第73話 これからの旅路
ようやく1章最後のお話となります。ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
いつも誤字の指摘もありがとうございます。
第73話~これからの旅路~
エリザから語られる衝撃の事実。
俺の知る神というのは、基本的にはいいイメージが多い。天地を創造し、人々を導き、世界をより良い方向に導く存在。それが俺のイメージする神だ。
だが今エリザから語られる言葉はそれとはまったくの真逆。世界を自分の箱庭としか見ておらず、それをいかに効率よく理想の世界へと作り替えるかという、こちらからすれば暴虐の塊のような存在だった。
「理由はわからんが神は世界を自身の理想へと変えようとしているようなのじゃ。だが自分が直接的な手出しは出来ない。だからこそ自分の代わりに動く駒を作って代わりに行わせる。なぜ自ら手出しは出来ないのか、理想とはなんなのか。それだけはいくら調べてもわからなかったがの。どうやら側近である天使にも教えてはいなかったようじゃからな」
到底許容できる話ではなかった。
俺がこの世界で決意をしたのは全ての理不尽に立ち向かうこと。すでに記憶はなくなってしまったが、これまでの理不尽に彩られた人生がどれほど苦痛だったのかということは覚えている。記憶ではなく、心が覚えているのだ。
それなのにこの世を統括する存在である神がその理不尽を振りまいているという現実。そんなもの、もはや理不尽という言葉ですら生温い。
「今回俺達がこの世界に召喚されたのも神の思惑なのか?」
「それはわからん。最初の召喚は伝説の魔物の封印のためという名目があるのじゃが、それからの召喚は理由がないんじゃよ」
「魔王の存在なんかはどうなんだ?」
「そもそも魔王というのは魔族の王という意味じゃ。確かに強いのは間違いないが、意味合いは人間で言う国王と大してかわらん。その程度の存在に勇者などまさに過剰戦力じゃ。しかもお主の話では、今回それが30人。その人数の天恵持ちがいれば魔族などあっという間に滅んでしまうじゃろうな」
事実を知れば知るほど謎は深まるばかり。せっかく三歩進んだと思ったら五歩くらい戻された感覚だ。
「さて、儂の知ることはすべて話した。これを聞いたうえで今後、お主はどうするのかを聞かせてくれ」
「その前にもう一個質問だ。エリザ、お前はどうするつもりだったんだ?神の意志に反し、目的を探ってここまで来た。その情報を全て吐き出したお前はこれからどうする?」
正直なところ俺がこれからとるべき方針はすでに決定している。サイモンの本音を聞き、アスタロスに問われた時点で俺がどうしたいかなどすでに決まっていたのだ。
だからこれはただの確認だ。エリザがどうしたいのか。それによってこれからの俺達の歩む道は違ってくるのだから。
「儂の目的は今も昔も変わらぬよ。神の真の目的を知ること。どうしてあの時神は全てを滅ぼすという選択しか出来なかったのか。それを知ることが儂の目的じゃ」
「その目的を知ったうえで、神を殺すことになること厭わないか?」
「大きく出たの……」
俺のこれからの目的は、基本的にはエリザと同じだ。なぜ神はその選択をし、この世界をどうしていきたいのか。それを知りたいと思っている。
その上でそこに正当な理由があるのなら考えるが、もし俺が納得できる理由がそこになければ、俺は神を殺すつもりだった。
「この世界で誓ったからな。理不尽に全て抗うってな」
「そうじゃな。お主ならもしかしたらそれも出来るのかもしれんな」
エリザは薄く笑い俺を改めてみた。そしてこれまでに見たことのない真面目な表情で頭を下げたのだ。
「改めてお主に頼もう。始祖龍、エリザベート・ドラゴニスはキョウスケに依頼する。儂と共に神の真意を探ってくれ」
その様子に、これまで黙って話を聞いていたスルトまでもが同調し始めた。
『炎の巨人、スルト・ムスペルも同じく頼む。神の真意を私も知りたいんだ』
