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第33話 圧倒的な蹂躙劇

いつも誤字を指摘していただきありがとうございます。自身の校閲ではどうしても見落としてしまうようでとても助かっています。

第33話~圧倒的な蹂躙劇~


 本来魔物と人間との間には、力関係で圧倒的な差が存在する。力、体力、魔力。全てにおいて人間の平均よりも魔物が上回ってしまうのだ。


 しかしそれを覆すのがスキルであり知力だ。ただスキルという力を持てばいいというわけではない。それをいかに効率よく使い、相手に対し優勢を取るかという駆け引きが求められる。


 そしてそれができたからこそ、人間はこの剣と魔法のファンタジー世界で繁栄し、そして強く生きているのだ。そうでなければ魔物に駆逐されるどころか、魔族や亜人種に滅ぼされていただろうから。


 そしてその事実は元の世界、つまり地球でも同じこと。地球に魔法やスキルという物は存在しなかったが、それに負けずとも劣らない科学という力を使って人は地球を制した。


 どうあがいても敵わない動物や植物、果ては微生物や細菌にでさえも、人間は科学という英知で打ち勝ったのだ。


 知力は時に力を覆す。相手が強大な力を持ち、圧倒的な数を誇ろうとも、それを打ち砕くだけの可能性を秘めているのだ。


 過去にかの織田信長が、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った時のように。


「とか解説してみたけど、これじゃどっちが魔物側かわかりゃしねぇじゃねぇか」


 数少ない軍勢で大量の魔物達と激突する。絵にかいたようなファンタジーの王道の展開なのだが、俺の知るその様子と今の展開はどうにもかけ離れてしまっていたのだ。


 火口から無限に湧いているかのように発生する魔物、その数は百、二百では効かず、千はゆうに超えているだろう。


 しかし今回ばかりは数は力とはならなかった。


「あははははははっ!!やっぱり燃やすと気持ちいですねー!!!」


 高笑いしながら放たれるカナデの深青の炎に焼かれる魔物達。ボルケーノ・バイソン、フレイム・リザード、ナパーム・オーガに、インフェルノ・ガーゴイルなど、様々な火山地帯で力を発揮する魔物がいたはずなのだが、全てが灰も残らずに燃え尽きるさまはまさに圧巻。能力の検索をする暇さえなかった。


『やるなカナデの奴!!私も負けるか!!喰らえー、土偶ビーム!!』


 ふざけた技名から放たれる圧倒的な攻撃。もはや自分で土偶と言っているのでそう呼ばせてもらうが、突き出した腕から放たれる細身のビーム。


 いかにもか細く見えるビームなのだが、横なぎに魔物へと撃たれたそのビームは、着弾した瞬間に全てを切り裂き地面ごと真っ二つに切り裂いた。


 炎の巨人であるスルトの炎熱を極限まで圧縮したビームだ。その熱量はすさまじく、切り裂かれた切断面は溶解してみるも無残な形となってしまっている。


 ちなみにスルトのステータスなのだが、こうなっている。


“検索結果:対象のステータス

 名前:スルト・ムスペル(土偶)

 種族:炎巨人

 適正魔法:炎熱魔法

 スキル: 炎熱支配 害をなす魔法の杖

 ステータス 攻撃:32789

       防御:11723

       素早さ:4448

       魔法攻撃:67803

       魔法防御:37935

       魔力:44000”


 本体が封印され、俺の作った訳の分からない土偶という器に入った状態でこれだ。人型のエリザには及ばないにしても、それでも俺やカナデよりもはるかに強い。


 スキルもレベルなどを見ることが出来ないのはエリザの時と一緒だが、それでも多少読み取ることが出来ているのはやはり器の作成者というのが関係しているのだろうか。


 これが伝説の魔物と呼ばれるものの力。エリザにしてもスルトにしても、その気安さからつい忘れがちになるが、どちらもこの世界において圧倒的強者ということだ。


 そんな存在がこの二人を除いて残り5柱存在している。今のところこの二人は俺に対して友好的だが、その関係もいつまで続くかはわからない。これから出会う可能性のある残りの5柱については、敵対する可能性だって十分にある。


