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ようこそ! 魔破街へ  作者: saika
14/15

学院の生徒達

「は~」


オレはため息を吐きながら、校舎から出た。


外はすでに真っ暗。


…そしてオレのお先も真っ暗だ。


つーか見知らぬ伯父と、親父が見えないところで争っていたなんて…考えたくもない。


それに親父に愛され、大切にされているということも…イマイチ信じられない。


幼いうちからこの魔破街へ閉じ込められて生きてきた父は、確かに愛情表現が下手なのかもしれない。


でも…それとこれとは別。


全く知らせないなんて、信用していないとも言えるからだ。


「と言っても、オレ自身も距離、置いてたもんな」


親父のことばかりは責められない。


オレだって、親父に歩み寄ったりはしなかった。


いつでも一定の距離を置いて、接してきたのはオレも同じ。


けれどどこか、心ではつながっていると思ってた。


例え言葉や態度に出さなくても、そういう絆があると、信じていた。


「何でそう信じてたんだろうな…」


けれど親父に売られた今でも、悲しい気持ちにも寂しい気持ちにもならない。


ましてや怒りや憎しみもわき起こらないから不思議だ。


それはこの街が特殊なせいか―。


…まあ特殊と言っても、中々良い所ではあると思う。


みんな、新人のオレに優しい。


確かに危険はある人達かもしれないけれど、ちゃんと語り合えば、分かり合える。


…きっと親父とオレも、必要だったんだろうな。


お互い、歩み寄ること。


いくら信頼関係があったとは言え、やっぱり語り合うべきことは多かったはずだ。


「親父と連絡、取れないかな…」


外部との連絡手段は無い。


けれど父はこの街の関係者だ。


そこを利用すれば、手紙でも電話でも何とかなるかもしれない。


明日、改めてムメイやイザヨイ、シュリにでも相談してみるか。


まずはオレが動かなければダメだ。


もう流されるままでは、いけない。


「自分のことは、それこそ自分で決めなきゃな」


この街に残ることや、父と外の生活に戻ることも―。


やるべきことや考えることは、たくさんある。


「でも少しずつ、前に進んでいこう!」


まずはこの街に早く慣れることだ。


オレは深呼吸して、男子寮に入ろうとした…瞬間!


 ドッカーン


「うわっ!?」


 パンっパパーン


「へ? 花火?」


季節外れの花火が、上がっていた。


しかも上がっているのは、どうやら学校の校庭辺り…でも裏の方の校庭か。


「ちょっ…何なの?」


女子寮から、サラが飛び出す。


「サラ!」


「あっ、サマナ! この音…花火?」


サラは夜空を見上げ、大輪の花火を見て、口をポッカーンと開いた。


「この仕業は…エンラね」


「エンラ?」


サラは顔をしかめながら、花火を見上げた。


「エンラは同じクラスメートよ。彼は火を使う犯罪者の家系でね。こういう風な火遊びが大好きなの」


花火って…火遊び?


まあある意味、そうかもしれないけど…。


「でもキレイだね。季節外れだけど」


「…そうね。こういう風な火遊びならば、まあ大目に見ても良いかもだけど」


「…なら普段は?」


「爆破、が多いわね」


…聞くんじゃなかった。


オレとサラの他にも、寮生や先生達が寮から出てきて、空を見上げた。


そしてサラと同じく、エンラの名前を口に出している。


「…ちょっと、何の騒ぎ?」


「あっ、コクヤ」


不機嫌な顔をしたコクヤまで出てきた。


「地下にまで音、響いてたよ。…コレ、エンラの仕業?」


「だってみんな言っている」


コクヤは空を見上げると、僅かに不機嫌さが緩んだ。


「コレ、サマナへの祝いじゃないの?」


「へっ? オレ?」


花火が祝いって…どういう意味だろう?


