表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
SEASON・2――/第一章・青年期編・4
273/316

最強変異体と最弱・4

 ライアから話しを聞く前に、まずは威支の調査報告から始まった。


 俺が頼んでいたグリードの件で、威支は陸を、海賊は海を徹底的に調査していたらしい。ちなみに、陸にはそれらしい痕跡は何一つ見当たらず、出生場所を発見することは出来なかったとかなんとか……。


 しかし、グリードで行き詰まったというだけで、変異体の方はというと――。




「奇妙な事件、だと?」




 青島隊長が眉を寄せる。




「ああ。おかしな事に、大国ではなく、小さな村や町の至る所で数人単位で行方不明者がでていた。近くに隠れていたのは、ネネが討伐した変異体だ」




 ネネがこくりと頷く。


 9体討伐された変異体のうち2体は幽霊島と孤島、3体は迷宮岩廊、残りの4体は陸に隠れていた。海流から外れてしまったのか、はたまた最初から陸を彷徨っていたのか。青島隊長は、今となっては深く考える必要はないと言って、ライアに向いた。




「これが現状だ。して、ライア殿は何の罪を?」

「俺は、人体実験での補助役を務めていました。拒否反応が現れたときに数人がかりで抑えつけ、動きを封じ込める。それだけの職務です。ところが、重度の肉を食べた彼らの力は人によって差異があった。運が悪いことに、俺たちが抑え込んでいたのは成功者で、まるで暴れ牛みたいに藻掻き苦しんでいた……」




 ライアたちの力では足りず、強行手段に出た彼らは成功者を傷つけてしまったそうだ。蛍は大激怒し、罰を与えた。


 ここで、イオリがライアの顔を覗き込むようにまじまじと見つめだした。そして、




「どっかで見たことあんなと思ったら、やっぱりな!! てめえ!!!!」




 胸ぐらを掴み上げ、棒のような体を振り回す。慌てて青島隊長が止める。




「イオリよ、どうしたというのだ!?」

「こいつっすよ!! 俺の左目をペンチで抉り取りやがったのは!! ぶっ殺してやるっ!!」




 試験中に感じた酸っぱい物が再び喉をせり上がってくる。王家ではなく、南光の闇影隊がやっただなんて……。とてもじゃないが、俺にはイオリを止める事は出来なかった。ユズキとヒスイも苦い顔で黙って見ているだけだ。




「有り難てえことに、俺は人の憎悪が他人に伝染するってことを北闇で学んでっからよ、親にも黙ってんだわ!! ド陰キャのこいつみたいに左の前髪だけ垂らして、お洒落だとか適当に誤魔化して!! 俺の気持ちがわかるか!? わかるわけねえよな!! てめえも消化されればよかったんだ!! クソが!」




