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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第一章始まりは異世界の香り
7/24

少し短いです。


 各務さんと俺の全てを曝け出した『お話合い』の後。

 毎日は慌ただしく、各務さんが骨を折って各方面に書類や口合わせに走って貰ってる間に、俺は引っ越しの用意やら見舞いに来る同僚を誤魔化すために入院やらと色々やることがあった。

 各務さんが部署移動するニュースが激震として社内を走り、俺の見舞いなのか各務さん情報の確認に来たのだか分からない見舞いの群に辟易した。

「どういうことなのよ」

 と叫ばれ暴れられても、迂闊なことは言えないから声が出ないとしらばっくれることにした。

 部署移動の手続きとお別れ会で連日午前様の各務さんは、驚くほどの体力気力を見せ平然とこなしているが、入院治療中の俺は黙って時が過ぎるのを待つだけの身分になっている。

 あれから、やっぱり俺のマンションの管理人さんは次回の更新をしどろもどろに断ってきた。

 理由を聞いた時の動揺っぷりに、悪いことしたなあと大人しく受け入れた。

 敷金礼金以上の金額が帰ってきた時、善人を騙すようで後味は悪かったけれども。

 各務さんの新しい部署である情報管理課は会社では人材の墓場と言われている。

 能力に秀でてはいるが、対人関係で問題のある人やコミュ障と自称する強者(バカモノ)が集められている。らしい。

 各務さんは新任の課長として就任し、半年後に療養期間を終えた俺が補佐として入ることになっている。

 どんな力技を使ったのか聞いても笑うだけの各務さんに、聞いてはいけないんだなと理解する。

 社内社外問わず太い人脈を持つ人だから、どうにかしたんだろう。

 仕事内容は課名どおり情報の管理だ。

 カモフラージュが功を奏しておまけの部署なんて嘯く人もいるが、会社全体の情報を統合し管理して外部から取り込んだ様々な情報を整理分類して各部署に供給する。その上防御力ときたら比べる某国の国防相がザルと言われる代物だ。

 PCがあればだ誰にでもできる仕事じゃない。プライベートでハッカーやクラッカーなんかをやっているヤバイ奴もいて、その道では名前を知らない者はいないなんて経歴の持ち主もいる。

 各務さんがカラクリを教えるよと言われ付いて行ったバーに行くと、情報管理課の面々が揃っていて紹介された。

 なんと、情報管理課自体が各務さんの発案でできた部署で、お飾りでいた課長は各務さんが課長になると決まると鼻歌歌を歌わんばかりに移動して行ったと言うのだ。それも移動日を待たずに。

 発足当初から指示は別部署所属の各務さんから出ていて、何も知らなかった前の課長は自分を通さない仕事を部下がそれぞれ勝手にやっていたものだから、結構なストレスだったそうだ。さもありなんだな。

 初めて会ったのにガンガン無理を言ってくる奴らには、遠慮なんてしていられない。

 会って5秒で知れたがみんな各務さんの信者だ。新入りでいきなり課長補佐だもの。その上今週から各務さんの下宿の下宿人になるって言おうものなら・・・。恐ろしい。実は個人情報握られててもう知られてるって可能性もあるから、恐ろしい。

 入院しているはずの俺が高級バーで酔いつぶれて素っ裸で旗振りしてた写真が後で届くことになるとは、その時は知らない俺だった。


「大丈夫か?」

 一gも心配していない美声が俺の頭を痛打する。

 こんなに酷い二日酔いは初めてだ。

 バーから担当医である彼にピックアップされた俺は、そのままホテルと化している病室に戻されていた。

 各務さんの自称親友だと自称しちゃう院長の春日史郎さんは、初対面で親友ポジションは譲らないと牽制してきた人だが、『俺はもうそう言うの結構なんで』とうんざりといなすとにっかり笑って合格と太鼓判を押してくれた。

 実は、俺のマンションの更新が切れるのと各務さんの下宿のリフォームが終わる期日にずれというか隙間期間が出来たため、病院の経理ソフトの改造とシフト組みのソフトの作成を代金に居続けている状態だ。

 給食の改善を各務さんとしたり、消耗品管理や出入り業者の調査なんかもやった。

 席はあるが休職状態の俺が、食って寝る場所があるだけでも御の字なので、どうせなら楽しくと色々やらせてもらった。

 春日さんは各務さんに入れ込んではいるが、兄貴肌の人で尊敬も出来る人だ。

 俺は家庭の事情で子供時代から両親のいない家庭で育っているから、親父のようでもある。

 若くて病院の院長なんてやってるから尊大な人かと思ってたら、話の分かる少し砕けた人でもあるからよくふざけ合ったりもしている。

 ある日、血相変えて飛び込んできた姉が呑気に春日さんと給食のプリンを賭けて将棋をやってる俺を見て、「なにやっとんじゃ!!」と鉄拳制裁した姿に一目惚れなんかしなきゃ平和だったのに。

