塊叫団と最弱・2
出発前に、ユズキに2つのことを頼まれた。
1つ、前の世界での話しに納得がいっていないので、帰ってきたらもう一度話し合うこと。
2つ、ライマルを狙った理由を探ること。
まあ、1つ目に関してはそうだろうなと思った。あまり時間がなかったためにさっさと終わらせてしまったけど、俺自身も話し足りていない。っていうか、これまでお互いが納得いくまで話し合ってきたんだ。
……はあ、絶対タイミング間違えたな、俺。
「怖い顔してんぞ」
「先走っちゃってさ。ユズキに聞いたんだ」
先頭を行く青島隊長が振り返る。
「して、答えは?」
「俺が考えていた通りでした」
そうじゃなくて。俺がモヤモヤしているのは、前の世界でユズキが獣語と狼尖刀を使えたという点だ。だっておかしいじゃないか。この世界の神様の器になったなら、前の世界で神の力は使えなかったはずだ。
見た感じ、狼尖刀はラヅキの能力からきてるし、獣語は……わからないけど。とにかく! 妙だ。
「まーたおっかねえ顔してる」
「ごめん。切り替えるしかない、か。青島隊長、目的地はもう近くですか?」
「敵の本拠地は不明だ」
「「え?」」
イオリと顔を見合わせる。
「知っているとしたら、彼らだろうな。おでましだ」
前方では南光の精鋭部隊が3人で待ち構えていた。蛍をぶん殴った俺としては、最も会いたくない集団だ。ちなみに、蛍は父さんが居た地下牢に閉じ込められているらしい。
「何の用だ」
「青島さん、交換条件を提示しに参りました」
「出来る立場にあるとでも?」
「無理を承知でお願いしております。どうか、我々に蛍様をお返し下さい。あの方ナシでは塊叫団を殲滅することは出来ません」
「とりあえず、理由を聞こう」
精鋭部隊はオウガ様の命令で塊叫団の討伐任務に就いた。ここにいるのは、過去に父さんと一緒に討伐を成し遂げたメンバーなんだそうだ。その中で特に貢献したのは蛍だった。あいつは飛べる。
「先に偵察して参りましたところ、塊叫団のアジトは山中に掘られています。小さな山ではありますが、入口は一箇所。噴火口に位置する場所と言えば伝わりますでしょうか」
「登ればいい」
「そう簡単にはいきません。だからこうして頼んでいるのです。前のアジトも同じ作りでした。潜入は困難を極め、蛍様だけが成功したのです」
「困難とはどういう意味だ?」
「奴らは買い取った人間を見張りにたて、その中に紛れ込んでいる。見分けがつかず、迂闊に攻撃できないのです」
「だからと言って、蛍を返すわけにはいかん。どのみちタモン様が決めることだ。私に頼んでも意味はない。先を急ぐので失礼する」
十分に七面倒くさそうな任務なのに、精鋭部隊は通り過ぎようとする青島隊長の腕を掴んで会話を続けた。
「アジトは海の向こう側です。我々の情報なしで辿り着けるとでもお思いですか?」
「そちらの船が無理なら他を当たるまでだ」
まさか、海賊に頼るつもりじゃ……。
「これでどうでしょう? 塊叫団は青島班に狙いをつけています。あなた方が出向かなくとも向こうから仕返しにやってくる。国に被害が及ぶのは避けたいでしょう?」
「身に覚えがない」
「いいえ、あるはずです。強化合宿の代わりに行われた当主からの試験で、青島班は名もない村に行った。そこで、賊を懲らしめ、力道に預けた。そうではありませんか?」
「……まさか、奴らが塊叫団なのか?」
「下っ端中の下っ端ですが、そうです。塊叫団には家族意識のようなものがある。必ず報復しに来ますよ」
そこに、北闇へ戻る伝令隊が通った。ひそひそと何かを伝えた青島隊長。そうして、
「わかった。手を組もう」
「マジっすか!? こいつら、上級試験の時に北闇を見捨てたんすよ!?」
「オウガ様の護衛があったのだ。とはいえ、全員でやる必要はなかったと思うがな」
確かに……。鬼に変身できるのだから、青島隊長の言う通りだ。
こうして、青島班は精鋭部隊と共に南光の船乗り場にやって来た。そこで合流したのはガイス班だ。蛍抜きでの討伐任務。あいつに代わってガイス班が同行する。そこにリンの姿はなかった。
「今回の任務は相手が賊だからね。リンの家はお金持ちだから、外したんだ」
デスの最もな理由に頷くしかない。
「イツキはどうしたよ。いねえじゃん」
イツキはタモン様から別の任務を受けている。蛍を牢鎖境に閉じ込めて情報収集をしている真っ最中だ。どうやらとんだ長生きらしく、情報量が膨大らしい。時間がかかっている。
(イツキともちゃんと話せていないな……。帰ったら時間を作って貰おう)
上級試験が終わってからというもの、北闇は猛烈に忙しい。下級歩兵隊の頃よりも疲れがとれなくて、父さんの忙しさが身に染みてわかった。
(にしても、これに乗るのか)
馬鹿でかい船を見上げる。船に設置された大砲の数や、いくつもある大きなマスト。船首の先は尖っていて、スピードが出そうな雰囲気がでている。
許可が下りて乗り込むと、青島隊長が小さな声で話しかけてきた。
「ナオト、イオリ。今回の任務に精鋭部隊は躍起になっているはずだ。蛍を取り返すために必ず恩を着せてくる。あまりこんな事を言いたくはないが、奴らの手を極力借りないようにしてくれ」
「もちろんっすわ。いちゃもんつけるに決まってるんすから」
「イツキの作業が終わるまではとにかく時間を稼ぎましょう。後はタモン様が手を打ってくれるはずです」
こうして、2日後――。まだ小さな点でしか目視できないけど、島を捉えたところで船は止まった。ここからは泳いで接近する。
幽霊島よりも大きな孤島に目立つ山が一つ。山の傾斜に潜む賊と奴隷となっている人々。一見、周囲には何もないように見えるが――。
(山の中、ね)
入口は山頂にしかない。どうやって内部に潜入するのだろうか。
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次回、塊叫団とドンパチします。
どれか奴隷で、どれが塊叫団なのか。
敵の巧妙な罠に青島班とガイス班は苦戦を強いられながら、彼らは奴隷の中である人物を発見する。
行方不明となっていた彼が、そこに居た――。




