第149話 手荒い歓迎
第149話~手荒い歓迎~
地上の砂漠にそびえるまるでピラミッドのごとき古代遺跡の外観とは一転、地下の入り口はまさかの自動扉というそのギャップに俺はリアクションがうまく取れないでいた。
「すごいぞキョウスケ!これどうなってるんだ!?」
「自動扉をみてはしゃぐスルトさん。見た目幼女なんでそのままんまはしゃぐ子どもですねー。なんだかほんわかします。はっ!?これがまさか母性という奴では!?」
いつものようにはしゃぐ二人はいつものごとく放置して、一足早く中に踏み込んだ俺は、その中の光景にさらに驚愕することとなる。
「どっかのゲームの地下研究所かってんだよ……」
中の光景は殺風景なビルの中。某ゾンビゲームの根源となった企業の持っていた施設のような雰囲気と言えば説明が早いだろうか。この中でよからぬ実験が行われていると言われても納得してしまいそうであるが、さらに俺を驚かせたのはそこにいた俺達の行く手を阻むように立つ影を見たからだった。
「シンニュウシャヲカクニン。コレヨリハイジョシマス」
「すげぇな。街中は基本中世、よくて近代史なのに、この建物中は一気に未来に突っ走ったぞ。猫型ロボットでもいるんじゃねぇか?」
そこにいたのは一体のロボット。人型の骨格モデルにメタル感の強い外皮を纏わせたようなモデルであるそれは、さっきの某ゾンビ映画よろしく、某〇―ミネー〇に登場するロボットようであったのだ。
ロボットが無造作に腕をこちらに向ける。その様子に警戒をした俺であったが、不意に拳の関節が下にずれたかと思うと、そこから飛び出したのは銃口。少しばかり予想していたとはいえ、このファンタジーの世界においてここまで対極の存在がいることに驚きを持ってしまったとして誰が文句を言えようか。
「ハイジョカイシ」
言葉と共に打ち出されたのは、9mmパラべラム弾。主に拳銃に使用される弾丸だが、その大きさと扱いやすさ故機関銃にも使用されることが多い。
その特性を存分に生かしたロボットの腕から放たれた9mmパラは、機関銃の連射を生かして俺と、その後から入って来たカナデとスルトに襲い掛かる。
「なんですかあの男の人のロマンを詰め込んだようなロボットは!?」
「というかロボットってなんだ?」
襲い掛かるとは言っても所詮は弾丸。いや、普通の人にしてみれば所詮などと言う言葉は妥当ではないのかもしれないが、生憎と俺達はその普通からは外れている。
ロボットから放たれた弾丸だったが、カナデはスキルに物理無効を持っている上に幽霊だ。そもそも物理の塊である弾丸など効くはずがない。
スルトも同じくで、見た目は子どものように見えても中身は伝説の魔物である炎の巨人だ。目の前に薄い炎の壁を出現させると、そこにあたった弾丸は瞬く間に溶けていった。
そしてロボットの一番近くにいた俺はというと、ハイミスリルの槍で弾丸を全てはじいた上で、一気にロボットの頭部を貫いた。
「…ガッ、ハイ……ジョ……」
なんともありきたりな断末魔とでも言うかのような台詞を言い残してその動きを止めるロボット。もしここに侵入したのが普通の人間であったのならば非常に厄介な敵であったはずのそれは、相対して数秒で物言わぬスクラップと化してしまった。
「これでますますこの世界に地球の化学技術が使われている可能性が高まったな」
剣と魔法が謳歌するこの世界において、そもそも機械などの科学技術が進歩するはずがない。科学とは人類が生活をより豊かにするべく発展させたものなのだから、すでに魔法という便利さのチートみたいなものがあるこの世界で発展するはずがないのだ。
にもかかわらずこの施設内には科学の最先端と言うべきロボットがあり、さらには腕の部分を変形させて銃撃を行うなどと言う、まさにロボットアニメのようなことまでしてきたのだ。これが確たる証拠と言わないのであれば、俺はこれ以上の証拠を提示できそうにない。
「恭介さん。どうします?」
「無論、進むだろ。この施設には何かあることは確定だ。鼠一匹逃がさないくらいの気持ちで隅々まで調査するぞ」
ここには何かがある。予感が確信に変わった俺達は、建物の奥へと進んでいくのだった。
◇
「すごいですよこれ!なんかビームサーベルみたいなの出してきてますもん!!」
「こっちはなんか火炎放射撃ってきたぞ!私相手に炎って段階で意味ないけどな」
「で、こっちはレールガンと。すげぇなこれ。なんの科学博物館なんだよ」
地下にあった謎の建造物。その中を進む俺達は現在非常に手荒い歓迎を受けている真っ最中だった。
