば酒を造ればよい、と。某の考えた事は、そこに通じるもので御座います」

 そこまで考えていたとは。

 だが、それが実行されたのであれば、加賀守様と領地を接する真田弾正様の御関係が悪化する事は無い。

 結果として、武田家中において、強い力を持つ加賀武田家と信濃真田家は合力し易くなる。それは武田家を一枚岩たらしめる、内輪揉めを起こしにくい、という事だ。


 「この場にいる方々は、いずれは御家の所領を受け継がれる身。この考えを身に着けておけば、互いに所領を発展させやすくなりましょう。例えば自分の所領では鉄が採れるが、そちらでは麻を大量に栽培していると聞いた。良かったら麻の炭を売ってくれないか?と提案も出来ます」

 「御家同士の仲も良くなり、所領の発展も促す事が出来る。一石二鳥ですな」

 「その通りに御座います。故に情報と計画は重要となります。分からない時は、訊ねてみるのも良いでしょう」

 これは素晴らしい!この考えを実行できれば、きっと父上も喜んで下さる!

 父上にはご迷惑をおかけしてしまったのだ。何としても、汚名を返上しなければ!


 「加賀守様が御考案なされた内政遊戯を流用して考えてみるのも良いでしょう。例えば一対一ではなく、複数の参加に変更。そして互いの領土で産出する物を取引し、銭をより多く貯える。そして戦場遊戯に繋げてみる。あくまでも遊戯に過ぎませぬが、一考の価値はあるのではないでしょうか?」

 「何と、それは面白い!」

 「加賀守様でしたら、更に一手、上を行かれるでしょうが。例えば相手にとって要となる産出物を、銭で買い占める、とか。実際に、米を買い占めて越中一向衆を内部崩壊からの壊滅状態に追い込んでおられますからな」

 武田の今荀彧。王佐の才。

 兵を用いずして、敵を降す。それはある意味、孫子の教えを体現したものだ。

 大御屋形様が孫子の兵法を重視しているのは有名な話だが、その大御屋形様が加賀守様を評価されるのは、こういう点にあるのかもしれぬ。


 「学ばねば。俺はあまりにも足りない」

 まだ五年。いや、もう五年しかないと覚悟を決めるのだ。

 大御屋形様の御期待に応えるべく、俺は成長して帰るのだ!

 今回もお読み下さり、ありがとうございます。


 まずは越前・一乗谷城の主人公から。


 【婚儀の後も逗留中】

 秋祭りの為に、御意見役として逗留を余儀なくされた主人公です。ちなみに自分の過去を思い出して、自己嫌悪中w下半身の暴走には注意しましょう。


 【安藤さん再登場】

 蒲生定秀さん謀殺に失敗して、逐電していた安藤守就さんが再登場。謀殺の舞台、北方城が自分の居城であったので、所領を失ってます。

 本来なら稲葉山に立て籠もっている長井道利の下に向かうべきですが……


 【美濃敗北】

 蒲生さんの献策による第二次塩攻めが進行中。長井さんも一か八かで武田家に話をすれば、条件次第で裏でコッソリ……だったのですが、同盟を額面通りに受け取っておりました、という状況。