尋ねようとしたけれど、学校からスピーカーを通して声が響いてきた。


「サマナー! どうだ? オレ様の歓迎の花火は?」


「…ホラ、ね」


コクヤの口元が、歪んだ。


スピーカーからは、キンキンと少し甲高い男の子の声が聞こえてくる。


「でもオレ、エンラとはまだ接していないんだけど…」


ちなみに顔も覚えていないし、名前もさっき聞いた。


「アイツ、騒ぎが大好きなんだよ。元々火薬を使って壊すのが好きな一族だからね。うるさいったらありゃしない」


「…つまり、花火が関係の証ってこと?」


「そうじゃないの? ったく…。寝てたのに…」


確かにコクヤの目元はどこか虚ろだ。


「あっ、ここの髪乱れている」


「ん~」


少しはねている部分を手ぐしで直すと、ネコのように擦り寄られた。


…ネコっぽいな。


しかし次の瞬間、学校の屋上にどこからかスポットライトが当たり、一人の少年の姿を浮かばせた。


派手な色使いとデザインの洋服に身を包んだ、小柄な少年だ。


「彼がエンラ?」


「だよ」


「コクヤよりも小さい?」


「うん。それでうるさいから、みんなからはチビザルって呼ばれてる」


「…何か納得しちゃうな」


「サマナもそう呼んだら?」


「いや、それはもう少し仲良くなってからにする」


「サマナ! 魔破街へようこそ! これから仲良くしような!」


エンラは拡声器を片手に、笑顔で手をブンブン振っている。


「わっ悪いコではなさそうだね」


「バカではあるけど、まあ扱いやすいと思う」


確かに見た目も人なつっこそうで、明るそうだ。


「サマナー!」


「って、アンタ! いい加減になさいっ!」


 がつんっ


「あいたっ!」


「あっ、サラだ」


「流石は学級委員長。動きが早いね」


コクヤの言う通り、いつの間にかサラはオレの隣からいなくなっていた。


かと思えば、エンラの元へ行っていたのか。


「今、何時だと思っているのよ? そもそもこんな時間に花火を上げること、管理者達に報告はしてあるの?」


管理者達…!


それは母方の親戚たちのことだ。


いずれ、顔を合わすことになるだろうけど…どういう人達なんだろうな?


近くにはコクヤがいるけれど…コクヤと管理者達はあまり仲が良くなさそうだし。


後でタカオミかサラにでも聞いてみよう。


「歓迎に許可がいるかよ?」


「歓迎会ならともかく、花火なんてうるさい方法を取らなくても良いじゃない! 花火を上げるのならば、許可は必要だってアレほど言ったのに!」


二人の声は、拡声器を通してよく聞こえてくる。


「アンタ、無許可で火遊びするの、これで何度目よ? そろそろ処理班に眼を付けられるわよ。あたしだって、いつまでも庇いきれないんだから!」


サラの言葉を聞いて、オレは慌てて隣のコクヤを見た。


「処理班に眼を付けられるの?」


「ああ。あんまりオイタが過ぎると関わってくるけど…。まあ迎え撃ちにすれば、良いだけの話しだろう?」


「それはコクヤだけなんじゃない?」


「かもね」


コクヤはあっさりと頷いた。


「まあと言っても、本当に一度でも反撃すれば、ヤツらは引き下がる。そういうルールなんだ」


「…でもそれはエンラでも可能なこと?」


「アイツが扱う火は確かにスゴイ。けれど処理班はここの住人の特技を熟知しているからな」

 

「対処法を知っているってことか…」


「そっ。特にアイツは単純だから、攻撃方法も分かりやすいだろうね」


「あっあの、もしエンラに処理班が来たら…」


オレは作り笑いを浮かべ、コクヤに近寄った。


「…お断り。何であんなバカサルの為に、俺が動かなきゃいけない?」


コクヤはオレの言いたいことを察して、不機嫌に顔をそむける。


「そっそう言わないでよ。流石にオレのせいで眼を付けられたら、へこむし」


「ほっとけよ。…まあサマナが眼を付けられたら、動いてやらないことはないけど」


呟くように言われた言葉は、ちゃんとオレの耳には届いていた。


「ちなみに困ったら助けてくれるよな? な?」


「代わりに何をしてくれる?」


「おっオレができることなら、何でも」


「言ったな?」


ニヤッ、とコクヤは笑う。


あっ悪魔の微笑みだ…。


なまじ外見が中性的な美形な為に、思わず心臓が高鳴ってしまう。


「よし、なら取り引き成立だ。お前以外のヤツの為に動く時には、ちゃんと払ってもらうぞ?」


「どっ努力します…」


「楽しみにしているよ。お前が泣いてすがってくる時を」


処理班を相手にするのと、コクヤに貸しを作ること、果たしてどっちが地獄を見るだろうか?


