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ヘタロウと最弱・2

 そんな疑問を抱いていると、今度は背後から凄まじい殺気を感じた。ユズキがその者を止め、落ち着くように説得している。




「トウヤ、やめろ!!」

「退け! こいつだっ……監視者だ!!」



 

 威支のアジトに行ったときに、イザナは俺のことを監視者と瓜二つだとか話していたような気がする。それが原因で俺は命を狙われていたんだっけか。




(……え、爺ちゃんのせいなのか!?)




 噂の人物がゆっくりと目を開いた。上体を起こして辺りを見渡し、俺と目が合うと彫刻みたいに固まってしまう。




「……夢か?」

「爺ちゃん、俺だよ。ナオト」

「……やはり、夢か」

「解放しろって言ったのは爺ちゃんだろ?」




 爺ちゃんが喋ってる。声はあの頃と同じだ。この人は俺の爺ちゃんで間違いない。




「――っ、ナオトなのか!?」

「うん。お帰りっいいいぃい!!??」




 布団から飛び出た爺ちゃんが俺を抱きしめた。腕の力は人のものではなく、背骨が折れそうだ。よくドラマとかで、「痛いよ、もうっ」みたいなのがあるけど、現実はそう感動するものではない。


 天然なのか、爺ちゃんはすぐそこで怒鳴り散らすトウヤを完全に無視し、孫との再会を心の底から喜んでいる。俺だって嬉しいよ。だけど、




「爺ちゃん、重度がいるから!! 監視者だって怒ってるよ!?」

「なにっ!?」




 状況を理解してほしくて伝えただけなのに、俺は見事に地雷を踏んでしまった。




「お前ええぇっ……」




 爺ちゃんの口から湯気が出ている。トウヤと目が合った瞬間に自己暗示をかけたみたいだけど、たった寸秒で最大限を解放したみたいだ。


 俺だったら目眩を起こしている。それなのに、爺ちゃんは平然としているじゃないか。




「ヒロトを誘拐した男じゃあないか。自分から殺されに来たか、このケツの青い未熟者があぁあ!!」

「貴様の方こそ、長年ものあいだ、よくも仲間を苦しめてくれたな。ここで始末してくれる!!」




 城の壁を突き破って2人が外へ飛び出す。慌てて追いかけると、光影の国を出て森の中まで走り、神霊湖付近で2人が向き合った。




「青島隊長」

「なんだ」

「爺ちゃんって、あんなに気性が荒い人なんですか?」

「知らなかったのか?」

「はい」

「ヘタロウさんは、総司令官としての裏の顔もあったが、表ではこう呼ばれていた」




 炎使いの悪魔――。




「混血者も恐れる能力の持ち主だ。ヘタロウさんの炎はどんな生命をも奪う」




 爺ちゃんの体が赤色に燃え、色鮮やかなグラデーションを描きながら紫色に変わった。球体を作り出すほどの巨大な炎の中に立っている。


 足もとにある草に引火すると、瞬く間に生命を奪われ、目に見えない粒子にまで分解されていく。まるで、そこには初めから草など生えていなかったみたいに――。


 ユズキが狼尖刀を発動する。




「まったく、どうなってるんだ」




 ちなみに、俺とイオリとユズキには、あまりにも動きが速すぎてこれっぽっちも爺ちゃんとトウヤの喧嘩が見えていない。独り言に「惜しいっ」と呟く青島隊長だけが目視できている状況だ。


 じゃあ、ユズキの言葉は何に対して? というわけになるんだけど。燃える狼尖刀に俺は金魚みたいに口をパクパクとさせた。


 なぜなら、




「しっ、紫炎!?」

「ああ、実は僕も使える。ヘタロウの件が落ち着いてから話そうと思っていたんだが、お前の祖父も扱えるとなれば話しは急ぐ。ということで、止めてこい」

「喧嘩の中に入れって?」

「どのみち、紫炎が邪魔をしてトウヤは本領発揮とまではいかない。それに、ヘタロウはお前には手を出さない」

「ぜんっ……ぜん! 納得できないんだけど」

「今回ばかりはお前の意見は無視だ。塊叫団のこともある。……母親のこともな」




 体が自然と爺ちゃんたちの方に動く。イオリが両手で目を覆い、ユズキが身構えた。


 右足に自己暗示をかけて2人の間に突っ込む。驚いた爺ちゃんは身を翻して言霊を解き、トウヤは、




「馬鹿野郎! おまっ、すまないっ!!」

「ぶるあっはっ……」




 俺の顔に強烈な足蹴りを打ち込んでくれた。イオリの顔から血の気が引き、ユズキは「終わったな」と呟く。




「またしてもワシの孫に手を出してくれたな!?」

「こいつが割り込んできたんだろうが! 俺のせいにするな!」




 言い合う2人の間に今度はユズキが立つ。そして、




「初めまして。僕の名前はユズキだ。威支のメンバーで、ナオトの友達だ。お前に聞きたいことが山ほどある」




 すると、爺ちゃんの顔がゆっくりと平常心を取り戻したみたいに真顔になった。




「初めまして、か。……ラヅキはどこにいる?」

「――っ……」

「やはりな。遅かったか……。約束を果たすことが出来なかった」

「なんの話しだよ」




 そうユズキに問う、彼女は目を伏せた。




「僕たちを神霊湖において、ラヅキは仲間と一緒にどこかへ行ってしまった。……消えたんだ」

「なっ!? テンリが狙ってるのにか!?」




 爺ちゃんが答える。




「テンリを誘き出すためにだ。こうしてはいられん。戦いに備えなければ」

「戦いって……?」




 爺ちゃんとユズキの言葉が重なる。




「「0の時代が戻ってくる」」

 ブクマと評価、ありがとうございます!


 次回、ヘタロウが告げる0の時代に起きた悲しい事件にユズキが涙する。


 消えたラヅキの思いとは、そして、ラヅキとヘタロウの間に交わされたある約束とは――。

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