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ようこそ! 魔破街へ  作者: saika
13/15

サマナの出自

オレの父方の犯罪者歴は、ムメイが昨日語った通り。


問題は母方だった。


母方の血筋の先祖は、はるか昔より犯罪遺伝子の研究をしていた。


もちろん、表の世界には一切出てこない。


秘密結社というものの一つらしい。


そのうち、先祖達は研究の為に犯罪遺伝子の保持者達を集め始めた。


それが今の魔破街の最初の形だったらしい。


交通の不便な所に街を秘密裏に作り、そこに保持者達を集めた。


しかし保持者だからと言って、全員が全員、犯罪者になるわけじゃない。


彼らは時に人を愛し、子を成した。


時が経つにつれ、やがてここは魔破街という名前で、表の世界に知られるようになった。


その管理者はオレの母親の血筋の者達。


それは今も変わっていないらしい。


だがムメイが先程言った通り、母方もまた、犯罪遺伝子の持ち主。


…同類が同類を研究していたということか。


しかし時が経ち、母の血筋は安全性が高いことから街を出ることを許可された。


そして母は大学生の時に、父と知り合った。


父方もまた特殊な生き方をしていた。


父方の犯罪遺伝子の覚醒者はそもそも、どこか研究者タイプが多かった。


自分の興味の持ったことに、とことん突き進む。


そこにどんな犠牲を払おうが、自分の気が進むまで止まらない。


そういう気質が父方の血筋に出ていたのだろう。


例の医者の子供は、父親が処刑された後、この街へ連れて来られた。


この子供は自分自身を知る為に、犯罪遺伝子を研究することを始めた。


それから父方の者は全員、犯罪遺伝子の研究者となった。


彼らは高校まではここで過ごす。


しかし高校を卒業すると、外の犯罪遺伝子の研究チームと合流する為に、街を離れるのだ。


父は街を出て、外の大学へと通い始めた。


その時に、二人は出会ったのだ。


父は母が同類であることは知っていた。


だが母は自分が犯罪遺伝子の持ち主であること、そして魔破街のことは何一つ知らずに生きてきたらしい。


「どうして母は魔破街のことを知らずに生きていたんですか? 自分の先祖が作ったものなのに…」


「そこは複雑な事情があってな。出て行ったお前の母方の血筋の者は、この街を嫌悪していた。つまり嫌気が差して、出て行ったワケだ」


なるほど。ムメイの言わんとしていることが、理解できた。


嫌でここを出て行ったのならば、外に出た後、わざわざ自分の子供達に説明するワケがないか。


そうして温室育ちの母と、魔破街の研究者である父は結婚した。


しかし父方の血筋には、契約が存在していた。


それは外へ出た後、子を成したのならば、その子供は必ず魔破街へ連れて行くこと。


そして街の住人にさせることが条件となり、親は外での生活を許される。


「…では父の祖父達もそうやって、親父をこの街へ連れて来たんですか?」


「ああ。だから魔破学院には寮がある」


ああ、それは凄く納得ができる。


普通の人間と結婚した後、この街へ行かせるのに寮という存在があれば、普通の人間ならば安心するだろう。


「ではムメイさんと親父の関係は?」


ムメイは眼を細め、ため息を吐いた。


「同級生だ。アイツは小学生からここへ連れて来られたからな。俺も中学からは寮に住んでいたし、まあ腐れ縁だな」


「じゃあシュリやイザヨイとも?」


「ああ」


それで納得した。


男嫌いのはずのシュリが、オレにはどことなく優しかった理由が。


昔の同級生の息子が来たならば、少しは優しくできるだろう。


「…親父は母には魔破街のことは何一つ、知らせなかったんでしょうか?」


オレは俯き、呟いた。


それはずっと疑問に思っていたこと。


「多分…知らせなかっただろう。俺は何度か外に出ることがあって、その時に彼女に会ったが…とてもじゃないが、魔破街の存在に耐えられはしない人だろう?」


「…ですね」


眼を閉じ、深く息を吐いた。


子供のオレから見ても、母は純粋で幼い女性だった。


魔破街の真実どころか、自分の先祖のことさえ聞けなかっただろう。


でも知らずに逝けたのならば、それで良かったかもしれない。


一人息子のオレが、将来魔破街へ送り込まれることを知れば、耐え切れずに発狂していただろうから…。


「でも総合すると、オレは犯罪遺伝子の保持者を両親に持つということですよね? ならば魔破街側としては、もっと早くにこの街へ来させたかったんじゃないんですか?」


「それは昨日も言ったが、お前の親父が手放そうとしなかった。わざわざ高校生になってから寄越したのは、在留期間を少しでも短くする為だろう」


「ですがさっきのムメイさんの説明では、母方の血筋はこの街の設立者兼管理者なのでしょう? よく今の今まで黙っていましたね」


「だ~か~ら言ってるだろう? お前の親父が立場を利用して、手放さなかったんだって。お前達、しょっちゅう引っ越していただろう? アレは魔破街の追っ手を振り切る為だったんだぞ?」


