魔破学院・高等部 /転入初日
「…う~ん。こんなもんかな?」
朝、制服に着替えて、オレは鏡の前で唸っていた。
部屋には等身大の鏡が壁に貼り付けられていて、オレは自分の姿を見直した。
黒い髪に黒い眼、中肉中背と、とりたて目立った容姿ではない。
平凡で地味な容姿をしていることは自覚していたが、…タカオミやイザヨイを見ると、多少コンプレックスを感じてしまう。
だからと言って、何かしようとは思わない。
…無駄な努力は嫌いだし、しない主義だから。
教科書などは前以て部屋に運ばれていて、時間割も入っていた。
ここまではまあ普通の学校っぽいんだが…中はどうなんだろうな?
暗い考えに入ると、部屋をノックされた。
「サマナ、準備できた?」
タカオミの声で、現実に戻る。
「うん、今行く」
カバンを持って、オレは部屋を出た。
「おっ、制服似合っているね」
「ありがとう」
そう言うタカオミが着ている制服はブレザー型。
胸元を開けて、ネクタイをしている。
そう言えば昨日、ムメイが制服は自由だと言っていた。
形は違えど、制服は制服だ。
あの紋様も刻まれているし。
「じゃあ行こうか」
「うん」
オレとタカオミは一階に下りて、食堂へ向かった。
食堂には少しの人数しかいない。
「みんな、朝は遅いのか?」
「ウチは基本的に自由だからね。別にここじゃなくとも、食べる所はあるし」
食堂は女子寮と同じ造りで、やっぱりレストランみたいだった。
タカオミと共に席に座り、メニューを開く。
昨夜のとは違い、モーニングセットメニューになっていた。
これまた和・洋・中とあるんだから、本当に贅沢だな。
「あっ、ここの食事なんだけどね。メニューにないものでも、言えば作ってもらえること、教えてもらった?」
「いや。でも何でも作ってもらえんの?」
「まあ材料さえあれば、ね」
…とことん欲を抜く街だな。
「へぇ。でもオレは和食の定食でいいや。シャケ美味しそうだし」
「サマナは和食派か。ボクは洋食派なんだよね」
「…ああ、顔見ると何となく分かる」
少し日本人離れした顔立ちをしている。
「タカオミって外国の血、入ってる?」
「鋭いね。実はフランスの血が四分の一、入っているんだ」
つまり祖父か祖母にあたる人は、フランス人なんだ。
…道理でこのスタイルと顔立ち。
思わず心の底から納得してしまう。
「サマナは?」
「…大分前に、一応いたらしい」
しかも犯罪遺伝子の持ち主だった。
「ふぅん。サマナも少し日本人離れした顔立ちしているから、隔世遺伝子なのかな?」
「そうか?」
「うん。顎のラインとかさ」
そう言ってタカオミは笑顔でオレの顎を指で撫でる。
「細くてキレイだよ」
「っ!」
がたがたっ
オレは身の危険を感じて、後ろに引いた。
タカオミの細めた眼が一瞬、危ない光を宿したのを見たからだ。
「…タカオミ、言うのを忘れていたんだけどな」
「うん」
「オレ、そういう趣味ないから。同性は恋愛対象外」
「おや、それは残念。サマナとは仲良くしたかったのに」
「友達としてなら大歓迎だ」
オレは棘のある笑みと言葉を出した。
「そうか。なら友達としてよろしく」
「ああ」
そこでタイミング良く料理が運ばれてきたので、危ない空気は流れた。
…危ない危ない。
気を抜いてはいけなかった。
その後は怪しい会話もなく、オレ達は学院に向かった。
学院の造りだが、上から見ると十字の形になっているらしい。
そして正面入り口は十字の下の方。
上の方が高等部となり、右には小学部、左は中学部になっている。
クラスは一つずつしかないものの、特別教室は別々に使っているので、こういう造りになっているらしい。
建物としては小さいが、構造は複雑そうだ。
ちなみに部活などはないらしい。
タカオミに職員室まで案内されて、そこで別れた。
「あ~、キミがサマナか。よろしくな」
ちょっとぼ~っとした感じの中年男性が、担任だった。
