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Sランク冒険者の子育て  作者: ふーしん
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圧倒的な力

「ねえ、どうするの?」


青年のような見た目をした化け物を前に、ヴェルはガロウに尋ねた。


「とりあえず俺がやつをひきつける。そのあいだにショウを回収しろ」


「でもあんた一人では… いや、わかったわ」


「あのー 話は終わりましたかー?」


今まで黙って見ていた青年が口をひらいた。


「ああ、待たせてしまってすまんな。俺はガロウだ、お前は?」


「私は七星(しちせい)が一人、スペクターと申します。以後、お見知りおきを」


そう言うとスペクターは丁寧なお辞儀をした。

そして、そのときヴェルはガロウの魔力が膨れ上がっていくのを感じた。


「七星・・・ だと?」


そういった瞬間、ガロウはスペクターに飛びかかった。


炎鎧(フレイムアーマー)


「親父はどこだああああ!!!!」


「危ない!」


等価(エクイバレント・)交換(エクスチェンジ)


魔力を消費し、消費した魔力以下の魔力を持つものを自分のもとに引き寄せる。

とっさにヴェルはショウを回収した。


炎疾(フレイムビート)

大炎柱(だいえんちゅう)


スペクターの足元から炎が噴き出した。そこに【炎疾(フレイムビート)】で身体能力を強化し、炎をまとわせた大剣をスペクターの首めがけて振り下ろした。


ガロウの攻撃はあたった。いや違う、()()()()()()()()()のだ。いわれなくともそれを痛感してしまうほどに手ごたえがない。

ガロウが驚いて動きが止まった一瞬、炎の中から手がすっと出てきたかと思うとガロウは吹き飛んだ。


「グ八ッ!」


ガロウは絶望した。攻撃は見えなかったが自分が何をされたのかはわかる。俺は一撃で【炎鎧(フレイムアーマー)】を貫通され吹き飛ばされたのだと。


「クソッ・・・ クソッ・・・」


「いきなり襲ってくるなんてひどいなあ。話ぐらい聞いてくれてもいいのに」


炎の中から平然と出てきたスペクターは言った。まったくの無傷だ。


「はあ… はあ… 親父はどこ… だ」


「いや~そんなこと言われても、君の親父さんなんて知らないし。でも、もう終わりだから気にしなくていいんじゃない?」


「クソッ・・・」


虚無(きょむ)(ゆめ)


「あれ、突然暗くなったな。君、何かした?」


見えていないはずの目が、正確にヴェルに向けられる。


「さあ逃げるわよ!」


瞬間移動(テレポート)


「・・・ふんっ、あーあ逃げられちゃった。まあいっか、Sランクでもあんな程度じゃ冒険者は僕たちの目的の弊害にならなさそうだ」


なんなく技を解いたスペクターは少しがっかりした面持ちで帰った。





「・・・追ってくる気配はないわね。焦って私の家に飛んじゃったわよ。あれだけの魔法も足止め出来て数秒、油断してて助かったわ。さあ、治すわよ」


女神(めがみ)(しずく)


ヴェルの杖から魔力そのもののような液体が一滴、ガロウに落ちた。

ガロウの傷がみるみるうちに消えていく。


「・・・すまねえ、ショウは無事か?」


「ええ、魔法で寝かせておいたわ」


「そりゃよかった」


ガロウは安堵した顔を見せた。


「ところで、親父さんがどうしたって? なぜあんたが七星を知っているの?」


「お前らが追ってたのは七星だったんだな」


「そうよ」


少しの沈黙のあとガロウは話し始めた。


「・・・そうだな、あー お前は未開拓の土地があるってことはもちろん知ってるよな」


「ええ」


「なにそれ?」


ショウは眠そうに目をこすりながら尋ねる。


「あらショウ起きたのね、それじゃあ1つ昔話をしてあげるわ。昔ね・・・」




こんな昔話がある。

ある莫大な魔力を持った大賢者とよばれる男がいた。その男は若返りの研究を熱心にしていた。それはひとえに妻のためのものだった。男は魔法で老化を防ぐことができる、しかし妻は魔法が使えず、魔力も乏しいものだった。男は妻とまだ一緒に暮らしたい、その一心で研究に励んだ。そのなかであるものが完成した。それは[魔法が周囲の魔力を()()()()吸収し、魔法をかけたものの魔力を実質的に増強する]という付与魔法だった。人間には生まれながらにしてからだに入る魔力の上限があり、それを超えるとからだが壊れてしまう。しかし、この付与魔法は魔法自体に魔力が貯められるので上限は超えない。男は安全を確認するために落ちていたペンに付与魔法をかけてみた。すると、少し魔力を吸われたのを感じた次の瞬間、ペンから感じる魔力が膨れ上がっているのを感じる。だが、もう魔力は吸われていない。男はこう考えた。

