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第1話:「転移」

アイシア視点へと変えます。

 ……何か大きな音が聞こえる。

ガラガラと何かが動く音と、蒸気が発散した際に聞こえるような大きな音が聞こえる。


 私はぼんやりと目を覚ます。


 ……真っ暗な空間だ。

 いや、真っ暗じゃない。周期的にオレンジ色のような明かりと熱が私に伝わってくる。

 

 それ以外は、真っ暗だ……。


 ……



 …………



 ………………





 私はがばっと跳ね起きた。

その時、全身に激痛が走る。運動をしすぎた後に感じるような、全身筋肉痛のようなやつだ。

痛みをこらえながら、全身をくまなく触る。

両足……ある。両手……ある。お腹……ある。顔……ある!!


「……ライトオン」


 少し安堵した私は、簡単な生活魔法を詠唱し、この場を照らした。


 私は服装を目視で確認した。

青いローブ。私が寝ていた床には持っていた桜色の杖。全て存在する……。


……全て?


 私はハッとすると、首にかけてあったネックレスを見つめた。

そこには青い石ころがついたネックレスがあった。

しかし、先ほどのように光り輝いてはいなかった。


 私はため息をつくと、先ほど体験したはずの魔力災害について思い返した。


 あれは明らかにこの青い石が引き起こしたものだろう。私はそう予感していた。

なぜなら、石の脈動と黒い球の脈動……それが同一だったからだ。

石の魔力が暴走し、あの魔力災害を引き起こした……私はそう推測した。

 しかし、魔鉱石が暴走を起こすなど今までに聞いたことがなかった。

一体、なぜこの石は暴走をおこしてしまったのか……? 謎だった。


 ところで、私は今どこにいるのだろう?

照明魔法で辺りは明るい。

私はきょろきょろと周りを見渡すと、鼠色の壁と天井が広がっていた。

恐る恐る触ってみると、それは冷たくざらざらとしていた。

まるで溶けた物を固めた石のような……そんな形状をしていた。

 そして、壁で囲まれた部屋の一部に人が通れる穴があり、その先から周期的にオレンジ色の光が漏れてきていた。


 私はそこに視線を向けながら、考えた。

私はあの黒い球に吸い込まれ、死んだはずだった。


 トルクマニア帝国内で起きた魔力災害でも、5000人程度の兵士が犠牲になった。

その時も、あの黒い球は皆を吸い込み、皆を殺したのだ。素粒子の1つレベルまで吸い込んで……。


 ならば、なぜ私は今()()()いるのだろうか?

今全身から感じている痛みも本物だし、度々感じる熱も本物だ。

身体は生きているとしか思えなかった。


 「……リペア」


 私は治癒魔法を詠唱して、筋肉痛を消した。

私は両手両足をぐるぐると動かす。痛みは治まり、体力全開だ。


 「……はあ」


 私はため息をつくと、床に落ちていた杖を掴む。

そして、私はこのわけのわからない場所を理解するため、オレンジ色の光が漏れている方向へ、恐る恐る向かってみることにした。




 先ほどの穴を抜け、2回程曲がる。向かう先はオレンジ色の光源だ。だんだんと熱が強くなってきた気がするが、私は気にせず進んだ。




 そして、100m程歩いた後、私は大きな薄暗い空間へと出た。

天井は高く30m程はありそうだ。

上空には人が乗れるような機械があり、鋼材を使って壁に括り付けされていた。

目を凝らすと、その機械に小さくこう書いてあった。


「作業床 定員3名 耐重量180kg」


 はて、作業床とは……?

私はそんな物生まれて一度も聞いたことがなかった。


 そして私は眉をひそめる。

空間の下の方、地面に存在していたのは、長く巨大な装置だった。

その装置は、轟音を立てながら動いていた。


 なんだこの機械は? 私はその機械の動きを注意深く観察する。


「ブシャーーー!」


「うひっ!」


 突然立てた蒸気を吹き出す音に、私は驚く。

その後、回転する機構が動き出し、蒸気を出した四角い機械からオレンジ色に輝く四角い物体が飛び出してきた。

 そいつが空気を温め、私の頬は熱を帯びる。

そして、私はそれが何なのか一瞬で理解をした。


 これは、「鉄」だ。

私の実家は、鍛冶屋だった。

父は、かまどの中からこれと同じ色をした薄い板を出し、金槌でカンカンと叩いて伸ばしていた。


 そのでかい鉄の塊は、ローラーらしき回転する機構で移動し、暫くすると逆転しまた機械の中へ入っていく。

 そして、また蒸気の音と共に鉄が飛び出し、静止する……。

ローラーに乗っている鉄は、先ほどより薄く延ばされていた。

私はこれを見て理解をする。

この機械は、鉄を薄く延ばしてゆく機械だと……。


 何度も機械を出し入れされ、薄く延ばされ終えた鉄板は、ローラーにより次の機械へと運ばれていく。

 その間に、機械後方から次の熱せされた鉄の塊が、鉄を伸ばす機械へと入っていった。

 

 私はこの機械の挙動にぼうっと見入る。

 多量の鉄が運ばれ、薄く延ばされる光景を見ていると、父がやっていることがとてもちっぽけに思えてきた。

 なんであんなに父は頑張って薄い鉄を生産していたのだろう。

こんな感じで大量生産できるのならば、もっと楽に富を稼げたのに……。


 そして、こんな大型機械を今までに見たことはなかった。

改めて、あの疑念が強く心に渦巻いた。


 ここは一体どこなんだ?


 目の前の機械から考えても、私がいた場所より文明が相当進んだ場所に来ているようだ。

とりあえず、外に出て確認をしなければ!


 私は逸る気持ちを抑えつつ、この場所から外に出る出口をきょろきょろと探した。


「おい姉ちゃん。そんなところで何をしているんだ?」


 突然話しかけられ私はびくっとする。

 声がしたほうを見ると、5m程上の通路に、鼠色の動きやすそうな服装をした30代ぐらいのガタイの良い男の人が立っていた。

某鉄工所の工場見学の体験がいきました。

ありがとうございました。

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