表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/353

第81話 教会の異常

毎回の誤字の指摘に感謝と謝罪を。どうしてなくならないのだろう。

第81話~教会の異常~


 ロータスの街中を俺達はとある場所に向けてひた走る。


 あの時ミレイユは言っていた。帝国には呪いを浄化できる教会があると。黒死病の症状をこの世界の人々が呪いだと思っているのなら、間違いなく発症したなら教会に駆け込むはずだ。


「急がないとアウトブレイクどころかパンデミックになっちまうぞ!!」


『おい、キョウスケ!それは何が違うんだ?』


「簡単にいえばアウトブレイクが一部の狭い範囲。パンデミックが広範囲ってことだよ!今はこの街ですんでるのかもしれないが、このまま手を打たなきゃ帝国中に広がるんだよ!」


 いや、すでにこれははっきり言って甘い考えだ。ユーリシア川を越えたミレイユ達の村まで被害が広がっていたことを考えれば、すでに被害がこの街でとどまっていると考えるのは甘すぎる。


「急ぐぞ!」


 街の中央通りを抜け、中心地に向かう。まだ症状の軽い人に聞いた教会の場所はこの街のほとんど中心。どうやらロータスの街は重要な建造物を中央に集めているようだった。


「倒れてる人が増えてきましたね」


 中心に近づけば近づくほど路上に倒れている人の数が増えていく。おそらく教会を目指し、たどり着く前に病気に負けたのだろう。


 ここにいることで俺たち自身ももしかしたら感染をしてしまうのかもしれないが、その確率がほとんどないことはすでにインデックスにより肯定されている。


 曰く、俺達はすでに人類というくくりにはいないらしく、病原菌程度では体内に入った瞬間に死滅してしまうのだそうだ。


 確かに俺は龍人であり、エリザは龍そのもの。カナデは幽霊だしスルトに至っては今や土偶だ。病原菌が太刀打ちできるようなやわな存在ではないらしい。


 人から外れることがいいのかはわからないが、今回に関してはいい方向に作用しているのだからよしとしよう。


「キョウスケよ!あの建物ではないか!?」


 エリザがどうやら目的の場所を発見したらしく、俺にそう叫んだ。


 その読みはどうやら間違いではないようだ。街の中心にあるという情報しかなかったが、それでも簡単にその建物を発見できた理由はただ一つ。


 教会はこの街の建物にしては作りが古く、それこそこの街ではすでに過去の建築様式であるはずのレンガ作りのものだった。


 一般的に俺が想像するような教会の風体をしたその建物には、入り口付近に到底建物内に入りきらないであろう人が溢れかえっていたのだ。


「ここが地獄って言われてもいまなら信じるぞ……」


 まだ距離があるにも関わらず聞こえる助けを求める人々の声。どうやら唯一の拠り所であるはずの教会は、その入り口である荘厳な扉を固く閉ざしてしまっているようなのだ。


 そんな教会の扉の前で響く悲痛な叫び声。男も女も、子供を連れた親も子どもも老人も、様々な種族の人々が扉の前で教会に助けを求め叫んでいた。


 それでも教会はその扉を固く閉ざしたまま開くことはない。一人、また一人と病気に倒れていく中で、それでも助けを求める声が鳴りやむことはない。


「どうするんじゃ?力ずくで押し入ってもいいが、それをすれば取り返しのつかないことになるのは必至じゃぞ?」


「そんなことはわかってる。どこか裏口みたいなところから侵入できないか?」


 言ってはみたものの、それが不可能なことは誰の目にも明らかだ。助けを求める人々は、教会を取り囲むようにしているのだ。俺達がどこから侵入を企てたところで見つかるのが落ちだろう。


“検索結果:当該の建物に抜け道を発見しました。これよりマップデータを表示します”


