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加賀国編・第四話

 加賀国編・第四話更新します。


 今回は杉谷さん視点での流れになります。内政はちょっとお休み。

永禄二年(1559年)十月、加賀国、金沢城城下町、杉谷善住坊―



 雪が降りだすよりも早く、俺は加賀へ到着する事が出来た。

 これも馬が頑張ってくれたお陰だ。本当に有難いと言える。

 何よりも有難かったのは、加賀国には未だに一向宗の寺院が存在していた事だ。


 『あの盲の仏敵は、我等を馬鹿にしておるのです!我等など、敵ではない。大したことは無い、そのように考えておるのでしょう。何と腹立たしい!あの盲、さっさと地獄に落ちるべきなのだ!御仏よ!どうか第六天魔王に仏罰を!』

 宿代わりに使わせてもらっている寺の住職の言葉だ。

 まあ住職の言いたい事は良く分かる。

 あの『皆殺し』の信親が『殺す価値も無い』とばかりに歯牙にも掛けない。それは屈辱だろうな。

 ただ寺に来る門徒がいないのも事実。確かに敵視されていないのだろう。

 敵対勢力になり得ない。そう思われているのだ。


 「さて、まずは敵情視察といこうか」

 まずは金沢城と名を改めた尾山御坊を見に行く。住職によれば加賀守は尾山御坊を修理だけして使っているのだそうだ。

 どうも城を建てる気は欠片も無いらしい。

 

 「珍しい武士だな。偉くなったら居城を建てて威張りくさる物だと思っていたのだが」

 さすがに一向宗の坊主のフリはどうかと思ったので、旅の途中の坊主のフリをする事にした。宗派は浄土真宗。まあフリぐらいは余裕でできる。

 強行軍で薄汚れた旅装のまま、堂々と金沢城へと向かってみた。途中、加賀武田家の常備兵と何度も擦れ違ったが、疑われたりする事も無く城門前まで辿り着いた。


 「ここは加賀武田家の居城だ。どこの坊さんかは知らないが、用事が無ければ帰ってくれ」

 「拙僧は旅の坊主でな。ここは話に聞いた尾山御坊ではないのかな?」

 「旅の坊さんか、それなら知らなくても仕方ないかもしれんな。暫く前、といっても夏頃に武田加賀守信親様によって尾山御坊は陥落した。以来、加賀武田家の居城として、ここは使われているんだ」

 まだ年若く、あまり戦い慣れていないように思える二人組の門兵は、居丈高になる事も無く、笑いながら対応してくれた。

 こちらが坊主と知っても、決して威張り散らさないとは。少し、驚いたぞ。


 「それにしても面白い。拙僧も旅をしてそれなりになるが、こういう時にはぞんざいに扱われた物だ。酷い時には槍を構えられた事もある。これはどういう事なのかな?」

 「まあ俺達は元を辿れば貧しい百姓の出だ。学だって碌にねえ。それでも主の加賀守様は俺達みたいな小物でも、威張る事無く声を掛けてくれる。そのせいかね、俺達も威張っちゃいけねえよな、って仲間同士で話すようになったんだ」

 「ほう?大した御方のようだな。こちらの城主様は」

 なるほどねえ。威張り散らすような事はせんのか。謙虚な男という事だな。

 実績を踏まえれば、確かに人望が高いのも頷けるわ。

 そのせいで、お偉いさんに疎まれた、という所かね。まあ俺には関係ないが。


 「どんな御方なのか、後学の為に教えてくれるかな?」

 「そうだな。まず気前が良いな。俺達二人揃って食い詰めていてな、もう賊にでもなるかと考えていた時に、常備兵の募集を聞いて飛び込んだんだ。とりあえず飯だけ食わせて貰って、適当な所で逃げ出すか、ってな」