途方に暮れていると、その間にエンラとサラにムメイが声をかけていた。


「二人とも、その辺にしとけ。大声で近所迷惑だ」


「ムメイ先生」


「う~。だったら今度は音の鳴らない花火でも作るか」


「それじゃあ花火の味がなくなる…じゃなくて。とりあえず校庭に来い」


三人の姿が見えなくなると、スポットライトも消えて、暗くなった。


花火もいつの間にか終わっていた。


「はあ~。それじゃあ俺は戻る」


「あっ、晩ご飯、食べた?」


「俺はいつも出前。今から寿司でもとるよ」


「えっ? 出前もあり?」


「ああ。サマナも一人で食べたい時は、出前にしたら?」


「うっうん。そうする…」


「んじゃね」


コクヤは億劫そうに手を振り、寮に戻った。


他の寮生や先生達、または音を聞き付けて顔を出していた住人達も、戻り始めた。


「サマナ、随分コクヤに気に入られたんだね」


今まで離れていてタカオミとカミヤが、連れ立ってやって来る。


「話をするぐらいはね。ところでタカオミ、サラが言ってたように、エンラは処理班に眼を付けられているのか?」


「ん~。まあエンラは少し、騒ぎすぎているからね。前々から注意はしているんだけど」


そう語るタカオミの表情は、僅かに暗い。


「この街はさ、個人的なことには殆ど口を出さないんだ。けれど被害が大きければ、流石に話も違うから」


「エンラは爆破をするって聞いたけど…」


「エンラはこれまで、街の至る所で爆破騒ぎを起こしてきた」


珍しく、カミヤが説明する。


「それでも一応気を使ってか、人のいない廃墟や場所を選んでいるものの、迷惑なことには変わらない」


「カミヤの言う通り、爆破って対処と処理が本当に大変みたいだから」


いや、人殺しも大変だと思うんだけど…。


まっまあこの街では、一般的な考え方は通用しないみたいだ。


「じゃあ今まで、犠牲者とかは出ていないんだ?」


尋ねると、タカオミは首を傾げ、両手を組んだ。


「うん? …ああ、そう言われてみれば、確かに犠牲者は出ていないな」


「被害は出ているけど」


あっ、コクヤの言う通り、確かに爆破は被害が出るな。


「でもまあコクヤの火の取り扱い方はスゴイと言われているし、せいぜい一ヶ月間、姿が見えなくなるぐらいじゃない?」


タカオミは笑顔で軽く言うが…絶対に、その一ヶ月間、エンラは無事ではいないだろう。


「なっ何か悪いことした気分…。エンラはただ、オレを喜ばせたかっただけなのに」


「そうとは限らないよ? 彼はハデ好きだからねぇ。サマナをダシにして、花火を上げたかっただけかも」


「だとしても、この街に来て、歓迎されたのは始めてだし。オレは嬉しかった」


「アレ? 歓迎したじゃん?」


「挨拶と行動は違うっ!」


社交辞令で歓迎を示すことなんて、誰でもやる。


けれどエンラみたいに、行動を起こしてくれると嬉しいんだ。


「じゃあ今度歓迎会でもやろうか?」


「…いや、止めとく」


けれど改めて言われると、何か照れる。


「カミヤに料理を作らせるよ。クッキー、美味しかっただろう?」


カミヤのクッキー…は確かに美味しかった。


…けれど同時にカミヤが毒使いだと聞いて、血の気も引いた。


「ああ、うん…」


「カミヤは料理も上手いし、腕を奮ってくれるだろう?」


タカオミに視線を送られ、カミヤは無表情ながらも頷いた。


「タカオミがそう望むのなら」


それって『歓迎会』じゃないっ!


オレは頭を抱えた。


やっぱりこの街の住人は、どこかおかしい。


けれどいちいちツッこんでいたら、オレの体力が持たないかもしれない…。


オレがうんうん唸っていると、ムメイとキバラ、そしてサラとエンラがこっちへやって来た。


「とりあえず、ロビーで説教な」



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