「担任のキバラだ。学院のことで分からないことは、遠慮なく聞いてくれ」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、キバラは感心したように頷く。
「うん、外部生は礼儀正しいね」
…最早、何も思うまい。
「この街のことは聞いたかね?」
「はあ、まあ…」
気の抜けた返事しかできない。
けれどそれで納得したように、キバラはまた頷いた。
「最初は戸惑うことも多いだろう。上手く生きていく為にはとにかく慣れることだ。慣れればこの街も悪くない」
「まあ悪いとは思いませんが…ちょっと理解できない部分が多そうです」
「全てを理解しようなんて思わない方が良いぞ。頭痛がしてくる」
あっさりと言うな…。
「ちなみに先生は長いんですか?」
「わたしは生まれも育ちもここだ。父の代から住んでいる」
「ここで生まれる人は、何があっても外へは出られないんですか?」
「ごくまれにだが、例外はある。しかし出た後の消息は一切知らされないから、どうなっているのかは分からない」
…いろんな意味で物騒だ。
「キミは出たいか?」
「いえ、今のところは。なかなか退屈しなさそうで、良いとは思っています」
「変わったコだ。しかし生き延びるタイプだな」
キバラはあくまでも淡々と語る。
こういう人の方が、生きていく術を良く理解しているタイプだな。
担任に連れられ、鐘が鳴った後に教室に入った。
「…ほう、珍しい。全員出席かね」
教室の机は、一つを残して全て埋まっていた。
―が、教室の空気は重い。
黒い空気が可視できるほどに、暗い。
一つの席はきっとオレの席。
つまり…例のコクヤもこの中にいるということか。
しかもクラスメイト達は逃げ遅れたと見た。
サラやタカオミがオレに軽く手を振る。
―引きつった笑みを浮かべて。
オレは苦笑しながら、教壇に立つ担任の隣に立った。
「今日から転入してきたサマナだ」
「サマナと言います。これからよろしくお願いします」
オレは頭を下げた。
すると軽く声が上がる。…いや、もう何も思わないぞ。
「じゃあサマナの席だが、クラス委員長のサラの隣に…」
「先生」
とある男子生徒が手を上げ、声を上げた。
するとクラスの空気が一斉に凍り付く。
声を出したのは、窓際で一番後ろの席の男子生徒だった。
「サマナ、俺の前の席にして」
「…コクヤ」
キバラが絞り出すような声で言った名前に、オレは目を見開いた。
コクヤ? 今の男子生徒が?
オレは改めて彼を見た。
痩せた体に白い肌。パっと見は中学生かと思うぐらい小柄だ。
しかも人形みたいに整った顔立ちをしている。美形とも可愛いとも言えるが…。
…何だろう? 背中がぞわぞわする。
サラを見ると、彼女は机の上で固く手を繋ぎ、下を向いて小刻みに震えている。
タカオミは苦笑を浮かべたまま、眼を閉じ、何かを耐えているようだった。
何か―それは恐怖、だ。
コクヤは笑みを浮かべているものの、その瞳には有無を言わせない力を宿している。
オレは音をたてないように、ため息をついた。
そしてキバラに笑顔を向ける。
「先生、彼の前で良いです」
ざわっ、とクラスメイト達は騒いだ。
「さっサマナ…」
顔色を失くしたキバラは、見ていて気の毒になるぐらい動揺している。
「オレは構いませんから」
「…すまんな。じゃあそうしてくれ」
「はい」
オレは一番後ろにあった空席を、コクヤの前に持ってきた。
それまでコクヤの席の前だった男子生徒は、心底ほっとしたような表情をしていた。
…よっぽど、なんだな。
「サマナ、俺はコクヤ。よろしく」
にっこりと微笑む笑顔は、【スピリット・クラッシャー】の異名を持つとは思えないぐらい可憐だった。
…だけどオレの中の何かが、警戒しろと言っている。
それはきっと、防衛本能。
「よろしく、コクヤ」
だけどオレは笑顔を見せる。
心のどこかで、負けたくないという思いがあるから。