 おいおい。あの皆殺しの信親相手に、そんな事を考えたのかよ、この二人組は。

 正直いって驚いたぞ。


 「で、小物として召し抱えて貰った訳だ。ただな、小物なんて俸禄を貰ってもたかがしれているのは坊さんだって知ってるだろう?」

 「確か、年に一貫文を超えるぐらいだったかな?」

 「そうそう。そんなもんだ。でもな、加賀では違ったんだよ。年に五貫文も貰えるんだ。それだけじゃない。毎日働くなり、訓練なりすれば中食もしっかり出るんだ。玄米、味噌汁、漬物。それに加えて一品な」

 「さすがに牛の乳は我慢して飲んだけどな」

 門兵二人が顔を見合わせながら笑い合う。

 だが、俺は信じられなかった。

 高い俸禄に中食つき?嘘だろう?とも思ったが、すぐにその疑念は捨てた。

 こいつらが嘘を吐いているようには見えないからだ。

 

 「信じられん程に気前が良いのだな。こちらの城主様は」

 「だろう?お陰で俺達も脱走なんて考え、捨てちまったんだ。確かに戦になれば出陣しないといけない。それは怖いさ。でも上役の古参兵に言わせれば、加賀武田家は戦死者が一番少ない事でも有名なんだそうだ。だったら、ここは踏ん張るのも手だとは思わねえか?」

 「なるほどのう。確かに其方の申す通りだ」

 他家に比べれば、かなり分の良い賭けだと言えるな。

 もし俺が食い詰めた百姓だったら……兵になろうと考えたかもしれない。実際、かなり恵まれた条件だ。これだけ待遇が良ければ、賊になるより兵になる方が得だろう。


 「あとは人柄かねえ。俺達の上役は加賀守様がまだ元服前の頃から付き従ってきた古参兵の一人なんだ。その人が言うには、加賀守様は分け隔てしない優しい人だ。人買いに売られた自分を買い戻して、侍に取り立ててくれた程の御方だ、と言っていたな」

 「ああ、酒が入ると良く話してくれるよな。そうなると周りも昔話始めだすんだよ。お陰で耳にタコが出来ちまった。あの同じ内容の昔話、たった三日で覚えちまったよ」

 「そうそう、何であんな楽しそうに話すんだかな?孤児を集めた屋敷に賊が忍び込んできた時、仕掛けておいた落とし穴に落とした話だよ。もう驚くのを通り越して恐くなったぞ?落とし穴の中へ松明放り込んで焼き殺そうとしたり、野良犬放り込んで嗾けたりとか」

 「しかも、それ全部、加賀守様の発案って言うのがな」

 とんでもねえガキがいたもんだな。どう考えても、二度と襲うとは思わんだろうな、賊共も。まあ生きて帰れたとも思えねえが。

 しかし、話が逸れちまっているな。人柄については、もう少し聞いておきたいんだが。

 そこに暗殺の隙があるかもしれんからな。


 「其方達の上役は、どうも城主様の事が好ましいようだな」

 「それは間違いねえ!同じ稗の雑炊食ったり、寒い冬の日に皆で団子みたいに固まって温め合いながら眠ったり、甲斐の頃には色々やった、って言っていたな」

 「そうそう、本当に楽しそうに話すんだよな。家族に捨てられたガキに、共に生きようと声を掛けてくれた。あの時程、嬉しかったことは無かった、って言っていたな。加賀守様は間違いなく、お優しい御方なんだろうな。敵対さえしなければ、という条件があるけどな」

 それは間違いないな。敵に対しては冷酷非情、暴君、無慈悲等々。表現する言葉は幾らでもある。一方で味方に対しては慈悲深いのだろう。

 しかも有能とくれば、家臣や領民が付き従うのも当然だ。支配者として、此程の実力者はそうそうおらん。

 

 「あとは真面目な御方でもあるよな。加賀守様は。ちょくちょく、町の様子を伺いに足を伸ばされるんだ。お陰で城下町で、加賀守様の顔を知らない者はいない程だ。どうしても解決できない困った事があれば、相談すれば知恵を貸してくれると有名だしな」

 「確か、以前にそれを悪用した馬鹿がいただろ」

 「ああ、いたいた。確か加賀一向衆の残党だったな。その場で加賀守様に打ち倒されたと聞いたぞ?盲だから弱いだろう。そんな事を考えて真正面から生け捕りにしようとしたらしいな」

 そんな事が有ったのか。だが、これは重要そうだ。

 特に護衛に関する情報が手に入りそうじゃないか!


