謀略編・第一話
謀略編・第一話更新します。
①同時にアップした補足資料は、最初の部分の収支報告の内訳です。興味がありましたらご覧ください。
②今回から、数字を多用していきます。しばらくは漢数字を使っていましたが、やはり見難い、と思いました。なので必要に応じて漢数字と数字を混ぜて使っていきます。
では今回は金沢城での一コマになります。
永禄四年(1561年)三月、加賀国、金沢城、ゆき――
「……二郎様。以上により、今回の収支予想は19325貫文となります」
本日は四月に行われる税収の予想と、四月から来年三月までの支出の予想を報告する日だ。この業務は私が行ってきたが、今回から秘書方全員で行う業務となっている。その為、報告その物も藤吉郎殿を始めとした秘書方全員が出席の下に行う事になった。これも私が不在の時に困らぬようにする為の対策なのである。
ちなみに今回に限らず、今後も御本家から内政を学びにやってきた与力の方々も立ち会われるそうだ。
二郎様曰く『収支計算が出来なければ、御家が借金で潰れる事になる』との事。確かに仰る通りだ。これぐらいは理解して貰わなければ、手柄を挙げて領地を戴いても、遠くない内に放蕩三昧で御家を潰す事になるだろう。
「此度の収支だが、やはり減収が大きいな。国替えしてまだ間もない為だが、どうしても収入は落ちてしまう。これについては来年以降、上昇させていかねばならん」
「はい。二郎様の仰る通りであると存じます」
遠江時代に比べたら収入は減っている。だが人頭税や商人からの税収は、これから確実に上昇していくだろう。今後は能登の併呑、越中の所領増加、磁器や絹の本格的な出荷開始も待っているのだ。先は明るい。苦しいのは今だけだ。
「それから今後の事を見据えると、長次郎に小田原と直江津の拠点の規模を大きくさせる必要が有る。諜報の拠点としても重要だが、長尾の関東征伐が始まれば、軍事物資は売り放題。ここで少し稼がせて貰おうか。後で計画案を練り上げる。忘れぬように、書き留めておいてくれ」
「はい、心得ました」
サラサラと手元に書き留めていく。
それにしても、富士屋も規模が大きくなった。甲斐時代は駿河、堺、小田原、津島の4店舗だけだったのだが、今は直江津と博多にも店を出している。
今の所、富士屋が現地の大名に潰された、という報告は来ていない。つまり富士屋の裏の顔については、まだバレてはいないという事だ。
「皆、何か質問はあるか?どんな問いでも構わんぞ」
「では某から。木曽義昌に御座います。まず古参兵手当、というのは如何なる物なので御座いましょうか?」
「一言で言えば、戦を生き抜いてきた者達に支払われる、特別な俸禄と考えれば良い。本来なら上に出世させてやりたいのだが、そうもいかない事情が出来てしまってな。だがそのまま放置しては不満が募る。それを補う為の政策よ」
二郎様が行われた軍制改革の一環として、出陣して5回生き延びれば昇格できる、という規則がある。常備兵であれば、他国の戦のない領国の常備兵と入れ替えたりして調整も出来るのだが、二郎様の直属六部隊だけはそうもいかないのだ。
確かにこれまでも、討ち死や他部署への異動や栄転、戦傷による退役、新たな生活を送る為の退役。或いは純粋な増員計画に伴う新兵補充が行われてきた。
重要なのは、直属部隊の死傷者が少ない点だ。二郎様は御味方の犠牲を極力減らす戦い方を常としている。その良い例が西三河動乱の際の攻め手。突撃もせず、種子島も封じて、弓矢と焙烙筒を主力として混乱を発生。門徒を撤退に追い込んだというやり方だ。
このような戦いを繰り返してきた結果が、戦慣れした兵の大量雇用。それが加賀武田家の強味であると同時に、矛盾を生み出してしまったのだ。
5回出陣したら昇格という規則を文字通り適用すると、最下級の足軽である小物が半減し、すぐ上の小物頭とさらに上の物頭が激増という事態になる。
二郎様はこの事を『逆ぴらみっど』と評しておられた。ぴらみっど、とは何なのだろう。南蛮の言葉なのだろうか?