その後、暗い空気の中でホームルームは終了。
授業も淡々と過ぎ、休み時間はコクヤが話しかけてきた。
「サマナは昨日引っ越してきたばかり? まだ疲れているんじゃない?」
「でも昨日は早いうちにこっちに着いたから。まだ知らないことは多いけど、体調は平気」
「そっか。いろいろ大変だろうけど、俺で良かったら力になるから」
「ありがとう」
普通の会話―だった。
しかしクラスメイト達はオレ達を奇異なモノでも見るような視線を向けてくる。
休み時間なのに、恐ろしいほどの緊張感と沈黙に包まれている。
サラとタカオミも心配そうな視線を向けてくるも、声をかけてくることはない。
―その後、お昼休みまで同じことを繰り返した。
「ふぅ、お昼か。サマナは食堂と購買、どっち派?」
「オレはどっちでも良いけど。ここは両方選べるんだ?」
「うん。正門側の方に食堂や購買部があるんだ。どっちにする?」
「コクヤは?」
「俺は購買派。人の多い学食ってあんま好きじゃないんだよね」
そう言ってチラっとクラスメイト達に視線を向ける。
それに気付いたのか、クラスメイト達はビクッと体が震えた。
「そう。なら購買にしよっかな」
「うん、じゃあ行こうか」
コクヤは笑顔になり、立ち上がった。
教室を出て行く時、サラが申し訳なさそうな顔で見送ってくれた。
購買へ向かう途中、他の生徒達や教師達はコクヤの姿を見ると、怯えた表情を浮かべ、顔を逸らす。
―コレは予想していたよりも、ヒドイものだ。
しかしコクヤは慣れているのか、平然としている。
購買には何人かいたが、それでもコクヤの姿を見ると慌てて去ってしまった。
「ここはパンがおススメだよ」
「そうなんだ」
棚には所狭しとパンが並んでいた。
「俺はいつものカツサンドにしよーっと」
コクヤはカツサンドとコーヒー牛乳を持って、レジに向かった。
レジは若い女性がいたが、コクヤを見ると青ざめ、震えながら仕事をこなした。
オレはコロッケパンとハムと卵のサンドイッチ、それにコーヒーを持ってレジに向かった。
カードを渡し、袋に入れてもらった。
「中庭で食べようか。今日は天気も良いし」
「ああ」
靴を履き替え、オレ達は中庭に出た。
中庭には樹や色とりどりの花が植えられていて、数人の人がいた。
しかしコクヤを見ると…逃げる。
オレ達は芝生の上の座り、食事を始めた。
「…驚かないんだね、サマナ」
「何が?」
「みんなが俺のこと見て、逃げることに」
「先に知っていたからな」
「誰に教えてもらった?」
「いろんな人」
「へぇ…」
コクヤは意味ありげに言って、カツサンドを頬張る。
「んっ、美味い。サマナも一口食べる?」
「…ああ」
差し出されたカツサンドを、オレは一口食べた。
「あっ、本当に美味い」
今までいろんなカツサンドを食べてきたけれど、群を抜くほどに美味かった。
「でしょ? 俺もコレが食べたくて、授業には出ないけど、昼には購買に行くんだよね」
「それってダメじゃん?」
「そんなことないよ。―見ただろう? 俺を見た周囲の反応」
…確かに。サラもタカオミも、コクヤはいない方が平和だと言っていたな。
「サマナはまだ分からないんだよね、俺の怖さ」
「…そっかな?」
オレはスッと眼を細めた。
意外な返答に興味を持ったのか、コクヤはじっとオレを見つめてきた。
「自分で自分のこと、『怖い』とか言うやつほど、大したこと無いっていうのがあるけど?」
「…へぇ。サマナは怖いモノ知らず?」
コクヤは眼を丸くし、口元に歪んだ笑みを浮かばせる。
「いや、逆。怖いモノには敏感な方だと思う。実際、お前のことは頭が拒否反応しているし」
逃げたい、と思う。
けれど負けたくない、とも思ってしまっていた。
「アハハ。サマナみたいなタイプのヤツもいたっけ? …でも今はいない。俺が喰らったから」
喰らう…コクヤにとって、『壊す』ことは『喰らう』ことなのか。
「…オレは別にコクヤにどうしたいとか、どうされたいとかはない」