 「城主様は御強いのかな?盲と言っておったが」

 「何でも太刀の振り下ろしだけは、幼い頃から鍛錬を積んでいたそうでな。咄嗟に右腕を太刀に見立てて、声を頼りに右腕を叩きつけたそうだ。馬鹿は鎖骨を折られて悶絶。そこを護衛が取り押さえたと聞いたな。ただ加賀守様も右腕押さえて悶絶していたそうだが」

 「そりゃあ痛いだろうさ。自分の右腕叩きつけて、鎖骨を叩き折ったんだぞ?まあ流石に加賀守様も思う所が有ったのか、護衛の配置とかを変えたりしたそうだが」

 「町に出る時は籠手だけ着けるようになったとも聞いたぞ?あんな痛いのは御免だ、ってぼやかれていたそうだが」

 まあ籠手云々は別として、護衛に関しては当然か。恐らく、話を聞く際には距離を取って、間に護衛の武士を挟むとか、そんな所だろう。

 となると、種子島は割と狙い目かもしれんな。

 できれば、もっと詳しく聞きたいのだが。


 「そんな事があったのでは、城主様をお守りする方も大変だろうな」

 「それは間違いないな。加賀守様が町に出るときは、お偉いさんが殺気立っているからな。二度とあんな真似を許すな!って。筆頭家老の小畠様が、物凄い怖いんだよ」

 「最低でも二百は町中に伏せられてるよな。町の連中のフリとかして」

 これは城下町での狙撃は無駄に終わりそうだな。種子島を取り出した瞬間に、伏兵に斬り捨てられてもおかしくない。

 まず狙撃をするならお忍び中は無理だと理解出来た。これは良い情報だったな。


 「しかし、そんな事があったのでは城主様も大変だろうな。町の者達の悩みを解決したりするのは御立派ではあるが、同時に城主様も息抜きも兼ねておったのかもしれんしな」

 「やっぱり坊さんもそう思うか。俺もそう思ったんだよ」

 「ひょっとして、最近、昼過ぎになると加賀守様が陽に当たりながら昼寝をしていると聞いたが、そのせいだったのかもしれんな。あの真面目な加賀守様が昼寝なんて、と思っていたんだが」

 「おいおい、割と有名な話だぞ」

 昼過ぎに陽に当たりながら昼寝をしている、か。となると南側から北側を見るように眺めれば、加賀守の昼寝を発見できるかもしれんな。

 これは覚えておいた方が良いな。もしかしたら使えるかもしれん。

 

 その後、当たり障りのない話をしてから門前を辞した俺は、城下町を眺めながら宿泊場所の寺に戻る事にした。

 その途中で思った事は、金沢は栄えているという事だ。

 とにかく人が多い、売買されている品も種類が豊富、量も多い。

 間違いなく、加賀守の有能さによる恩恵であろう。

 此程の賑わい、俺は石山の門前町や堺ぐらいでしか見た事が無い。


 今晩の酒の肴を買い求めながら、俺は寺へと向かう。

 寺は町の喧騒とは無縁だと言わんばかりに静まり返っている。

 話によれば、門徒達に見限られたと聞いてはいたが。越前朝倉攻めを暴走した加賀一向衆が行ったが、石山の法主様がそれを止めさせた。だがその後で朝倉勢が加賀へ攻め込んできた為、門徒達には『それ見た事か』と呆れられた、と。


