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炎と最弱・3

 殺生の修行に入る前に簡単に説明しとく。


 俺が最初に学んだ言霊は、包火・衝撃砲・業火防壁の3つだ。これは爺ちゃんの言霊で初級編になる。父さんが業火防壁の使用を原則禁止にしていたのは、完成度が未熟だったからだ。


 月姫乱脚は自分で開発した技。連弾包火球はソウジと開発した技。この2つは中級編になる。ちなみに、業火もこの位置だ。


 蛍との戦いで生み出された技が衝撃砲・改。青島隊長の体術をイメージして開発した技だ。衝撃砲の威力を倍増し圧縮させるこの技は、俺の中で上級編になる。


 殺生はというと、




「業火防壁をすり抜けられる唯一の技、それが殺生だ。殺生を発動するにはいくつか条件がある」




 一つ、業火防壁内に仲間がいないこと。

 二つ、自己暗示をかけず、治癒を優先させること。

 

 最後に、




「力に飲み込まれないこと。以上になる」




 たった三つしかない条件なのに、いかに習得が難しいかがわかる。


 俺が暴走したせいで荒れ果てた一部の草原。剥き出しとなった岩を前にして、爺ちゃんが手本を見せる。


 俺は条件の意味を理解することとなった。


 紫炎から始まるかと思いきや、爺ちゃんの業火防壁は通常色である赤だ。それでいて業火防壁が分厚いだけでなく、放たれる熱が目視できる。蠢く紅炎(こうえん)が防壁内に侵入すると爺ちゃんの体に蛇のようにして絡みついた。


 二つの条件の意味は、紅炎を利用するためだろう。中に人がいれば燃やされてしまうし、自己暗示をかけていれば治癒がおいつかない。




(殺生って、自分にもダメージがあるのか)




 紅炎を吸収して、爺ちゃんの口がゆっくりと開く。そして、




「炎・殺生」




 俺は我が目を疑った。


 爆発系をイメージしていたけど、全然違う。人型となった紫炎が現れたではないか。一見、さなぎが蝶になるような、あるいは蛇の脱皮のような現象だ。人型は業火防壁から外へ出た。


 爺ちゃんの頭と手足の五箇所から紐状の紫炎が伸びて人型に接続されている。爺ちゃんが構えをとると人型も同じ動きをする。そうして、見事に岩を木っ端微塵に消し飛ばした。


 使った分だけ紅炎は爺ちゃんの体に吸収され、業火防壁は僅かに薄くなる。




(これが、炎・殺生……)




 吸収する瞬間に火傷を負っている。治癒能力がなければ死に至る超上級編の技だ。


 言霊を解く。




「業火の解きに教えた精神力が最も必要になる技だ。少しでも隙を見せれば紫炎は暴走し、自由を手に入れる。紫炎は狙った獲物を塵にまで燃やし尽くすゆえ、扱いには十分に気をつけろ」

「やっぱりこの炎って生きてるんだ。なんで包火の炎とは違うんだろう……」

「そもそも、紫炎は白草が生み出した炎ではない」

「そうなの!?」

「0の時代に、ある鬼からワシへ伝授されたものだ」

「なんで俺が使えるんだ? だって俺、ジンムの孫なんだろ?」

「昔はな。だが、今はワシの孫だ。炎の性質であるお前には受け継がれているというわけだ」




 ちょっと待てよ。じゃあ、ユズキが紫炎を使える理由は? 人から誕生したのではなく、ユズキはそのまま飛ばされてきている。


 爺ちゃんに聞いてみると、心当たりがあるようだ。




「キトを知っているな?」

「うん。何回だけ会ったよ」

「彼女の紫炎はあいつからだ。契約かなにか結んでいるのだろう」




 ……マジか。


 ともかく、だ。




「業火防壁の威力を最小限に抑えつつ守りは強固にして、紅炎を吸収。んで、紅炎を紫炎に変換して分身を作る。ってな感じでいいのか?」

「流れはそれでいい。とりあえず、紅炎の吸収までやってみろ。この一連で最も困難を極めるのは業火防壁の威力を抑え込むことだ。普段とは真逆のことをしなければならない。よって」




 爺ちゃんが言い終える前に業火防壁を発動する。威力も抑えるも何も、俺のはもともと小さいっての! 恥ずかしいから言わないけど。


 それから、爺ちゃんは黙って俺を観察した。アドバイスはなく、後は自分でやってみろってことだろう。




(ほお……。巨大化させるより、小さく留める事の方が難しいんだがな。ワシが数年かけて抑え込んだものを、ナオトは最初からできていたわけか)




 火って、こんなに熱かったっけ。いかに自己暗示に頼りきっていたかが身に染みてわかる。だけど、吸収しないことには始まらない。


 目を閉じて、守りたい人も思い描き、敵を瞼の裏に貼りつける。ちなみに、俺の怒りはまだ治まっていない。ユズキを不幸のどん底に陥れた王家の先代たちを許すことはできない。今までの感情すべてを集結させて、ついでに俺がイメージする分身を()る。


 紅炎の吸収が始まる横で、爺ちゃんが動いた音が聞こえる。業火防壁の周りを歩いているみたいだ。




(球体ではなく筒状の業火防壁だと!? 鍛錬など必要ない。こやつ、最初からっ……)




 ふと、熱気を感じないことに気がついた。失敗したのか?


 目を開くと、業火防壁が消えていて、目の前には人型の紫炎が立っていた。俺の分身は姿形が俺に似ていない。身長は高く、髪の毛が長くて、目はないのに見られているようなそんな感じがする。




「まだ発動させていないのに、なんで!?」

「っ、ナオト、心を乱すな!」




 紐状の紫炎が切れる。しまった!


 解き放たれた紫炎が俺に牙を剥く。ゆらりと左右へ蠢くと、一瞬で目の前から消えた。と思いきや、瞬間移動したみたいに眼前に現れる。




「オ前ヲ試ス時ガキタ。ソノ怒リ、ドコマデ本物カ見定メテヤロウ」




 ハアアァァァ……、と息を漏らす。




(あ……れ……?)




 頬を草がくすぐった。次いで痛みが走り、首の骨がメキメキと嫌な音を鳴らす。直後、側頭部から足先へ痛みが走った。




「ぐああっ!?」




 分身に叩きつけられたのだ。


 どうやら、分身は俺に触れることができるらしい。

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