…それは知らなかった。


確かに同じ土地に住むのは、長くても3年ぐらい。


短い時だと、それこそ2週間もいなかった。


慌ただしい生活だな~とは思っていたが、まさか追っ手がいたとは思わなかった。


「今回の引っ越しだって、魔破街の管理者達があんまりにせっつくから、渋々だったんだぞ」


「へぇ…。そうなんですか」


思いっきり遠い眼で、返事した。


するとムメイも眼を細める。


「…お前、どんだけ父親に愛されて、大切にされているか、自覚していないのか?」


「母が死んでからというもの、父はあんまりオレと接してこなかったので。会話だって1分も続いたら、良い方だったんですよ」


「アイツは愛情表現をよく知らずに育ったからな」


そう言えば、小学生の頃からここにいると聞いたな。


…父方の祖父は、あまり子供に愛情をかけない人だったんだろうか?


「そう言えばオレ、親戚に一切会ったことないんですよね。ムメイさん、オレの親戚のことは知っていますか?」


「それも教えてもらっていないのか?」


「はい、全然」


オレは笑顔で肯定した。


するとムメイは頭を抱える。


「…お前の父方は研究者として、全国に散らばっている。ちなみにこの街にも数人いるが…まああえて会いに行く必要もないな」


と物凄い遠い眼で言われても…。


「母方はさっきも言った通り、二部化している。一つは表の世界で生きていて、もう一つはこの街の管理者だ。…まあ管理者達の方はそのうち、イヤでも会うだろう。向こうがお前に会いたがっているしな」


「あちらの方が?」


出て行った親戚に、今更何の用があるんだろうか?


「実のことを言うとな、お前のお袋さんには兄貴がいるんだよ」


「母に兄が…つまり、オレにとっては伯父ですよね?」


「ああ」


ムメイは顔をしかめ、腕を組んだ。


「詳しく言うとな。お前のお袋さんの母親が犯罪遺伝子の持ち主だった。つまり祖母だな。彼女は魔破街の存在も理由も知っていた。そして長男である伯父には知らせていたらしい」


オレにとっては初耳なことに、眼が丸くなってしまう。


「それで伯父はこの街に興味を持ち、わざわざ越して来たんだ」


「えっ! じゃあこの街にいるんですか?」


「管理者の一人となっていて、お前を養子に迎えたいらしい」


「…はい?」


また話が変な方向に飛んだぞ。


「お前の伯父は結婚もせず、子供もいない。だからお袋さんが亡くなった後、お前をこの街へ引き取りたいと言い出した。兄妹仲は良かったらしいからな。でも親父は嫌がった。そこで引っ越し族になったワケだ」


「じゃあ追っ手の正体は…」


「ああ、伯父が差し向けていた。それをよくもまあ、かわし続けてきたもんだ。恐れ入るよ」


…妙なところで争いをしてほしくなかった。


と言うか、オレの意見を全く聞いてこないところが、二人してイヤだな。


よく母は相手をしていたものだ。


「お前の伯父は諦めていない。お前を養子として、この街の管理者の後継者になってほしいと願っている」


「えっ…」


何でそっちに話がいく?


思わず顔が歪んでしまう。


「ところが親父は嫌がる。高校を卒業したら、お前と再び一緒に暮らすことを望んでいる。果たしてどっちが勝つんだか…」


「って、ちょっと待ってくださいよ。そこにオレの意見は入らないんですか?」


「さあな。俺は分からん」


ムメイはきっぱり言い放った。


…確かに、オレも二人に口出せるか分からない。


けれどせめて卒業前までには、答えを出さなければいけない。


この街に残り、住人として生きるか。


それとも街を出て、表の世界で生きるか。


まあどちらにしろ、オレが犯罪遺伝子の保持者であることには変わらない。


先を思うと、ため息を吐かずにはいられなかった。



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