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第1話・情報公開

 抜け殻となった月夜の国。たった1人を残して、その国の住人は全員死んだ。瞬く間に全土へ噂が広まり、人々は大混乱となった。


 あの事件から2年の月日が流れ、俺達は14歳になった。月夜の国の当主・天野ツキヒメは、北闇の玄帝・タモン様の許可を得て、情報班なる部署を設立させた。そうして日々情報収集に励んでいる。


 ツキヒメは様々なことに貢献した。先ず始めに、新種についてだ。


 新種の名はグリード。これはフードの者がそう呼んでいたから確かだろう。


 グリードは人の言葉を話し、理解出来る。連携を取り、忠実に司令官の命令に従う軍隊のような生き物だ。食すためだけに襲ってくるハンターとは異なる生き物で、殺すために襲ってくる。


 グリードには緑色の瞳があり、背中にはおよそ30センチほどの無数のトゲを従えている。ハンターと似ているのは大きさだけだ。


 そして、重度。


 今のところ確認されている重度の数は、巨犬二体・猪・大猿・猫。新たに公開された情報で、馬。最後にもう1人、おそらくリーダーであろうウイヒメを殺したアイツだ。


 馬は、最初に発見された重度である。このことを公にしたのは王家ではなく赤坂隊長だった。そもそも、開闢以来だと騒ぎになった事件なのに、数十年前と時期を濁していたのには理由があった。馬の肉を食ったのが、当時、俺と同じ年だった赤坂隊長だからだ。


 二次被害が及ばぬよう、王家が赤坂隊長を守ったのだ。


 赤坂隊長は、設立祝いだと言って、この件について快く情報提供をしてくれた。着々と重度の数が明確になりつつある。


 さらに、ツキヒメは武器まで作った。対ハンター・グリード用の武器で、人間が使用する。


 月夜の国で採取したトゲを厳重に保管していた北闇。ツキヒメはこれに目をつけた。国一番の鍛冶職人と案を出し合って、タモン様や闇影隊の意見も取り入れ、制作に踏み切った。


 型を取ったのはツキヒメだ。流石は陶器を売りに出していただけある。土で仮制作された模型を見たときには本当に驚いた。


 トゲの表面を加工し、鋼鉄に覆われた物を手甲に三本溶接。背中や足といった部位も考えたそうだが、重さがあるため腕だけにしたらしい。


 武器の名前は和名で〝桜姫(おうき)〟。ツキヒメの思いがふんだんに込められた物となった。


 そうして今日、また新たな情報が公開される。


 本部前に集められた闇影隊は、皆がツキヒメに向いている。




「皆様、おはようございます。昨夜、帰国されました精鋭部隊が重度の尾行に成功いたしました。深追いはやめるようこちらでお願いしていましたので、拠点は発見できておりません。しかし、この名前は記憶しておくべきでしょう」




 奴らは〝威支(いと)〟という名の組織で動いている。




「それともう一つ。情報班で威支の目撃情報が多い地点を地図にまとめました。こちらをご覧下さい」




 ツキヒメが世界地図を両手で広げる。だが、腕の長さが足りなかったようだ。真ん中でたるんでいる地図を、側に立っているタモン様が受け取った。




「俺がやろう」

「申し訳ありません」




 咳払いをして、話しの続きに入る。




「赤い点が記された場所、これが目撃情報のあった場所です。×印は壊滅した町や村です」




 地図を見ると、×印の周りで目撃情報が多発していることがわかる。いくつかは通った事があるけれど、すでに荒れ地となっている。何か用があったのだろうか。


 他の赤点は国付近に記されている。この2年で重度とグリードの対策はより強化された。西猛以来、落とされた国はない。最も赤点が少ないのは南光と西猛の間、南西側だ。ウイヒメはそこに手の平をかざした。




「タモン様と私はここに目をつけました。タモン様、お願いします」




 地図を閉じてタモン様が一歩前へ出る。




「ここら一帯は幻惑の森と呼ばれる立入禁止区域だ。皆も知っていると思うが、森に発生する霧に毒が混ざっており、死ぬまで幻覚を見続ける。よって、闇影隊や住民は絶対にこの森を通らない。だからこそ、怪しい。もし威支が幻覚にかからないとしたら、ここは絶好の拠点場所となるはずだ」




 くわえて、目撃されることも少ない。身を隠すにはもってこいの場所といえるだろう。


 この2年間、気味が悪いほどに平和だった。北闇を最後に襲撃はなく、グリードやハンターの被害はあったものの、桜姫のおかげで死者の数は激減した。まるで嵐の前の静けさだ。平和ではあるけれど、ずっと神経が研ぎ澄まされている。




「幻惑の森については、もう少しコモクと話を詰める。それまで動きはないと思ってくれ。解散だ」




 タモン様の視線が俺に向いて、顎で行くよう指示される。その姿に気づいたヒロトがこちらに来ようとしたが、赤坂隊長が止めた。ツキヒメにいたっては、しかめっ面で目を背けている。


 これでいいんだ。2年前に、俺が決めたことだから――。

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