吸って魔法に貯めた魔力をまた吸っている。しかも、信じられないが吸った魔力を増幅させて吸収しているようだ、と。

そんなことを考えてる間にペンから感じる魔力は途方もない量になっていた。はっと我にかえった男は急いでペンを壊した。そのとたん、魔力が世界中に飛んでいったのを感じた。ひとまず安心した男は少し休もうと外にでて散歩をしていると苦しんでいる魔物を見つけた。本来この種類の魔物がもっている魔力量とはかけ離れている、突然変異か、などと考えていると魔物はこちらに襲い掛かってきた。魔法がそれほど発達していない時代に、男は間違いなく世界最強の人間であった。そんな男でも激闘の末の、ギリギリの勝利であった。

その直後、さきほどの魔物とは比べ物にならない魔力を感じ、避難するために妻を呼びに行った。

夜通し研究をしていた男はもう妻が起きてくる時間だがいないことに気づいた。寝坊とはめずらしいな、と男は妻を寝室まで起こしに行った。だが寝室に入るとそこには見るも無残な妻の死体が横たわっている。それは限界を超えて魔力をとりこんだときの状態と同じであった。そこで男は知らず知らずのうちに禁忌に触れていたことを悟り、世界中で人が死んであれ以上の強い魔物が溢れていると思うと悲しみと罪悪感で心が潰れそうだった。

せめてもの罪滅ぼしと男は自分に禁忌をかけ、上面が平らな岩の塊を空中に空が見えなくなってもずっとずっと大きくした。そして溢れ出る魔力を使い、その上に片っ端からできる限りの範囲から人と建物、自然などを【瞬間移動(テレポート)】で運んでいく。男は最後にその大きな岩を地面に置き、岩を覆うほどの結界を張り終えた直後、魔力に飲まれて妻と同じ運命をたどった。そして、結界の外はその男の名がつけられた・・・・・・




「・・・もうちょっと短くしてよ!」


途中から飽きていたのか、ぼーっとしていたショウが言った。


「えーと、簡単にいうと」


ある男が禁忌を犯して世界がヤバくなったから、せめてもの償いで安全な場所を作った


「まあざっとこんな感じよ」


「そいつはバカなのか?」


「どうかしらね~。まあ、本当かはわからないけどね」


「で、俺の親父はその外の世界、通称()()()()の調査隊の隊長だったんだ」


「なっ、あんたあの人類最強といわれた調査隊隊長の息子だったの!?」


「まあな」


「どおりであんたは強いわけだ」


「さっき負けたけどな」


「へっ、ガロウもまだまだだな!」


「ふふっ、そうね」


「チッ・・・、親父はちょっと頑固で横暴でくそったれなところはあったが、頭はいいわ腕もたつわで俺のあこがれだった。はやくに母さんをなくした俺を男手一つで育ててくれたしな。それに、」


「あー あー あー こちらから聞いといて悪いけど父さん自慢はもういいわよ。あんたが七星を知ってる理由も聞かないわ」


「自慢じゃねえよ! ・・・チッ、とりあえず明日はジジイを探しにいくぞ」


「そうね、次いつ七星と戦うかもわからないしとりあえずSランクをあつめましょうか」


「えっと、俺は・・・」


ショウは心配そうな顔をガロウに向けた。


「ああ、もちろん置いて・・・ と思ったが七星がお前を狙わないとは限らない。俺たちと一緒に来たほうがいいだろうな」


「じゃあ!」


「一緒にいくぞ」


「そうこなくっちゃ!」


「ふふふっ」


その夜、ショウは幸せそうな顔で寝ていた。

読んでくれた方、感謝します。

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