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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
SEASON・2――/第一章・青年期編・4
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最強変異体と最弱・1

「姉貴ー!!」




 上級試験で親しくなったネネとイオリ。イオリが手を振りながら走って行く。


 ここは第二試験の舞台となった迷宮岩廊。驚くことに、変異体はここに隠れていたらしい。


 ネネは俺がグリードを始末した湖の岸で待っていた。発光する苔のおかげで一帯はとても明るい。しかし、どこにも変異体の姿は見当たらない。


 ここじゃないのか?




「青島隊長、お待ちしておりましたわ」

「報告を頼む」

「はい。実は……」




 ネネの話しによれば、試験の日、五桐班は変異体に接触した。この事があり、全ての試験が終了したときに、調査を行うか否か蒼帝と話し合ったらしい。すると、そこへ訪問者が現れた。


 懐かしい名前に思わず大声が出る。




「え、ビゼン!?」

「ええ。ご存じでしょうが、我が国の前当主です。彼は海流を調査していたようで、ある情報を提供しに来てくれました」




 幽霊島やマヤの家にあった地下牢にいた変異体、南光の海流。この情報を元にビゼンは仮説を立てた。


 変異体がグリードの進化系だとしたら、彼らには知恵がある。海に逃げこむ何かしらの理由があり、海流に乗って逃亡を図った。しかし、1体はマヤが捕獲、もう1体は幽霊島へ。海流を辿ると東昇に行き当たる。


 そして、試験中に発見された変異体。進入場所は、おそらく――。




「ゴール地点か。波に打ち上げられた、とそういう訳だな?」

「その通りですわ。ビゼンはそこに目をつけた。とまあ、変異体はこうして身を隠したわけですわ。ですが、なぜそうする必要があったのか……。私はこれまでに7体の変異体を処理してまいりました。これで発見された変異体は合計で9体となります。何か答えてくれるかと期待しましたけれど、残念ながら情報は得られず……。そして、ここにいるのが最後の1体というわけです」




 青島隊長が辺りを見渡す。




「……どこに?」




 代わってイオリが発見した。




「いた!! こんな所に隠れてやがったのか……」




 イオリが覗き込んでいるのは湖の中だ。まさかの場所に冷や汗がでる。だって、この中に入ったんだ。足もとに潜んでいたとは露ほども知らず、馬鹿みたいに暴れてしまった。


 イオリの隣で覗き込むと、変異体が水面下で大人しくしているのを目視できた。ただ……




「デカすぎないか?」

「だな。大猿くらいの大きさだ。しかも水中だろ? どうやって倒すんだっつーの」




 岸が水浸しになっていることと、怪我人がいることから、ネネたちが変異体と一戦を交えたことがわかる。




「気をつけて下さいまし。手足は天井に届くほど長く、水中でも俊敏に動き回りますわ」




 慌てて岸から離れる。




「何度試みても息が続きませんの。あれが最後なのに、いったいどうしたらいいのか……」




 ここで威支が動き出した。


 正直なところ、ユズキが異世界から来たんじゃないかって疑い始めてから、少しだけ気まずい。俺は話しかけられないでいた。もちろん、彼女は怪しんでいる。




「元気がないな。どうしたんだ?」

「な、なんでもない!! けど……、後で話がある」

「みたいだな。さっさと終わらせよう」




 オウガ様の話もそうだけど、もしユズキが異世界から来たのだとしたら、俺とユズキの新たな共通点を見つけたことになる。ちゃんと聞かなきゃ。


 ヒスイが湖に飛び込んだ。水の抵抗などもろともせずに、あっという間に潜っていく。しかし、




「ぐあっ!?」




 変異体の手の平がヒスイの腹を捕らえ、そのまま天井に突き上げた。水しぶきを散らせながら天井に叩きつけられる。


 確かに動きが速い。




「俺が囮になる!! もう一度だ!!」

「僕も行く」




 俺は紫炎を、ユズキは狼尖刀を構えて飛び込む。やはりと言うべきか、水の中では紫炎は役に立たない。消化されてしまった。つまり、自己暗示だけで戦わなければいけないというわけだ。


 無謀すぎる……。


 しかも、この変異体。今までの物とは大きさ以外に明らかに違う点があった。




(なんだよこいつ、クモみたいだ……)




 手が4本に、足が4本。尻尾に群がるのはグリードのトゲだろうか。毒針のように見える。それでいて、手足の関節はどの生き物よりも多い。これだと、




(――っ、やっぱダメか!!)