まあそんな事はどうでも良い。
これが基本的に戦死のない林部隊や陰部隊となれば猶更、その傾向は顕著になる。
その為、役職は小物頭なのに小物の立場に甘んじています、というような者達が出てきてしまったのだ。そういった者達の不満を宥める為、実際に昇格するまでの間まで支払われる特別手当が古参兵手当であり、物頭までが適用範囲となっている。
この額が異様に大きいのは、生き延びている古参兵の多さの証明でもあるのだ。いかに二郎様が有利な状況下で戦を続けてきたか、その苦労が偲ばれる。
それが結果として、二郎様の指揮下での戦死者の少なさ、褒美の多さを流布する事になり、更なる新兵希望者の増加へと繋がっているのだ。
「次は某が。富士屋は5隻体制と言う事で御座いますが、もっと増やして収入を確保する事は難しいので御座いますか?」
「正直に言うとな、藤吉郎が申した通り、交易船は増やしたい。だがあまりやりすぎるとな、商人を敵に回す事になる。富士屋は駿河を本店としているが、武田と縁が深い事に気づいている者も、なかにはいるだろう。密告されると面倒くさい事になる。だからほどほどにしているのだ。まあそういう事態を防ぐ為に、膝元に富士屋が店を出すのを禁じているのだが」
そういう理由で御座いましたか、と藤吉郎殿が納得された。それに富士屋は本来、情報収集の拠点運営が主要なのだ。万が一、直江津や堺を閉鎖されると厄介な事になる。
膝元に店を出す事を禁じているのは、武田家、正確には加賀武田家との繋がりを追求された際に、白を切る為だ。
『本当に繋がりが有るのなら、膝元に店を出すのが当たり前だ。それが便利だからな。そうなっていない、という事は繋がりが無いという事だ』
幸い、この言い分が使われた事は一度も無い。今後も使わずに済む事を願うばかりだ。
「収支については、もうしばらくの辛抱だ。税収は言うまでも無いが、磁器や絹、漆器に酒、玻璃に塩も取引が増えつつある。遣り繰りは十分可能だ。俺を信じてついて来てくれた者達を食わせてやる為にも、放逐するような真似は絶対にせん」
「その言葉を聞けば、兵達も信じて良かった、と思うでしょう」
「ゆきの申す通りだな。その為にも、ここを乗り切るのだ」
表向きの石高で言えば加賀は約30万石、越中の一部で4万石。合計34万石だ。この石高で動員できる百姓兵は通常なら9000から10000人。加賀武田家は常備兵8000に火部隊4000だけでも合計12000。表石高以上に兵の数はいるのである。
「あとは領民だな。加賀は開墾すれば、幾らでも土地を確保できる。問題は民だ」
二郎様曰く『土地余りを何とかしないとな』との事。土地を十分に活用する為の領民が少なすぎるという事だ。
二郎様によれば、加賀国は新田開発を行えば余裕で50万石を超える、能登と越中も得られれば120万石も夢ではないとの事。それが事実だとすれば、二郎様が加賀を領するまでは30万石しか使っていなかったことになる。その差20万石を藤吉郎殿が一生懸命開拓しているのだ。それでは領民が足りなくて当たり前なのだ。
仕方がないので、二郎様は三好や北条、長尾や毛利、大友相手に戦争捕虜を売ってくれないか?と頼んでいるそうだ。この頼みは割と好評で、昨年は500名ほどが加賀へと売られてきて、新生活を始めている。
彼等も最初は絶望のどん底にいるのだが、面白いもので一月も経つと大半が立ち直っている。理由は単純で『税が安い』からだそうだ。故郷へ帰っても五公五民。それなら加賀で暮らしたい、となるのだ。
更に今後は蝦夷との交易で酒田湊、能代湊にも補給を兼ねて立ち寄る為、大宝寺家や安東家にも戦争捕虜を売って貰えるように、頼むそうである。
