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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
SEASON・2――/第一章・青年期編・4
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王家VS最弱・3

 北闇と王家の間を見えない壁が隔てる。


 あれから数ヶ月後。言うまでもなく王家との関係が悪化した北闇だが、特に何かされるわけでもなく平和な時間を過ごしていた。


 変わったことと言えば、北闇に冬が訪れたこと。15年もの間、冬を失った北闇の大人たちは、降り始めた雪を手の平に感じながら歓喜していた。




「さっぶー!!」

(そっか。イオリは冬が初めてなんだ)




 懐かしい――。そう感じる俺の横で、ガチガチに震えるイオリ。口から吐き出される白い息を見ては大喜びしている。




「よっしゃ、いっちょ乗り込むとしますか。出発っすよね、青島隊長」

「ああ、向こうからの呼び出しだ。堂々と対談してやろうじゃないか」




 実は、混血者の分離をしなかったのは北闇だけじゃない。噂好きな国民のおかげで他国にも動きがあったらしい。それともう一つ、タモン様の影響力が強かった。タモン様がしないのであれば、我が国もしません! ってな感じで、どの国も分離しなかったのだ。


 王家の目論みを阻止したおかげで、最も安堵していたのは人間の闇影隊だ。助かったと、何度お礼を言われただろう。


 とまあ、5日後。馬鹿でかい城を仰ぎ見ながら、ついにオウガ様と対面する日がやって来たわけだ。


 言いたいことを全部ぶちまけて、二度と関わらないで下さいって頼むつもりだったんだけど……。




(やば、これはキツいわ)




 かなり警戒されているようで、玉座の間にはたくさんの精鋭部隊がいて、その中心でオウガ様は鎮座している。


 元気が取り柄のイオリですら脂汗をかくくらいだ。堂々としているのは青島隊長だけ。俺とイオリはすっかり気迫負けしている。


 だけど、負けるわけにはいかない。




「……オウガ様、もうお互い隠し合うのはやめて、ちゃんと話し合いたいです。俺たちを狙うのは、走流野家が初代皇帝・カンムの直系だからですか?」

「カンムなど取るに足らん存在だ。注目すべきは弟のジンム。奴の子孫と決まっている」




 やっぱりこの人はなんでも知っている。水面下で慎重に事を進めてきたんだ。だけど、やりすぎだ。




「じゃあ、どうして爺ちゃんを?」

「初代……。つまり、何百年も遙か昔まで正確に血筋を辿るのは不可能だ。ならば、可能性のある者を始末するまでよのう」




 オウガ様が立ち上がると、精鋭部隊が一斉に散った。そして、




「そのために呼び出したのだ。調子にのりおって。覚悟せい」

「――っ!?」




 話し合いじゃすまないらしい。


 床にはトラップがあったようで、穴の中に青島隊長とイオリが落っこちてしまった。




(だよな。ここは玉座の間だ。王を守るためにトラップがあってもおかしくはない)




 っていうか、この人……。こんなに大きかったっけ?


 オウガ様を間近で見たのは執務室が初めてだった。身長はそこそこで、金の甲冑に身を包まれた物腰の柔らかそうなお年寄りってイメージだったけど、明らかに成長してる。


 ……いや、あり得ない! 年取って身長が伸びるだなんて聞いたことないぞ! 


 2メートル近くある身長で、肩幅はイザナくらいか。甲冑が今にも弾け飛びそうだ。タモン様やテンリを作り出し、人体実験でイオリを混血者に変えただけでなく、この人自身も自分の体をイジったんだ。




「初の成功者は、オウガ様、あなたなんですね」

「ご名答。ヘタロウに手を焼くと思いきや、まさかその孫が邪魔をしてくれるとは予想外よのう。タモンを北闇にやったのはわしのミスだろう。子どもごときに感化されおって」




 オウガ様が手の平同士を強く叩く。玉座の間に「パンッ!」と音が響き渡った直後、甲冑が溶け出した。




「行くぞ。……装!!」




 物凄い風がオウガ様を中心に吹き荒れる。金の甲冑はオウガ様の全身を包み込み、瞬く間に黄金色の姿をした鬼になった。


 その瞬間、俺は悟った。




(勝てない……)




 なんだ、この生き物は。


 威圧感、殺気、迫力、眼光――。全てにおいて全種の生き物を越えている。


 立ち尽くす俺にオウガ様は容赦なく攻撃を仕掛けてきた。




獄道森王爆(ごくどうしんおうばく)!!」




 息つく暇もない。あっという間に一帯を黄色い霧が覆い尽くす。霧は木を形成し、その中に俺を閉じ込めた。


 だが、




(見えるっ!)




