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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
SEASON・2――/第一章・青年期編・4
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【逸話】帰還

【執務室】


 ジコクの帰還にタモンは深く頭を下げた。その時間は、人が一礼するよりも長い。タモンがどれだけ敬意を示しているかが伝わるほどに、両足に添えられた手と真っ直ぐに曲げられた背中。ジコクの背筋も自ずと伸びる。




「兎愛隊はまだ生きているのか?」

「はい。メンバーはだいぶ変わりましたが。救援に駆けつけた海賊や、青島班もその一員です」




 ジコクが大口を開いて笑う。




「がははは! 海賊も仲間か! 実に愉快じゃないか!」

「彼らは15年前の地震で海へ放り出された東昇の者たちです。貴方が生きておられるならと力を貸してくれました」

「……そうだったか」




 扉が開く。青島が椅子を用意し、ジコクが座ってからタモンもいつもの定位置に腰を下ろした。




「走流野ナオトについて聞きたいこともあるが、まずはお前の話から始めようかねぇ」




 ジコクは、リュウジンとの出会いや、そこから調査した内容など、全部を横に置いてタモンに関する話を切り出した。


 元蒼帝ともあろう男が順序を無視して優先する内容だ。テンリの言葉もあって、緊張が走る。




「トアの伝説は覚えているか?」

「はい。鬼の化け物だったと聞いております」

「……事実だった」

「――っ、何を見たのですか?」




 ジコクは記憶を掘り起こしながら返した。




「人々の情報を頼りに棺を発見した後、白骨化した遺体を見て驚いた。一体は人骨と何ら変わりない姿をしていた。だが、もう一体には明らかに違う点があった」




 額の骨が二箇所、隆起していたのだ。ジコクの脳裏にタモンの姿がよぎった。




「お前が見た過去の記憶、あれは確かトア目線のものだったな」

「ええ、途切れてはいましたが、トアと呼ばれたので間違いないかと。しかし、俺が見えたのは靄のかかった映像です。確かな証拠にはなりません」

「だが、状況は変わった」




 ジコクの視線がタモンの額に向けられる。




「塊叫団の奴隷の中にサスケという男がいてねぇ。そいつは、オウスイの骨の粉末を使った実験の被験者だ。適応し、走流野家と同じ力を得た。このことから考察するに、おそらくお前も……」

「トアの骨から……ということですか?」

「ああ。実際に、サスケはオウスイの目線での過去を見ているらしいからねぇ」




 ここで、タモンはしばらく沈黙した。だとしたら、テンリはどうやって誕生したのかと考えたのだ。弟だと名乗りでたのは嘘だったのだろうか。


 上級試験のことを話すと、ジコクは眉を寄せた。




「ただ同時期に誕生した、というだけじゃないかねぇ? 王家が行った実験は一度や二度じゃないはずだ。重度の組織を保管していたのだから、十分にあり得る話しだ」

「トアではなく、重度の物を?」

「お前が先に誕生したのだ。もうトアの組織で実験する必要はない。増えすぎた鬼は束となり王に食らいつくだろうからねぇ。なにはともあれ、テンリはお前を兄だと思っている。悲しいねぇ……」

「どうしてですか?」

「彼の安定剤がお前であることがだ。おそらく、全く違う実験から誕生したと知っているはずだからねぇ。それでもお前を頼ったのかと思うと、やるせないねぇ」

「…………体を休めて下さい。話しはまたそれからにしましょう」

「そうさせてもらうよ。……タモン、あまり思い悩むな。オウガ様が独断でやられたことだ。お前は何も悪くない」

「ありがとうございます」




 こうして、ジコクの帰還により、謎のままだったタモンの出生が紐解かれたのだった。







 その頃、ナオトはというと。


 自宅の居間にてユズキに手の平を合わせて謝っていた。




「本当にごめん。ライマルのこと確かめられなかった」

「急に頼んだのは僕だ。謝る必要はない」




 いつものユズキに胸を撫で下ろす。なにせ、彼女が怒るととてつもなく怖い。言葉でねじ伏せられる恐怖を回避したナオトは、ゆっくりと腰を下ろした。


 それから、塊叫団のアジトでのことを事細かに説明する。ユズキは唖然としていた。




「日本だと……? あり得ない。僕たちが生きていた時代にそんな技術はなかった」

「やっぱそうだよな。あいつらはなんだったんだろう」

「一番の問題はお前の記憶を奪われたことだ」

「一応、部屋はぶっ壊してきたぞ」

「日本の技術でできた内部なら、メモリがあったはずだ。機械を壊したところで意味はない。奴らはそれを何処に持っていったのか……。運良く海水で破損していればいいが……」

「まさか、逃げちゃうんだもんなぁ」

「ビゼンの船よりも重装備だったんだ。仕方ない」




 こんな状況だというのに、ナオトは畳に寝転がった。ナオトにとっても、今回起きた出来事はどれも頭に引っ掛かるものではあるが、最も気になっているのは――。




「サスケって奴がさ、オウスイの時代に俺がいたっていうんだ。どでかい雷に打たれた挙げ句、想像を絶する生還をしたとかなんとか話してて……。出生のことを言っているのなら正解だけど、雷は全く身に覚えがなくてさ」

「昔の話しなら、ラヅキやトウヤに聞けば何かわかるかもしれない。確かめてみよう」

「頼んだ」

「……お前も来るんだ」

「え、なんで?」

「そろそろヘタロウに会わせるべきだと思ってな」




 ユズキの耳にヨウヒの声が聞こえてくる。自分の力を持ってしてもヘタロウの回復が間に合っていない。このままだと、死ぬかもしれない。そう告げられたのは、ナオト達が出発した後のことだった。


 勢いよく上体を起こすナオト。しかし、ユズキの表情を見て結果を悟る。




「やっぱダメだったんだな」

「すまない」

「やったのは王家だろ? なんでユズキが謝るんだよ」

「救いたかったんだ……」




 ナオトの目頭が熱くなる。強く下唇を噛み締めて、それからユズキへ言葉を返した。




「救われたじゃん。王家の地下から出られたんだ。あんな場所で死を迎えるよりは全然良い」

「とにかく、明日の朝出発する。タモンには許可を貰っているから、正門で青島やイオリと合流した後、神霊湖まで来てくれ」

「わかった」




 ユズキを玄関先で見送って、ドアを閉めると、ナオトは再び居間へと戻って来た。そして、




「――っ、クソォッ!!」




 膝を折り、畳に拳を落とす。




「今度は爺ちゃんかよっ……」




 この次は誰だ? ヒロトか、安否の不明な母親か。本当に名ばかりの上級歩兵隊だと自分を罵倒する。と、そこへツキヒメが訪れた。ナオトの様子に驚いている。




「タ、タイミングが悪かったみたいね。出直すわ」




 彼女の手には重箱が抱かれている。夕ご飯を持ってきたようだ。


 テーブルの上にソッと置いて部屋を出ると、ナオトが彼女を引き留めた。俯いたまま服の端を握っている。




「ななななにっ!?」

「帰らないで……」

「どうしたのよ」

「お願いだから、今は独りにしないでくれ」

「……うん。一緒にいるわ」




 こうして、朝を迎える。ナオトの隣では寝息をたてながら眠るツキヒメの姿がある。




(俺……いつの間に……)




 ツキヒメの長いまつげを眺めたあと、用意をすませて、置き手紙を書く。そうして、ナオトは正門へ走ったのだった。

 ヘタロウとの再会まで入らなかった……。

 次回に持ち越します!


 次回からは青年期編・5がスタート!!

 ヘタロウとの再会から始まり、またまたドンパチします!

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