幸先不安な入学式
「俺はアスナさんよりシノンさんの方が好きだ!結婚してくれえええええ!」
俺は大声で叫びながら、ふと目が覚めた。
そして、窓越しに朝日を眺め、呟いた。
「んー、いい夢だ」
俺の名前は皆方望
みなかたのぞみ
3月17日生まれ15歳。彼女はいない。彼女いない歴=年齢だ。
身長は168センチ、体重55キロ。髪の色は黒く、顔は至って普通。重度のアニオタだということを除けば、ごく普通の男子学生である。
そんな俺、皆方望は今年から私立、晴夢
はれむ
高校に入学することになった。今日は晴夢高校の入学式だ。
実家は田舎にあり、実家から4時間離れた高校に通うため、今日から一人暮らしだ。最高だ。
新しい暮らしにテンションは最高潮である。
俺は軽く寝癖を治し、いつも通り身支度を済ませて家を飛び出した。
「ここから俺の新たな日常が始まるぜ!」
しかし、この時は思いもしなかった。
まさか自分がハーレム主人公になるなんて。
「新入生の皆様、ようこそ晴夢高校へ」
体育館に約300人の新入生が集まる中、校長先生の祝電の言葉が響き渡る。
「ここからついに俺、皆方望の楽しい高校生活が始まるのか」
雲一つない青空の中、俺はそう呟いた。
風が気持ちいい。周りには満開の桜。
隣には生徒指導部顧問の早乙女獅童先生。
なんて素晴らしい入学式だろう。
俺は満足そうに校長先生の祝電を聞いていると、先生も笑顔で話しかけてきた。
「入学式をこんなに気持ちいい青空の下で受けることができるなんて、幸せものだな。皆方」
「ですよね!しかもこんなムキムキでカッコいい早乙女先生と2人きりで受けれるなんて、なんで幸せ者なのでしょう私は……ってんな訳あるかぁぁぁぁ!」
ふと我に帰った途端、俺は先生に笑顔で叩かれた。
なぜこのような状況に至ったのか、少し時を遡ろう。
入学式は午前9時から。家から学校までは徒歩10分だ。
俺は午前8時に起床し、身支度をしていた。
ここまでは順調だった。全ての用意を済まし、朝ごはんを食べながらニュースでも見ようと思ったその時、事件が起こった。
テレビをつけ、いつも見ているニュースを見ると、そこには見覚えのあるアニメキャラクターが映っていた。
「ここから始めましょう。今日を。1から、いいえ、ゼロから。」
ーーーー名台詞キタァァァァァァァァ!!
そんなこんなで朝を堪能し、勢い良く家を飛び出した。
そして学校に着いた。午前9時20分に。
ーーーーー回想終了ーーーーー
一言で説明すると遅刻だ。
入学早々遅刻し、体育館の外で生徒指導部の先生から説教を受けているのだ。
早乙女先生、別名「破壊神」
由来は説教に熱が入りすぎてつい周りの物まで破壊してしまう…という伝説から付けられた。
先生が器物破損しまくるってどんな先生だよ。
入学式が終わり、体育館から新入生が退場している中、俺は先生にひたすら説教されていた。
周りの生徒が俺と先生を見る目はまさに動物園のゴリラとチンパンジーのような、見せ物だった。
そんなこんなで説教が1時間続き、その間新入生たちは各々のクラスでホームルームを受け終えていた。
んー、説教長すぎないかなぁー
遅刻だけで1時間も話し続くとか、どんなコミュ力してんだよあの破壊神。
文句は一旦終わりにしよう。
色々ありつつ俺は自分のクラスの担任の先生すら分からない状態で入学式を終えるという、出だし最悪な高校生活がスタートした。
「あー、おれの平凡な高校生活終わったなぁ」
入学式で会話した学生0人。
田舎から引っ越してきた為、もちろん友達0人。
唯一話した人、破壊神。
流石にショックだわー。
明日登校したらどうせ
「あ!昨日早速早乙女先生に怒られてた人だー」
「え、何?ヤンキー?怖ーい」
「入学早々遅刻とか不良じゃーん」
とか言われるんだろーなー。
考えれば考えるほど憂鬱になる。
そんな時にはこれ!
「うん、家帰ってアニメ見よう」
様々な妄想を捗らせつつ、俺は家に帰宅した。
明日は友達できるかなぁ。
女の子とお話しできるかなぁ。
そんなことを考えつつ、俺は眠りについた。
そして、入学2日目の朝を迎えた。
しかし、この時は考えもしなかった。
まさか入学2日目に校長先生に呼び出され、
家を失うだなんて…