 しかしそこは俺のスキルの中で汎用性一番のチートスキル。どうやってなのかは知らないが、いつの間にかこの街の構造を把握し教会への抜け道を見つけたようだ。


「こっちだ!」


「どこ行くんです!?」


「いいから付いてこい!!」


 教会と真逆へ走り始めた俺にカナデが疑問を示すが、俺はそれを制して走り出した。


 向かった先はロータスの街の中でも主に貧民層が暮らしていると思われる区画。カムイの街にもスラム街はあったが、そことにたりよったりの場所の一角に俺達は向かった。


「なるほどな。元来抜け道はこういう目立たない場所につくるもんだが、これは知ってなきゃ見つからないな」


 そこはいわゆる地下道への入り口。おそらくは下水道につながるであろうその場所に、どうやら教会へとつながる抜け道があるらしかった。


「あんまり入りたい場所ではないの」


「ならここで待ってるか?」


「それはそれで遠慮じゃ。風魔法でも使って匂いを飛ばすことにするでの」


 できれば俺だってこんな場所には入りたくないが、教会が今どうなっているのかを知るにはこうするしかない。俺達は覚悟を決め、地下道へと入っていくのだった。


 ◇


 時間にして30分もたってはいなかっただろうが、それでも地下道の環境のひどさには辟易するものがあった。


 下水どころかもはやヘドロといっても過言ではない汚水が流れ、劣悪な環境下では生物が生きるのも厳しいのか、地下道のような場所に好んで住むようなネズミの類も見られなかった。


 俺達だったからよかったものの、普通の人間や亜人であれば速攻で病気になってもおかしくないようなひどさだったのだ。


「帰りは絶対に通らない」


 俺のその言葉に、3人が同じように頷いた。


 インデックスの示すマップに従い、俺達は地下道から上に上がり、固く閉ざされた鉄の扉に手をかける。重量のあるその扉は重く、筋力が人よりもはるかにあるはずの俺でも開けるのに少し苦労をするくらいだったのだから、その重さは推して知るべきであろう。


「誰だっ!?どうやってその扉を!!」


 扉を開き、中に入る俺達の前に広がるのは教会の内部、木製の椅子が何列にも並べられたその場所は、いわゆる教会の大聖堂のような場所なのだろう。


 突如現れた俺達にそこにいた人々が一気に警戒を強める。


 男が3人に女が2人。計5人の人間がそこにはいた。武器を持ち鎧をまとうその姿から、男3人は兵士のようだ。女2人をかばうように3人とも武器を構え俺達に突きつけている。


 その隙間から見える女2人。一人は教会のシスターなのだろう。修道服をまとうその姿は、どこからどう見ても修道女そのものだった。


 そしてもう一人。どう見ても一般の庶民とは思えない風格を醸し出している女性。着ているドレスも上等そのもので、いわゆる貴族階級の人間とみて間違いはない。


 そんな奴がどうしてこんなバイオハザード状態の街にいるのかは知らないが、それもこれから聞いてみればわかる。


「貴様ら質問に答えんか!!」


「がたがたわめくなよ役立たずが」


 俺のあまりに不躾な返答に一気に兵士の緊張感が高まった。


「あの、恭介さん?どうしていきなり煽ってるんです?」


「ぴーすかうるさいからだよ。教会ってのは呪いを治すところなんだろ?それなのに外の連中をほっぽって立てこもってる。そんな奴らが役立たずじゃなくてなんなんだって話だ」


「この無礼者が!!」


 挑発を受けた兵士の中でも恐らく一番若いと思われる奴が、俺の言葉に我慢できなくなったのか斬りこもうと駈け出した。


 あまりに狙い通りの行動に、俺は内心でほくそ笑む。


 今の状況で俺達が害がないということを示すのはほぼ不可能。ここに立てこもっているのもなんらかの理由があるとみて間違いはない。


 だが信用されない以上、それを聞くのは無理であり押し問答をするのも時間の無駄。なのでわかりやすく相手を煽り、力でもって制圧することにしたというわけだ。


「くたばれ!」


 兵士が剣を振りかぶり、今まさに俺に剣撃を与えようとしたその時だった。


「やめなさい!!」


 その言葉に兵士は寸でのところで剣を止める。凛としたその声を放ったのは、この場にそぐわないドレスを着た貴族風の女性だった。


検索スキルの便利さが止まらない今日この頃。書いていて非常に助かるスキルです。

第2章はここからさらに核心へと入っていきます。ぜひこの先も読んでくださると嬉しいです。


現在は2カ月先分の執筆をしているのですか、どうにも1話当たりの分量が多くなってしまいがちな今日この頃。

コンパクトに、だけど短くなりすぎないような執筆を心掛けていきます。


まだブックマークをされていない方は、是非したのボタンからしていって頂けると非常に嬉しいです。さらに評価をして頂ければ作者が非常に喜びます。

それではまた次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載を開始しました。 【『物理特化ですがなにか?~魔術は苦手だけど魔術学院に入学しました~』 是非こちらもよろしくお願いします!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