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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第一章始まりは異世界の香り
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田中過去編第一章は田中の過去編を中心に進みます。主人公不在・・・



 ラノベに詳しい男子や女子の一部が騒いでいるが、こんなこと素直に受け入れられる筈も無い。

 皆、突然巻き込まれた事態に硬直し、パニック寸前だった。

 礼子と数人の友人たちは呆然と座り込んでいる。

 クラスメイトたちは全員ではなかった。見回して確認すると、隣のクラスの友人の所へ喋りに行っていた数人がいない。記憶が正しければ25人があの車両に居た。

 大きく動かずに黙って悪友とアイコンタクトをする。

 悪友も頷きクラスメイトと俺たちの居るこの部屋を探っている。

 一人足りない。体が弱く、修学旅行にも養護教員の付き添いで来ていた三波晶一がいない。養護教員が駅に着いてからの打ち合わせに引率教員のいる車両に行ってから、大人しく席でデジカメの写真を眺めていた筈だ。同じ班で行動して彼の辛抱強さや博識に皆で感心したのは昨日までの数日間で一番の思い出だ。正直に彼にそう話すと、柔らかい笑顔で『ありがとう』と言っていた。言っていたんだ。嫌な予感がする。

「誠二、三波がいない」

「ああ、言いたくないど嫌な予感がする」

 車両に居た人数から一人居ないとなると、一人だけ助かったのかと思いたいけど。


「・・・そう、仕方ないわね。こちらに来られた人数で行くしかないわね。転移に耐えられないようなら来てもらっても」

 薄暗い照明の奥から人の声が聞こえる。はっきりとは聞こえないが女性の声で何かしらの報告を受けている風だ。この場の決定権を持つ人物だろう。あまり良い内容ではない感触だ。聞いた内容に不安が募る。

「誠二」

 悪友の眼が色を変えている。普段はお茶らけた男だが、自分の正義に合わない物事については受け入れない頑固な部分がある。俺自身、予想がその通りなら当たり前だが受け入れられない。

 初めて会う未知の存在に色を付けて対面するのは趣味じゃないが、相手は多分俺たちにとって敵だ。そしてこの状況を握る人間だ。

「ようこそ我が神聖なる王国にいらっしゃいました。勇者様」

 漸くスポットライトの下に現れたのはマーメイドラインのドレスを着た美少女だった。

 やっぱりという声が一部から上がるが、皆顔の強張りは取れない。現実的に見ても、この状況が俺たちにとって歓迎すべき状況でない事を感じ取っている。本能的な怯えがそうさせているんだろう。

「一先ずは謝らせて頂かねばなりません。

 私は王国のフリージア。国王の娘でございます。

 貴方方は我が国における未曽有の危機を救う勇者として、多くの犠牲の上で勇者召喚された選ばれた方々なのです」

 愁傷に身分の高い自分が頭を下げることで誠意のある人間だと印象付けている。ここで男子と一部の女子に受け入れられる。日本人の性質的には仕方がない。この時点で警戒しているのは俺と悪友と後数人の女子。その半分は男子の視線に反発していての事だが。礼子は陥落組のリーダーになるだろう。早速何やら質問をしている。

「どう思う?」

 三波の件が尾を引いているのか悪友の眉間の皺が取れていない。その皺をぐりぐりと突いて宥める。

「様子を見よう。半分以上が持っていかれてるし、こっちは浮動票が多い。

 あの女はヤバイ。それだけは確かだ」

 延ばされた皺を撫でながら頷く悪友はぼそりと返してくる。

「お前が居て良かった。俺一人じゃ突っ込んで自爆して終わりだった」

「デキル男だからな」

 言ってろと返す悪友に本当になと呟く。

 俺だって冷静になろうと頑張っているがまだ中学生なんだ。さっき迄確かに居た奴がもしかしたら死んでいるのかもしれないと思ったら、人目も憚らず叫んで喚いているさ。だけど、今、それをやったら全員アウトだ。中坊の俺に何ができるって言うんだと自問自答してるってゆうのに、なんとかしなきゃと考えてる。異常だね。


「関係の無い、平和に暮らしていた貴方方を頼る私たちをお許しください。

 どうか私たちを民をお救い下さい」

 今の所固有名詞が出ているのはフリージア一人。具体的な話を一切していないのに皆彼女の話にのめり込んでいる。隣を見れば悪友の苦い顔が見えてほっとするが、浮遊票だった女子たちも嵌まっている。何らかの操作がされているのか洗脳か、改めて確かめると俺たち以外に平静なのは5人。