 オウガ様は玉座の位置から動いていない。木々の隙間を最小限の動きで完璧に避けて通り、




「炎・衝撃砲!!」




 紫炎をもって反撃に転じた。




「……届かぬ」




 オウガ様と俺を隔てるように、巨樹が衝撃砲を身に受ける。


 黄色い木なんて見たことも聞いたこともない。まるで異界に彷徨い込んだ気分だ。




(とりあえず、この霧をどうにかしなきゃ……)




 言霊を解くにはまず、オウガ様の精神を乱す必要がある。


 連弾包火球で行く道を邪魔する木々を片っ端から吹き飛ばし、徐々に距離を詰めていく。巨樹の幹に衝撃砲で大きな穴を開けると、腕を組みながら立つオウガ様を捉えた。


 穴が閉じる前に自己暗示で一気に加速する。


 


「おらあああっ!!」




 轟音で燃える紫炎。自己暗示で硬化された拳。綺麗にオウガ様の眉間を……通過する。




「なっ!?」

「ひよっこが」




 パシッと腕を掴まれて巨樹の中へ投げ込まれる。


 通過したんじゃない。避けられたんだ!! 俺が見ていたのは残像だっ。




「シンオウの能力、とくと味わえ」




 小さな破裂音が鳴ると、音と同時に俺の皮膚が焼け始めた。骨にまで伝わる熱。ヒヤリとしたものが背筋を這う。


 ……切断される。なんなんだ、この能力は。




(霧が染みこんでるのか!?)




 治癒能力が懸命に修復するも、巨樹にはそれに勝るほどの霧で形成されている。


 これを破るにはどうすればいい!? 


 生き地獄とはまさにこのこと。俺は今、体内で切断される激痛を味わっている。治療されては切断され、また治療されては切断されて……。これの繰り返しだ。


 タイミングを見計らい、腕の骨がくっついた瞬間に全身を紫炎で覆った。


 視界の向こうで、オウガ様が次の技を繰り出す。




獄道光王刃(ごくどうこうおうは)!!」




 釣り針でいう〝かえし〟。それを無数に従えた光の刃が巨樹を切り倒す。




(あっぶねえ!!)




 咄嗟に姿勢を低くしたおかげで首を取られずに済んだ。


 ちょっと待てよ。この技……




「どうしてオウガ様がキトの能力を!?」

「ほお、あやつに会ったか」




 獄道光王刃――。これは、威支のアジトに行った帰りにテンリに襲撃された俺たちを、キトが救ってくれたさいに発動した技だ。


 キトはオウガ様みたいにガタイが良いわけでもないし、どちらかというと中肉中背だ。身長は同じくらいだけど、あんなに神々しくない。むしろ、赤が目立つま禍々しい生き物だ。


 見た目に圧倒されてせいで、光王刃の威力はこれ以上に感じたけど……。




(同じだ……)




 恐らく、この人に勝てるのはキトしかいない。




「そもそも、走流野家の全員に目をつけていたわけではない。王家が始末するべきだと判断したのは、貴様とヘタロウのみ。これまでに、わしらがセメルとヒロトに手を出したことがあったか?」




 言われてみれば……。


 ヒロトを誘拐したのはトウヤであって、王家の指示で動いていたわけじゃない。父さんを殺したのも王家ではなくテンリだ。この言い方だと、テンリがオウガ様の指示で殺害したわけではないことがわかる。




「なんで、俺なんですか?」

「言っただろう。王家が注目しているのはジンムの子孫だと。カンムとジンムは兄弟揃って炎に愛された。しかし、中でも強力な力を得ていたのは弟の方だった。薄紫色の瞳に黒い髪、炎の性質……。お主やヘタロウと似ている」




 能力を解き、オウガ様は一枚の写真を俺の足もとへ滑らせた。


 かなり古い写真だ。




「……――っ、この人は……」

「こやつがジンム。オウスイとトアの父親だ」




 俺はいったい何を見せられたのだろうか。何を知った?


 動揺を他所に、再び森王爆が展開された。 

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