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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第二章 続きは異世界で待っている
18/24

各務氏 大魔導士になるそうです

 読んでくださる方付いて来ていただけるか不安・・・主人公の影は薄味です。











 あ~ミントさんのお茶は冷めても美味いなあ。

 ティーカップに霜が付いていようが液体なら飲める。長椅子が凍り付いていようが痔主ではないので気にならない。このまままったりティータイムしよう。そうしよう。

「現実逃避は生産的ではないよ?」

 き、聞こえない。そんな大人な発言聞こえないんだから!

「仕方が無い子ねえ。それじゃあ貴方抜きでこれからの方針?とやらを決めるわよ、精霊王の友」

 申し訳ありません。それだけはご容赦願いたい。速攻で謝り倒す。

「まあ?貴方も勇者たちも色々と事情があるんでしょうけれど、放置したって最善でも破滅、最悪ではパライソの消滅になるだけなのは理解しているわよね。

 今のままでは最悪の事態にしかならないのだから、『急がば回れ』よ」

 アマンダさん、可哀そうな(あほの)子を見る様にこっちを見ないで下さい。各務さんは問題の大元なんですから溜息吐かないで下さい。意外と効きますそれ。

「この国の重鎮に会うのはどんなメリットがあるんです?」

 諦めて今後を考える。時間が無いのはアマンダさんだって承知だ。その上で言っている。『急がば回れだ』だな。

「この国の宰相は二人。一人はアズル。まあ、平たく言えば大工の棟梁ね。頭脳派系筋肉よ。

 もう一人が私が推薦する宰相、絡繰り技師のショウ。この国の人間では無いけれど国王とアズルの支持を受けて宰相になったの。

 とにかく資料を片っ端から貯め込む男で、合法非合法織り交ぜて集めるものだから、古今東西、果ては別の大陸の王家の醜聞までコレクションしているわ」

 うわあ、変人来た!職人や技術者って執着と集中力が人外な人が多いからこその収集癖か。それが各務さんのギフトに何を(もたら)せてくれるのか。

「という事は、顔が広いし無無理が利く相手も多いのよ。人外にもね」

 それもうギフトなんじゃないんですか?もしかしてこの人も。

「ほぼ確定しているけど異世界の人間ね。でも、彼のギフトは分からないわ。見えないと言ってもいいわね」

 アマンダさんの鑑定モドキが使えない相手なら神憑り、何らかの神の加護を持った人か。

「アマンダさん。そのショウと言う方は幾つくらいの方なんでしょうか?」

 ここで各務さんが参戦してくる。それってもしかして?

「そうね、人の年齢はよく分からないけれど大魔導士(笑)様の親世代かしら」

 (笑)はきっと俺の頭の中の誤変換だな、うん。

 各務さんはその答えを聞いて落胆したような風情だったけれど、どこかほっとした様な色も浮かべている。宰相が弟さんの可能性を考えたのか。

「各務さんもしかして?」

「ん?ああ、弟の名前は祥太郎と言うんだ。もしかしてと思ったけど違うようだ」

 言い淀み下を向いた各務さんに言葉を掛けるのが(はばか)られた。

 次男にも太郎って付けてるけどイ〇ロー家のようだな。家庭内が上手くいっていない事は聞いていたけど、弟さんが産まれる前からなのかもしれない。

「ま、確約はできないけど麒麟や白銀竜とも飲み仲間だったって言うから、何らかの手立ては期待できるかもってレベルだから」

 さらっとビッグネームが来た!霊獣神獣幻獣てんこもりだ。是非とも会いたくないと唸ってしまう。

 もうアマンダさんはこの痛い問題を彼の人に擦り付ける気満々だな。俺でさえそう気付けるのだから各務さんも当然複雑な顔をしている。

「各務さんはどうしますか?」

 この問題ばかりは俺が決める事じゃない。設楽の行方を追いたいのは山々だけど、救出するための切り札は各務さんになる。各務さんの問題を解決することは急務だ。

「いいのかい?私だけがその宰相と言う方にお会いするのでも構わないんだが」

 言うと思った。これには溜息を吐くしかない。アマンダさんもその他大勢もね。っと!蹴るな真崎。

「各務さんの状況判断があちらの世界仕様なのはいい加減理解してください。

 一人で王都まで行くんですか?どうやって?

