ババぬきしようよ
理恵ちゃんは、お友達の美紀ちゃんと真理ちゃんといっしょに、おうちでババぬきをすることにしました。
「ババぬきしましょ♪ ババぬきしましょ♪ トランプ配って、ババぬきしましょ♪」
三人は楽しそうに歌いながら、トランプを一枚ずつ配っていきます。
「それじゃあ最初は、理恵ちゃんからどうぞ♪」
美紀ちゃんにいわれて、理恵ちゃんは美紀ちゃんの持っているトランプと、じぃっとにらめっこ。いったいどれがババだろう?
「よし、これだ!」
理恵ちゃんは、一番右はしのカードを取りました。やった、クイーンは持ってる! ペアになったから場に捨てます。
「次は美紀ちゃん♪ さあどうぞ♪」
今度は真理ちゃんが、歌いながらトランプを美紀ちゃんに差し出します。
「どれかな、どれかな……よし、これだ!」
美紀ちゃんは、一番左はしのカードを取りました。残念、8は手札になかったよ。
「それじゃあ今度は真理ちゃんどうぞ♪」
今度は理恵ちゃんが、真理ちゃんに手に持ったトランプを差し出します。
「どれだろ、どれだろ、じゃあこれだ!」
真理ちゃんは、真ん中のカードを取りました。やった、4は手札にあります。ペアになったから場に捨てます。
「いったい誰がババを持っているのかしら?」
理恵ちゃんが首をかしげます。真理ちゃんと美紀ちゃんも、みんな相手の持ってるトランプを、じろじろ、じろじろ、お互いの顔も、じろじろ、じろじろ。
「わかんないなぁ。いったい誰だろう?」
三人は、一枚ずつカードを引いて、ペアになったら大喜び。ペアにならなかったらがっかりして、持っているカードもどんどん少なくなっていきます。ですが……。
「あれれ、わたしあがりだ」
美紀ちゃんが真理ちゃんからカードを引いて、7のペアを捨ててあがってしまいました。残った二人、理恵ちゃんと真理ちゃんは大あわてです。お互いの顔を、じろじろ、じろじろ。
「じゃあ、真理ちゃんがババを持っているのね?」
「うそつき、わたしは持ってないから、理恵ちゃんが持っているんでしょ?」
「えっ、わたしはババ持ってないよ」
「わたしも持ってないもん」
「うそつき!」
「うそつき!」
理恵ちゃんと真理ちゃんが、お互いの顔をにらみつけます。ケンカになりそうな二人を、美紀ちゃんはおろおろしながら見ています。
「ねぇねぇ、いったいどっちがババを持ってるの?」
美紀ちゃんが、二人のカードを見ようとしますが、二人は見せてくれません。
「だめっ、わたしのじゃなくて、真理ちゃんのカードを見ればいいじゃないの!」
「いやよ、わたしじゃなくて理恵ちゃんのカードを見なさいよ!」
二人がどなるので、美紀ちゃんはもう半べそかいて、おろおろ、おろおろ。
「もうやめよう! ケンカするなら、ババぬきなんてやめようよ!」
「いやよ、うそつき真理ちゃん、カード見せなさいよ!」
「うそつきは理恵ちゃんでしょう! カード見せなさいよ!」
ついに二人はとっくみあいのけんかをして、お互いのカードがバラバラッと床に投げ出されました。ですが……。
「あれ、ババないよ?」
「ホントだ、どうして?」
二人が落としたカードを、全部調べてみても、ババはどこにも見当たりません。三人は目をぱちくりさせていましたが、やがてだんだんと不安になってきたのです。
「どうしよう、せっかくママにトランプ買ってもらったのに!」
「これじゃあもう遊べないよ!」
「ねぇ、探そう! ババぬきじゃなくて、ババ探ししよう!」
美紀ちゃんにいわれて、みんなてんてこまいになって、お部屋の中を探していきます。
「ババさん、どこー?」
「どこにいったのー?」
「かくれてないで、出てきてよぉ」
みんながんばって探しましたが、ババはどこにも見あたりません。つかれはててしまって、三人はぐったりしてしまいました。
「みんな、おやつですよ。あら、ずいぶん動き回って遊んでいたのね。汗だくじゃないの」
理恵ちゃんのママが、クッキーとジュースをおぼんにのせて、持ってきてくれました。三人はママに泣きつきました。
「あのね、ママ、ごめんなさい」
「わたしたちがケンカしちゃったから」
「ババがかくれて出てきてくれないの」
ママは目をぱちくりさせました。三人が口々に、なにがあったのかママに話します。
「なぁんだ、そうだったの。ごめんね、前に理恵ちゃんとババぬきしたとき、ママ、ババを持ってたから、かくしちゃったの。」
ママがえへへと舌を出して、理恵ちゃんにババをわたします。
「なんだ、ママが持ってたのか。でもかくしてたなんて、ずるいわ」
「ごめんなさいね。でも、ババぬき、じゃなくてババ探し、つかれたでしょ。さ、みんなもおやつおあがりなさい」
「はーい!」
三人は仲直りして、仲良くおやつを食べるのでした。