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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第二章 続きは異世界で待っている
14/24

各務氏 異世界に立つ  (三人称からの田中に戻る)

前回は前書き詐欺をしてしまいました。この章の半分くらいは行けそうです。

やってきました異世界。各務さん内心は三人称で行こうと思ってます。

今回も短いですね。


 田中に誘導され、魔力というものを感じた各務はただその暴力的な力に翻弄された。

 言われるままに扉を開け、潜った先は太古の海を思わせる空間だった。 

 目を焼く光は一瞬に収束し、目に映るのは熱も匂いも無い世界。体を(くる)む奔流に逆らうが逆らい切れずに流されてゆく。

 左右を見れば田中たちが時を止めた彫像のように立ち前を見つめている。

 このままでは引き離されると手を伸ばした時、指先から崩壊が始まった。

 粒子となって崩れた指先が次第に肩へ胸へと感染してゆく。()となる原始的な恐怖に震える各務は抗った。それを嘲笑う何かは歯牙にもかけなかったようだったが。

 全てが小さな粒子に変わった時、各務を包んでいた海が逆巻いた。

 逆回転のように粒子が集まり人型に象ってゆく。寄せる波が流されていった各務を引き寄せ人型の筋になり肉となり、『各務英太朗』を再構成するのだ。

 皮膚が全身を包み服が更に巻き付いた時、各務は全てを取り戻した。

 異世界に行くことを決めたのは自分だが、まるで作り変えられる恐怖と不快感がこれから先を案示している。想像以上の体感。自分の甘さを見せつけられた。

 そこに何者かの意思を感じ、各務は取り戻した感覚を使いギリリと唇を噛んだ。





「各務さん!出ます」

 二つの世界を渡る感覚は未だに慣れない。

 踏ん張っていたが、電車の急停止を喰らったように悪友がすっ飛んで行った。そのままげえげえ吐いている。

 心配した各務さんは少し青い顔はしているが立っている。流石だ。

 他の面々は、勝田と真崎が夫々迫田と茂呂末を抱き止めている。こっちも流石だな。俺の残念さはここに起因するのか?

 シーラは重力や世界を包んでいる障壁に対して物理的には干渉されないから無事なのは当然だし、どうやら成功したらしい。ほっと息を吐く。

「・・・・・ィィィー」

「ん?誰か何か言ったか?」

 まだ回復しきっていない聴覚をモスキート音の様な物が刺激する。見回すが誰も聞こえていないようだ。

 振り向いてシーラの方を見ると、シーラの口が(オー)の字になっている。

「シーラ?」

「ィィィーック!」

「ぶふぉああ」

 行き成り後頭部に激しい衝撃があり、悪友が蹲る横に吹っ飛ばされた。

 濛々と上がる砂ぼこりの中、現れたのは赤〇彗星ならぬ赤いティ〇カーベル!

「キキ!お前ドロップキック(それ)は禁じ手だと言ってたろうがっ」

「キキちゃんキックだもんね」

 言い方変えても一緒だ!ふんすふんすと臨戦態勢になっている省エネ精霊王は半泣きになっている。

 いつもパライソに居られない俺の代わりに設楽についていてくれたんだ。攫われたことはキキもショックだったろう。

「ごめんなキキ。待たせたな」

 素直に謝った俺に、頭突きをかます様に突進してくる。うごお!

「ヒ、ヒ、ヒデカがヒデカがあ」

 くしゃくしゃの顔をして俺の顔のど真ん中に張り付く。わんわんと縋って泣くがそろそろ息が続かないから止めて下さいませんか。キキさん?

「ごめん」

「セイジはあの気持ち悪いのと消えちゃうし!あの女は!あの女はバンド迄瓶詰にして連れてった!」

 瓶詰?

「シーラ、精霊王って瓶詰に出来るのか?いくら省エネ化ったって能力まで下がっている訳じゃないだろう?」

 普通の瓶じゃないことは知れるが・・・そう言えばフリージアは俺たちが居なくなってから戦力が落ちた筈なのに、どうやってあんな想定外の力を得たんだ?フリージアは何を手にした(・・・・・・)んだ。

『シタラ様とバンドを手に入れたフリージアは、主を襲わせた人工魔獣を使い神殿を荒らし回ると忽然と消えました。

 転移の法術など予備動作も無く発動しており、その残り香は腐臭がしていました。

 国境を越えたサイクリド王国は今や人外魔境。魔獣どころか人には見えない私たち精霊種も入れなくなっています。

 現在はシタラ様とバンドが攫われて一日を経た時間軸に時を戻してあります。

 ですが一刻の猶予もありません。すぐにでも行動に出るべきでしょう』

 腐臭。引っ掛かる言葉に考えが纏まらない。だが急を要するのは確かだった。

「サイクリド王国の情勢は解るのか?」

 国境の町イグリダは本国であるスアハラダ国からも見放された辺境都市だ。領主は訪問をすることなく代替わりをする者もいるぐらい放置されている。

 今世のサイクリド王国国王の代となってから常にキナ臭く、手を焼く無法者たちに恫喝され税収すら諦めているらしい。当然領主軍の常駐も国軍の遠征も無い。

 イグリドを護るのはお役人ではなく史上最強で最凶のギルドマスターが鎮座する冒険者ギルドだ。

「ギルドはどう見てる」

 ギルドの名が出た途端、悪友が震えだす。武者震いでは決してない。イグリダの冒険者ギルドは勇者カンジの最大のトラウマだった。

『ギルドマスターは主の帰還を待っています。

 曰く、「未曽有の事態が起こっている」と』

 行動の前に情報収集だな。勝田や真崎に目をやり話し合いを促そうとしたが二人とも固まっている。

 どうしたんだと視線の先を見やったら、とんでもない事態が起こっていた。

『好き好き~』

『ちうちう』

『好き好き好き~』

『ちうちうちうちう』

 何をして下さってるんだおい!とんでもない光景に声も出なかった。

 硬直した各務さんにキキが抱き着いてすりすりしているその下で、文字通り空気と化していた風の精霊王スーンが各務さんの足に噛り付いて何か(・・)を吸い上げていた。

精霊王が熱い!


読んで頂き感謝感激。

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