 青島隊長に羽交い締めにされながら、左目を押さえて猫みたいにフーフーと息をするイオリ。だけど、相手は痩せ細った人間だ。舌打ちをして胡座をかいた。




「ごめん、話しを逸らしちまった。続けてくれ」




 ライアは小さな声で謝った。




「それで、成功者は何人いたのだ?」

「腹に閉じ込められていた仲間の一人が、10人しかいないって声を聞いたと言っていました」




 その内の1人がイオリだというわけか。出会えたことが奇跡に感じてくる。


 その後、ライアの話しで王家内にグリードはいなかったことがわかった。地下にいたユズキも同様だ。しばらく沈黙し、まだ情報が足りないのかと皆が悩んでいたその時、




「オッサン、もう一度話してくれ」




 イオリがそう言った。ライアは変異体の腹に閉じ込められるまでの経緯を話し、イオリの返事を待つ。そして、




「やっべ、俺って天才かも……」




 遠くを見つめながら、なにやら記憶を掘り返している。




「えっと、まずは威支と海賊。南光の海流を流れて迷宮岩廊からの、陸には痕跡なしだっけか?」

「だいぶ大雑把だが、そうだ」




 呆れるユズキを無視して、次は、




「威支は、キトが王家内で痕跡を発見出来なかったことから、王家は無関係だと〝思い込んだ〟っつーことか」

「思い込んだ、だと?」

「だってそうだろ? 王家が知らなかったにせよ、オッサンが城で食われたのは確かじゃねーか。つまり、そこに変異体はいたんだ」

「それはそうだが、国に進入した可能性もある」

「……いや、ねーわな」




 どこから湧いた自信なのか、とにかくイオリはそう言い切った。




「俺ら全員、グリードと変異体に振り回されて肝心なことを見落としていた。ここに答えがあるっつーのによ。ってか、俺が誰よりも早く気づくべきだったんだけど……」




 イオリがライアに向き直る。




「成功者は10人。間違いねえんだな?」

「ああ……」

「……変異体は実験の成功者だ。まあ、成功っていうか、後から副作用がでたんだろうけど。俺が言いたいことわかる?」

「だから、大雑把だと言っている」




 ライアではなくユズキがそう答えると、イオリは頭を捻って話し始めた。もともと、イオリは根拠や経緯を詳しく話すのが苦手なタイプだ。




「順を追うと…。つまり、実験の失敗作だって言われた奴らがグリードで、変異体は成功者だと思われた10人の内の9人が正体で……。唯一の成功者は俺だけだってことだ」

「いや、待て。どうして変異体が他の成功者だと思ったんだ? グリードに関しても同じ事を言えるが」

「じゃあ、成功できなかった奴らはどこに行ったんだよ。成功者は? 俺は会ったことねーぞ。任務でも、試験でもな。それに、変異体は人間に似た部分がいくつかあるし、グリードだって闇影隊みたいな軍隊意識がある。あいつらがもともとは人間だったらどうだ?」




 最大の鳥肌がたった。


 グリードがハンターを襲う理由。誰かに従って動く理由。変異体の手足が人と同じだった理由。その全てが繋がっていく。……じゃあ、あの時の声は?




(やべどって、まさか、やめろ……?)




 急に逆流してきた嘔吐物。俺は……、人を殺したのか……?


 ユズキが何かを思い起こす。




「地下を脱出するときに大きな煙突を見つけた。城にまで繋がってそうな高さがあって、その下は血だまりだった。血の跡は外に向かい、王家から出た……。そうかっ!!」

「ユズキよ、煙突とはなんだ?」

「用途が不明だったが、今わかった。城内に繋がっている時点で変だったが、おそらく捨てたんだ。募った参加者をな……。壁の外に通じる穴に直結していたことから、ハンターに処理を任せていたんだろう。だが、処理されるはずの参加者は全員が重度の組織を口に入れている」

「――っ、突然変異か!?」




 その言葉に、ライアの顔が青ざめていった。




「蛍様は俺たちを殺すつもりで……」




 そういえば、腹の中でライアから話しを聞いたとき、彼は「落下した」と言っていた。煙突に落とされ、地下には彷徨い込んだ成功者が潜んでいた、というわけか。いったいその身に何が起きたのか、成功者は母国へ帰ることが出来ず、変異していく体を隠すためにそこに隠れたのかもしれない。


 陸にいた変異体が潜んでいた場所は、彼らの母国である可能性が高い。他は、




「……自分の姿を見られたくなくて海に逃げたんだ。イオリとユズキが正しいなら、王家が知らないのも当然だ」




 勇気を振り絞って強くなろうとした彼らに、王家は敬意を払わなかった。最後まで見届けなかった結果がこの惨事を生み出したんだ。


 とにかく、イオリのおかげでグリードの謎が片付いた。証明するには、




「タモン様に許可を頂き、北闇からの参加者の遺体を確かめる。棺に何も入っていなければ実証されたことになる。王家がそこまで愚かだと思いたくはないが、やるしかあるまい」




 ネネにライアを任せて、青島班と威支は北闇へ帰還した。

 評価とブクマ、ありがとうございます!


 次回、母親の行方の捜索許可がおりた青島班と、それを邪魔する大規模な賊の組織!!

 彼らの目的は薄紫色の瞳や実験成功者の売買!? お楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