「じゃあ何がしたい?」
「友達になりたい」
はっきり言うと、さっきよりも大きく眼を見開いた。
「オレは別に犯罪遺伝子を持っていようが、覚醒していようが興味無いよ。自分にとって害がなければ。だからそれ以外だったら、交流は欲しい」
「俺と友達、ねぇ…。生まれてはじめて言われたよ。そんな戯言」
そう言うコクヤの視線は、鋭い刃物のようにオレに突き刺さる。
「コクヤが言わせないだけだろう? 見えない壁、作ってない?」
「ああ、あるかも。煩わしい人付き合いは嫌いだから」
頷きながら、コーヒー牛乳を飲む。
「…コクヤってさ、部屋に閉じこもって何してんの?」
「主にゲーム。後はアニメ見たり、マンガや小説読んだりしてる」
「だからこんなに細くて白いんだ」
オレは無意識にコクヤの腕を掴んだ。
白くて細い腕。力を入れたら折れそうだ。
しかもヒンヤリと冷たい。…まるでマネキンみたいに。
「っ!?」
「不規則な生活している上に、滅多に表に出てこないから、成長が遅くなっているんじゃないか? 人嫌いはしょうがないとしても、もうちょっと陽の光に…ってどうかした?」
オレに腕を掴まれたまま、コクヤは固まっていた。
「ん?」
オレはワケが分からず、首を傾げる。
コクヤの視線が、ゆっくりと掴まれている腕に向かう。
「いや、その、…触られることって滅多にないから…」
「だからそれは人前に出てこないからだろう? 少しは社会に出ないと、いくら犯罪者としての才能があっても、人間としてダメだぞ」
犯罪者でも、生き方は人間らしくしなければどっか異常が出るものだ。
「…サマナってさ」
「ああ」
「本当に怖いモノ知らず、だよね」
「はあ?」
オレは手を離し、コーヒーの缶に手を伸ばした。
「オレは偏見とかあんま無いだけ。くっだらない正義感とかないタイプなんだ」
「ふぅん。…でも身を守る術を持っていないのに、そういうふうに近付くのは危ないよ?」
「…それは言えてるかもな」
サラのように攻撃タイプじゃない。
もし力でねじ伏せることが好きなヤツがいたら、とりあえずは逃げよう。
足の速さには多少なりと自信があるし。
「まっ、気が向いたら友達になってくれ。オレはここに来て日が浅いし、まだ知らないことが多いから」
「…考えとく」
「ああ」
その後、特に会話もなく昼食は終わった。
コクヤはしかし、そのまま寮に戻ると言って、帰ってしまった。
「気分損ねたかな?」
でもちょっと分かったこともある。
偏見は全く無いとは言い切れない街なんだ。
確かにコクヤの態度もアレだが、周囲の反応が…いや、そこまでさせるほど、コクヤは危険ということだってあり得る。
だけど少なくとも今のオレは、彼を怖いと思う気持ちはなかった。
複雑な思いを抱えたまま教室に戻る。
一人で戻ってきたオレに、サラが駆け寄ってきた。
「サマナ! 無事だったのね? 良かったぁ」
サラは心底安心したように、息を吐いた。
「コクヤと一緒に行ってしまったから、ずっと心配してたの。…ゴメン、声もかけられなくて…」
「別に良いよ。あっ、コクヤはもう寮に戻ったから」
クラスメイト全員に言うと、ほっと安堵する空気が伝わってきた。
「サマナ、何にもされなかった?」
タカオミが苦笑を浮かべながらこっちに来た。
「ん~。まあちょっと脅された感じはあったけど、別に何かはされていない」
「でもこれからは分からないよ。あんまり刺激しないようにね」
「はいはい」
コレは自分達にも被害が及ぶことを心配しての忠告だな。
まっ、オレも下手に刺激はしたくない。
転入初日はとりあえず様子見という感じで、終わった。
何事もなかったのは良いことなのか、悪いことなのか…。
オレは自分の部屋に戻り、私服に着替えてから一息ついた。
そこへ扉をノックする音が聞こえた。
「はい、どちらさま?」
「…カミヤ」
カミヤ? …って昨日、タカオミとベッドにいたあのカミヤ!?