 この世界の価値観は中世期の欧州と思って下さって間違いないです。そんな環境を単独で、しかも情報を持たない人間が行動することは理に適うと思いますか?

 人を見たら強盗だと思って間違いないです。文字も碌に覚えない社会からはみ出した人間に何を説いてもお礼にと首をかっ切ってくれるような者もいるんです。

 親切ごかしの農婦が痺れ薬を盛って金目の物を奪って崖から突き落とすなんて茶飯事です。

 素人の考え休むに似たり?でしたっけ。でもここじゃあ失敗したなと思う間もなくしくじれば物理的に首を取られる世界なんですよ。

 各務さんなら分かるでしょう、素人の判断が最悪の結果を齎すなんて常套です。」

 やんわりとした口調だがはっきりと言い切った。

 俺が各務さんに対してそういう風に言ったことは無い。それは各務さんのフィールドという限定空間での遣り取りしかしてこなかったからだ。

 少なくともこのパライソでは俺に一日の長がある。それを理解できない人ではないと思いたい。

「・・・私の認識は可成り甘いみたいだね。田中さんがそう言うのなら田中さんが経験してきた上での助言。

 従うのが正しいだろう」

 渋々と言う風ではなくしっかりと頷いてくれる。

「貴方たちの事だからゆっくり話し合いなさい。この部屋は自由に使うと良いわ。

 大事な事は、全ての事象には意味がるという事。以前精霊王の友が言っていたでしょう?『言霊』だったかしら。口から出したものには呪が含まれているの。それに魔力が乗れば大惨事よ。

 吐いた言葉は戻らない。全て自分に返っては来るけれどね。

 大魔導士様。貴方は特に言動に気を付けなさい。対外的には喋れないと言った方がいいわね。

 貴方の魔力ならその呪はそのまま実現するでしょうからね」

 まっすぐアマンダさんが各務さんを見る。それは射る様にというよりは、まだ(いとけな)い幼子を心配する母の様に不安に揺れている。

「二つの世界の常識は相容れないかもしれない。それでも信じられる人がいるのならば信じたい」

 その一人は貴女だと各務さんはその曇りのない瞳で返す。殺し文句だわそれ。

 案の定あの理不尽が人型をしているアマンダさんが頬を赤らめている。

「はふっ、強烈ね。これで魅了持ちじゃないなんて、私も魔力に酔ったのかしら」

色気過多の揶揄いに各務さんがふっとほくそ笑む。

「それじゃあ、お話合いが終わったら表に来て頂戴。

 カウンターに居なかったら向かいの『アリアの台所』って店に居るわ」

 ドアに向かいながらアマンダさんが連絡先を告げる。ギルド前の食堂はギルドマスター御用達で、手頃な値段で味も良く何よりギルドも近い店なのに、冒険者たちが異常なほどお行儀が良い店だ。まあ、言わずもがなだな。

「了解しました」

 芝居がかってお見送りをすると、アマンダさんが出て行ったのと入れ替わり迫田と茂呂末がキキとスーンを連れて戻ってきた。

「キキ、俺は今日ほど悲しい思いをしたことが無い」

 (おもむろ)に悲しそうな顔をした俺に詰られキキが驚愕に立ち尽くす。

 各務さんから魔力を啜ったせいか、キキはほぼ実体化をしており、成人未満の成体になっていた。

「え?セイジ?え?」

「アマンダさんが上皇だって?聞いたよ。相棒だと思っていたのに、それは俺だけだったんだな。

 それに俺を置いて逃げたし」

 それって私のせいなのと割と本気で戸惑っている。反省ぐらいしろ。

 ちょっと傷付いたかも自爆だけど。

「スーンも、俺の事は元から好きじゃなかったんだろう?いつも当たりがきついしさ気は付いていたんだけど、認めたら辛くて何でもない振りをしたけど・・・実際見捨てられると、はは、辛いな」

 ぎょっとした顔でスーンが俺を見てくる。

 スーンはシーラに次いで位階が高い。渡界する為にシーラと共に重点的にスキルアップしてきたから。今の容姿は真崎の様な容姿でまるで兄弟のようになってる。高校生というよりは大学生くらいだ。

 いつもは捻くれて(はす)に物言いをするからツンツンだが、今は挙動不審に天敵の真崎にまで助けを求めている。

「もうそれ位にしときなさいよ。

 拗ねたら面倒臭いのは田中君だけじゃ済まないのよ」

 Oh!迫田から現実的なお達しが。

「ば、ばかばかセイジ!騙したのね!」

「タナカの分際で」

 酷いなスーン。お前はス〇夫か。キキも、パカパカ叩くな、今の大きさを考えろまともに痛いわ!