奥州は小競り合いが多い為、両家としても乗り気になってくれるだろう。その上、武田家との繋がりが出来るという旨味も有るのだから。
人を売買する。少し複雑ではあるが、多産を奨励しても子供はすぐに成長しない。だから仕方ないと割り切って考えるようにしている。
「藤吉郎、其方からの報告等はあるか?」
「予想よりも塩の生産量が少のう御座います。冬は降雪の為に、どうしても生産量がかなり落ちます。硝石の生産も考えると、塩作りは冬も続けたく御座いますが」
「それは俺の考えが甘かったせいだな。藤吉郎は悪くはない。そうなると海沿いの村々に冬用の産業を新たに提示する必要が出てきそうだな。製塩の為には炭は不可欠。ならば炭焼き小屋もあろう。春から秋にかけて炭にする植物を栽培しておいて、冬場はそれを炭にする。炭焼きの排熱は塩田に回して熱の供給率を上げる事も可能だな。多少は製塩の効率も上がろう。同時にそちらでも硝石を作れば……いや、待てよ?炭、炭……」
二郎様は何か考えこまれた。ひたすら炭、と呟かれている。
こういう時は邪魔をしてはならない。私がそっと口の前に人差し指を立てると、藤吉郎殿を始めとして、越前から来られた与力の方々も真面目な顔で頷かれた。
「誰か、文を書くときに用いる墨の価格について分かる者はおるか?いなければ早急に調べてくれ。可能であれば、1つ当りの価格も知りたい所だ。それと城下町の神屋の責任者へ使いを出せ。俺が墨は売り物に出来るか確認したいと言っていた、とな」
「二郎様、もしかして墨を作るのですか?」
「そうだ。墨は煤を集めて膠で固めた物だがな。少し前から興福寺でも作られている。燈明の煤を集めた物から作ったそうだ。ならば武田には油が大量にあるだろう?」
そうか!と藤吉郎殿がポンと手を打った。一方で数名がバタバタと動き出す。
それにしても、塩作りから墨作りとは、欠片ほどにも予想できなかった。
「まずは安価で大量生産が可能な、入手しやすい墨を作る。高級品は後回しだ。そもそも墨の作成技術が皆無に近いからな。生産地から職人を連れてこなければならんだろう。それと墨は高級品が基本だった筈だ。藤吉郎、其方書類を作る時、墨で文字を書くな?だが絵師のように色合いや光沢に拘りを求めるか?」
「いえ、必要御座いませぬ。書きやすければ有難いとは思いますが」
「であろう?ならば美しさを敢えて無意味とした安い墨を売り出すのも手であろう。どこの国も銭には限りがある。墨とて安く済むならそれに越したことは無い。十分に商機はあると見るがな」
半刻ほど色々と検討していると、バタバタと駆け足の音が聞こえてきた。誰だろうかと廊下を覗いてみると、そこには顔馴染みの神屋紹策殿が姿を見せていた。
「神屋殿では御座いませぬか」
「御無沙汰しております。本当は使者を出してから新年の御挨拶を、と思っていたのですが、墨の件で話を伺いまして、これはすぐに伺うべきだろうと判断致しました」
「こちらとしても有難い事。どうぞ中へ」
神屋殿からの話は有益な物であった。やはり墨は価格が高い事。これは生産量が少ない事が原因である、と。特に質の良い物は完成までに一年近くかかる事もあるというのだ。また松の木を燃やした煤を集めて作る松煙墨が主流でもあり、油を燃やした煤を集めて作る油煙墨は油が貴重なために数も少ない、という事も聞く事が出来た。
「神屋、ここで安価な墨を作ったら、売り捌けるか?」
「是非とも、手前に売らせてください!必ずやご期待に応えましょう!」
