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エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第一章始まりは異世界の香り
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 死ぬまでには一度でも挑戦しようとOVL大賞に応募しようと思います。

 頑張りましたが、いっぱい詰め込む癖は治りません。

 色々未熟で読み難い文章かもしれませんが、どうか楽しんでください。



「あ~各務君。ちょっといいかな?」

 就業時間まであとわずかというその時、()が分からない『時知らず』と影ながら呼ばれている部長(52)が、こともろうか主任である各務英太朗(27)を呼び止めるという暴挙に出た。

 自分の仕事は効率よく納め、部下や同僚の仕事を指示や助言込みで手伝っていた(GOD)を、PCを立ち上げることさえできないが上層部や他部署からの弾除け要因として容認(愛玩)されている部長が残業の指示を出すのかと殺気混じりの視線が飛び交う。

 それらの殺人光線にも気付くことなく、にこにこと自分を呼ぶ彼のことを実のところ各務は嫌いではない。

 だが、ノー残業デーでもある今日の今この時間に『残業』は無いと踏んでもいた。

 ただ、飲みにケーションへのお誘いの可能性は否定できない。部長の人柄は承知の各務だ嫌な酒ではない彼との酒席に否やは無い。

 がるがると唸る部下たちを宥めつつ席を立つ彼の背を見、残された者は夫々の仕事を片付けるため散ってゆく。今夜は飲みに誘おうと予定していた者はそれこそ飛ぶような勢いで仕事を片付けていく。部長の魔の手から彼を救うためにもと張り切っていた。


「なんでしょうか?」

「あ~、もう仕事はいいのかな?」

 呼びつけておいてその第一声は無いよなと近くにいた者などは思ったが、各務は気にも留めず首肯する。

「あと1本2本取引き様への電話を掛けたら終おうと思っていたので大丈夫です」

これですか?とくいっと指で飲む仕草をする各務を見て心底残念な顔をして首を振る部長。張り出した腹の前で指を玩びながら、申し分けなさそうに告げてくる。

「そうだったらいいんだけどね。

 ほら、田中君。もう半月ぐらい休んでいるだろう?

 今日出社するって夕べ連絡貰ったんだけどね、来なかったじゃない?無断欠勤は理由聞いてからって思ってたんだけど・・・」

 困った様子がこれほどナチュラルにしょんぼりと見える人物はそうそういないだろう。

 ここまでくると、この先が読めた課内の面々が異議を求めようと口を開きかけた瞬間、それを察した各務が被せるように答えた。

「田中さんですか。そうでしたね。

 肺炎の疑いで入院したんでしたね。

 退院は三日前でしたか?もう出社してよかったんですか?」

 心配気に伺う各務に我が意を得たとばかりに部長がうんうんと頷き、課内全体が項垂れる。これは駄目な流れだと察したためだ。

 構わず部長が事情を説明しだした。

「いやいや、肺炎ではなかったようだが質の悪い風邪らしく一晩泊って通院で済んだらしい。

 インフルでもないけど病気が病気だから(感染るかもだから)休んでもらってたんだ。

 だけどその病気だからこそ一人暮らしの田中君の様子が気にはなっていたんだ」

 休んでから日に1本はメールを送って来ていたらしいが、夕べ以降電話も通じないという説明が続く。

「それは心配ですね。

 田中さんのアパートは隣のブロックですから様子を見てきましょうか?」

 自分から進んで申し出てくれた各務に、部長がありがたいと頷いた。

 こうなると思ったと課内の面々が諦めて帰り支度を始める。

 その様子に苦笑しながら部長に詳しいことを尋ねる各務。

「申し訳ないね。疲れているのに。

 妻は呼吸器系が弱いものだから、もしものことを考えてしまって・・・

 お礼に今度おごるからね」

 感謝しながら今日までの情報をメモを頼りに答えてゆく部長。

 妻の~辺りで女性陣がハッとなり猛省する者もちらほらいて、男性陣はピンとこない者が多く、女性陣の様子に首を捻る。

 くっと各務の笑みもやや深くなるが、それと覚る者はいない。予定していた電話を掛けると次にはもう帰り支度を済ませていた。

 自分で書いたメモを手に部長に挨拶すると同じ路線を利用する面々と共に退社するのだった。











 ・・・というようなやり取りの後2時間、今現在(イマココ)

 管理人に挨拶をし、後輩の部屋を訪れた各務は人生でこれ以上なく困惑していた。

 呆然と震え上がるというアクロバテイックな反射をした管理人の手から合鍵が落ちる音がして、初めて各務の止まっていた時間が動く。

「な、何をしているんだろうか田中さん」

 会社の方針で年齢役職関係なしに『さん』付け敬称が義務付けられて久しい。役職が上がるほど有名無実と化したルールではあるが、敬語が標準装備の各務には苦ではない。後輩にも丁寧に話しかける彼は冷静に会話をしているようで微かに声が高い。それだけ目前の状況のインパクトは大きかった。

 この状況下で冷静に(に見える)声を掛ける各務という存在に、相手は漸く気が付く。

 各務が入社以来の指導から何くれと面倒を見てきた、有望株との声も高い後輩社員・田中洋二(23)は、皮鎧にショートソードという装備の『うわあ』な姿で、うねうねとのたくる下半身を持つ美女に絡みつかれていた。

「くっう~~~~・・・はあ?!か、各務さん?と大家さん?な、なんで?」

 どうみても美女との秘め事とは言い張れない状況で、新築ワンルームマンションを居た堪れないほどの沈黙が支配していた。

「あ、お取込み中で良いのかな?

 それとも助けた方が?」

 自分でも何を言っているのかと思う各務だったが、今にも首に巻き付こうとしている鱗付きの綱のようなものに、躊躇している場合ではないのかと声を掛けた。

「そ、そうして頂けるとありがたいです」

 もう既に蚊の鳴くような声で真っ赤になっていた顔色が赤黒く変色してゆく田中。

 へたり込んでアワアワしている大家は頼れない。部屋を見回し、傘立てに立てられていた棒のようなものを掴み、各務は取り敢えず上半身美女の関心を自分に向けようと軽く美女の下半身を叩く。

 瞬間。鼓膜を劈く悲鳴が部屋に乱反射した。

 わんわんと耳鳴りに苦しみながら、各務は何事が起きたのかと田中を見下ろした。

 そこにはゼイゼイと荒く呼吸する田中が、何かキラキラと輝く皮膜のようなものに塗れ蹲っていた。

 上半身美女は嘘のように消え去り、どこか気まずいような心地で各務は立ち尽くしていた。

 残されたのは濃厚ですえた花の匂いだった。


「か、各務さん。あんた何者(なにもん)なんすか?」

 荒い息の下ようやく発した田中の言葉に、何言っているんだとばかりに各務は答えた。

「それは俺のセリフだよね?」

 各務の言葉に頷くのは呆然自失の大家。うちの店子(・・・・・)の素性に未だフリーズしたままであった。

 

 

 

 

 いかがでしたか?実は第一章は主人公は余り活躍しません。が、為人は見せられたかなと思います。

 次話からは田中君目線のお話として続きます。


 読んで頂き感謝感激。

 

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