塊叫団と最弱・7
キルたちが部屋を出て数分後。
「よしっ」
薬の効果がきれ体を自由に動かす。そして、隣の男性に向き合った。
背中の真ん中まで伸びている蒼い髪と、無造作に生えたヒゲ。目元や目じりにあるシワは高齢な印象を受ける。まるで浮浪者の様な出で立ちだけど、この人は、
「蒼帝、ジコク様ですよね?」
映像がそう語っていた。
彼が失踪したのは地震直後だ。教科書にも載っていない彼を、どうして俺が知っているのかと疑問に感じているらしい。
「リュウジンからの情報です。あなたがオウスイとトアの墓を探しに行ったと聞いています」
「その名前を知ってるだけで信用できる。……そんで、どうして走流野家の息子さんが塊叫団のアジトにいるんかねぇ?」
「それが……」
ここに来るまでの経緯を詳しく話す。時折、相槌を返してくれるものの、きっと気になっているのは経緯なんかじゃないはずだ。
「俺の記憶については聞かないんですか?」
「自分の頭で理解できないことは、なるべく考えないようにするもんでねぇ。だからって、塊叫団みたいな低俗な連中の手に渡ることは避けたい。特に、あの女……。腹違いの姉、メリアにはな。あいつは何処かに頭のネジを全部落っことしてきたような女だ。間違っても、あのパイパイに騙されちゃあいかんぞ」
「パッ……」
気を失う前を思い起こして顔が熱くなる。
「とっ、とにかく! 今頃、青島隊長とガイス隊長が牢屋から脱出しているはずです。急いで合流しましょう」
「有り難いが、大丈夫かねぇ」
「キルは、この山の設計はとても微妙だと言っていました。おそらく塊叫団も攻撃はできないかと」
「俺が心配しているのは塊叫団じゃなくて、奴隷の方だよ」
「え?」
真意を尋ねる前にドアを蹴破られる。青島隊長だ。
「急げ! 他はもう上へ向かっている!」
「はい!!」
部屋から出たところで、通路にあるサイレンが一斉に赤色に光った。警報音が鳴り響き、アナウンスが流れる。
「奴隷が脱走! 繰り返す、奴隷が脱走!」
気づかれたなら、もう隠密に行動する必要はない。後ろへ振り向き、
「炎・衝撃砲!!」
部屋を散り散りに吹き飛ばす。これでデータは破損したはずだ。ところが、
「「――っ!?」」
足もとが大きく揺れる。そこへ奴隷の一人が声を荒げながら走ってきた。ここへ案内してくれた人だ。
「サスケさん、上へ行かれたのでは!?」
「今の音はなんですか!?」
部屋を覗き込んで絶句する。
「……」
「すみません」
「脆いと言ったはずですよ。早く行きましょう」
あの一発でこれほどまでの衝撃が襲いかかってくるなんて……。正直、予想以上の脆さだった。
非常階段を列を成して駆け上る。入口までは繋がっていないらしく、どこかの階で通路へ出た。先頭にはガイス班がいて塊叫団に対応しながら進んでいるみたいだ。青島班が通る頃には伸びている。
が、しかし。
「この通路、おかしいっす」
「ああ。部屋が一つもないな」
山を沿うように一周くるりとした所で、ようやく部屋の扉が姿を現す。山の真ん中を全て一つの部屋にしたようで、だだっ広い空間が俺たちを待っていた。
ここで、またアナウンスが流れる。
「あー、あー。早い目覚めだったなあ、異世界人。ちょっとビビっちまったじゃねーか」
「どうも……」
「んでー、俺様の大切なコレクションを連れてどこに行こうってんだ? このクソ混血者共め」
キルが話している間に出口を探すも、隠されているのか何処にもそれらしき物がない。
上の通路から塊叫団とキルが広間へ飛び降りる。
ガイス隊長が動いた。
「クロム、デス。フォーメンションBで行くぞ」
「「了解!!」」
塊叫団を取り囲むように散開すると、
「「「装!!」」」
