ヘタロウと最弱・4
みんなが今後のラヅキの動向に予測をたてるなか、俺は物思いにふけっていた。
誰だったかなぁ。顔も名前も覚えてないけど、こんなことを言われたんだ。あいつ、母親を捜してるらしいよ、って。
〝らしい〟ってことは、その人は誰かに聞かされた話しを仲間内でしていたわけだ。かといって、噂の発端をあぶり出そうとは思わなかった。多分、強化合宿で俺がソウジへ怒鳴ったのを誰かしらが聞いてたんだろうなって、それくらいだ。
ああ、そうだよ。捜して何が悪いんだよ。死んでるかもって? そんなこと、闇影隊である俺が1番良くわかってんだよ。
俺と母さんが似てないからって捜索を諦めたわけじゃない。人は、俺がマザコンだって馬鹿にした。記憶にない母親を恋しがることがそんなにおかしいか? 一緒にいたいって思うことが罪になるのか?
(あー、ムカつく)
もし罰せられるとしたら、それは俺の誕生だろう。王家が父さんとヒロトに目をつけていなかったのなら、俺さえいなければみんなは幸せに暮らせた。赤坂班にあんな無茶させることもなかったんだ。
だから、早く母さんを見つけてヒロトの傍にいてもらいたい。俺は爺ちゃんと一緒に北闇を離れる。笑顔の裏ではずっとそう考えていた。
「あの、俺……」
もう、タモン様も限界に近いだろう。最初からこうしておけばよかった。
「威支に入ってもいいかな?」
面食らったイオリがポカーンとした表情のまま俺に歩み寄る。
「な、なに言ってんだ?」
「いやさー、母さんの捜索を優先させるためには、これが手っ取り早いかなと思って」
「青島班で捜索するんだっつーの!! なに1人で決めてんだよ!」
「この状況じゃ無理だろ」
塊叫団はただの人浚いではなかった。しかも、彼らは四大国とは別の国と繋がる謎めいた集団だ。
謎、謎、謎――。こればかりが俺の行く手を阻む。
「いろんな人が俺と爺ちゃんを狙ってて、そのうえラヅキと土地神が行方不明だぞ? 敵も仲間もすでに動いている。これ以上、北闇にはいられない。俺は覚悟を決めた」
「――っ、ツキヒメはどうすんだよ!! ヒロトやイツキは!? 誰も納得しねえぞ!」
「もう、関係ないんだ。わかってるだろ?」
「わからねぇな!! っつーか、てめぇが一番覚悟できてねぇんだっての! ヘタロウさんに触ることもできなかったし、セメルさんが死んだことだって何も解決しちゃいねえ! やっと受け入れられたのはウイヒメのことだけだろーが!」
「俺は受け」「もう誤魔化すのはやめろよ! このド陰キャが!」
イオリの血走った目が俺の心を鷲づかみにする。
「母親の話がでたもんだから、絶対になにか言い出すとは思ってたけどよ。俺は言ったはずだぞ。お前の行く先を見届けてやる。俺様から逃げられると思うなよってな」
「気持ちは嬉しいけど……」
「あーそうだよ。てめぇをここまで追い込んだのは紛れもなく俺たちだ。イジメなんてみっともねぇことしたんだ。なのに、今さら仲間ぶるなって話しだよな。お前はこれまでヒロトと2人で乗り越えてきたし、班が別々になってユズキが消えてからは友達もいなかった。俺だってわかってんだよ。お前の性格なら、1人で行動しちまうことくらいな」
「だったら」「させねぇよ」
イオリがはっきりとそう告げた、その時だ。猛烈な頭痛に襲われた。同時に、体内が熱くなるのを感じる。俺はこの現象に身に覚えがあった。
イオリを突き飛ばす。自分の肩を抱きながら後退し、足が動く内にできるだけ距離を取ろうとした。しだいに顔を上げていられなくなり、足もとを睨みつける姿勢となる。
「俺たちは仲間だ。だから、突き放すなよ!」
「違うっ……」
「はあ!? そこから説教しなきゃいけねーのか!?」
「そうじゃなくてっ……」
この感じ、あの時と同じだっ。ユズキが北闇を出て行く前、頭痛に襲われた直後に言霊が暴走して、挙げ句の果てにはタモン様に手を振り上げた。
「っ、イオリ! 逃げろ!」
「へ?」
体内を蠢いていた熱気がお腹の中心に集まる。そして、一気に体外へ爆発した。
「炎・業火防壁!!」
イオリの鼻先すれすれまで囲った爺ちゃんの言霊のおかげで助かったけど、俺の体が勝手に暴れ始めたせいで、瞬く間に室内は破壊されていった。
あの時よりもヤバイかもっ……。まるで収まる気がしないっ!
みんなが俺の名前を必死に呼んでいると、そこへ懐かしい彼が現れた。真っ赤な着物に赤い角――。キトだ。