まさかの伝説の魔物二人が揃って頭を下げるという異常事態。見る者が見たら卒倒するんじゃないかと思うほどの光景だが、俺はそれに対して何の違和感も感じなかった。むしろ好ましくさえ思えたのは、少しでも俺が二人のいる頂きに近づいたからなのかもしれない。
「もとからそのつもりだよ。これからもこき使ってやるから覚悟しろよ」
方針は決まった。この世界に来てここまで必死に走り切ってきたが、これからは明確な目的がある。
神の真意を探り、場合によっては殺す。
明確な手がかりなど何も無い状況だが、それはこれから探していけばいい。記憶もなくなった今、もはや俺にとって元の世界になんの未練もない。これから先この世界で生きていくつもりなのだから、だったら後顧の憂いは断っておくべきなのだ。例えそれが、この世界の頂点である神という存在だったとしてもだ。
「さてと、それじゃあこれからもみなさんで一緒に旅をするということで」
方針が決まり、新たな決意を俺達がしたところで、カナデが締めるかのように声を上げるその笑顔からあまりいい予感はしないのだが、なんでなんだろうな。
「みなさんで仲良くベッドにでも行きましょうか!!私もう我慢の限界なんですよ!!」
「台無しだよ馬鹿野郎!!」
台無しだった。これまでのシリアスムードなど全てぶち壊しだった。
結局はその後、みんなでベッドに向かったのはここだけの話な。スルトがしきりに人型の器をねだって来たのもここだけの話な!!
◇
アーネスト公国での戦いが終結したころ、別の場所でも一つの戦いが終結しようとしていた。
「俺が王ってことで文句ないよな?」
その問いに誰も反論などできるはずがない。国内で最強の力を持つとされる王宮騎士団は全て殺された。城下町はもちろん、近隣の街も全て支配下に置かれた。そして、獅子奮迅の活躍を見せていた国王も今、その首を飛ばされこの世から去った。
「まずは第一歩。力で解決できる世界ってのは楽でいい。地球のように法律だなんだと余計なものがないからな」
すでに首の無くなった国王の体を足蹴にし、それを成した本人はゆっくりとした態度で玉座に座る。王宮にいた使用人、王妃、そして王子たちはその様子に何も言えないでいた。まさに今、国が乗っ取られた状況においてもだ。
そんな中、王族の中で一人だけの例外が歓喜に満ちた声で叫んだ。
「さすがはキヤマ様!!あなたならやり遂げてくださると信じていました!!」
王を殺し、国を乗っ取った首謀者、木山修平に対し、シルビアス王国第1王女、クローディア・シルビアスは陶酔しきった目で木山にすり寄った。
「ああ、これもお前のおかげだ」
「そんな、私には過ぎた言葉です!!どれも全てはキヤマ様の御力!この世界を救えるのは勇者であるあなただけなのですから!!」
死体に溢れ、血塗られた王宮の玉座で木山は不敵に笑った。周囲にはクラスメイトの姿も見られ、そのほとんどが血にまみれていた。自分たちの血ではなく、返り血によって。
「まずはこの国を統治し直して、次は周辺国だ。くくっ、楽しくなってきたなぁおい!」
不気味に笑う木山の傍で、腰巾着である篠原と三好もまた笑う。
シルビアス王国が木山の手に落ち、これから先恭介達とぶつかることになるのは今はまだ先の話。
【大切なお願い】
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回のお話で、長かった第1章もようやく終了となります。ここまで書いてこれたのもいつもお付き合いいただける皆様のおかげです。
読者の方も少しずつではありますが増えてきており、書いている私もとても力をもらっています。
もしここまで読んでくださっている中で、まだブックマークをしていない方がいらっしゃいましたら是非お願いいたします。
また、お手数ではありますが評価を頂けるとすごく励みになりますのでそちらもよろしくお願いいたします。
第2章ですが、これまで通りのペースで投稿してきますのでこれからも引き続きお付き合いよろしくお願いします。
今のところストックも2月分くらいまでは出来ていますので、お楽しみいただけると幸いです。
これからもよろしくお願いいたします。




