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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第一章始まりは異世界の香り
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専門用語(創作)がブレ捲くり。おかしい部分があったらこっそり優しく教えてください。

徐々に長くなってきました。

  二つの世界を渡る為の術式サークルは俺たちが勇者召喚された物とは全く違う法術でできている。

 フリージアが使ったのはプロフィールがほとんど合致した魔法士を5人、魔法陣とも呼ばれるサークルを展開させ、然るべき瞬間に彼等の首を刎ねその血を持って完成させたもので、全く同じ条件下でしか再び術式サークルが完成しない。つまり、召喚された瞬間に同じ魔法士が生存していない事となり帰れないことは確定していた。

 魔獣の討伐が終われば返して貰えると信じて死んでいった同級生たちはまだ幸せだったろう。

 終盤になって真実を知った人間の中には辛い現実も相まって自殺する奴がいた。死んで役に立たなくなった者はごみくずの様に投棄されその亡骸が曝されて、その亡骸に縋りついて泣いて泣いてそのまま冷たくなった女子の絶望は忘れない。

 シーラの言う精霊術における『渡界法術サークル』は、精霊王の上位に格が上がるとその能力は異世界にまで通すことが出来るようになり、所謂パイプやトンネルの様な物を二つの世界の間に通せるようになるらしい。

 スーンの格が精霊王の3位体にまで上がったために、シーラの2位体との同調にずれが無くなって法術式が描けるようになった。

 法術式が描ければそこに注ぐ聖力と法力をバランスよく練り上げ、術式が稼働する。トンネルが開通さえすれば二つの世界でのアンカーを設置し、使用者の能力次第ではそれを固定し行き来が出来るようになるらしい。

 俺に加護を授けてくれた精霊王たちは、俺たちが帰ることに協力する代わりに精霊魔法師である俺が再び戻ってくることを条件にした。

 精霊が現界と呼ばれる人間が支配する地に顕現するには、俺の様な精霊魔法士の存在が必要だ。

 今、この世界は古き神が人間が造った新しい神に取って代られようとしていて、精霊魔法自体が希少で魔法士(お仲間)は近々でも百年以上前に一人居ただけそうだ。相棒の火の精霊王に『逃がさへんで』と言われた時には脱力したが、俺に否やは無いから即断了承した。

 仲間たちはいい顔をしなかったが、それしか方法が無いと説得して決行までに必要となるある存在を探すために俺たちは辺境の町を出た。

 それなりに艱難辛苦を味わった先に砂に埋もれた古い神殿を見た時、言いようのない感情が俺を支配した。

 『帰れる』その言葉が多分みんなの内にも響いているのだと思った。

 神殿の奥深くに眠る聖獣とも呼ばれる幻獣が、ガイドとなってアンカーを下ろす拠点の固定を助けてくれる。シーラが教えてくれた希望が絶望に代わったのは科された試練を乗り越え幻獣の間に着いたその時だった。



「駄目だ!」

 悪友の叫びがみんなの気持ちを代弁していた。

 そうだ。それだけは受け入れられない。

 言葉も出ない迫田や茂呂末は力なく首を振っている。

 勝田は思わず威圧を出してしまい、渋面のままそっぽを向き、真崎は笑いながら怒っていた。

「冗談じゃないよ?ここに来て僕に女の子を見殺しにして自分だけ元に戻れって言うの?死にたいの?」

 笑いながら垂れ流す毒にさしもの精霊王たちも中てられて目を回している。

『何事も物事には取捨選択をせねばならない時がある。

 吾は古き神々との契約により存在し、全ての事象における契約を司っている。

 お前たちの言葉で無償(ただ)より高い物はないと言えば良いか。代償の無い契約は存在しない』

 ホログラムというよりは蜃気楼のように揺れながら、純白の麒麟が小憎らしくも正論を吐く。

 無償で命を削るような大魔法は使えん。それは理解する。だが、それでも受け入れられない。

「それなら俺が代わりになる」

 つるりと口から出たが自分でも怖いくらいに頭が冷えていて、これが妥協案だと突っぱねる。身体は正直に震えているのに意地っ張りは血統だな。

「吾らは異存ないぞシルフールよ。タナカサマが残られるのならば、どんな(かたち)であろうと構わない」

 どんな容って・・・少しは構ってほしいがシーラの後押しに麒麟へと返答を迫る。

「駄目だよ!田中君にだって待っている人たちがいるんだよ?」

 迫田が悲鳴のような声を上げる。人身御供となる本人だというのに、今の今迄衝撃に硬直してたって言うのに、その口で言うか?返すがお前にだってその帰りを待ってる人がいるだろう。

「俺も認められん!お前一人置いてけるか!!」

 耳元で怒鳴るなよ。一応俺だって考えて言ってるんだから。

 元々この法術サークルが成功したら、精霊魔法士の俺の努力次第で行き来出来るかもしれないことを忘れてないか?お前たちを元の世界に送り返してから俺自身の力で帰れるようになればいいんだから。それがベストって言うもんじゃないか。