 更にその後に武田家が攻め込み、尾山御坊は陥落。

 その上、加賀に流れた噂話だ。

 『念仏を唱えれば救われるというのなら、既に民は救われている。坊主は最早、必要ないだろう。高い年貢を払ってまで坊主が必要なのか?』という加賀守の言葉だ。

 これが決定的なトドメとなったらしい。


 まさかとは思うが、この一連の流れ。全て加賀守が噛んでいるという可能性は無いだろうか?少なくとも否定できる要素は無いように思える。

 加賀一向衆の暴走は『石山の法主様からの文に従ったまでだ』というのが、尾山御坊からの言い訳であった。勿論、法主様はそれを否定されていた。

 自分は最初から戦うな、という文を送っていた、と。


 もし両者の言い分が真実だと仮定すれば、それを成立させるのは『偽書』だろう。

 そうすれば言い分の矛盾にも筋が通ってしまう。

 ……武田に忍びがいるのは有名な話だ。


 越前朝倉家を追い掛けて、加賀守が尾山御坊を陥落させた事も疑問を感じる。

 どうして加賀守は『越前支配』を優先させなかった?

 越前支配を途中にしたまま、加賀国へ乗り込む。

 何故、そんな危ない考えに至った?仮にも『今荀彧』と謳われる知恵者だぞ?

 ハッキリ言って違和感しか感じられん。


 背筋に冷える物を感じながら、俺は寺の門を潜った。

 そのまま借りている部屋へ向かおうとすると、住職に呼び止められる。


 「何かあったのか?」

 「ここでは。ついてきて戴きたい」

 案内された先は、住職の私室のようであった。

 何冊かの書籍に文机。それしか置かれていない、四畳半ほどの部屋である。


 「杉谷殿。そこもとは種子島を扱うと聞いておったが、腕前は如何程だろうか?例えばだが、人の頭を撃ちぬくとして、どれ程の距離なら可能だろうか?」

 「確実を期するなら……六丈(約18m)だな。それがどうした?」

 「三倍は難しいか。盲の若造を狙える場所があるのだ」

 ほう?それは気になる情報ではあるな。

 だが、三倍の距離、となるとな。

 まあ話だけでも聞かせて貰おうか。


 「杉谷殿は、あの盲が最近、陽に当たりながら昼寝をしている、という噂を聞いた事があるかな?」

 「今日、聞いたばかりだ。城の門兵も知っていたようだな」

 「ならば話が早い。ある廃寺から、盲の若造を確認できるというのだ。ただ距離は十八丈も離れている。それだけが問題だ」

 廃寺、ねえ。だが、狙うなら最適かもしれんな。

 一撃必殺を期するなら、確かに頭部を狙うのは定石だ。

 だが、時間を掛けても良いのなら、他にも方法はある。

 弾にわざと深い傷を付けて、糞便と鉄錆びを詰め込むのだ。そうすれば、弾を取り除いたとしても糞便と錆が体内に残る。即死は無理でも、年が明けるまでにはそりの病(破傷風)で命を落とすのは間違いない。