 腹の下に潜っても縄みたいに手が絡みついて、俺は一瞬で捕獲された。その隙にヒスイが言霊を発動。




「水・龍陣突破!!」




 龍が変異体の背中に直撃する。だが、ダメージはない。むしろ怒らせただけだ。




(なっ、内臓を潰されるっ……)




 腕から出ようと身をよじらせてみても、とんでもない馬鹿力だ。これ以上締め付けられないように手を使って抵抗するのがやっとで、ユズキが切りつけてようやく解放された。


 変異体が動くと地面に積もっていた土が水中を濁らせた。


 一度、岸に上がる。




「ダメだ、息がもたない」

「今度は私が潜ってみよう。ナオトよ、観察を忘れるな」

「はいっ!!」




 再び水中を目視できるようになってから、青島隊長が湖に飛び込んだ。すると、とんでもない光景が繰り広げられた。


 本当に水中で戦っているのかと疑問を抱きたくなる。


 腕を掴んだ青島隊長は、変異体の頭を引きずるように壁に衝突させ、そして大きな顔面を蹴り上げた。衝撃は岸にまで及び、小さな津波が俺たちの足を濡らす。




「僕たちが模擬試験を受けたとき、青島の俊敏な動きに驚かされたことがあったな」

「健在、だね」

「ただ厄介なのは、こうして水中が濁ることだ。このままだと青島の努力が水の泡になる。いくら観察しても弱点を発見出来ない」

「青島隊長も……」




 言い終える前に青島隊長が上がってきた。




「見えん」

「だろうな。さて、どうするか……」




 威支のメンバーはユズキとヒスイのみ。ハルイチとイツキはいないし、ネネが連れてきた東昇の闇影隊はすでに疲労困憊だ。


 


「いったいどれだけ攻撃したら、こいつって疲れるんすかね?」

「わからないわ。なにか作戦を練らないと……」

「でも、土を掻き出すわけにもいかないし、ってか息が続かねーし。姉貴の言霊で姿を消したとしても、結局は水中戦。体力の消耗が激しすぎるっつーの」

「そうね。けれど、どうにかして仕留めなきゃ。このまま成長されると大変な事になるわ」




 そう言って、ネネは天井を仰ぎ見た。




「ここは神霊湖の真下。神霊湖は各国に水の資源をもたらす重要な役割を担っているの。変異体が成長して天井を突き破れば、水の資源は断たれ、迷宮岩廊も封鎖せざる終えなくなる。資源と通路が断たれるって、予想以上の被害を出すのよ」




 変異体が発見されて3年。たった数年でここまで大きくなったんだ。


 しかも、水は生命体にとって重要な資源。威支と青島班の表情が引き締まる。


 と、その時だった。変異体が素面から顔を覗かせ、大口を開いた。解放された異臭に全員が口元を覆う。




「アガアアアアア……。やあああべえええどおおおお……、やべど、やべど、やべどやべどやべどぉぉお!!」




 のしかかるほどの太くて低い声。耳を塞がずにはいらないほどの声量。


 なんだ? なにか喋っているのか? 




(……今がチャンスだ)




 紫炎を発動させ、変異体の顔に向けて構える。




「炎・衝撃砲・改!!」




 空気砲に乗せて小さく球体化した紫炎の塊が変異体の横っ面に直撃する。グリン!! と首が反対方向に向けられ、変異体の口から緑色の血が吐き出された。


 そのまま変異体の頭部に飛び移る。




「炎・月姫乱脚!!」




 自己暗示で右足を硬化させ、脳天に叩きつけた。2本の手が俺を捕らえようと水中から飛び出すも、軽々と避ける。




「その腕、潰す!! 炎・連弾包火球!!」




 肩関節に狙いを定め、連続して打ち込む。1本が千切れ、最後の1本を落としにかかる。すると、




「ナオト、後ろだ!!」

「――っ!?」




 巨体が湖に少しだけ沈む。奴は手ではなく、今度は足で俺を払い落としにかかったのだ。


 横腹にヒットし、壁に直撃する。




「ぐはっ……」




 めり込む体。それほど凄まじい力だ。




(また潜られたら面倒だ。もう一度っ)




 体を引き抜こうと踏ん張ると、視界の端に変異体の顔が見えたような気がした。まさか……、




「嘘だろ……」




 大きな口が岩ごと削る。俺は変異体の口内に閉じ込められた。

 今夜から、第一章の少年期編・2を編集します。


 ダイジェストで流してきたイツキとナオトのやり取りに戦闘シーンを、月夜の国でハンターに襲われた新生青島班に戦闘シーンを追加します。


 少年期編・1ではナオトの性格に変更を加え、発言と心の声での違いを明確にしました。自ら作り上げた〝陰キャ〟に苦しめられる姿や、ヒロトを嫉む姿がハッキリしています!


 皆さんの応援とアドバイスのおかげで、編集を加えてからアクセス数が伸び、TwitterのDMでもメッセージを頂くことができました。


 ランキングにはまだまだ届きませんが、楽しんで投稿しておりますので、これからも頑張っていきたいと思います。


 引き続き、フルボッコをお楽しみ下さい。

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