 そう簡単でないことはわかっているが、俺自身がそれに対抗しうるだけの力を得なくてはいけないのだろう。


 圧倒的な力による理不尽に殺されないように。


「ここまでは氷属性の魔法しか使っておらんかったからの。今回は別の魔法を見せてやろう」


 その言葉と共に突如として現れたのは、山道を覆いつくす、いや、もはや山をも吹き飛ばさんとたけり狂う竜巻だった。


「脆いのう。この程度で粉々になってしまっては張り合いの欠片もないんじゃがの」


 さして大したことをするでもない、まるでごみを払うかのような気軽さで扱われる凶悪な魔法。エリザの龍魔法が魔物を呑み込み蹴散らしていく。


 一瞬前に思ったことを即座に打ち砕かんとする勢いの強さを目の当たりにするが、この程度で折れるような弱い心は持ち合わせてはいない。


 もしこの程度で折れてしまうような心であれば、とっくの昔に俺はこの世とおさらばしていただろうからな。


 カナデ、スルト、エリザによる魔法攻撃により大半の魔物が消滅していく中、俺はと言えば撃ち漏らしを処理しながら周囲の警戒をしていた。


 今回のスタンピード。確かに俺達が原因となっている可能性が高いのだが、どうにもそれだけではない気がするのだ。


 動きがあまりにも作為的すぎる。この世界についても魔物についても、まだまだ知識が足りない俺だが、ここまで全ての魔物が統率された動きをするものなのだろうか。


 人間であれ動物であれ、どんな集団であってもそこにはずれた存在が必ずいるものだ。大多数が右を向いたとしても、一定数は逆を向いてしまう。場合によっては動かないものすら出てくる始末だ。


 個性という名の独立性による弊害。これは例外なく起こりえる事態であるはずなのに、こと今回のスタンピードにおいてはそれが見られないのだ。


 もちろん俺がそのはずれ個体を見落としている可能性はあるが、飛槍によって上空から視認できる範囲でそういった存在は確認されていない。


 火口付近から一直線に俺に向かって飛んでくる、ボム・バードを切り刻みながら思考する。


 もしこのスタンピードが作為的なものだとしたら目的はなんだ。洞窟内に魔族がいたことを考えれば、このタイミングでスタンピードが起こっている以上、それに関係のある者が犯人である可能性が高い。


 なら魔族が犯人だとしたらこのスタンピードでどんな利益を得る?


 洞窟内の魔族はスルトを復活させ、何かと戦おうとしていた。少なくともそれは敵対している人間に対してではないようだったが、魔王の勅命でもあったことから重要度の高い案件であるのは確かだ。

 それに失敗したことに気づいた仲間の魔族が腹いせにスタンピードを誘発した。筋は通るが可能性は薄いだろう。


 あの魔族はそれなりに戦闘力を持っていたし、何より魔王から勅命を受けられる地位にいたということだ。


 その魔族が殺されたのだ。冷静に物事を考えられる奴なら、そんな強者が近くにいるのに自身に目が向いてしまうようなことをするだろうか。


 最悪命を失う可能性があるのだから、まずは魔王に今回の顛末を伝えることが何よりも優先されるだろう。


 しかしそれでも事を起こしたということは、それ以上に大事な理由があるのだろうか。


 いや、もしかしたら魔族ではなく別の存在の仕業という可能性もあるのだし、そもそも誰も犯人など居らず、俺の推測が外れていて環境変化による自然発生というだけなのかもしれない。


 いずれにせよ、現状俺が持つ情報だけでは答えを導き出すことは不可能だ。犯人がいるにせよいないにせよ、無限湧きでもしているかに思える魔物の数も段々と減ってきている。この4人で戦っている以上、殲滅も時間の問題だろう。


 そう思い、戦闘に意識を集中しようとした時だった。


『火口付近に誰かいるぞ!!』


 いつの間にか上空にいた俺の傍に浮かぶスルトがそう告げる。


“検索結果:火口付近に魔力反応あり。魔力の波長から種族は魔族の可能性が大。洞窟内にいた魔族よりも魔力量は低い”


「当たりだな」


 自分の予想が外れてはいなかったことに少しだけほくそ笑み、俺は一気に飛槍で火口に向けて飛ぶ。自身の推測が確信に変わるのを感じながら。


【大事なお願い】

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隔日更新ですが、ストックも今のところしっかりできておりますので是非よろしくお願いいたします。

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新連載を開始しました。 【『物理特化ですがなにか?~魔術は苦手だけど魔術学院に入学しました~』 是非こちらもよろしくお願いします!!
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