 剣道部の主将をしている勝田将基。園芸部の迫田美恵。放送部の設楽秀花。家庭科部の茂呂末あい。帰宅部の真崎慎吾。

 夫々が『疑い』『恐れ』『怯え』『興味』などの視線でフリージアとクラスメイト達を見ている。

 そのうち視線に気が付いたのか勝田が後でとサインを送ってくる。それに頷いてフリージアの演説に意識を向けた。

 そこでは何やらドッグタグに似たネックレスを持った数人の男達が立っていた。

「これより勇者様に神より授けられる『祝福(ギフト)』を調べ、この神鋼製の板に刻みます。

 これは勇者様の身分を保証し、我が国にご滞在の間にどの機関どの商業施設でも無償で提供いただくための証となります。

 ギフトは勇者様個人に一つ授けられ、勇者様のご活躍の助けとなる物。

 例えばギフトと書かれた欄に戦士とあれば、武器を持って戦う者の意味となります。

 聖者とあれば、神力を得て怪我の回復や病気の治癒などを司る者の上位職となり、邪なる者から護る盾を生成し、死者の王の穢れをも払います」

 都合のいい派手な話だけをしている。そんな感じだ。

 優し気な、俺たちとそう変わらない少女の一皮剥いた内面の強い『欲』が透けて見える。相当な野心家だと思う。

 フリージアの話を聞く振りをして、徐々に勝田が近寄ってくる。それを見た他の面々も俺たちの近くにいた方が良いと判断したのか、微妙に近い。

「それでは順番にこの宝玉に手を当てて戴きます。その際空いた手で神鋼板をにぎっていて下さい」

 いよいよだ。ここは先じるべきか、最後に行くか。

「誠二、最後にしよう。そんな気がする」

 こそこそと悪友が言ってくる。お前に命運は任せるぜ。俺たちは判定の列の最後尾に付いた。

 わあっと前方から歓声が沸いた。どうやら中二病(俺も通った道だがもう卒業した!たらした)組の誰かが『魔法士』というギフト(名前的には職業じゃないのか?)を貰ったらしい。頬を紅潮させ飛び上がって喜んでいる。あいつがあんなにはしゃいでいる所を始めて見た。あいつにとっては幸せなんだな。ここに居ない人間のことを思うとやるせなく、俯く。いやあいつに当たるのは八つ当たりだよな。

 結果は俺の前までに、攻撃系のギフトが7人。補助系や遠隔攻撃系が5人。魔法士が3人で回復系が4人。後は特殊系らしい。

 勝田は剣士。まんまだな。日本刀が武器らしいが自分の得手らしくほっとしていた。

 迫田美恵は土魔法と木魔法と水魔法が使える魔法士。複数の魔法を使えることで驚かれていた。これって、向こうでのスキルの様な物が関係するんだろうか。

 設楽はなんと歌姫だ。と言っても踊り子のような感じではなく『聖者』の派生ギフトらしく、その歌声が武器にも守りにもなるらしい。

 茂呂末あいは料理人。なんだろうと微妙な目をしていたが、食物に関係する事なら食材に至るまでその能力を発揮するらしく、不作が続く王国の食糧生産の為に尽力を求められていた。

 真崎慎吾は無効化。魔法物理の『法』を無効化できるらしい。何を考えてるか謎な男だがこの時口の端が軽く上がるのが見えた。嫌な感じはしないが理解不能な男だ。

 俺は精霊魔法士。これも特殊系らしく、聞いた書記官のような男が慌てていた。フリージアの目力がぶすぶす刺さって来てる。

 これで特殊系は設楽と茂呂末と真崎と俺。

 そして、最後は悪友だ。

「近衛宗次様。勇者」

 どよめきが沸いた。

「マジかよ」

 呟いたのは俺か悪友かどちらだったか。取り敢えず確かだったのはあのとんでもお姫さんのロックオンが、確実に俺たちに定められたって現実だけだった。

 

 

 

 予約投稿中です。まだまだ短いですが、だんだん長くなる時もあります。切りどころが見えなくて・・・


読んで頂き感謝感激。

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