第123話 帝都での戦い㉓
第123話~帝都での戦い㉓~
バルベリスの力の付与は俺に新たな力を与えた。
種族の進化。
もともと人間だった俺がエリザの血を取り込み龍人になり、そしてサイモンとの戦いで龍戦士に進化した。そして今、俺はまた新たな種族へと進化を遂げることとなっていた。
名前:斎藤 恭介
種族:龍騎士
レベル:63
適職:反逆者
適正魔法:身体強化魔法(レベル63)
スキル:龍槍術(レベル28) 錬金術(レベル25)
人工知能(レベル3) 収納(レベル27)
見切り(レベル18) 龍化(レベル22)
血の代償(レベル11) 魂の糧(レベル5)
未来視(レベル18) 過去視(レベル18)
魂魄強化(レベル3)
ステータス 攻撃:9932×13.6=135075
防御:9874×13.6=134286
素早さ:10399×13.6=141426
魔法攻撃:8575×13.6=116620
魔法防御:8356×13.6=113641
魔力:9221×13.6=125405“
新たな種族は竜騎士。龍戦士より一段上の種族へと進化を果たしたことにより、俺のステータスは飛躍的に向上を見せていた。そしてスキルもまた新たなステージへと足を踏み入れたものがあった。
人工知能。かつて索引というスキルでインデックスと言う名前で俺が非常に重宝していたスキルが、とうとうレベル30を超えスキル進化を果たしたのだ。
“敵を確認。マスターとのステータス差から最適解を導きます”
新たなスキルへと進化を果たしたインデックスは、俺にそう告げ自身で思考を開始する。これまでのインデックスはあくまで索引。こちらが知りたいことに対してのみ回答をするというものであったが今は違う。人工知能、つまりAIとなったインデックスは自身で考え、成長し、その上でその場にあった最適解を導き出すことができるのだ。
“能天使が動きます。未来視の発動を進言します”
機械よりの口調から、少しだけ人間味のあるしゃべり方になったインデックスがそう言った。スルトに向けられた拳を止めた俺に対し、能天使は標的を変えて新たな攻撃を加えようと拳を引く。
「お返しだ」
だがそうは問屋が卸さない。俺は未来視で能天使の攻撃の軌道を予測し、攻撃を仕掛けるのに最適な間合いへと体を移す。発動するのはゲイ・ボルグ。朱槍が顕現し、空を切る能天使の拳に合わせて能天使の体へと突き穿つ。
「あひゃあぁっ!!」
だがそれは能天使も予測していたのだろう。俺は先ほども似たような攻撃をして能天使に手痛い一撃を浴びているのだ。いかに知能がなくなった能天使といえど、こと戦いにおいてはそうではない。しっかりとこちらの攻撃を分析し、その上で痛烈な一撃を見舞ってくるということはこれまでの攻防の中でしっかりと分かっている。
朱槍のカウンターが能天使を捉える直前、その一撃を体を捻ることで躱そうとする能天使。だが今度はそうはいかない。さっきは渾身の一撃を躱され、その上で手痛い一撃をもらったが今度はこちらの番だ。
ステータスの上昇に加え、龍化を発動している俺のステータスはさらに上がっている。それでも能天使にはまだ及ばないが、ことこの攻防に限っては話が別。俺のことを先ほどと同様だと思い、最小限の動きでしか回避をしていない能天使に今なら攻撃が届くのだ。
捻った体を朱槍がすり抜けていく直前で、俺は強引に槍の切っ先を手首の力だけで変えた。それはさっきまでの俺の力では出来ず、種族が進化した今だからこそ出来る攻撃。軌道の変わった槍に対し、能天使は今度こそ対応が間に合わず、その身に朱槍の一撃をまともにくらい吹き飛んでいく。
「これで一矢報いただろ」
意趣返しというにはお粗末だが、とにかく能天使に一撃を加えることに成功した。だがおそらく同じ手を二度も喰らうような奴ではない。もう一度同じことをしても、今度は完全に躱されるのが落ち。だからこそ、俺は次の一手を講じることとした。
「カナデ!!いつまで寝てんだ!!とっとと立って手伝いやがれ!!」
そう言い放った俺の言葉は、これまで俺が倒れている間に奮戦していた者に対するものとしてはありえないほどに辛辣で、普通なら激怒してもいいくらいの言い方だ。
「少し寝坊したくらいいいじゃないですか!!ブラックです!恭介さんはブラック上司です!!というかいつまでも寝てたのは恭介さんのほうだと思いますよ私は!!」
しかしカナデは口では文句を言いながらも俺の横に並び立つ。しかもその体は、先ほど能天使から受けた傷などすでに無くなっており、それどころか力がみなぎっているようにすら感じられるほどにはつらつとしていた。
「一度ならず二度となると、これはいよいよ決まりかもな」
「ですねー。ですけど恭介さんが強くなれば私も強くなるなんてロマンチックでよくないですか?これはもう愛の力ですよね!もはや結婚秒読みも間違いないですっ!!」
自分の言葉で悶絶するカナデは放っておいて、俺はカナデのステータスの解析をインデックスに依頼する。
“名前:カナデ
種族:幽霊族
レベル:70