「よし、ならば油煙墨の製作が出来る者が必要になる。連れてこられるか?俸禄として年1000貫文を約束する。その者に村の冬の仕事として提供させよう。その後は高級品製作の為に、技術研究も行わせるか。いずれは松煙墨も作れば、十分に民を潤す事が出来る」
他に必要な材料である膠は動物の骨や皮が必要だ。だがこれも問題はない。普段から常備兵には害獣駆除を命じているし、孤児の育成施設では鶏を育てている。墨を作る為の膠程度なら十分に賄える。
神屋殿は新年の挨拶を遅ればせながらに済ませると、他の商談の報告を済ませてすぐに退去された。早速、油煙墨の職人の手配に向かってくれたのだろう。
「次に玻璃の件で御座います。レンズの作成は出来るようになりましたが、未だに玻璃の筒は歪みが御座います。試行錯誤を繰り返してはおりますが」
「まあ仕方あるまい。だがきれいな筒に出来れば、熱い内に切り開いて板にする事も出来るだろう。そうすれば冬の養蚕にも利用が出来る。担当者には焦る事無く進めるように伝えてくれ」
『心得ました』と藤吉郎殿が頭を下げられた。
玻璃の小屋の中で、排熱を通した筒を熱源として冬場の養蚕を行う。その為には、どうしても玻璃の板が必要になる。
それにしても、二郎様はよくこんな事を思いつかれたものだ。最初の頃は、皆が『さすがに無理では?』と思われていたようだが、実現まであともう少しの所まで来てしまった。完成した日には、きっと家臣の方々も驚かれるだろう。
「他はどうだ?」
「磁器は最後の追い込みに入っております。明から来た職人も、この分なら今年中には必要な技術を教え終る事が出来ると申しておるそうです。しかしながら、この職人が出来れば加賀へ永住したいと申しておるのですが、いかが致しますか?」
「こちらとしては構わないが、理由を聞いておるか?」
「明は将来が不安だ、との事に御座います」
二郎様が『やはりそうか』と呟かれた。以前から、明はいずれ危うくなると口にされていた。その考えが正しかったことを、明の人間が証明してくれた事になる。
「藤吉郎、その者に伝えてやれ。家族も呼び寄せて構わぬ、と。職が必要なら、こちらで手配してやる事も出来る。日ノ本の言語を身につければ、彼らは貴重な通詞になるだろうしな」
「確かにその通りで御座いますな。本日中に伝えます」
「頼むぞ。あとは絹に漆器、酒だな」
酒は問題なし、澄酒も焼酎も大量生産が始まっている。今後も醸造を生業とする者達が増えていくだろう。絹は染め物の技術と生糸の質の向上を、漆器は基礎技術を向上中との事だ。
「内政面は以上だな。進展もまずまずだ。今後も着実に進めていく。次は軍事面の報告だが」
「はい。月が明けましたら、柴田殿・孫次郎(小畠昌盛)様を主力とした常備兵7000による越中攻めが開始されます。予定通り兄が占領拠点の確保に回り、明智殿が柴田殿の代役として能登方面の守りに入ります。兵糧の確保、輸送計画も万全であると補給担当者である前田殿から報告が上がっております」
「肝心の越中の状況は?」
「問題御座いませぬ。20日ほど前に越中一向一揆勢の主要拠点である安養寺御坊と瑞泉寺、勝興寺の三ヶ所の兵糧を焼き払う事に成功したと報告を受けております。安養寺御坊の以前の拠点であった高木御坊、土山御坊は昨年の一揆鎮圧の際に明智殿が制圧済に御座います」
二郎様が頷かれた。今頃、慌てて兵糧の補充に取り掛かっているだろうが、それは手遅れだ。何のために昨年の内に、越中の米を買い占めておいたのか。一向衆はその時になって、初めて理解するだろう。
全て今荀彧の掌の上で踊らされていたのだ、と。
「能登の状況は?」