『否。吾と同調できるのは歌聖シタラヒデカだ。タナカセイジは同調するのには精霊王の契約がある為叶わない。精霊王が契約を解除し、且つ所定の聖域で魂抜きをせねば同調できない。入れ物となるタナカセイジがただの人形になるのを厭わねば叶うだろう』

「「「「否!!!!」」」」

 精霊王たちが同時に叫ぶ。火の精霊王(キキ)に至っては頭から湯気を立ててふんぞり返っている。

 仲間たちも女子は今にも倒れそうな顔色でぶんぶんと首を振っているし、男たちはものすごく怒っている。全員が言葉も無く怒っているのだからハタ目で見たら異様だ。

「それで?聖なる幻獣様は?むさい男よりうら若き罪もない乙女の身体をいいように凌辱して、あられもない無体をしたいと?そう言う事?」

 いやいや真崎、何だそれと突っ込もうとする俺に先じて、他の奴らが自分の持てるありったけの攻撃を出そうとしていてびっくりした。キキもどさくさに紛れて洒落にならない火球を作ってるけど止めなさい。

『そのような言われ様は吾に対する侮辱である。

 其方たちが吾の力を望み、吾が代償を求めたに過ぎぬ話がどこまで曲解されておるのか。驚きを禁じ得ない。まこと異界の者の考えることは理解の範疇を超えるの?」

 いや、同意をなんで俺に求めるのか俺はそこが訊きたいが、真崎の暴言については俺もお話合い(・・・・)がしたい。

 だが本当の所、此処まで辿り着いた俺たちに幻獣の求める代償はキツイ。

 歌聖である設楽秀花と同化することによって、法術の力を助け、二つの世界の狭間を抜け繋げるためのアンカーを打つことが出来る。

 幻獣の言葉を聞いた時、設楽が小さく悲鳴を上げたのはいつの間にか幻獣同化というギフトが増えていたのを思い出したからだという。最初は意味が解らなかったが、いつかは使用できるのかというくらいの認識でいたのだと言っていた。

 ただ同化するだけならばいいのだが、幻獣と同化することによって俺たちの世界から異物として受け入れられなくなるというおまけつきだったからこんなに揉めている。

 皆で帰れる日を夢見てここまで来たのに、真崎じゃないが、仲間をそれも女の子を一人置いてなんか行けない。同化すれば寿命の短い秀花が死ぬまで離れられないときたもんだから、詰んでいる。

