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ようこそ! 魔破街へ  作者: saika
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サマナ・犯罪遺伝子保持者

六時になる十分前に食堂へ行ったが、すでにムメイは来ていた。


一番奥の窓際の席に座り、オレに気付くと手を振ってくれた。


「もしかしてずっと寮にいました?」


「イザヨイといろいろ話をしてた。アイツとは同級生だったからな」


「じゃあシュリとも?」


「ああ。学生時代はよくつるんでいたな」


メニューを開き、オレはカレーを、ムメイはカツ丼を頼んだ。


食事中は普通に会話を進めた。


学院のことや街のことを聞き、しばらくは和やかな雰囲気で過ごせた。


食後になると、ムメイはソワソワした。


「ここってタバコ吸えないんだよな~」


「シュリも同じこと言ってました。寮内は禁煙なんですね」


「いや、寮の管理人室は別。他は禁煙になっている。一応」


…一応、と言うことは、黙って吸っている人がいるってことだろう。


しかも寮生達が。


雰囲気で言葉の意味を知り、オレはため息を吐いた。


まあタバコぐらいだったら、どこでも聞くことだ。


「じゃあムメイさんの部屋に移動しますか。もう少しお話したいですし」


「そうだな。そうしてくれるとありがたい」


ムメイはほっとしたように、立ち上がった。


暗闇に包まれた学校は、不気味な雰囲気がある。


けれどムメイは慣れているのか、とっとと中に入ってしまう。


宿直室は相変わらずタバコの匂いに満ちていた。


ムメイは窓を少し開けると、早速吸い出した。


「んで? 今度は何が聞きたい?」


「親父のことです」


「ぶほっ!」


驚いたムメイは、大量のタバコの煙を吐き出す。


オレは咄嗟に身を引き、煙から逃れた。


「寮ではしづらい話だったので、ここに移動してきたんです。…ムメイさん、親父とは結構長い付き合いですよね?」


「なっ何でそう思う?」


煙に咳き込みながら、それでもムメイの眼は真っ直ぐにオレを見ている。


「オレに対して、入れ込みが激し過ぎます。親父とは事務的な関係だけではないんでしょう? …もしかしなくても親父はここの出身で、ごくまれな例で街を出て行った者なんじゃないんですか?」


オレは真剣に話した。


するとムメイは頭をかき、渋い面持ちになった。


「…お前、本当に何も教えてもらっていないのか?」


「父は母の死後、オレのことなんてどーでも良かったんですよ。手元に置いていたのだって、この街へ売る為なんでしょう?」


「それは…」


「親父が例外的にこの街から出られたのは、後に生まれてくる自分の子供を差し出すのが条件―だったのでは?」


「っ!?」


…正直な人だ。


答えが強張った表情から分かってしまう。


「やっぱり…。この場合、犯罪遺伝子の覚醒率が高い・低いも関わらずですか?」


「…いや、そこは基準値が存在する」


じゃあやっぱり、オレは引っかかったモノなんだ。


どちらにしろ、逃げられなかったのは最早運命だったとしか言い様がないだろう。


「最初に知りたいので、聞いておきます。母は…普通の人間だったんですか?」


「…正直に言うと、そうじゃない」


「えっ?」


それは考えもしなかった。


あの純粋な、いつまでも少女のような母も、犯罪遺伝子の持ち主だったのか?


「フォローするつもりはないが、お前の母親はずっと昔にこの街に出ることを許可された血族なんだ。覚醒率が下がり、生き方も安全だと認識されたから、許された」


そして一般人として生きていたが、父と知り合ってしまった。


「じゃあ両親の出会いは何だったんです? オレという存在は、どんな理由でできたんですか」


「カルマ…」


困惑した視線を向けてきても、オレは正面から受け止めるだけ。


自分のことを知らないなんて、気持ち悪いだけだ。


特に今は特殊な環境に置かれている。


その理由を知らないままだなんて、ガマンができない。


「何も親父と話をさせてくれとは言いません。ムメイさん、あなたの知っている限りで良いですから、オレに話してもらえませんか?」


「だがな」


「親父からは別に口止めもされていないんでしょう? 話しても大丈夫ですよ」


どうせそこまで親父はオレに気をかけてはいないだろう。


そう言うとムメイは俯き、しばし黙った。


「…お前はそれを聞いて、どうする?」


「変なことを聞くんですね。自分自身のことを知りたいと思って、何かおかしいですか? おかしいのはこの街の方です。オレは新参者として、知っておかなければならないことを、ただ知りたいだけです」


ただ屁理屈をこねているだけだとは分かっていた。


だけど苛立ちはどうやったって抑え切れない。


ロクな説明もされず、この異常な街へ押し込められた不満は、心の中でくすぶっている。


「心配しているなら、一つ約束します」


「約束?」


「ええ。全てを話してくれるのならば、オレは親父を一切恨みません」


「サマナ…」


「どんな理由があろうとも、それを受け止めるぐらいは大人です。だから話してください。あなたの知る、真実を―」


ムメイは眼を閉じ、唇を噛んだ。


そして長い沈黙の後、語り始めた。



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