どうしてオレの部屋に来るんだ?
パニックになるも、いつまでも外で待たせているわけにもいかない。
恐る恐る扉に近付き、開けた。
そこには確かに、昨日ベッドの上にいた人物が立っていた。
「あっ、えっと、何かな?」
体を半分、扉で隠しながら微笑んで見せる。
…微妙に固まっているだろうな。
「コレ」
ズイッと差し出してきたのは、四方形の箱。
よくお歳暮とかお中元の形のそれで、包み紙はピンクの花柄。
「…何、これ?」
「引っ越し祝い」
「いや、普通はオレの方が贈る物じゃない?」
「それと昨日の詫び。タカオミが妙なところ見せたからって」
ああ、一応お詫びって言葉と意味は知っていたんだ。
「クッキー、好き?」
「甘い物は好きだけど…ありがとう」
オレは素直に受け取った。
「それと一応、ゴメン」
無表情で、棒読みに謝られても…。
ああ、でもサラの言う通り、タカオミ主義なんだろうな。
このクッキーもお詫びも挨拶も、タカオミに言われたからだろう。
「こっちもゴメン。逃げ出したりして…。今度からは状況を確かめてから、タカオミの部屋に入ることにするよ」
「別に逃げるぐらいなら良い。サラはそこら辺の物を投げ付けてくる」
…ああ、浮かぶぞ浮かぶぞ。
驚いてそこら辺の物を二人に投げ付ける、怒り狂ったサラの姿が。
「でもアンタは慣れていないんだな」
「外の世界の人は慣れていません」
つーか慣れたくない!
「ふぅん…」
カミヤは珍しい物でも見るような眼で、オレをジロジロ見てくる。
和の美少年に見つめられると、居心地悪いことこの上ない。
「あっ後オレには同性を恋愛対象にはしないから」
そう言うと、吊り上ったカミヤの眼が僅かに下がった。
やっぱりタカオミとのことを誤解され始めていたか!
「ちなみに今までの生き方も、平凡で普通で地味だから」
「それでも遺伝子はあるんだろう?」
「あったって、覚醒はさせない。―オレは普通の人間として、この街で生きていくことを決めたんだ」
「ムダだと思うけどな」
カミヤはあっさりと否定した。
「この街に来たばかりの連中は、必ずそう言う。絶対に染まらない―と。でも一年も持たない。いろんな意味でな」
それは犯罪遺伝子の覚醒か、あるいは発狂か…どちらにしろ、ろくな末路は迎えていないだろう。
「お前だって、狂うか目覚めるかのどっちかだと思う」
「じゃあ期待を裏切ってやるよ。オレはオレのままで生きる」
カミヤの眼を真っ直ぐに見つめながら、断言する。
しばし見つめ合った後、カミヤは深く息を吐いた。
「…まっ、好きにしなよ。僕はタカオミにしか興味ないし、アンタがどうなろうとどうでもいい」
「ん~。でもそれも寂しいな」
「はあ?」
カミヤはここで、びっくりした顔をする。
感情をあまり乱さないはずの、カミヤの驚いた顔を見て、オレは笑みを浮かべた。
「できれば友達になってほしい。この街に来て、まだ友達ってタカオミとサラしかいないから」
ムメイやイザヨイ、それにシュリの大人組は友達とは言いにくい。
できれば同じ歳の友達が欲しかった。
「オレにはもう、肉親がいないからさ。一人は寂しいし」
親父とは一方的に縁を切られた。
そのことに気付いたのか、カミヤの表情が僅かに暗くなる。
「…気が向いたらな」
「ああ、前向きに考えといてくれ」
カミヤはムスッとしたまま、行ってしまった。
コクヤも含めると、友達保留は二人…か。
思いの外、友達を作るのは難しそうだ。
「どうしたもんか…」
オレは頭をかきながら、貰ったクッキーの箱を見た。
結構重いし、量が入っていそうだ。
いくら甘い物が好きでも、この量は食べきれない。
「サラとシュリにもお裾分けしようかな」
オレはカードを持って、部屋を出た。




