第70話 閉幕
間もなく一章が終わります。最後までお付き合いくださると嬉しいです。
また毎回の誤字報告もありがとうございます。
第70話~閉幕~
一人では出来ないことも誰かとなら出来る。
とうの昔に諦めていたことが今この時に現実になろうとしているのは、一体どんな因果なのだろう。
「ぐぅあぉおおおおお!!」
「やかましいんですよ!!」
直線的な突進から繰り出されるサイモンの剣撃を見切りにより俺がいなす。その隙を後衛に陣取るカナデがつき、さらなるパワーを得た焼却魔法で燃やしていった。
強くなったとはいえ、俺とカナデ一人ではまだまだサイモンには劣っている。それでもこうして曲がりなりにも戦えているのは、お互いが得意なところをいかんなく発揮しているからに他ならない。
桁が違うステータスも、カナデと二人なら押し返せる。もっとも、先ほどまでサイモンが手を抜いていたおかげで、グングニルの一撃が通り、そのおかげでステータスが大幅に下落していることも一因だが、それも結局は二人の協力で得られた結果なのだからどっちにしろ同じこと。
「こんなところで終わってたまるか!!私は神に復讐するんだ!!仇をとるんだ!!リーシャの仇を!!」
「そんなもん知るか!!仇をとるなら勝手にやれ!!復讐するなら一人でやれ!!お前の都合に誰かを巻き込むんじゃねえよ!!」
いつの間にか猛毒に侵されていたはずの体が楽になっていた。不倶戴天により無理矢理動かしていたはずの体は今では嘘のように軽く、いつまでたっても不倶戴天の反動も来ることはない。
それもそのはずで、どうやら俺の新たな力とは種族の進化だったらしい。ステータスを確認すれば、種族が龍人族から龍戦士となっている。それに合わせて不倶戴天が消滅し、代わりに龍化のスキルを会得していた。
“検索結果:『龍化』。体力が半分を割り込んだ時に使用可能。体を龍に変化させ、圧倒的な膂力を得る”
どうやら不倶戴天のデメリットが消え、有用な部分のみ残ったスキルへと変化したようだ。
「なぜわからない!?神はその名を名乗りながら、私たちを苦しめる!それを私は打倒しようというのだ!!多少の犠牲がつきものだとどうして理解できない!!」
大事の前の小事。サイモンの言いたいことは多分そう言うことなのだろう。
剣と槍が交差し火花が散る。ステータスで上回るサイモンは力で剣撃を放ち、俺はそれに押され後退する。
すかさず猛毒を放つサイモンだが、俺に届く前にカナデにより全て燃やし尽くされた。
相性がよかった。確かにサイモンの能力は驚異的だが、如何せん単調がすぎるのだ。でたらめな再生能力とステータスに物を言わせた剣術。加えて猛毒による攻撃と、普通に考えれば強いのだが、再生を上回る攻撃を有する者との戦いでは途端にその手数が減少する。
近接攻撃と中距離の毒攻撃しかないサイモンの手札は少ない。それなのに今は剣術は俺に抑えられ、中距離の毒攻撃は初動も遅くカナデに燃やし尽くされる。はっきりって手詰まりの状況なのだ。
それでも俺達がサイモンを殺しきれていないのは、それだけサイモンの気迫がすさまじいから。
「理解しろ!!普通にやっていては私達では神には勝てないのだ!!犠牲を出し、血にまみれて初めて力を手に入れる!!お前だってそうではなかったのか!?」
これまでの剣速よりも一段ギアの上がった剣撃に、俺は迷わず槍をもう一本取り出し飛槍によって迎撃した。
すでに再生に回す魔力をも攻撃に費やしているサイモンは、体の崩壊が始まっていた。このままいけば時間の経過で勝つことも可能だろう。
「なぜわからない!?なぜ私を止めようとする!?犠牲がなければ何も得られないんだぞ!?」
それはきっとサイモンの魂からの叫び。これまでの発言の奥に隠された紛れもない本音なのだろう。
彼もまた、この世の理不尽という化け物の対象になった一人の犠牲者に過ぎなかったのだ。
「だからってお前に何かを奪う権利はないんだよ!!」
力で押し切ろうとするサイモンの攻撃を俺は更なる力で押し返す。龍化のスキルを発動し、全てのステータスを押し上げることによりついに力で拮抗するに至る。
「確かに犠牲は必要かもしれない!犠牲無くして得られないものもある!やむを得ずに殺さなきゃいけないことだってある!!」
この世界に来て俺はたくさんの者を殺した。魔物はともかく、魔族に至っては3人も殺している。
もちろん全員何かを企み、そしてそれを実行し多大な被害を及ぼそうとしていたのだから、殺したことに対する正当な理由はあるつもりだ。それでも殺したことに対して、俺の中でしこりのようなものが残っていた理由が、今サイモンの本音を聞くことでようやくわかった。
「敵に容赦しないことには俺だって同感だが、それ以外の奴に自分の都合を誰かに押し付けんなよ!!」
一度押し返した剣撃はそれ以降再び俺に競り勝つことはなかった。2本の槍を飛槍に切り替えた俺は縦横無尽に攻撃を繰り出す。
殺さなきゃいけないこともあるが、命を軽んじることはきっとあってはならないのだ。
あの魔族たちだって、背景をはじめから知っていれば殺さないという選択肢もあったかもしれない。もちろんそんな甘いことを言っていてはならない時もあるが、少なくともギレー火口ではそうであったはずだ。
「自分の都合だけで誰かに害をなす!それはお前が神から受けた理不尽と何が違うってんだ!!」
俺がかつて木山から受けた、らしい理不尽はそういったことだ。すでに記憶は無くなってしまったが、俺の受けていた理不尽は木山の都合により与えられていたもの。それを受けていた者が、それを憎むものが同じことをしていいはずはないのだ。
「復讐も憎悪も悪いことなんてねぇよ!!神に喧嘩売りたきゃ応援だってしてやるよ!!だけどな、その過程で犠牲を出してちゃお前もその神とやらと何ら変わんねぇんだよ!!」
飛槍によってサイモンの剣が宙を舞う。俺はその隙を逃すことなく槍を手に持ちスキルを発動した。
「魔槍召喚!!ロンギヌス!!」
かつてキリストを処刑する際に使ったとされるその槍は、神殺しの槍。悪魔とはすなわち天使が堕天したもの。つまりは神と同じカテゴリーの存在だ。
「なら止めてみろ。お前が正しいと思うなら力を示せ」
槍を振りかぶる俺の目の前で、サイモンの魔力が中心に向かって圧縮していく。
こいつ、自爆でもするつもりか?!
「この期に及んでそんなこと、私が許すと思っているんですか!?」
俺達の攻防の際、一切攻撃に参加していなかったカナデだが、何も遊んでいたわけではない。その間に魔力を限界まで凝縮し、撃ち込むチャンスを狙っていたのだ。
「今度こそ燃やし尽くします!!完全焼却!!」
もはやそれは炎というには生温く、かといって炎以外の表現が見つからない。それほどに完璧なまでの炎だった。
全てを燃やし尽くす劫火が自爆を企てたサイモンを襲いその身を焦がす。もはや逃れる術はない。全ての魔力を再生に回すことでギリギリ耐えているようだが、燃え尽きるのも時間の問題だろう。
「宣言通り止めてやる」
振りぬいた槍はカナデの炎を突き破り、そしてサイモンに突き刺さった。
「見事」
その一言と共に、ついにサイモンは炎の中に沈んだのだった。
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