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呪いと最弱・1

 ユズキとトウヤは神霊湖に戻ったようで、城には青島班とイッセイが残っていた。


 ここへ戻る最中、俺は爺ちゃんに白草の歴史をイッセイにも話すよう頼んだ。あの人もまた薄紫色の瞳を持つ者だ。


 自分がコウマの子孫だと知って、イッセイは俯きがちに眉を寄せた。




「父上は知っていたんですね?」

「キミカゲは兎愛隊を影から支えてくれた。我々の歴史を隠蔽しながら、ワシを王家へ潜入させてくれたのだ。だが……」

「操られた俺が貴方を幽閉し、テンリとマヤが自由の身になった、と」

「しかし、これは想定されたことだったのだろう。その証拠に国民が一丸となってお前を守ってきた。今からその呪いを解く」

「の、呪い、ですか?」




 破壊された壁の向こう側には、漆黒の瓦の連なりが朝日を受けて輝いている。出歩いている国民は1人もいない。イオリが確認した時は、どの家庭も無表情で会話もなく、ただ黙々と朝食を取っていたそうだ。




「ボウキャク草ではなく、体の何処かに呪符が貼られているはずだ。それを燃やせば呪いは解ける」

「でっ、ですが、国民の数は百単位にもなります! 襲って来ない保証はどこにありません」

「それでいいのだ。襲ってきた者はキミカゲの呪いに忠実に従っている証拠。そうでない者が隠れている」




 土地神を封印した奴のことだ。


 ユズキからの情報で、光影は何かを隠しているとトウヤが推測しているとの話しを聞いた。多分、隠していたのは、イッセイと白草家の歴史に関すること。問題は、土地神を封印した奴らだ。なぜここに身を潜めているのか……。


 爺ちゃんの考えはこうだ。




「塊叫団から逃げているのかもしれん。確か、王家と塊叫団は繋がっているんだったか?」




 青島隊長が頷く。




「これは塊叫団を通してガディアンに報告が入っているはずだ。奴らは根っこから白草家を滅ぼそうと目論んでいる。封印術士から情報を引き抜こうとするのは推測するまでもない」

「つまり、俺の仲間は、ガディアンの指示で土地神を封印したというわけですか?」

「指示、というよりは、脅されてが正しいだろう。そして、ガディアンではなく王家にだ。さて、どうして塊叫団から逃げているのか、その訳を聞き出すとしよう」




 全員が動こうとすると、爺ちゃんは俺以外を止めた。




「ナオト、お前1人で行って来い」

「試してこいってこと?」

「青島から聞いたぞ。加減ができないらしいじゃないか」

「うっ……」

「呪いを受けているのは光影の国民だけではない。北闇にも1人いる。全員の呪いを解いたらルイに会いに行こう」




 俺は民家を見下ろした。




「はいっ!!」







 国民がゾンビのごとくナオトへ襲いかかる。その様子をイオリは屋根の縁に立って祈るように眺めている。


 一方、部屋の中から見守っている青島へ、ヘタロウは小声で呟いた。




「本当にいいのか? 北闇が解放されたとき一番に不審に思われるのは、青島、お前だろう」

「なんの話しですか?」

「闇影隊にいた頃はほとんどを国外で過ごし、孫が生まれて数年後には王家に幽閉された。ワシはボウキャク草に毒されていない」

「だとして、私になんの関係が?」

「ワシの記憶が正しければ、お前が北闇に保護されたのは50年前のことだ」

「っ……」

「孫に手を出せば、例え孫に泣きつかれたとしても、躊躇なくお前を殺すぞ」




 ヘタロウから放たれる殺気に青島は少しも表情を変えなかった。




「孫……ですか。聞き捨てなりませんね。ですが、安心して下さい。私はセメルも含めて走流野家を全力で守ってきたつもりです。一時期は王家と密な関係にあるタモン様を疑っていたほどです」

「つまり、話すつもりはない、と」

「ええ。私の中ではまだ信用するに値しない。貴方の目的がわかるまでは私があの子を守ります」

「……がっはっはっは! 盗み聞きされていたとはな」




 声を返さずに、青島はイオリの元へ歩く。




(カンム皇帝……か。もう過去の話だ)




 そう心の中で呟いて、愛すべき部下の戦闘ぶりを観察するのだった。







「ちょっ、多すぎない!?」

「主ヨ、後ロダ」

「だああっ! 面倒くせえ!」




 勝手に家にお邪魔した俺が悪いけど、まさか足を踏み込んだ瞬間に全員が襲ってくるだなんて。イオリの声援がかき消されるくらいの不気味な声に、正直気迫負けしている。


 ってか、奴隷よりも達が悪い!




(ただの国民じゃない! 全員、訓練を受けている!)




 手に持っているのが桜姫じゃないだけマシだけど、農具に包丁になんでもアリだ。ただ振りかざすのではなく、動きが日本の特殊部隊みたいでやりずらい。




「つーか、分身って呼ぶのも変だから、名前決めないとな!」

「私ニ名前、デスカ?」

「おう! 性別とかあるの?」

「一応、女デス」

「で、名前の候補は?」

「一ツダケ。デスガ、私ニ名前ヲ与エルトイウコトハ、本当ニ自由トナリマスヨ」

「自由を望んでいるんだから、問題ないじゃん!」




 10人がかりで襲ってきた国民を分身が手を広げて止める。




「変ワッタ人ダ。……イヤ、感謝シマス」




 分身の顔が俺に振り返る。




「コノゴ恩、一生ヲカケテ返サセテ頂キマス」

「じゃあ、もう友達だな」

「マッタク、貴方ッテ人ハ……」




 10人から呪符を奪い取り、手の平で燃やした分身。




「それで、一つだけあるんだろ?」

「ハイ。私ガ欲シイ名前ハ、キアキ。私ニトッテ名誉アル名前デス」

「よし、キアキに決定!」




 名前が決まると、キアキの体に変化が現れた。人型をした紫炎の塊ではなく、大人の女性となり、頭部には二本の角まで。




「改めまして、キアキです」

「俺はナオトだ」




 新たな仲間を手に入れた。

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