「武田に服属を望む国人衆の使者が来ております。また加賀にいる能登畠山家から追放された温井・三宅の両名も祖父の仇を討ちたい、との事。大義名分には使えますが、問題はその祖父が専横を極めていたという点に御座います。また当主の御正室は、六角承禎入道(六角義賢)殿の娘でも御座います」
「現在は当主が実権を握っているが、数年前までは重臣である畠山七人衆による合議制であった筈。ならば旧来の七人衆には、それなりに不満があってもおかしくない。加えて民の流出、武田家という強大な隣国出現に悩むのも当然の事。つけ入る隙はある。温井と三宅に流言工作を行わせて、内乱を誘発させるか。このままでいいのか?武田に対して手を打たずに良いのか?とな」
正直、攻め入りたい所だろうが、六角家の存在が響く。
特に承禎入道殿の存在は大きい。一月に隠居して右衛門督(六角義治)に当主の座を譲ったそうだが、それでも未だに後見人として絶大な権力を有しておられる。
文の遣り取りも健在であり、二郎様としても武田家側から手切れを申し出るつもりはないらしい。その為にも、御正室に被害が及ぶことを避けられたいのだろう。
「ゆき、武田に服属したいという能登の国人衆だが、どの辺りにいる者達で、どれぐらいの兵力になるかは分かるか?」
「場所は能登と加賀の国境付近の者達に御座います。兵力はおおよそですが、全て集めても1000に届かぬと思われます」
「能登はおおよそ30万石、動員兵力は9000といった所か。直轄地で半分として考えれば、まあ妥当な数字か」
顎に手を当て考え込まれる二郎様。やがて何か思いつかれたのか、私に声を掛けられた。
「武田に服属を希望している能登国人衆に、関の撤廃と、租税方式変更の為に、油菜・木綿による現金収入のやり方への移行を進めさせるんだ。つまり武田と同じ方式を取らせろ。七尾城の連中が『奴らは武田に恭順した』と考えてもおかしくないようにな」
「心得ました。直ちに伝えます」
「畠山が武田を恐れて警戒すれば、家臣は不満を覚えるだろう。結果、内部の不和が強まる。畠山が国人衆を裏切り者として制裁すれば、武田が能登へ介入する大義名分としても利用できる。油は行商人に偽装させた風に買い取らせて、加賀へ持ってこさせる」
その時、藤吉郎殿が手を挙げられた。
「加賀守様。失礼な事かもしれませぬが、確認をお許しください。加賀守様は神保家に対して、どのように御対応されていかれる御つもりで御座いましょうか?」
「別に失礼では無いが、気になるか。そうだな、使えるなら使うが、邪魔なら排除する。本音を言うとな、越中は全て領土としたいのが本音だからだ。理想としては越中東部の宮崎城を拠点に、一里ほど東にある境川を対越後の戦場としたい。だが宮崎城は椎名氏の支配下であり、長尾も愚かではない。分かるな?長尾も川を渡ろうとすれば、被害が甚大になるのは理解しておるのだ。だからこそ、椎名を渡河の時間稼ぎの為に受け入れている」
椎名氏の存在自体が、長尾の渡河における安全性を保証してくれるという事か。
「長尾は強い。決して軽々しく当たってはならん。出来る限り、当たるのは遅らせる。勝率を少しでも上げる為に、な。その為に、今はやれる事をやるだけだ。まずは風に励んでもらう」
「何をお考えになられたのですか?」
「長尾の戦い方を研究するのだ。俺が北条長綱殿に話を通す。長尾の関東侵攻において、武田は公方の手前、堂々と北条家に御味方できぬ。故に、詫びの代わりとして小田原へ兵糧の提供と、諜報を手伝わせていただく、と申し入れるのだ。武田の手の者に長尾の侵攻状況などを調べさせる。そちらの風魔衆を必要に応じて武田の者に接触させてほしい、とな」
裏から手伝い、か。けれど北条が受け入れてくれるのだろうか?
