コメダのカツパン
量が多い、ととにかく言われるコメダ珈琲。
実際そこまで多いのかといわれると、ご安心ください、常軌を逸した多さではありません。デブ換算でな。
心にデブを飼っている人間は程よく満足できるボリュームだと思う。むしろやや足りないということさえあるかもしれない。そこはまあ、喫茶店らしく小奇麗にお洒落に盛り付けられている分もあるから、しかたがない。むしろデブ飯を喫茶店に求めるな。
個人的には、量が多いという点よりも、パンがおいしいということに注目したい。店頭に食パンが売っていると、ついカットしていない一本丸々を買ってしまいそうになる。一本というのは、普通の食パンの三斤分くらいで、これで九〇〇円弱といったところ。
高いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、コメダの食パンを食べたことのある人からすれば、一抱えある一本丸々の食パンはかなり魅力的だと思う。創業者の実家が米屋なのになんでこんなにパンがおいしいんだ。メニューにもコメを使った品がないし。謎だ。
喫茶店ではあるが、コーヒーに関しては今回は主題ではないので、詳しくは述べない。ただ、味にブレが少ないとは感じる。
個人的に、コメダは量が多いと言われるときに上げられる写真は、カツパンのものが多いように思う。
カツサンドではなく、カツパンである。これは十分にこだわってよいと思う。
というのも、コメダのカツパンは、どちらかといえばカツではなくパンが主体であるように思われるからだ。
普通、カツサンドというものを想像してみた時、頭に浮かぶのは、食パンに挟まれた分厚いカツというイメージではないだろうか。それも人気店、有名店ほど、カツは分厚く、食パンがむっちりとそれに押されて薄くなっているようなイメージが。
勝手なイメージかもしれないので一応画像検索もしてみたが、あながち間違いでもないように思う。
こういうカツサンドは実際美味しいし、私も好むところだが、コメダのカツパンというものは、風情が違う。全然違うと言ってよい。
まあ以前はカツサンドという名称だったし、同じものをいまカツパンと呼んでいるだけだが。
カツパンに用いられているパンは、食パンではない。コッペパンを平たくしたような、コメダ以外で見かけないようなパンである。大皿一杯のサイズのパンを横に切って、間にカツとキャベツの千切りが挟まっている。それを三つに切り分けているのだが、それでもまだ、大きい。
このパンを売ってほしいと、たまに思う。デブの考えた最高のハンバーガーみたいなのが作れそうだ。これに挟むサイズのハンバーグを綺麗に焼き上げるのは至難の業だろうが。
なにしろ、皿もでかければパンもでかいので、それに挟むカツもでかい。でかいというか、広い。
厚み自体は、あまりない。分厚いトンカツを食いなれた人からすると、全然ないと言っていい。ふっくらと頼もしいパンの厚みからすると、添え物のようだ。
がぶりとかぶりつくと、ザクリとした衣の歯ごたえも心地よいが、やはりカツだけ見ると、他のカツサンドに劣る。薄いし、ジューシーさでも負ける。普通に皿に出して、白飯と食ってみても、やはり首を傾げそうなものだ。
だがカツパンとして、パンの間に挟まったカツは、実にいい仕事をしている。脂も、塩気も、豚の甘みも、パンを食うためにある。パンにバターを塗って食うように、カツで食うパンなのだ。カツ単体で勝負するものではない。バター単体で食べたりしないように。
おちょぼ口ではちょいとつらい、大きく口を開かなければならないような、ふんわりと枕のように柔らかいパンが、主役だ。ふわり。ざくり。心地よい歯ごたえ。パンの甘み。そしてカツの塩気と脂。
脂気が少々強いから、見た目より、いくらか腹にたまる。確かに量が多いと感じもする。
だが、その分、確かな満足感だ。
いわゆる普通のカツサンドを食べた時の満足感とは、やはり違う。
この満足感は、コメダのカツパンでなければ出ないだろう。