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呪いと最弱・5

 タモン様と爺ちゃん、イオリが壁を攻撃する夢想縛りを相手にし、俺とイツキは総司令官の注意を引く。




「爺ちゃん、なんでこうなったか分かった!?」

「これはレイの護符だ! おそらく、死に際に印を仕込んだんだろう! いいか、2人ともよく聞くんだ!」




 夜桜レイは死んでもなお、北闇を守るために時限爆弾を残しているそうで、それが……。




「総司令官ってこと!?」

「そうだ! このままでは、闇の影響により護符が爆発を起こす!」




 この護符は、イツキが暴走した時に発動するよう仕組まれたもので、尚且つその刃が総司令官に向けられたときが条件となっているらしい。


 地上に被害はでなくとも、ここにいる全員は無傷では済まない。




「治癒能力に長けている者は助かったとしても、他は保証できん」

「爺ちゃんの業火防壁でなんとかならないの!?」

「ワシの話しを忘れてはいないだろう。レイはコモクの血筋だ」




 つまり、俺が光影の国民を縛っていた呪符を剥がせたように、爆発は業火防壁をすり抜けるってことかっ。


 夜桜レイが走流野家の血筋を知らなかったとしても、完璧に仕込まれた護符だ。


 いや、待てよ。




「ってことは、あの護符、俺と爺ちゃんになら剥がせるってことじゃん!」

「もちろんその方法もある。しかし、今みたいに吸収した闇を発動させては時限爆弾の秒読みを早めるだけだ」




 ……やってしまった。




「どうする、イツキ」

「まだ死ねないよ。お父さんとの時間を取り戻してないからね」




 いつも通りのイツキに、思わず頭を撫でまくる。癖っ毛の髪がさらに絡まって跳ねまくっている。




「取り乱してごめんね。もう大丈夫」

「だけど、ジンキとユズキのことはまだ解決してないぞ」

「ううん、したよ」




 時間が止まったように感じた。ずっと戦いばっかで疲れているのかもしれない。始めてイツキが心の底から笑っているように見えたんだ。




「格闘技場で大勢の人が見ている前で引き抜いたんだ。今じゃ誰も俺を化け物とは呼ばない。ユズキはきっと、俺が望んでいた〝普通〟の生活を返してくれたんだと思う。ナオトが言っていたみたいに、守ってくれた」




 それを聞いて、俺は妙に満足してしまった。もっと幸せになってほしい、笑って過ごしてほしい、時間を取り戻してほしいって、そんな感情が湧いてくる。




「一つ、作戦を思いついた。イツキの能力にかかっている」

「どんな作戦?」

「もっと牢鎖境を濃くして。業火が燃えている限りは暗くならないからさ」

「爆発した時に備えてって意味なのはわかったけど、それでどうするの?」

「後で事情を話すから、あの護符を破壊できるのが走流野家だけってことをまずは分かってほしい」

「コモクって人が関係しているんだね」

「そういうこと」




 数歩進んでイツキに振り向く。




「俺さ、爺ちゃんと修行してとんでもない力を手に入れたんだ」

「みたいだね。ナオトが大人になってるもん」

「この能力にはまだまだ秘密がある。実は、発動時間は短いけど、相手の攻撃がまったく効かないんだ。だからさっさと終わらせてくる」

「本当に1人で大丈夫?」

「当たり前じゃん」




 言い終えて、俺は走った。


 攻撃を無効にする? まさか。出来るはずないじゃないか。俺が考えた作戦は、闇に反応している護符そのものを利用してやろうって、それくらいのものだ。


 総司令官と俺を紫炎で接続した。気づいた爺ちゃんが叫ぶ。




「っ、何をやっている!?」




 護符が俺に牙をむく。業火防壁をもろともせず、紙は容赦なく俺を切りつけた。




「爺ちゃん、後は任せた!!」

「――っ、やめろぉぉお!!」




 接続した紫炎を握り全神経を集中させる。




「……っうおおおぉお!!」




 そうして、総司令官が吸収した闇を俺が奪う。闇に反応した護符が剥がれ始め、俺にくっつき始めた。




「キアキ! 燃やせ!!」

「かしこまりました」




 業火防壁の上をさらに紫炎で覆うと護符が燃え始めた。キアキは総司令官の体に残っている護符を片付けていく。


 総司令官の体が丸見えになったところで、




「全員を奥に避難させろ!」

「ですが、ナオト様が」「いいから、早く!」




 キアキが帯状の紫炎に変化する。夢想縛りを相手にしていた3人と総司令官、イツキを一つに縛り上げ奥へ連れて行く。


 直後、生き残っている護符が眩い閃光を放った。腹に抱え込んでうずくまる。




(取り戻せよ、イツキ……)




 この後のことはよく覚えていない。


 誰が俺を病院まで運び、俺が目を覚ましたのが何日後のことかなんてサッパリだ。ただ……、




「無茶をしたな、この愚か者」




 すっごい怒っているユズキが、ベッドで横になっている俺の顔を覗き込んでいるのだった。

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