そもそもこの古代遺跡。情報では上層部から侵入した際に現れる魔物はすべて砂漠に関するものだったはずだ。サンドリザードにサンドウルフ、少し強くなるとサンドプラントやサンドゴーレムなどが確認されているが、こんな明らかにどこぞの未来兵器のような魔物がいたという記録はない。
つまりはこの建物、地上に見えていた遺跡部分と今俺達がいる部分はまったくの別物と考えるのが自然。上部には入ってないのでどんな場所なのかは知らないが、少なくとも下よりも有益なものがあるとは考えにくい。
「いやー、まさかこんなロマンの塊みたいな敵と戦えるとは思ってませんしたよ私!まぁ効かないんですけどね、幽霊なんで」
「普段忘れそうになるけどお前って幽霊なんだよな。普通に実体化してる時の方が多いから忘れそうになるけど」
「そりゃそうですよスルトさん!だって実体化してないと恭介さんと触れ合えないじゃないですか!!そんなのは死活問題です!!」
「死活問題ってそんなに軽い問題だったかな?」
軽口を言い合うカナデとスルトだが、その間にも進んでいる通路の奥からはロボットがわらわらと際限なく襲撃をしかけてきている。
最初にあったロボットは内蔵型機関銃という、割とオーソドックスな兵器であったが、施設を進むにつれてだんだんと武装している兵器が物騒になってきていた。
ビームサーベルやレールガンなど、そもそも人型のロボットの体にどうやって取り付けたのか不明すぎる兵器がこうも数多く出現してくるところを見ると、どうやらこの施設を作った者達の科学技術はすさまじかったと言わざるを得ないだろう。
だが、そんな凶悪なロボット部隊であっても俺達にかすり傷一つつけられないのだから不憫なもので、俺達は立塞がるロボットたちの機能を停止させつつさらに施設の奥へと進んでいく。
探索中に気付いたのだが、どうやらこの施設はここよりもさらに地下に繋がっているらしく、上に見えていた古代遺跡はただの氷山の一角にすぎなかったらしい。
「これだけの防衛機構があるんだ。何かなきゃおかしいとは思うんだが」
そう思い探索を続ける俺達だが、すでに二階層は下に降りてきているにも関わらず、ここまでさしたる成果は得られていない。
あるのは通路という通路に現れる多種多様な武装を持つロボットたちだけであり、それ以外の情報は何一つ得られていないのだ。
「しかしこのロボットは固いですよねー。確かに手加減はしてますけど、それなりの火力で燃やしてるのに溶けないってなかなかですよ?」
「それは私も思った。こいつら下手したらウールにいたヒュドラよりも炎に対しては耐性があるかもしれないよな」
すでに何体目かわからないロボットを倒し、人心地ついていた時、カナデとスルトがそう言っているのが耳に入る。
「お前たちが相当手加減してたからってわけじゃないのか?」
「そりゃもちろん狭い建物の中だし、それなりに気は使ってるけどそれでもこいつらの耐熱性は異常だぞ?」
「ですよねー。あの炎ならさっき戦ったサンドワームなんて一瞬で消し炭でしょうから」
それは確かに異常だった。特に深くは考えて居なかったのだが、確かにこのロボットたちはおかしい。そもそもすでに誰もいなくなって久しいであろうこの地下の施設であって、なんの損傷もなく動くロボットなどどう考えてもおかしいのだ。
しかもこれまで襲い掛かって来たロボットにはしっかりと金属の光沢があり、錆びているなんてことがないのはもちろんのこと、そもそも機能的に劣化しているところも見受けられない。
「インデックス。すぐにこいつらを解析しろ」
普通に考えればすぐにわかることだが、どうやらこの施設のあまりの異常さにそんな簡単なことすら見落としていたようだ。冷静さを欠けばこんな簡単なことにすら気づけない。だがここでそれに気づけたのは結果オーライというところか。この先に何が待っているにしろ、もう一度しっかり頭を落ち着けることが出来たのだから。
“解析が終了しました。ロボットの使用材料の主はミスリル、ステンレス、チタン、ジュラルミンです”
インデックスの言葉が脳内で響く。なるほど、ミスリルを除いてその材料は、まさに地球のロボット工学などで広く普及している素材で形成されている。
ここまでは予想の範疇。だがインデックスの解析により続いた言葉に、俺は再び驚かされることとなるのだった。
“深部のコアとなる材料に使用されているのはおそらくハイミスリルと考えられます。合わせてハイミスリルの構成材料に関しての解析も終了しました”
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