 俺が中1の時に両親が事故で死んで、保険金や遺してくれた預金なんかを小出しにしながらも、姉は俺の為に大学を辞めて水商売の世界に入った。

 押しつけがましいことは一切言わないが、俺がヤラカシたら鉄拳制裁の人だった。

 あっちの世界から戻って荒れてた俺を、何も言わずに信じてくれ、表面的でも立ち直った俺が黙々と何かをしていると知っていても何も言わなかった。

『五体満足で、人を傷つけない大人になるのなら文句は無いわよ』

 姉がいつか酔った時に言った言葉で地に足が付かなかった俺も覚悟が付いた。姉は俺の恩人で家族だ。だから春日さんなんかには・・・幸せにしてもらいたいなあ。

 春日さんを義兄さんと呼ぶことはできても、各務さんをそう呼ぶのは勇気がいる。て言うか、無理だから。どんだけ面食いなんだよ。俺に『各務さんの『好きな食べ物』なんて聞いてくれるな。確実に姉ちゃんより料理が上手いから!



「下宿のリフォームが無事に終わりました。

 3日後から再開しますので、今までご協力頂いた皆様には細やかですが祝いの席としてご招待させて頂きました。

 本当にお世話になりました」

 各務さんがにこやかに挨拶をする。

 下宿再開祝いの席が設けられた。

 参加者は下宿の新しい大家さんの各務さんをホストに、会社の同僚兼小間使いの俺。元大家さんの各務小梅さんで各務さんのお祖母さんとご友人数人と、棟梁と工務店の社長。社長は不動産屋もしているので、下宿希望者との間に入ってくれるらしい。

 忘れちゃいけない春日さんに何故か引きずられて姉の真希が参加している。

 もう一人、以前から下宿の食事(朝夕の2食)の手伝いをしてくれている梢さん。(微)妙齢の美人さんで初対面時にいきなり二の腕握って、『ちっ』て言われた。ゴリマッチョ派だそうだ。

 新しい下宿でも引き続き来てくれるらしい。

 以上のメンバーで宴は始まった。

 リフォーム前に一度来たけれど、その時外観は足場とシートに覆われていて全容を見たのは初めてだった。

 立派なもんだ。

 大正期の和洋折衷と聞いていたけど、どちらかというと和のテイストを西洋建築で建てました。という感じなのだ。

 敷地の外周は花や虫が意匠として散りばめられた鋳物の鉄柵がぐるりと囲み、日本の花樹を使ったイングリッシュガーデン風の庭が迎えてくれる。

 二台の車がすれ違える通路は土色のアスファルトで固められ、寝殿造を模した車寄せへと続く。

 正面の建物に東翼西翼の棟が延びた思った以上に大きい建物だった。

 玄関ホールに入れば、お約束の様にでんと階段があり、真っ直ぐ上った先に踊り場、左右に分かれて東翼西翼の二階へと夫々続いている。手摺りも鋳物で菩提樹を模した装飾的なものだ。シャンデリアの様にに下げられたスズランの形の摺りガラスの丸い笠は鋳物の葉が絡まり昆虫が張り付いている。

 壁は剥落ひとつ無い美しい漆喰で、腰板は磨かれた焼き杉板と説明される。焼き杉板って外壁しか見たこと無いけど、リフォーム前にもそれが使われていたらしいのでそのまま使ったらしい。

 ホールを入った1階は、階段室横のドアからは台所を中心とする水回り。

 その手前の左手は電話室とプレートの付いた小部屋と、その横の扉にシガールームのプレートが掲げられている。

 シガールームに入ると応接間の様にソファーセットが置かれ、この部屋を抜けると小ホールと呼ばれる食堂がある。今日はここで祝いの会をやっている

 玄関ホールの右手西翼はティ―ルームと言うらしく、ここは各務さんの祖母の小梅さんのプライベートルーム兼応接室らしい。2間を使っている。

 二階の元客室は東翼に和室2、洋室1。西翼に洋室4の7室。裏手にある離れの純和風建築の二階家に5室の計13室になる。その内、東翼の和室の一部屋が各務さんの部屋で、俺は東翼の洋室を貰った。

 屋敷というに相応しい本屋の裏手には和風庭園があり、二階家はその奥にある。

 ここは畳の交換と専用の大きめの浴場の修繕位なので、既に元々の住人が帰ってきている。

 近隣の大学の剣道部員の11名だそうだ。

 結構強い学校らしく、礼儀も正しいが暑苦しい。基本的に体育会系でない俺には年齢が上なだけで敬われる趣味は無い。が、通用しないとのことなので(各務さん談)、慣れるしかないようだ。

 今回は練習試合兼合宿の為他県に行っているので不参加。梢さんがいそいそと隠していた酒を数本出してきた。曰く『酒の味も解らん蟒蛇共に出せる酒じゃなかったから』だそうだ。

 残りの部屋は元々空き室が三つに卒業してしまった人もいるので、現在は空き室が5室。卒業しても住みたいと希望していた人も、リフォームが長引いて諦めたそうだ。

 そんな風に自己紹介や内覧、近況などを話しながら食事は進み、いい具合にまったりした頃に奴が嵐の如く現れたのだった。

登場人物増やしても意味ない・・・


読んで頂き感謝感激。

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