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第一章○○予約投稿なので、勢いが付いて止まりません。これもまだ短いバージョン。
「勇者様」
喜色にぎらつく眼でフリージアが悪友に迫る。フリージアに洗脳された奴らも羨望と嫉妬の視線を送っている。
悪友は状況の変化に狼狽えて俺を見遣ってくるが、すまないと心の中で謝りつつ視線を逸らし距離を置く。裏切り者と口をパクパクする奴は勝田を見るが勝田も不自然に壁の装飾を見ている。
他、分かっている人間は似たり寄ったりな挙動不審な態度で勇者様を囲む輪から外れていた。
覚えていろと口パクを残し、集団はこの部屋を出て行った。
「鬼畜の所業だな田中」
お前もなと勝田に応じると、俺たちは重い足取りで奴らの後を追った。
それから・・・
こちらの時間で半年ほどの間に俺たちはフリージアに囲われ(隠されたまま)ギフトのスキルアップの訓練を課され、内装だけは豪華な部屋と、中世の応酬そのままの衛生観念の生活の中で慣れずに苦労しながらもその日を迎えた。予め渡されていたギフトを刻んだ神鋼プレートのお得な機能など、外に出して貰えないのに仕える筈も無かった。
『未曽有の危機』という名の魔獣の大氾濫との闘い。
初めて殺す生命が味方の騎士団を惨たらしく殺戮していく中で、ギフト頼りの俺たちは物理的には対抗し圧倒できたが、精神的に心を蝕まれてゆくものが一人また一人この異郷の地で果てて行った。
後々分かったこの闘いが、フリージアの継承順位の引き上げと身柄の安全のためのものだと知った時、悪友が切れた。
持てる最大の力でフリージアが秘かに俺たちを縛っていた呪符を破壊し、死んだ同級生たちの遺骨と遺品を詰めた荷物を持って、俺たちは逃亡した。25人いたフリージアの犠牲者たる俺たちは、7人になっていた。年齢が17歳になっていた。
俺たちは逃げた。フリージアの国サイクリド王国から。
王国の名前さえ教えられなかった。死んでいく騎士たちに王国を民を家族を頼むと言われて初めて自分たちがいる国の名を知った。極力俺たちに情報を渡さないように囲ってきたフリージアも、自分が居ない前線までは情報統制が出来なかった。
騎士たちも捨て駒の勇者たちの多大な功績に見合わない待遇と、フリージアの態度に何か思う事があったのだろう。隙を見ては王国の情報や逃亡経路などを教えてくれた。
魔獣の大氾濫が撃退された後は暗殺される運命だという事を教えてくれたのは騎士団の団長だった。雷を帯びた巨大な白虎に半分喰われながらも逃げろと叫んでいた。
擦り減った気力を搔き集め、俺たちは決戦前夜に逃げた。もうバックアップしてくれた騎士団は壊滅していて、俺たちだけだった。気がかりは無くなったその時に、決行し予め計画した通りに追っ手を撹乱するコースを辿り、王国の国境を越えて隣国スアハラダの辺境の地イグリダに入った。
魔獣が跋扈し、色々とキナ臭いサイクリド王国と隣接しているイグリダは荒くれ者や無法者の集まる都市で、スアハラダ国も関知しない(出来ない)無法地帯だった。
イグリダに着いた俺たちは早速洗礼を受けたが、何故かフリージアの支配下から出ても消えることの無かったギフトを存分に使い短期間で制圧する。むさくるしい男たちの歯軋りと歓迎の中冒険者ギルドに入りパーティを組んだ。
俺はその時には精霊魔法士から精霊王の友というギフトまでスキルアップしていた。
精霊魔法士の頃から使う事で威力を上げていった3精を介しての魔法が、実際に精霊王の力を顕現できるまでになっていた。
勝田は剣士から剣聖になり、穏やかな気配のまま威圧が使えるようになっていた。
迫田は魔法士から地母神の娘なんて大層なギフトに代わり、自身が大地に触れている限り絶えない魔力で圧倒し、且つ食材関連の生成と育成で食糧生産の分野では伝説級となっている。彼女が逃げた時点で王国は詰んでいる。安定していなかった食料生産が飛躍的に安定し改善されその味にも慣れた国民が、彼女と共にその恩恵を失った事に気が付くのはいつの事か。倒れるまで、倒れても許さなかった彼女への仕打ちを考えるとそれだけで胸が空いた。
歌姫だった設楽秀花は歌聖となり、四肢欠損位なら殆ど聖力を使わずに治せた。彼女も呪符の鎖を付けられ回復役として前線に送られてきた。その時後発の彼女からもフリージアの思惑を知らされた時は彼女のその状態も併せてフリージアを声高く呪った。
茂呂末あいは料理人から不死の果にスキルアップ。食材を生成しどんな料理でも道具無しで顕現させられそれを食べる者の体力と魔力を増やすことが出来る。それも、最後には力尽きる寸前まで隷属させられ、逃亡中も意識が混濁し続けていたほど酷い状態だった。
真崎慎吾は、真崎はどう説明すればいいのか。無効化の能力はスキルが上がるごとにその無敵さ加減が半端ないものになっていた。最終的には仁者無敵というギフトを得ていた。自己の為でない物事に対しては、物理・魔法を自動的に完全無効化される。その上、敵対する者の防御を苦もなく破砕する。
実際これはキツイ。俺も精霊に頼んで奴の周囲を無酸素化して辛うじて引き分けるくらいだ。奴に完全に勝てるのは「常識?そんなもん糞喰らえ」な勇者の悪友・近衛宗次だけだろう。
勇者近衛宗次はなぜか勇者のままだった。常識ぶった切る男には最初からゲージなんて要らないとでも言うのか。
まあ、奴のお陰で鎖を破って逃げられたし、此処まで逃げられたのも奴の『幸運』の力も働いていたし?まあ持ち上げすぎるとなんだから言わないが、兎に角、俺たちは束の間の平和を捥ぎ取った。
それから一年近くギルドの仕事をこなした頃、俺のスキルが上がり、精霊王の加護が増えた。
時の精霊王シーラだ。
そのシーラから俺は重大な話を聞くことになった。
先に仲間になった風の精霊王のスーンが格を上げれば、シーラと協力して俺たちを元の世界に戻すことが出来るという話だった。
思わぬ朗報に、皆が集まって泣いた。
この頃には女子三人の能力が神殿側に知れ、パーティの活動の外で彼女たちは神殿の仕事を手伝うようになり、深刻なPTSDを抱えながらも生きていた。帰れると聞いた時のその瞬間の彼女たちは崩れ落ち号泣していた。
もう18歳になっていた俺たちは俺のスキルアップを優先し、スーンの格を上げることに専念することとなった。
「帰りたい」
募る思いにやがて焦燥が混じり始めた時、スーンの格が上がりシーラから精霊術による術式サークルの錬成のレシピが告げられた。
フリージアってどうキャラを固定すればいいのか悩んでおります。はあ。
読んで頂き感謝感激。