 騙して無いよな。シーラを探してくるなんて言いながらここに着いたら速攻逃げてないか?

 今も隠れて扉から見てたよな?シーラがアマンダさんとやり合ってるのも見てたよな。

 内心いっぱい言いたいことがあったがここまでにしてやろう。

「各務さん取り敢えず座りましょう」

 アマンダさんを見送ってそのまま立っていたが、アマンダさんが出て行ったその途端に力が抜けた。

 思わず座り込んだ椅子に、先ほど迄寝かせられていたシーラが座っていた。まだ息が荒いが取り敢えずは大丈夫だろう。

「シーラ、もう少し休むか?」

 顔色の悪いシーラに声を掛ける。シーラは今にも吐きそうな様子で、座っている。

『もう大丈・・夫です』

 モスキート音かというほど小さな声で答えられてもな。全く大丈夫そうには見えない。

「それで、シーラは何がしたかったんだ?」

 勝田が発言する。一同本気で聞きたかった事だ。

 各務さん本人は勿論、精霊王までもが制御できない魔力をどうするつもりだったのか。はっきりとしたい。

『カガミ様の魔力を私たち精霊が手に入れれば、人が私たちを追いやった聖域を復活させることが出来ると思ったのです。

 ここまで濃厚で大量の魔力は、私たちどころか魔力に鈍感な人にも大きな影響を与えます。

 身の程知らずの行動が自身の消滅を招きかねない事に心底驚愕しました」

 病み上がりの蜻蛉かと思った。よっぽど堪えたらしい。

「私は利用されたのか」

 感情の見えない各務さんの声は確実に俺たちにも廻ってくる。実際そのつもりで言いているのかもだが。

 一人離れた椅子に座り、各務さんが大きく息を吐き出す。人によっては情けなくも見えるが、流石ブレない憎らしいくらい様になっている。

「そう、ですね。その通りです。謝るつもりはありませんが?

 気持ち的には五分五分のつもりです。お互いの力を合わせてそれぞれの目的を達する。

 それではいけませんか?」

 嘘偽りないが黙っていた分信用は失われているだろう。

 正直、目的が見つかれば各務さん一人でもやってしまうのではないかという確信がある。

 道中にて槍が降ろうが賊と遭遇しようが時々ジョブチェンジする農民だろうが、何とかする。そういう信用がある。それでこそスーパーエリート!更にこっちの世界でも人としての最高位・大魔導士とか、漫画だよ。段々下がってきた。気分は最悪で、その上爆弾抱えて一国を縦断するのか?と考えるとまた下がる。