適職:反逆者
適正魔法:焼却魔法(レベル41)
スキル:飛翔(レベル8) 物理無効(レベル3)
魔導の成長 青蓮炎(レベル5)
ステータス 攻撃:57
防御:57
素早さ:4387
魔法攻撃:9687×15=145305
魔法防御:9391×15=140865
魔力:10995×15=164925”
カナデにはもとから回復薬を渡していたので、傷に関してはそれのおかげなのだが、だがカナデの持つ一つのスキルの成長は明らかにおかしかった。
スキルがレベル30になると進化を果たすというのは、インデックスにより知っていたことだが、カナデのスキルの一つはそれに則ることはない。いや、途中までは他のスキルと同様だったのだが、ある時をきっかけに進化が他の要因に連動し始めたのだ。
そのスキルは最初は卵だったが雛となった。そして目覚め、現在は魔導の成長となった。サイモンとの戦いで目覚めに進化したのだが、そのときの進化も今の進化も先に言ったように他の要因により進化を促されたようなのだ。
それこそが俺の種族進化。龍戦士となった時に魔導の目覚めへと進化し、竜騎士となった今魔導の成長へとさらなる進化を遂げたカナデのスキル。どちらも極限状態の戦闘中だったことを考えれば偶然と考えてもいいのだが、二度となればそうでないことは明白。偶然が許されるのは一度までで、二度目からは必然と考える方が間違いはないのだ。
「相変わらずぶっ飛んだステータスしてんな、お前」
「おかげさまで力がみなぎってますよー!!今ならあんな
とち狂った笑い袋なんかに負けやしません!!」
そう言って猛るカナデは確かに強くなった。ステータスは当然の事、スキルも全て進化を果たしており、普通の敵では相手になる者など存在しないだろう。
“スキルの詳細は表示します。魔導の成長:魔導に目覚めた者が辿る成長の過程。その頂はまだ見えず。全ての魔法ステータスを15倍にする”
倍率の上がった魔法ステータスはついに15万を超えた。だがそれでも能天使にはステータス上、未だ水をあけられている。俺達が戦う相手はそれだけ強く、そしてこれからさらに現れるはずの敵はそれ以上に強いはず。
「こんなところで負けてる場合じゃねぇな」
能天使という天使が中位、しかもその中で最下位ということを考えれば、その相手に躓いていてはどうにもならない。神に抗うと決めたのに、その部下たる相手に勝てないのでは話にすらならないのだ。
俺達では神どころか天使にも及ばない。そう考えたからこそエリザは去っていったのだろう。
「次に会ったらぶっ飛ばす」
そう心に誓うが、今はそれよりも目の前の相手だ。ステータスの大きく向上した俺とカナデ。一人では無理でも二人ならきっと活路を見出せる。そう思いカナデを見れば、ちょうど同じタイミングでカナデも俺を見る。
アイコンタクト、以心伝心。そんな難しい話ではない。ただ単純に、二人であの天使をぶっ潰すと確認作業をしたにすぎないのだ。
「おい、ちょっと待て。この期に及んで私をのけ者にするつもりじゃないよな?」
確認作業も済み、遠くで吹き飛ばした能天使が動く気配を感じた俺とカナデが飛び出そうとした時、後ろでそんな声がした。
「なんだスルト。諦めたんじゃなかったのか?」
「そうですよ。腕もなくなっちゃったんですから、休んでていいんですよ?後は私と恭介さんでやっつけますから」
「いや、あのさ。私、一応お前たちがやられたことに怒ってたんだけど、なんでそんな言われ方?あれ、私が悪いのか?」
なにやら首を傾げはじめたスルトだが、そろそろ時間がない。数秒もすれば能天使が再びこちらへ攻撃をはじめるだろう。だから俺はスルトに問う。
「まだあいつと戦う気はあるか?隻腕になって戦力は低下、おまけに一人じゃ勝てない相手だ。それでもまだ、あいつと戦うか?」
一度はやられかけた相手だ。完全にやられた俺がいうのもなんだが、スルトはあの瞬間、一度は負けを受け入れた。すでに格付けが済んだ相手と戦うというのは相応の覚悟が必要となる。だからこそ少し意地が悪い聞き方をしたのだが、スルトはもう臆することはなかった。
「今度は三人で一緒だろ?なら何も問題ない。それにあいつにはまだちゃんと一発入れてないんだ。それなのにこんなところで諦めてたまるか!!」
スルトの目に炎が宿る。そして消えかけていた炎が全身を包み、これまでで一番の勢いをもって真紅の炎を噴き上げた。
「その意気やよし!ですねっ!」
にこやかに笑うカナデもまた、深青の炎を噴き上げて臨戦態勢に入る。それを見た俺は、もはやなにも言うことはなかった。漆黒の翼を広げ、翼と同じく漆黒の魔力を噴き上げて槍を握り直した。
「決着をつけるぞ!!」
俺とカナデとスルトによる、能天使との戦いの最終局面の始まりだ。
いつも誤字をしてきただき誠にありがとうございます。皆様の優しさで成り立っている物語ですのでこれからもよろしくお願いいたします。
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