 「住職。明日、直接下見を行う。可能そうなら、一日掛けて準備を行う。その後に決行しよう」

 「分かった。どうか其方に御仏の加護が有らん事を」

 一応は坊主の俺が言うのは拙いのだろうが、仏様が殺しに手を貸すとは思えんのだがな。

 まあここで住職を不機嫌にさせても意味はない。

 それより、明日の下見だ。問題なければ、細工を行うとしようか。



永禄二年(1559年)十月、加賀国、金沢城城下町、杉谷善住坊―



 暗殺決行日になった。

 天候は晴れ。風はそよ風。無風とまではいかないが、贅沢は言うまい。十分過ぎる程に良い条件だ。

 俺自身が下見を行い、問題は無いと判断した。

 故に弾に細工を行い、この日を迎えたのである。


 「加賀守信親。お前に恨みは無いが、仕事は仕事だ」

 廃寺の梁。そこに梯子を使って昇る。腰を曲げながら移動を余儀なくされるが、蜘蛛の巣が無いだけマシだと思い直した。

そして腹ばいになる事で、壁のひび割れから外を覗けるのだ。その先には、城の縁側で転寝をしている加賀守の姿を確認できる。よくもまあ、こんな場所を発見出来た物だ。

 さすがに、こればかりは知恵者として名高い加賀守であっても、気付く事は出来ないだろう。


 撃つ前に最後の確認を行う。

 撃ったらすぐに逃走だ。その為に廃寺の境内に、馬を繋いでいる。種子島を片付けたら、脇目も降らずに堅田まで一気に駆け抜けるのだ。

 少なくとも、武田家領内でノンビリするような真似は出来ん。


 狭い梁の上。窮屈さに顔をしかめながら、狙いをつける。

 丁度良い感じで、銃身が壁板の割れ目に当たって、揺らぎを止めてくれた。

 本当に運が良いわ。


 別に一撃必殺の必要は無い。その為の小細工だ。極端な話、腕に命中でも構わないのだ。

 そう思うと、気が楽になった。これなら標的までの距離が十八丈(約50m)あっても、当てる事は出来るだろう。


 改めて狙いをつける。狙う先は胴体中央部。多少、弾が逸れても、体のどこかに命中はするだろう、という考えだ。

 狙うべき加賀守は、縁側で寝こけているのがよく分かる。


 引き金を引く。僅かに遅れて轟音。

 僅かだが、加賀守の体がビクンと跳ねた。

 命中だ!


 梁から飛び降り、種子島を手早くしまう。

 そのまま境内へ飛び出ると、馬の番をしてくれていた住職が声を掛けてきた。


 「首尾は!?」

 「成功だ!逃げるぞ!」

 「素晴らしい!やはり仏罰覿面だ!」

 何やら感極まっているらしい住職を置き去りにして、俺は馬を走らせた。

 城下町は騎乗禁止らしいが、そんな事は知った事ではない。

 俺は近江に向けて、一気に馬を走らせた。



永禄二年(1559年)十月、近江国、堅田、杉谷善住坊―



 「では、加賀守は死んだのだな?」

 「正確には、年明けまでには死ぬだろうよ。そりの病を発すれば、な」

 「なるほど。それなら助かる事はあるまい。分かった、後の事は任せて其方は石山へ帰還すると良い。それと武田の裏切り者に関しては、既に石山へ報告をしておいた。あとは石山の指示待ちよ」

 まあ妥当な判断だ。

 武田の裏切り者は、驚いた事に武田信玄の娘婿の父親、穴山とかいう奴だそうだ。まあ俺には関係のない話だ。あとは石山のお偉いさんが上手く利用するだろう。


 住職から丁銀が十個ほど入った袋を受け取り、俺は寺を出た。

 まるで冬の訪れを報せるような風が吹き抜けていくが、懐の重みがそれを忘れさせてくれる。


 住職は一晩ぐらい泊まっていけ、と言っていたのだが、俺は石山への帰還を優先した。

 最近、三好が怪しく感じるのだ。三好は公方様の下に就いたようだが、代わりに実権を握ったと専らの噂だ。

 となれば、公方様から石山へ檄文が飛ぶ事態も考えられる。

 ならば、俺はいつ、何が起こっても良いように石山の近くにいるべきなのだ。


 堅田から寺の用意した船を使い、一気に大津へ向かう。ここまで来れば、石山は目と鼻の先だ。数日の内には、石山へ朗報を届ける事が出来るだろう。

 雪が降る前に帰る事が出来て良かった。

 内心、ホッとしながら、俺はふと、加賀で感じた疑念を思い出していた。


 加賀一向衆による越前攻めから、武田家による加賀平定までの一連の流れが、加賀守の絵図面だったのかもしれない、という疑念だ。

 「まあ、今更だな」

 死体となってしまっては、どれほどの智謀の持ち主でも役には立たん。

 奴が三国志の諸葛孔明ほどの智者ならば、司馬仲達を走らせるかもしれんが。

 

