第71話 決意と悪魔
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第71話~決意と悪魔~
炎の中で燃え尽きていくサイモンを見ながら俺は決意をする。
これからもこの世界で生きていく以上、誰かを殺さなければならない場面は必ず訪れる。もちろん敵に容赦をするつもりはないし、殺し自体を否定するつもりはない。
それでも意識だけは変えなければいけない。誰かを殺すということは、その人に連なる誰かの人生を変えるということを。
それを考えず、自分の都合を押し付けるだけでは、俺もまた木山と同じ理不尽を押し付ける者となってしまうということを。
殺しへの忌避感の低下が招くのは自らの破滅だ。誰かを殺すということはその行為に対して責任を持たなければならないのだ。俺はそれを忘れかけていた。強くなった自分の力に溺れ、殺しに対して何も感じなくなっていた。だからあの時にあれほど簡単に殺してしまえたのだ。
これからもこの世界で生きるためには殺すことをやめるつもりはない。ただ、状況が許されても気持ちの持ち方は変えなければならない。それが俺の心のしこりの原因であり、サイモンとの戦いで学んだことなのだろう。
「終わりましたね」
「なんとかな」
「なんだか可哀そうな人でした。もっと早く、堕ちるところまで堕ちる前に出会っていたら何か変わったんですかね」
「さぁな。もしもの話に意味なんてない。こいつはこいつの全てをかけて人生を生きて、そしてここで散ったんだ。やり方も何もかも同意は出来ないが、そこを否定してやるなよ。それじゃあこいつの全てを否定することになっちまう」
「そう、ですね……」
カナデの炎が消えていく。後に残るのは何かがそこにあったという黒い燃えカスのみ。
終わった。全てを賭して戦い、そして勝利した。思うことが多い戦いではあったが、これで全て終わったのだ。そう思い、全身から力を抜いたその時だった。
『まさか私の力を授けた者に勝つとはな』
全身に冷や汗が伝う。声を聞くだけで感じるプレッシャー。サイモンから放たれていたものよりも、はるかに大きな威圧感がその声から発せられていた。
『そう身構えるな。すでに契約は終了している。私がお前たちに何かをすることはない』
そう言い現れたのは、つい先ほどサイモンが召喚した悪魔。序列にして6位。見た目だけなら絶世の美女と呼ばれるであろうアスタロスがそこにいた。
「なら何の用だよ。お前が契約した奴は死んだ。それで終わりならなんでまだここにいる」
『そう警戒するなと言っている。私はただお前に興味が湧いただけだ。人の身でありながら龍の因子を取り込んだだけでは飽き足らず、さらなる進化を遂げるお前にな』
そう言いアスタロスは俺を上から下まで興味深げに観察する。とりあえず害はないと考えるべきか、それともただの前ふりか。判断に迷うところではあるが、流石に今の俺達でこの悪魔には勝てないだろう。例え俺とカナデが万全の状態だったとしてもだ。
「これはまさか、新たなライバル出現ですかね?」
カナデが空気を読まない発言をしているが、突っ込みは絶対にしない。こんな物騒な奴を近くに置きたくはない。というかどうして俺の周りには人外ばかりが集まるのか。
そんじょそこらの女性よりも魅力的な女性が集まっているのは否定しないが、種族がおかしいんだよ。なんだよ幽霊や龍やら悪魔って。今更ながら俺の交友関係どうなってんだ。
もっとも自身が龍戦士とかいう訳の分からない種族分けになっているのだから、そもそも説得力も何もないのだがそこは気づかなかったことにしておく。何事も心の棚が重要なのだ。
『お前、神と戦うつもりはあるか?』
唐突な質問だった。いや、唐突ではなないのだろう。これまでの旅路、サイモンの動機、そして俺のこれからを考えれば、それは避けては通れないワードだ。
「さぁな。まだわからん。新しく知ったことも多いし、これから調べなきゃいけないこともある。サイモンの言葉を鵜呑みにするつもりはないからな」
仮に神がこの世界の全てを握り、その上で理不尽を振りまいているのなら。もしその神が俺が元いた世界においても共通の神なのだとしたら。俺には神と戦う動機がある。
「だが知りたいとは思う。神が一体何者で、どうしてサイモンのような奴が生まれてしまっているのか。過去に伝説の魔物を使ってどうして全てを滅ぼそうとしたのか。今は一体何をしているのか。ここまで来て何も見ていなかったということにするつもりはない。だから戦うかどうかは置いといて、俺は真実を突き止めるつもりだ」
それは決意表明。別に俺は勇者じゃなければ、世界を救うヒーローでもない。悪と決まったわけではないが、その可能性がある者と戦うだなんてしたいとも思わない。
だが真実を知ることはしたい。いや、きっと知らなければならないんだと思う。それが理不尽という現実に抗うと決めた俺の行く末であり、サイモンを殺した責任でもあるのだろうから。
背負うなどということを言うつもりはないが、気持ちを胸に秘めるくらいはするつもりだ。サイモンは望んじゃいないかもしれないけどな。
『ますます面白いなお前は。俄然興味が湧いた。あの龍と巨人を傍に置くだけのことはある』
「エリザとスルトを知ってるのか?」
『まあな。だがそんなことはどうでもいいことだ』
どうやら悪魔と伝説の魔物にも繋がりはあるようだ。ますます過去に何が起こり、今に繋がっているのかが知りたくなった。
『いいだろう。お前に私の力を貸してやる。せいぜい有意義に使うといい』
そう言うとアスタロスは俺に有無を言わせることなく、何やら怪しげな黒いオーラを俺に向かって放つ。当然避けきることなくそれを受け止めてしまった俺。怪しげなオーラが体を包んでいく。
「恭介さん!?」
『案ずるな、魔の根源に近い者よ。何度も言うが私はこいつが気に入った。害を与えるつもりはない』
アスタロスの言う通り、そのオーラが俺に何かをすることはなかった。しみ込んでいくオーラが全て体に入った時、インデックスの言葉が脳内に響く。
“検索結果:新たなスキルを獲得しました。獲得したスキルを表示します。『未来視』『過去視』。合わせてアスタロスの加護を得ました”
『これで少しはお前も強くなっただろう』
「いいのか?契約には魂の譲渡が必要なんだろ?」
『あれは魔族どもが勝手にやっていることにすぎん。はるか昔、下級悪魔が魂につられて出て行ったことに起因するでたらめだ。本来悪魔は人に力を貸すことはない。もし貸すことがあれば、それはその悪魔が興味を抱いた者だけだ。私が今回出てきたのは、お前という存在に興味を抱いたからだ。だからあの魔族に力を与えた。お前という器をはかるためにな』
非常に不穏な事実を聞いた気がするが、ここは聞かなかったことにするのが吉なのだろう。なんにしても間違いなく強者である悪魔の力を借りられるのだ。もらえるものはもらっておくことにしよう。
「有効に使わせてもらうよ」
『そうしろ。それでは私は消える。お前の今後を楽しみにしているぞ。神に抗う者よ』
その言葉を残しアスタロスは消えていった。あまりに多くのことが起こった日。これから全てを理解し、そして今後の方針を決めなくてはならない。
だがなんにしてもひとまずは、これにて北部地方での戦いは終結だ。
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