「優先順位がそうなんだね?門外漢の私にはどうとも返せない。

 私の事案を解決してからという事なのかなシーラさん?」

 幾分顔色が落ち着いてきたシーラに直接各務さんは問う。

『ああ・・・ええ、そうなります。

 優先順位としてはそうです。

 貴方が貴方自身で魔力を統制し制御する。それからですねギフトの覚醒は。

 こればかりは主とはその力の差が歴然としているため私は何の御力にもなれません。

 上皇グリンダが申しました通り、今現在神々を除きこの地の何者にも貴方の力を利用することさえできない状況です。

 貴方方は法術さえ纏わずに、手に触れられぬ陽光や風さえも力に変える科学技術と言う制御法をお持ちだと聞きました。

 貴方の状態はその原動力となる陽光や風なのです。形を変えなければ力にならないでしょう?』

 これはよく理解できる。そう言う事だな。各務さんも頷いている。

「王都に居ると言う宰相はその『知識』を持っているかもしれないという事だね」

『然り』

 シーラが肯定して、各務さんは理解した。

 王都まで行くべきだ。と。

「だが、彼女・・ギルドマスターは転移と言う魔法を使ったが、それを頼むことはできないのだろうか」

 ああ、そう思いますよね。知らないから訊けちゃいますよね。

「各務さん。俺たちが渡ってきた時に法術じゃないや渡界サークルを使いましたよね」

 各務さんは頷く。そしてああそうかと言う顔をした。

「そのサークルが無いと二か所間を転移できないという事だね」

「殆ど正解です。残りの方が本当は比重が高いんですが、アマンダさんには誰が頼みます?」

 俺の切実な思いを込めて各務さんに問う。

「ああ、ああそうか。彼女を動かせる札が我々のはもう・・無い?」

 ご明察!まさか上皇なんてジョーカーを引き当てるなんて思わなかったし、それが百眼のアマンダとも呼ばれる御仁だと教えてくれなかったシーラが恨めしいよ。

「正解です。俺たちは一刻も早く王都までの道を踏破し、得たいものを得る。それだけです」

 平均的な歩行速度の人間の足で一月掛かるけどな。

「踏破という事は歩きか。移動手段はそれだけ?」

 唖然としている。無理はない。誰もそれだけの距離を向こうでは歩いたことは無かった。あの地獄の時は鉄の箱に詰められての強制移動だったから、悪友たちも初めてでは無いだろうか。

「こちらでも騎乗できる動物や馬車(もど)きはありますがお勧めしません。

 パライソに馬はいませんし、騎乗できるのは走竜と飛竜です。が、騎乗のギフトが無い人間はギフトを持つ人を雇うことでしか乗れません。

 馬車と言うか竜車も同じくですし更に付け加えると胃を吐き出すくらい揺れます」

 現実は塩辛い。全部試したが結局歩くを選択するしかなかった。

 それにこの辺境で飛竜だの竜車だの持っている者は居ない。

 行政の大幹部の一人としては、アマンダさんは必要ないし代官は船大工で砂舟を作って移動しているが今現在王都に出向中で舟ごと不在だ。

「短縮は無理なのかな?」

 砂舟が領主軍の工廠にあるらしいが借りられないだろう。

「シーラとスーンは界を渡ることはできても同じ時間軸の距離移動はまた別物ですから無理です。

 アマンダさんが出来るのは全ての精霊王を統合した存在だからこそかな?シーラ」

『はい。上皇は精霊王の最上位の全ての能力を統合した者がなれる最高位です。そのため平行転移は現在のところあの方しかできません。

 勿論、王都まで送って下さると言う夢想は早急にお捨て頂きたいです』

 ですよねえだ。

「まあ、各務さんのギフトは開放されてなくとも媒体である各務さんを傷付けることは避けると思われます。謎の多い伝説級のギフトですから断言はできませんが」

 ギフトについては、俺たち異世界人を無理やりその体内の構成を弄ってまで転移させるための契約の印なのではないかと思う。それが無くては厳しい世界で生き抜くことが出来ない。

 けれど物語の様に、だからお詫びに授けられたと言う親切なものと言う認識は無い。

 名を明かされない存在が目的を以て与えられた物では無いのか。そんな思い付きが頭を離れない。

「否定ばかりで肯定できる案は無いのか。

 このままでは時間を無駄に過ごすだけだ」

 勝田も唸って考える。

「乗り物も歩きも危険だが、乗り物の方が選り様々なリスクがある。

 比較的リスクの低い乗り物は手に入らない」

「手詰まり?」

 各務さんはパライソを対象とする知識常識が不足している。俺たちが意見を出し合っては潰しているのを黙って見ていた。

「シーラ、アマンダ様って今何に興味あるの?」

 ふいに迫田がシーラに問い掛けた。この僅かの間に喋るシーラ(・・・・・)に慣れた迫田は時折茂呂末と一緒に話し込んでいることがあった。そんなことを思い出しながらぼんやり見ていると。

『何か興味?・・・そうですね、ダントツでカガミ様でしょうね』

 考えながらシーラは答えている。問いかけられたから答える。そんな内心が丸見えで、気の無さがあからさまだ。

「ふ~ん」

 唇を尖らせながら、迫田は茂呂末にごしょごしょ耳打ちをしている。途切れ途切れに何かを言い合っている二人に皆の視線が集まる。

「うわっ注目浴びてる」

 静かになった俺たちに茂呂末が気付いて仰け反る。迫田は思案気に唇を結ぶと、こう切り出した。

「ダメ元なんだけど、ここはアマンダさんに送ってもらわない?」

 幾つもの目が点になるのを見回し、ヤレヤレと迫田は肩を竦めた。

 


 

 

がっくし。

読んで戴き感謝感激。

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