『ならば話はこれまでだ。吾以外の幻獣を探し、その者に助力を請うが良い。

 吾の如く風と時を司る幻獣はスロウ大陸の竜ヶ峰に居る銀白竜。

 彼の者は人間嫌いで有名だが、人間どもの心無い行いに苦しめられた者には手厚い者。

 なんとかなるやもしれん」

 基本的に親切な幻獣だが、その幻獣の言葉にシーラが首を振る。

「銀白竜は今産卵期で巣から出ない。それに器の大きさ故にアンカーを打つために二つの世界を壊しかねない」

 率直に告げるシーラ。麒麟は押し黙り、設楽を見る。

『シタラヒデカよ。吾との同化により其方は元の世界に戻ることは叶わない。

 一人其方を犠牲にすることに其方の仲間たちは否やと言う。

 これでは話は進まない。

 其方が決めよ。これが契約の条件の一つ』

 ひゅっと設楽が息を呑み、寸の間俺たちの制止が届かない時間だけ悩んで「はい」と答える。

 悪友が顔を歪め、迫田たちが悲鳴を上げる。

 勝田が、真崎が麒麟と設楽の前に出ようと動くが、それは爆発的な光に遮られ叶わなかった。

『事が成ったその時に吾は神々との契約を解除し、消滅する。何年の時が必要か判らぬが吾の残滓が消えた時、其方はシタラヒデカに戻る。それを契約とする。良いな』

「!」

 契約をする設楽と、シーラを始めとする精霊王が息を呑むが麒麟の表情は分からない。それってどういう事なんだと、俺は回らない頭を振り絞って考える。

『諾と言うのだシタラヒデカ』

「それじゃ貴方は死んでしまうの?」

 呆然と設楽が呟くように問う。

 麒麟は呵々々と笑うと何でもない事の様に言い放つ。

『吾にも在りし日には仲間がいて神々が居て美しい日々を送っていた。

 今ではどうじゃ。吾一人を置いて皆行ってしまった。

 神々が我に授けた使命の何と恐ろしく悲しい事か。

 砂に埋もれた生きる者の居ないこの朽ちた神殿で、いつ来るやも知れぬ者を待ち続けた。

 もう飽いた。

 其方たちの仲間を思う、故郷を思う心に共鳴してしまったのだ。願うならば吾も楽になりたいのだ。友に会いたいのだ。それを思い出してしまった。

 いつになるやも知れぬ時を待たねばならぬが、いつかは帰れる。

 だから、諾と言うのだ。シタラヒデカ』

 身体を縛られ聞くことしかできない俺たちにも、麒麟の悲しみが伝わってくる。麒麟も俺たちの様に故郷を取り上げられ友を失い、たった一人でこんな昏い所で待っていた。

 そう思うと込み上げてくるものに圧し潰されそうになる。

 設楽は一度俺たちを振り返ると「諾」と口を動かした。そして、俺たちを圧倒していた光が更に圧力を増し、その奔流に俺たちは呑みこまれてしまう。

 どこまでが自分か分からない融解されるような熱に全身を炙られ、捏ねられ、叩き落される。

 永遠に続くかのような地獄に、気が付いた時には息も絶え絶えに倒れていた。




「設楽!」

 ガンガンと打ち付けられる頭痛をカチ割るような大音声が止めを刺す。

 節々が自分の物じゃないかと思うくらいに動かない。ようよう首だけ動かせる様になって見た景色は黄色く霞んでいる。

「誠二!起きろって。設楽が設楽が!!」

 お前はなんでそんなに元気なんだ。もしかして俺だけが動けないのかと思いきや、悪友と真崎だけが平常運転で動き回っていた。

 勝田でさえ1tの重しに圧し掛かられているような姿をさらしてるって言うのに、化け物か。

 悪友は倒れている設楽を抱えてこっちにやってくる。真崎は俺と勝田を無視して女子の様子を見ている。

 辛うじて動く首を限界まで動かし、俺は悪友の腕の中の設楽を見る。

 そして、息を呑む。

 悪友の腕の中の設楽は、俺の記憶にある彼女の姿はその顔だけになり、全身パールホワイトの鱗に覆われた異形の姿になっていた。

 内側から溢れる光に輝く痩身。髪に当たる部分は羽毛の様なものに変わり、艶のある小枝なような角が額から生えている。

 怖ろしいからではない、その美しさに打ち震える。俺のその気持ちは他の奴らも同じくしているようだった。

「き・・れい」

 吐息を吐くような声が誰のものかはどうでもいい。これで設楽は俺たちと帰れなくなったことが重い。

 『いつか』はきっと来るだろう。それでも俺たちと同じ時間じゃない。その重さに呻く。

『精霊王の友よ。事は成った。聖力と法力を持ち法力サークルを顕現させよ』

 眼を瞑ったままの設楽の口から麒麟の声がする。ぎりっと唇を噛み、俺はキキやシーラたちに願う。

 立ち上がることも出来ない俺が法力を展開させるのに、迫田たちの声が重なる。

 皆、置いてい行きたくないと叫んでいる。俺も叫んでいる。

 戻ることが出来ても、行き来できるようになっても、設楽から麒麟の残滓とやらが抜けるまでは帰すことが出来ない。

 内心に関わりなく、サークルが顕現する。ゆっくりと回転する環は翡翠色に輝くと、聖力の呪言と法力の呪言が重なり終える。

 いつの間にか立ち上がていた設楽(麒麟)が法力サークルをなぞり、またその力を注いでゆく。

 幻想的なその様に言葉を失う俺たちに麒麟は言い放つ。

『今繋がった。固定する故皆壁際まで下がれ』

 設楽の額に汗を浮かべ、麒麟は注ぐ力を最大にする。

 乱反射する法力と聖力がぶつかり合い、花火のように霧散する。

『事は成った。今此の地と彼の地は繋がった。 

 召喚されし勇者たちよ、今帰還の時ぞ』

 泣き出した茂呂末が設楽に縋りつきそうになる手を取り、真崎が先陣を切る。

 叫ぶ迫田を勝田が抱え、俺は最後に麒麟を睨みつける悪友の首根を掴んでサークルに飛びこんだ。

 最後に見た設楽の目元が光っていた。俺はその顔を決して忘れないと誓った。





「それから、今迄、唯一二つの世界を渡れる俺が修行しながら向こうとこっちの二重生活を続けることになったんです」

 長くて意味不明だろう俺の話を、笑いも怒りもせずに各務さんは聞いてくれた。

 身内にだって話さずに、抱えてきたものを曝け出した俺を静かに見守ってくれている。

「設楽も会うたびに変化が見えて来て、思ったより早く帰れるかなと思ってたんです」

 身を切るような苦痛が俺を襲う。

 順調に行っていた設楽返還の為のこの二重生活に陰りが出始めてから、俺はリアルを捨てていた。

 今回の渡りはそのまま行方不明になることも有りえたものだったのだ。

「正直、限界だった。

 誰かに助けて欲しいって思ってました」

 震える俺の声に、各務さんはただ頷いてくれる。

「今回会いに行った俺を迎えたのはフリージアの私設騎士団。

 あの悪魔のような女が、一人で耐えていた設楽を攫い、のこのこやって来た俺をも捕獲しようとしてきたんです。あの人造ラミアはフリージアの放った猟犬の一匹だったんです」

 

各務さん(常識)は田中の過去(非常識)とどう向き合うか。


読んで頂き感謝感激。

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