黒い羽を持つ半獣人が3人が鋭い眼光で塊叫団を捉えた。多分、これはカラスだ。知能が高く、優れたコミュニケーション能力を持っているといわれるカラスが、一斉に攻撃を仕掛ける。
デスが両側の腰に装着している袋の中に手を突っ込んだ。抜いた手には液体が付着している。片方は黄色で、片方は紫色だ。
「猛毒と粘液。混合させると……」
言いながら、羽を一振りする。塊叫団の足もとに集中して撒かれ、そして、
「ぐあああああっ!?」
「足がっ……溶かされるっ……」
蒸気をたてながら異臭を放ち始めた。逃げられる前にクロムが動く。
「土属性の混血者が建てたんなら、俺には好都合な場所だ。おらよっ!!」
突風と共に地面が見る見る内に抉られていき、津波のようにして塊叫団を襲った。彼らの足は大きなダメージを負っている。もろに津波を食らって宙へ吹き飛ばされた。そこへガイス隊長の攻撃が注がれる。
「風・岩流」
破壊された地面の瓦礫を、風を使って一瞬で持ち上げると、それを塊叫団の頭上へ降らせた。
「んだよ、手応えのねぇ賊だな」
「そうだよね、クロムはもう真っ先に捕まったことなんて忘れてるんだよね」
「おまっ、それを言うなよ!!」
怒鳴り声は山の麓まで聞こえていたんだけどな。それにしても、見事な連携プレイだ。どう動けば相手の能力が発揮されるかちゃんとわかっている。青島班の出番は……、
「……利かないねぇ」
「「――っ!?」」
瓦礫の中から聞こえてくるキルの声に、広間は静寂と化した。
「ったく、大袈裟すぎるんだっての」
「すんません、ボス。少々騒いだくらいが盛り上がると思いやして」
ひとり、またひとりと瓦礫を退かして立ち上がる。全員、喉の奥で低い笑い声を出しながらこちらを見下ろすように見つめている。
「困ったな。終わらせたつもりだったんだけどね」
言いながら、ガイス班が一度後退する。
「霊魂の盾だ……」
「なんだい、それは」
「奴隷の中に特殊部隊みたいな人たちが紛れ込んでいて、彼らはその能力で俺の言霊を跳ね返したんです。多分、塊叫団も同じ装備を身につけている……」
キルが甲高い声を上げた。
「あひゃひゃひゃ!! ご名答ー!! 霊魂の盾は、対混血者用に開発された、防弾チョッキみたいな物だ!!」
服を捲ってみせる。機械じみた真っ黒な板がある。
「しっかしまあ、ここまで効力を打ち消してくれるなら、わざわざ俺様の仲間を戦わせる必要もねぇ。お前らの相手は……」
キルが奴隷の集団へ視線をズラせた。
「奴隷1番、お前に任せる」
「かしこまりました」
塊叫団のもとへ歩いて行ったのは、サスケだった。まさかの裏切りに一同唖然とする。俺を連れて行ったあの女は偽者だったのかっ……。
「ジコク様よー、オウスイとトアの墓を見つけるのには相当苦労しただろー? それもそのはず、親父が移動させたからなあ!!」
「なにっ……」
「こいつの能力をさらにグレードアップするために墓を探していたら、まさかの大物と鉢合わせるたぁ、俺様も幸運な男だ。おかげで親父がやり残したことを成し遂げることができた。あんがとよー」
「なんと愚かなことを!! 王族以外がその能力を使えば、身にのし掛かる負担は計り知れんぞ!」
「そりゃあ、実験には犠牲はつきものだった。だが、奴隷1番は見事に適応したわけだ。オウスイの組織にな……。気ぃつけろ。なにせ、このチョッキは、こいつの能力から身を守るために開発されたも同然の代物だ。奴隷1番の言霊は、よーく燃えるぞ」
言い終えると同時に、サスケの体が真っ赤に燃え上がった。
「俺が行きます」
あの能力は、おそらく俺じゃないと対応できない。
「「炎・包火!!」」
炎VS炎の戦いが幕を開けた。
ブクマと評価、ありがとうございます!!
次回、ナオトvsサスケ!! 炎の能力者同士がぶつかり合う!
その隙にアジトの破壊を実行するキル。ナオト達は脱出に間に合うのか!?