 「だが、機会があれば問うてみたかったな」

 その機会は永遠に来ない。それが分かっていながら、俺はそう口に出していた。



永禄二年(1559年)十一月、越前国、一乗谷城城下町、穴山邸、穴山信友―



 「彦六郎(穴山信友)様。商人が文を届けて参りました」

 「うむ、貸すがよい」

 少し涼しさを感じる風と共に、楓が部屋に入ってくる。

 そして差し出された文を、儂は頷きながら受け取った。

 

 「その商人は何か申しておったか?」

 「いえ、特には」

 「そうか、下がってよいぞ」

 無邪気に笑う風丸を愛おしそうに抱きながら、楓は退室した。

 その足音が消えた事を確認して、儂は文に目を通す。

 そして、歓喜という感情を爆発させた!

 

 「やはり神仏はおわすのだ!君側の奸は排除されるべき定め!武田家は忠臣である、儂の手で天下を統べるのだ!」

 脇に置いていた澄酒を一気に呷る!此程に旨い美酒は飲んだことが無い!

 まずは京を奪い、三好の手中に落ちた公方様と主上を御救いするのだ!

 そして武田家を管領として任命して戴く。これにより武田家は足利の忠臣として歴史に名を遺す事が出来る!

 その絵図面を描いた儂の名は、後世にまで伝えられる事になるだろう!


 「そうだ!出羽守(小山田信有)殿と話をしなければ!楓!儂は小山田殿の屋敷に出掛けてくる!留守を頼むぞ!向こうに泊まるだろうから、先に寝ておるようにな!」

 「分かりました、でも風丸が顔を忘れないように、必ず明日には帰ってきて下さい」

 「うむ、そう言われては帰るしかないではないか。全く、其方は愛いのう。安心せい、明日の昼までには帰るのでな」

 さあ、今晩は祝宴だ!それと今後の事も考えねば!

 全く、忙し過ぎる。我ながら有能と言うのも考え物だわ!


 今回もお読み下さり、ありがとうございます。


 主人公、お休み回w色々な意味でグッスリ眠っているかもしれません。


 笑い話。残党を素手で迎撃。鎖骨を圧し折るが、こちらも痛みで悶絶w

 主人公、たまにポカやらかします。まあ今回は食事の違いにより、相手が弱っていた可能性があったので、相手だけが骨折したと考えて下さい。主人公、小魚と牛乳摂ってるし、体も鍛えているし、と有利な立場なので。

 でも籠手標準装備ってどこの無敵流だw


 今回の暗殺話。実行犯視点での話にしてみました。

 ただ知っている人も多いですが、種子島は狙撃銃としては向いていない、というのが現実です。

 これは弾の形状とか、ライフリングの有無とか、まあ色々ですね。破壊力は十分にあるんですけど。


 その辺りを考慮して、従来の種子島で50m狙撃をやらせるとしたら、どうすれば良いか?という事を考えてみました。

 結論は何処でも良いからとにかく命中させて、破傷風を誘発させる。

 

 糞便を利用した戦い方は確立されているので、理論上は出来るかな?と。

 あとは命中補正についてですが、これは次回に持ち越し。


 そしてチャレンジャー歓喜の瞬間!


 それではまた次回も宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 兵士と杉谷善住坊の掛け合いの場面、くどすぎる
[一言] 鉄砲は鉛中毒もあったみたいですし 射程圏内での威力は充分だったみたいですね 飛ばすだけなら100メートルちょい飛ぶから50メートルでも充分殺傷力はある ただまあ銃の作りで言うと ライフリン…
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