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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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第14話・ヘタロウの真意

 試験終了から数日が過ぎた頃。走流野セメルが地下牢から解放された。


 精鋭部隊と共に甘味屋を飛び出し、駆け足で本部を目指す。




「本当に思い出したのか?」

「ああ。一刻も早くタモン様へ報告しなければ……」




 なぜこんな大切な事を忘れていたのか。とにかく、一行の顔には焦りが窺えた。


 その頃、鍛錬場では、タモンによる蛍の尋問が行われていた。頑丈に拘束された彼女が黙秘を貫いているため話しは進んでいないようだ。




「強情な女だ。なぜナオトに死刑宣告をしたのか、そう質問しているだけなんだがな。俺の記憶が正しけりゃ、ナオトはきちんと任務を遂行していたし、落ち度はどこにもなかった。なにか見落としているか?」



 

 空総司令官が否定する。




「唯一のS評価ですよ? あり得ません」

「だよな。それにだ、重度に襲撃されたってのに、お前んとこの部下は1人も加勢しなかった。わざわざ南光まで出向いて頭を下げたはずだぞ」




 ようやく蛍が口を開く。




「いつですか。あなたが頭を下げるなど想像もつきません」




 と、そこへ雪崩のように鍛錬場に通じる階段を駆け下りてきたのは、今しがた到着したセメルだった。慌てようにタモンが姿勢の向きを変える。




「ここはマズい。上で聞こう」

「いいえ、構いません。蛍様も一緒に聞いてもらいます」

「……いいだろう」

「――っ、よせ!!」




 話しの邪魔にならぬようにと、空総司令官は蛍を地面へ伏せさせた。




「往生際が悪いぞ。ましてやここは北闇だ。お前に権限はない」

「クソがっ……」




 地下牢に籠もり、記憶の回復を待っていたセメル。どうしてヘタロウを王家へ引き渡す必要があったのか、なぜユズキを恐れていたのか。その全てを思い出した。得たのは安堵ではなく、のし掛かるほどの恐怖だった。




「走流野ヘタロウ、あの人が言霊の能力を得た日に遡ります。突然の力は、そもそも親父が眠らせていただけであって、最初から持っていたものでした。畑仕事以外を家で過ごす親父はナニかから隠れて過ごしているみたいだった。それが急に闇影隊へ入隊した。きっかけは俺の母親死んでからです。眠らせていた力を解放し、外へ出るようになった」




 奴に気づかれた――。そう言って怯えていたのを鮮明に覚えているセメル。その日から、まるで昔話のような話しをされたと、ユズキに説明した内容をタモンにも話した。その間、蛍の顔は強張りつつあった。




「ナオトとユズキの名が出ていただと?」

「はい。王家の希望、それはナオトだったと話していた。ですが、ナオトは消えた。落雷に巻き込まれてこの世界を去ったと、そう親父は話していました」

「つまり、ナオトという人物は過去に存在していたということか……」

「そうですが、問題はナオトではなくユズキです。彼女は神に愛されし子ども。その子は必ずナオトを見つけ出し、共に世界を崩壊させると言っていた。そして、もう一つ……」




 一息置いて言葉を紡ぐ。




「走流野家は、初代皇帝・カンムの直系の子孫だ、とも。ナオトという人物は、その弟であるジンムの直系だそうです」

「では、ユズキは?」

「彼女はもっと特別です。ユズキは……、神の力を受け継いでいる。そして、神の名は……」




 ラヅキ――。


 土地神は口々に黒い狼をラヅキと呼んでいた。タモンの肌を鳥肌が走る。




「ラヅキが解放されれば秒読みが始まる。力を取り戻したその時、必ず世界を崩壊させます」

「力とは土地神のことじゃねえだろうな?」

「――っ、まさか封印を解いたんですか!?」

「数日前にな……」

「偶然であればいいが……。俺はナオトという名を与え、ナオトはユズキと友人になった」

「ユズキの体からはラヅキが出てきた。ただの器ではなかったのか。しかし、どうしてヘタロウを?」

「親父はラヅキを解放する気でいた。神を守らなければと言っていました。そして、神にナオトを預けるとも……。あまりにもとち狂った考えに俺は納得できなかった。そもそも、真実だという証拠もない」

「だが、ユズキが現れた、と」

「はい……。親父はもう南光にはいない。彼女からそう聞かされています。絶対にラヅキと親父を接触させてはいけません!!」

「どうしてそう思う」




 セメルは目を伏せた。地下牢に居ても尚、黙秘をし続けた最大の理由をようやく口にする。




「親父は、お袋を失って精神を病んでいた。闇影隊に入隊し他人を救うことで誤魔化してきただけなんです。少しはマシになったと思っていましたが、幼い頃のヒロトの発言などがあって親父の目は変わった。憎しみに染まっていた。年老いても、親父は忘れてなどいない。お袋を殺した犯人、……テンリを」




 一瞬にしてセメルが王家側についた理由を悟ったタモン。セメルは1人でテンリを始末しようとしていたのだ。そうすれば、ヘタロウは復讐を諦め、ラヅキに接触することもなく世界の平和は守れる。イコール、それは家族を守ることに繋がる。




「テンリはやるつもりだぞ、セメル。あいつは止まらない。ヘタロウの動きを阻止したところで、あいつにはあいつの野望がある」




 羽織を翻して階段に行く。




「執務室にヒロトとナオトを呼び出せ。ヘタロウについて話しをまとめる」

「「御意」」




 ヘタロウの家の壁にあった文字。〝奴が解き放たれる〟との意味がラヅキを指していると気づいたタモン。


 執務室へ歩みながら、どうもしっくりこないと思い至る。


 ヘタロウが復讐心に突き動かされていたのならば、なぜあのような文字を残したのか。国民を救うことで家族を喪った痛みを誤魔化していたとして、なぜ他国に知れ渡るほどの功績を残したのか。むしろ、誤魔化すためだったのならば、ハルイチのように他人を無視した行動をとっていたはずだ。


 そして何よりも。




(蛍がやけに大人しかったな)




 テンリが、自分は弟だと暴露したり、タモンにその記憶がないなどと洩らしても蛍は黙っていた。


 まだ何かある――。タモンは乱暴に執務室の扉を開いた。

 ブクマと評価、ありがとうございます!


 次回、第二章・青年期編・最終話。またしても、奪われる――。

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