 甲斐武田家ですら、塩攻めには白旗状態ですからね。山国は本気でキツイ。これがヨーロッパなら岩塩で凌げるんですが。


 【斎藤家家臣団の行き先】

 土地にしがみつくなら、そのまま国人衆として六角家を主とする。

 土地を捨てるなら安藤さんが武田家にいるので、その伝手で仕えよ、というのが長井さんの思惑です。

 これにより斎藤家復興の目は潰れます。逆転の目もありません。

 武田家としては、美味しい展開と言った所。


 【半兵衛さんに結婚申し込み】

 史実通り、安藤さんの娘(得月院)が嫁入りします。得月院ですが名前が分からなかったので、拙作では月さんにしました。主人公の娘と同じ名前なのは偶然です。


 【次は長親】

 まだ十六歳(実年齢十四歳)。御家と言う後ろ盾がないので、その分は不利。なので主人公が一肌脱ぐことになるでしょう。

 松平さんとこの晴康君みたいに、主人公の弟分と認識されれば、話は変わるので。


 次は京・二条御所。足利家家臣、京極高吉(史実の京極マリア=浅井福の旦那)。


 【公方暴走開始】

 とは言っても、まだ準備段階。舅の太閤や、実母の監視の目を掻い潜って行動開始。

 まずは剣術鍛錬という場で監視の目を誤魔化します。


【一色藤長】

 所領を奪われ、激おこぷんぷん丸。史実でも郡代だったというので、石高とか気になったので調べたんだけど、何処の郡かは不明。丹後は郡が4つで、各2~4万石。それなりの実力はあったんでしょうね。


 【三好家、不安定化】

 これは史実通り。丹波国人衆の蜂起と、鬼十河さんの逝去による和泉国の不安定化。これの為に、今年の三好家は静かにしてます。本願寺に紀伊畠山と言う敵も懐に抱えてますから。

 なので武田に限らず、六角も同盟中なのは、実は有難かったりします。


 【丹波と和泉で同時蜂起】

 上手くいくかどうかは不明。でも公方がやってよい事ではないw


 【武田は不安定要素無し】

 基本的に二正面作戦はやらないし、内部の膿は出し切ってるし、東方面は潰し合い。西に全力集中なので、隙が出来る訳が無い。


 【三竦み】

 但馬の武田、因幡の尼子、美作の山名。でもよく考えれば、武田は動ける。但馬に隣接してるのは因幡だけだし。

 あとは細川さんが知らないだけで、信繁叔父さんが秋の刈り入れ時に因幡侵攻を計画中。

 武田家としては、早く山陽への進出経路を確保したいですからね。


 【西国同盟】

 主人公の予想通り、西国大名による同盟を公方が思いつきます。

 武田に今まで以上に西へ注力させて、越後から背後を突かせるつもりですが、公方は知りません。

 軍神さんが不信を抱いて、念の為に近衛前久さんと連絡を取っている事をw


 【細川さん苛め】

 細川さん、立場が悪化中。この人、何も悪くないんですけどね?


 最後は加賀・チャレンジャー組&藤吉郎。


 【内政の手解き】

 加賀に来て三ヶ月。今回はいうなれば現場実習。この村で、冬場に何を作りますか?というのが御題です。


 【屋根瓦】

 山中温泉周辺(加賀東谷?)を想定。ここでは史実でも『加賀瓦』という、積雪に強い屋根瓦が焼かれておりました(江戸後期)。重要なのは土と釉薬(要・鉄分)。

 釉薬については石見の石州瓦の技術と材料が必要なので、今はただ焼くだけ止まり。いずれは積雪対策瓦を焼くようになるでしょう(前提:情報収集)


 【情報収集】

 藤吉郎は頭が回るので、主人公の指示以上に動いております。情報収集もその一つ。

 こんな家臣いたら、上役は凄い嬉しいでしょうね。


 【菩提】

 瑪瑙の産地。山中温泉の山向こうといった辺り。

 金山は尾小屋鉱山、金平金山。砂金については、川とかで採れたよ、という設定。史実でどうだったかまでは分かりませんw

 砂金なしで金山の場所にあたりをつけるとか、正直、無理だとは思いますが。


 【内政遊戯】

 一対一:シムシティ。

 複数:大航海時代(売買要素)。

 主人公参入:カタン(ボードゲーム・資源は有限)とか。相手の首根っこを押さえてきますw


 【チャレンジャー成長中】

 まだ若いし、期待は出来るという所です。


 今回もお読み下さり、ありがとうございました。


 また次回も宜しくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ANNEシリーズも(内政?ゲー)
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] ・昔から「下半身に人格はない」と申しましてな。 四十年前のアニメでも赤い人が言っております。 「認めたくないものだな。若さゆえの過ちを」 ってね(笑)。 あら…
[気になる点] 式部少輔(色長一藤)殿とは?
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