塊叫団と最弱・8
この場を捨てて広間を去る塊叫団を青島隊長たちが追う。たった一つしかない出入り口が青島隊長の強烈なパンチで砕け散る。
出る前に青島隊長が俺に振り向いた。
「必ず戻る!!」
「はいっ!!」
互いに距離を置きながら出方を窺っていると、サスケが笑い出した。
「戻ってこられないよ。絶対にね」
「青島隊長は弱くないぞ」
「彼の強さは関係ない。俺がここに残された時点でアジトの破壊が実行される。俺たちはアジトと共に死ぬんだよ」
「お前はそれでいいのか!?」
「もちろんさ。俺には帰りたいという願望も生きる理由もない。全てに置いてどうでもいいんだ。だからキル様は俺を気に入った。余計な詮索をせず、無駄話もしない。忠実に命令に従うだけの都合の良い奴隷だった」
「……だった?」
「昇格したんだよ。塊叫団の一員に、ねっ!!」
素早い動きに、咄嗟に衝撃砲を放つ。腕を振り上げたため、空気砲が床をめくりあげながら、サスケの元へ一直線に牙を剥いた。
「オウスイの力を手に入れた俺からすれば、この程度……」
サスケの腕に燃える炎が剣のように変形する。そして、軽々と衝撃砲を真っ二つに両断し、左右に分かれた衝撃砲は壁に衝突した。
しかし、これは想定内のことだ。サスケがスパイ役だと知った瞬間に、俺はあることを予想していた。衝撃砲を目くらましにして間合いへ侵入する。
「炎・連弾包火球!」
「っ!?」
一瞬、隙ができたように見えたが、
「やっぱり速いね。けれど……」
「いつの間にっ!?」
背後から凄まじい熱気を感じる。反射的にしゃがみこむと、頭上をどでかい炎の塊が高速で通過した。すぐさま後ろへ跳び下がり大きく距離を取る。
(やっぱそうか……)
山を攻撃したとき、サスケは一瞬にして目の前に飛び出してきた。鎖で繋がれていたのに、だ。そして、キルはサスケが炎の能力者だと明かした。実験に適応した唯一の成功体。でも、混血者ではない。
(イオリは半獣化できても言霊の能力は得られなかった。あるのは自己暗示のみ)
半獣化・言霊・自己暗示の3つの選択肢があるとして、得られるのが2つだとしたら――。
(言霊と自己暗示。つまり……)
オウスイの力に適応したなら、こいつは俺と全く同じ能力者だということになる!!
サスケの衝撃砲を右に交わして、まるで鏡のような相手に目を細める。
「気づいたみたいだね。俺の力はオウスイからのものだけど、戦闘のベースになったのは君だよ。日本人から訓練を受けたとき、俺は君の努力に感心した。同時に、君の体験を身に感じた。まさか、あんな巨大な落雷に打たれるなんてね。想像を絶する生還に興奮して震えたよ」
(……落雷? 何の話しだ?)
同時に床を蹴り、互いの両手を握って押し合う。自己暗示のかかった握力だ。微かに聞こえる骨のきしみがどちらのものなのか分からない。ただ、宿る治癒能力が骨の粉砕を防いでいる。
「けれど、落雷のせいで君は大切な護衛を失った。そのせいで記憶喪失になり、同じ力を持つ走流野家に養子として預けられた。本当なら、塊叫団が君を育てるはずだった」
「ちょっ、その話し、間違ってるぞ!!」
「なに?」
「俺は養子なんかじゃないし、雷に打たれた経験もないし、護衛もいない! お前、塊叫団に騙されてるぞ!!」
片手を振りほどき、一瞬で衝撃砲・改を手の平に形成する。それを躊躇なくサスケの腹に打ち込んだ。
「ぐはっ!?」
当てることに成功したものの、やはり治癒能力が邪魔をする。かなり厄介な相手だ。
サスケがむくりと立ち上がる。
「どこからが嘘なのかな? 確かに、後者はキル様から聞かされた話しだけど、俺がこの能力を手に入れたとき、確かに見たんだけどね。落雷で粉になった護衛と、光に飲み込まれた君を……」
(これって、重度やタモン様と同じ症状じゃ……)
問題なのは、サスケはいったい誰の目線でそれを見たんだ?
(…………オウスイッ!?)
彼の体にその人の力が流れているのなら、可能性として彼女しかいない。いや、オウスイのものだとしても変だ。俺が生まれたのは15年前。オウスイはこれよりも遙か昔に生きた人物だ。
この思考がいけなかった。
「……俺は言ったはずだよ。忠実に命令に従うだけってね」
「――っ!?」
素早い動きで間合いを詰められる。
「炎・衝撃砲・改!!」
モロにそれを食らい、背後の壁に激突して体が埋まった。ヤバイ、内臓がイカれたっ。吐き出された血を両手に見て、サスケを睨みつけた。
「同じ能力者は2人もいらない。消えるのは君で、生き残るのは……俺だぁあ!!」
本音はそれか。
「塊叫団が俺の居場所だ!! 君には渡さない!!」
(いらないっつーの……)
上手いこと洗脳されているみたいだ。おそらく、塊叫団が育てるはずだったとの事を思い出して、勝手に怒っている。この精神の不安定さは、いつしかの自分を思い起こさせた。
サスケの体が見る見る内に赤く染まっていき、全身を燃えたぎる炎が覆う。
「死ねぇえ!!」
「うるせーよ、この紛い物がっ」
なんて、言い返してみるも、腰が抜けない!!
鼻先に感じる熱。視線を上げると、包火が視界に広がった。
包火を帯びた強烈な拳が顔面に食い込む。俺の後頭部から抜けた衝撃は、広間の壁一面に亀裂を走らせた。




