第64話 全ての真実
誤字のご指摘を前回もありがとうございました。皆様の優しさに助けられています。
第64話~全ての真実~
“検索結果:『アスタロス』 全悪魔の中で6位に位置する大悪魔。座天使の王であり、過去と未来と秘密の番人。40の悪魔の軍団を率いる大悪魔。見通した過去と未来の事実を捻じ曲げる近づく者全てを毒の息で殺しつくす”
「ここまで私の邪魔をしてくれたお前たちに敬意を表し、質問することを許そうじゃないか。私に聞きたいことがあるのではないか?例えば私の目的などな」
俺とカナデの同時攻撃を意に介すことなくそう投げかけるリッチモンド伯爵。
インデックスの検索によれば、どうやら先ほどの美女は悪魔であり、しかも無数に存在すると言われる悪魔の中でも6番目に位置するというとんでもない存在のようだ。
だがそれなら先ほどの美女のただならぬ威圧感も、今俺達と対峙しているリッチモンド伯爵のばかげたオーラも納得がいく。納得がいくと同時に乾いた笑いすら出てくるけどな。
「へぇ、教えてくれるのか?」
「いいとも。お前たちには怒りと同時に感心もしているのだよ。他の地方ならともかく、私の掌握しているこの北部地方であれだけかき回してくれたのだからな」
「そりゃどうも。じゃあ聞かせてもらおうかな」
「なんなりと聞きたまえ」
そう言いながら笑みを浮かべるリッチモンド伯爵は、今のところこちらに攻撃をする素振りは見られない。それは明らかに強大な力を得た者の余裕だろう。俺達が見せていた慢心とは違う。絶対的な強者ゆえの当然の行為なのだ。
「お前の目的はなんなんだ?それとさっきの女は誰で、お前は一体何をしたんだ?」
ならその隙を利用するしかない。正面からぶつかっても勝ち目は薄い。なら時間を使い、少しでも打開策を探るのがこの場で一番の作戦と言えるはず。
時間を稼いでいれば、別動隊として動いているエリザ達が合流する可能性もある。せっかく相手からその時間を作ってくれようとしているのだから、それを利用しない手はない。
カナデもそれをわかっているのか、俺の背後で大人しくしてくれている。このチャンスを生かさなくてはならない。
「そうだな。まずは話を始める前に私の正体から話そうか。でないとこの後の話に繋がらないのでね」
そう言うと、リッチモンド伯爵は何かを呟く。それと同時に今まで立派な角が生えていたはずの顔はどんどんと変化をしていき、頭部に2本の角という、まさに魔族特有の特徴が現れたのだ。
「やはり自分の体はいい。数年間も使った伯爵の体にも多少の愛着はあったが、やはり自分の姿に勝るものはないな」
こういった状況はもちろん予想していた。明らかに性格すら変わってしまったとの証言が出ているのだから、数年前に誰かがリッチモンド伯爵に成り代わったとしてもさして不思議はない。
それに、思い出したくはないが、最初、シルビアス王国で俺が魔族として捕まった時、確かに王女は言っていた。魔族には人の思考に干渉する能力があると。
だとすれば魔族が成り代わっていたというのは想定の範囲内であったといえる。ゆえに俺は驚かない。だがその反応は魔族にとっては少々意外だったようだ。
「おや?驚かないのか?」
「そういうことも考えてはいたからな。はっきり言って想定の範囲内だよ」
「なるほど。少し残念ではあるがそれも当然か。君は私の策を正面から打ち破ってきたわけだ。私の思考もきっとある程度は推測していたのだろう。それでどうだった?私の目的はわかったかね?」
リッチモンド伯爵もとい、魔族は俺にそう問うた。最後まで分からなかった目の前の魔族の目的。正直なところ今でも正しい答えはわからない。わからないが、これまでの言動からある程度の予測はできた。
「まず最初にお前は魔族だ。それがどういうわけかリッチモンド伯爵に成り代わり人の縄張りで過ごしている。それをする理由をまず考えないといけない」
俺はまだこの世界の種族についてよく知らない。だが少し聞きかじったところによると、魔族が主に住んでいるのは、今俺達がいる大陸ではなく別の大陸だそうなのだ。
その大陸はここよりはるかに瘴気が濃く、人は住むことが出来ない過酷な地。だが魔族にとっては住みやすいところと聞いている。
その住みやすい場所からそうではないところへ来た。その理由はそうせざるを得なかったからだ。
「お前はさっき言っていた。自分を否定したすべての奴らを見返してやると。それを考えれば、お前はもとは魔族の住む大陸にいたが、なんらかの意見の対立から孤立。居場所を失い追い出されたか、逃げて来たってところだろう」
「続けたまえ」
「否定した奴らを見返す、いや、復讐するためには力がいる。そのためにお前はこのアーネスト王国を拠点に力をつけることにした。北部地方を選んだのはここが紛争地だからだろう。安定した場所よりもいざこざがある場所の方が紛れ込みやすいからな」
そうしてアーネスト王国北部地方を拠点と決めた魔族は、そのトップであるリッチモンド伯爵と成り代わる。
「トップになったお前はその権力を最大限利用し自身の目的を達成しようとした。街の防備を整え領土を増やし、国内の邪魔者を始末しようとしたんだ」
ここまでに数年をかけ、そして今日。ついに魔族は目的を達した。最上級悪魔の力という、化け物じみた力を手に入れることによって。
「その力を持ってお前は自分を否定した者に復讐を果たす。これがお前の目的だよ」
俺の言葉を黙って聞いていた魔族の表情はなぜだかとても嬉しそうに見えた。まるで自分を理解してくれる人を見つけたと思ったのか、非常に上機嫌に見えたのだ。
「それだけの情報でよくそこまで推察したものだ。だが足りないな。その推理では50点だ」
告げられた点数にさして疑問はない。俺自身もそう思っていたからだ。
俺の推理には肝心のものが抜けている。俺が答えたのは、あくまで目的への手段にすぎず、なぜそんなことをしたのかということが抜けているのだ。
「もっとも何も知らない者がそれを想像しろという方が土台無理な話なのだがな」
「なら教えてくれよ。お前がここまで回りくどいことをしてやろうとしたことを。一体何を目指しているのかをさ」
時間稼ぎとしては申し分ない。会話が続けば続くほどに戦略の幅が広がっていく。だがそれと同時に俺は知りたかったのだ。ここのところずっと考え続けていたリッチモンド伯爵の目的。
結局は魔族だったのだが、ついぞわからなかった目的がどうしても知りたかったのだ。
「そうだな。さっきも言ったが、私はお前たちを評価しているのだよ。だからこそ教えよう。私の真の目的を」
言葉を区切り一呼吸をおく魔族。そして紡がれた答えは、俺の想像を大きく上回るものだったのだ。
「私の目的は神の討伐だよ。この世を牛耳り、そして自分の思うままに動かそうとする神のな」
再び出て来た神というワード。どうやら俺はまたこの言葉と向き合わなければいけないようだ。
【大切なお願い】
いつも読んで頂きありがとうございます。皆様のおかげでいつも力をもらっています。
そんな皆様にお願いです。ワンクリックで構いません。少しでも気に入っていただけましたら、このページの下にありますブックマークをお願いします。
私の目標であった100ポイントについに到達しました。本当にありがとうございます。次の目標である500ポイントに向けて頑張っていきますでよろしくお願いします。
是非あなたの力を私に貸してください。もしさらにお手伝いしていただけるなら、評価もしてくださると非常に嬉しいです。
ストックの方は今年分は出来ています。隔日でこれからもしっかりと更新していきますので是非これからもよろしくお願いいたします。




