表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
301/316

ルイと最弱・1

 訓練校に通っていた頃、「やーい! 千切れかけの金魚のふーん!」って大声で叫ばれたことが多々あった。レンがつけたあだ名は、人間クラスにまで浸透していたのだ。


 それが囁かれる程度にまで収まったのは、俺を見下ろしている彼女のおかげである。




「病み上がりのところ本当にすまない。僕も人の事を言える立場ではないが、たとえ傷口が開こうとも声を大にして言わせてもらう」




 スーッと息を吸う。目をぎゅっと閉じて耳だけをユズキに差し出した。




「友達のためだとはいえいくらなんでもやりすぎだ! お前が死んでは、僕は生きていけない!」




 ……とまあ、こうやって心のままに伝えてくれるユズキだけど、これはまだ優しい方だ。




「それだと怒られてるのかどうか分からないだろ。あの時みたいに静かに言ってくれた方が伝わるよ」

「あの時とは、訓練校のことか?」

「うん。追い払ってくれたよな」




 あまりにも馬鹿にしてくるもんだから、俺に代わってユズキが注意したことがある。


 幼稚な脳みそで闇影隊を目指すとは、よほど死にたいらしい。闇影隊になっても今のように同じ台詞を吐ければいいがな。――と、静かに、低い声で。隣にいた俺でさえゾッとするような顔をして。


 思い起こして身震いをする。




「別に僕は怒っているわけじゃない。イツキから聞いて本当に心配したんだ」

「ごめん……。それと、ありがとう」

「僕に礼を言う必要はない。キアキに言ってやれ。お前が回復したのは、彼女が強化を発動させたからだ。あれには細胞活性化の能力がある」

「呼び出してないのに、どうやって……」

「契約を結んだとそう聞いている」




 それから、ユズキは事細かに妖鬼と呼ばれる生き物について教えてくれた。キトと契約を結んでいるためとても理解しやすい。大まかに説明するとこうだ。


 一つ、姿を消すことができる。

 二つ、記憶を覗き見ることができる。

 三つ、言霊に似た能力がある。

 四つ、近くにいるときは勝手に現れるが、何処かに行っている可能性もあるため、名前を呼ぶのは必須である。




「三つ目に関してはキトだけかもしれん。残りは共通しているだろう」

「了解。能力はキアキに聞いてみるよ」

「今度キトに会わせてみよう。同じ種族だ。仲良くなれる」




 なんて、普段通りの会話をしているけど、ユズキがお姉ちゃんだと知ったばかりだ。家族に言われているみたいで、どこかくすぐったく感じる。




「なにをニヤけている」

「内緒!」

「まったく……。入院はこれを最後にしろ。テンリは待ってくれないぞ」

「動きがあったのか?」

「ああ。威支の報告によると、グリードが消えたらしい。準備期間に入ったのかもしれんとトウヤが話していた。ラヅキも動いているし、その可能性は高いだろう。となれば、おそらく王家も……」




 動き出す――。


 王家の狙いは人間以外の生き物を殲滅することだ。とはいえ、今の王家には信頼が寄せられていない。




「なにを材料に人間を味方につけるのかな? っていうか、重度と混血者ナシでどうやって勝つつもりなんだ?」

「向こうにはガディアンと塊叫団がついている。それともう一つ、日本もな。タモンが裏で言霊を無効化する防具の件について話しを回しているところだ」

「ガディアンと王家の狙いはなんとなくわかるけど、あの人達は何がしたいのかざっぱりだな」

「僕たちが向こうの世界からここに来た時、何かが起きたのかもしれん。なんにせよ、警戒することに代わりはない」




 そう言ってユズキは扉の方に向いた。




「お前が動けるようになるまで北闇に残る。一緒に母親を捜しに行こう」

「ヒロトは?」

「残念ながら任務が入って今は不在だ。見舞いに来てたんだが、その時は中へ通してもらえなかった。あと、ツキヒメも来てたぞ」

「マジで!?」

「あの頃とは別人のように落ち着いているように見えたが……」




 嬉しさのあまりに上体を起こした俺へ、ユズキは口元に手を添えながら吹きだした。




「あっはっは! そういうことか!」

「笑うな! べっ、別にいいだろ!」

「変化は悪くない。それもまた日常の一つだろう。上手くいくといいな」




 それから数日後。北闇を出発した青島班は、ユズキと、途中で合流したシュエンと共に母さんの捜索に向かった。


 歩きながら青島隊長が母さんの似顔絵を見せる。というのは、母さんの資料が紛失しているからだ。内通者の仕業だとされている。そしてそいつは、俺の安定剤が母さんだと知っている。


 このことが俺に余計な不安を抱かせていた。




(母さんの姿を知っている人は限られているし、俺の安定剤ってことでかなり絞られる。それに、第二試験の幻覚のおかげで、タモン様とニチ班のメンバーは俺の同期の中に犯人がいるって結論づけた)




 この条件から導き出されるは赤坂班だ。俺の安定剤を知っていて、尚且つ幻覚にかかっていない人。ヒロトとソウジだ。赤坂班は過去に俺の近辺を調査していたこともあるため、ぶっちゃけかなり怪しい。だけど、




(あの2人は絶対に違う。テンリの性格から考えても、おそらくそう仕向けられている。内通者を上手く利用して……)




 ふと、足を止めた。ユズキが多方向を確認している。




「なにか臭うな」




 方向を突き止めると、ユズキを先頭に全員が一斉に駆けだした。


 驚くことに、ユズキが臭いを感知した場所は北闇から離れた所で、位置的には神霊湖の辺りだった。濃霧に紛れて何かが燃えているのが目視できる。


 そこには、赤坂班と黄瀬班、そして、




「俺様が根こそぎ奪ってやんよ! てめえら、じゃんじゃん働けぇえ! あひゃひゃひゃ!」




 塊叫団のボス・キルの姿がある。


 塊叫団が狙っているのは旅人の集団みたいな人たちだ。赤坂班と黄瀬班は彼らの盾となり守っている。




「加勢するぞ! 四種への警戒を怠るな!」

「「了解!!」」




 キルと目が合うと、奴は顎をあげて不気味な笑みを浮かべた。

 次回、再び塊叫団と戦闘を繰り広げる!

 塊叫団が狙っていたのは、山賊と呼ばれる人たちだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