「不要なら、無視して頂いて構わない。ただ人手は多いに越した事は無い筈。まあそんな所か。武田としては誠意をもって裏方として手伝うのだ。代わりに、長尾景虎という戦の天才の手の内を研究させて貰う」
「受け入れて頂きたいもので御座いますな」
「まあな。だからこそ最前線での諜報と言う危険な役目を行わねばならん。今回、長次郎(風祭為好)には最前線での責任者を、重元(竹中重元)は集めた情報を利用して差配の研究に務めて貰う事になる。死んでしまってはならぬが、なるべく調べて貰いたい。後は長尾の忍び、確か軒猿と言ったか。奴らの目を逸らす為にも、陽動を行うべきであろうな。商人を通じて、椎名領で噂を流すか。神保家が武田に甲斐の黒駒の販売を願っている、と。どこを相手にしようとしているのかは言わずとも良い。長尾景虎は一切、気にしないだろうな。俺が今の状態で長尾相手に攻めかかるほど、愚かでは無いと理解しているからだ。だが慎重な者達がいれば、念の為に調べるぐらいはするだろう。結果として、軒猿が幾らか割かれる事になる」
長尾景虎。あの二郎様が、今まで見た事が無いほどに警戒される相手。それほどまでに恐ろしい相手、という事だろうか。
確かに戦の天才として、噂はよく聞くのだが。
「それから加賀守様。現在、牢へ入れている杉谷で御座いますが」
「俺もまだ思惑が読めておらん。幾つか考えられる事はあるがな。故に現状維持を続けよ。俺は明日に城を出るが、五月前には戻ってくる。その時に処遇を決断する。では誰か、長次郎と重元を呼んでくれ」
今回もお読み下さり、ありがとう御座います。
【収支報告】
年間の予算計画。甲斐時代にも一度やったので、今回は大幅に削りました。詳細を知りたい方は補足資料其の四をご覧ください。
あとは木曽義昌を始めとするチャレンジャー達の第一歩目というべき教育を兼ねてます。まずはお小遣い帳から、みたいな感覚ですねw
【富士屋拠点】
対軍神を睨んで、直江津と小田原にも拠点新設。関東征伐での物資販売の拠点も兼ねての処置です。
【古参兵手当】
これは生き残りが多くなった為の臨時処置です。常備兵なら『栄転』とかの理由で上手い事入れ替える事も可能ですが、直属六部隊は違います。
主人公にどこまでもついてきます!な連中が半分以上を占めているので、栄転とか聞き入れやしねえwそうなると主人公としても『なんか報いてやりたいなあ』とも思うし、他の出世できない連中(孤児出身者以外)の不満も分かる。ならいっそ、纏めて解決するか!で思いつきました。
予算的には俸禄が倍になってる感じです。あとはまあステータスみたいな感じ。歴戦の猛者扱いされるでしょうから。
【交易船】
主に米の売買などに使われているのが5隻。これに今年から、蝦夷との交易が年に1回追加されるようになります。
【膝元に富士屋が無かった】
これは追及された際の言い訳の為です。不便ですが、万が一を考えると仕方ないだろう、と言う感じ。甲斐・遠江・加賀、全て富士屋が無い国です。あと越前もw
【領民】
欲しいのは働き手。なので戦争捕虜を買ってきて『田畑プレゼントするから、ここで暮らせばよいよ。奴隷じゃなくて、普通の領民ね?税は1年で1人1貫文、労役は無し。頼むときは報酬を約束するから』みたいな感じで領民を増やしてます。
ゆきは少々複雑みたいですw
【塩が……】
冬の生産量減少は仕方ないですね。これは主人公の考えが甘かったからです。
ですが竈の熱で硝石作りとか、養蚕の熱源とかも兼ねているので、生産をストップする事はありません。塩は保存食作りにも重要ですから。
【墨】
新たな産業思い付き。一言で言えば煤を油で練った物が墨。これって手が使えれば誰でも出来るので、アルバイト感覚で仕事をしたり、戦で歩けなくなった人達に仕事として提供したりと、汎用性が高いですね。特に子供なんかは喜んでこねくり回していそうです。
【玻璃板作り】
初期のガラス板製造方法です。ガラス筒を切り開く。
ここからビニールハウスのガラス版建造に繋げていきます。
四隅を木の柱、北面を木の板及び出入り口。冬場だけ東・西・南をガラス板で覆って採光。ガラス板自体は急勾配に設置して、積雪対策。
【越中一向衆】
カウントダウン開始状態。安養寺御坊・瑞泉寺は昨年に明智さんが落としましたが、わざと放棄して加賀へ帰っておりました。
取り返して『二度と奪わせないぞ!』と石山からの援軍も入れて……アンギャー!という状態になっております。
【能登】
能登攻めも準備中。今は種まきの段階です。その為に流言工作仕掛けたり、国人衆に武田のやり方を教えたりしてます。
【神保と椎名】
本音を言えば邪魔だけど、という所。椎名は長尾にとっての盾。出来れば潰したいけど、今は出来ないしなあ、という感じです。
【関東征伐への干渉・長尾(軍神)の戦い方研究】
主人公は北条家側に、裏で手を貸します。その為に幻庵さんへ接触を試みます。情報は大きなアドバンテージになりますからね。
その為に風(長次郎)と竹中重元が動きます。
【杉谷さん】
もう暫くお待ちください。主人公的には優先順位があるからです。




