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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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【逸話】・土地神の解放

 格闘技場に現れたユズキがラヅキを呼び出す。


 テンリは言葉を失った。




(あれがラヅキ……。本物を拝むのは始めてだが、……なるほど)




 目を細めながら姿を消す。〝今はその時ではない〟と格闘技場を後にした。


 突然の威支の出現に混乱する会場が静まりかえる。トウヤはライマルの前で立ち止まり、ヨウヒはリンの前で、イザナはイツキの前で立ち止まった。ヒスイは自ら前へ出る。イツキとすれ違いざまに小さな声で謝った。


 ラヅキが告げる。




「全員を横並びに。身体を押さえろ」




 念のため、イッセイを近くに待機させる。それを確認したヒスイが両手をラヅキへ差し出す。ふと、トウヤに顔が向いた。目が合うと、トウヤがこくりと頷く。


 ヒスイの身体から土地神の力が消える。つまりは、もう二度と水の能力を使えなくなるのだ。今後が不安で仕方ない。ヒスイは大きく息を吐き出した。


 ここでイツキが暴れ出した。なにをするつもりなのか察したようで、イザナの手から逃れようと藻掻く。顔を歪めるのは、ジンキを引き抜かれるのだとわかったからだろう。




「やめろっ!!」




 そうなれば、ユズキとの繋がりがなくなってしまう。混乱する頭には、思い出ばかりが駆け巡っていた。理由はこれだけではない。ジンキに救われ、力を与えられた瞬間から共に生きてきたのだ。


 作戦を実行する前に話しを聞いていたイザナ。人間であればどんなに良かったかと考えたことのあるイザナと違って、得体の知れない生き物を手放そうとしないイツキに胸を打たれた。例えそれがユズキと会うための手段に利用しているとしても、受け入れていることには代わりない。




「こうするしかないのだ」

「離せ!! 俺に触るな!!」



   

 ジタバタと暴れ、イザナの腹に何度も食い込むイツキの膝。




「絶対に返さない!! 一緒に生きるんだ!!」

「許せっ」

「――っ、ユズキ!! もういいんだ、俺は大丈夫だから!! 足りないなら、もっと強くなる!! だからっ……」



 

 イツキの必死の説得に、ユズキは思わず耳を塞ぎそうになった。見ていられないのだ。


 離れた場所で様子を伺っているキトが深く息を吐き出す。あれほど関わるなと言ったのに――と、どこか呆れているようにも見える。


 ましてや、ラヅキの出現によりオウガとタモンが動きだそうとしているではないか。舌打ちをして、手から黒霧を放出した。対象をひとりひとり捕らえ、そしてテイオウを召喚する。




「やれ」




 命令を下すと、錆びた王冠を握りしめる巨大な黒鬼が口を開いた。




「ヒザマヅケ」




 威支以外の者の膝が折れる。これでイツキは暴れられなくなり、他の者も動けなくなった。


 ヒスイは覚悟を決めた。




「やってくれ」

『いでよ、リュウジン・トラガミ・シュウ・ジンキ』




 獣語で呼びかけると、体から目に見えるほどの力を放ったラヅキを中心に、立つのも限界であるかのような、台風に似た風が巻き起こる。


 すると、光の柱の体内で眠っていた力が激しく入り乱れ、ライマル以外の3人の呼吸が荒々しくなった。


 3人の意思に反して、口から溢れんばかりに噴き出した力。溶岩の如くドロドロとし始め、やがて形を作り始めた。そして、そこに立っていたのは、本来の姿よりは小さい生き物であった。続いてトラガミがライマルから離れる。


 東の土地神・リュウジン。西の土地神・トラガミ。南の土地神・シュウ。最後に、北の土地神・ジンキだ。龍、虎、鳥、亀の格好をした人間もどきにオウガの目が開かれる。




(民が目撃したのは……これか……)




 威支よりも頑丈そうな体つきだ。肉体には絵に描いたような美しい体毛や甲羅など、絵画から飛び出してきた異質な生き物がそこに立っている。


 イツキの目から涙が零れた。




「ジンキ……」




 少し離れ目に、上がり気味の口角、大きめの口。かろうじて人に近い姿をしているが、どう見ても亀だ。




「やっと会えたな、小僧」

「行かないでくれっ」

「……前にも言ったが、後は自分で鍛えるのだ。この言葉を忘れるな」

「――っ、ジンキ!!」




 ラヅキが歩き始めると土地神は着いていった。威支もこの場を去る。


 全てを失う――。なんの声もかけてくれないユズキにイツキの不安が煽られる。




「待って! 俺も行く!」




 ヒスイが両腕を広げて立ち塞がる。




「ダメだ」

「退け!!」

「ダメだ!!」

「なんでっ……。どいつもこいつも俺から奪うんだよ!! 父さんも母さんもいない! 国民は俺を嫌っているし、闇影隊は俺を殺そうとした! ジンキが声をかけてくれて1人じゃないんだってわかって、やっと……ユズキに出会えたのにっ……。やっと友達ができたのに!!」

「それでもダメだ……」




 低い声、放たれる異様な空気。ヒスイはそんな自身の体に鼻で笑った。どうやら、全てを持って行かれたわけではなさそうだ。




「頼む、ここは引いてくれ。ユズキにも時間が必要なんだ」

「なんだよ、それ!!」




 ヒスイを押しのけて後を追う。それを今度はソウジが止める。キトが解放したようだ。




「邪魔するな!!」

「冷静になれ。なにか理由があるはずだ」




 ソウジごと引きずって歩く。他の同期も抑えにかかった。イツキは地面に倒れようとも、爪を立てて前へ進もうとした。


 ジンキはもういないのに、どこからこんな力が湧くのか、とにかく全員で止めにかかる。




「はあああなあああせぇぇえええ!!!!」

「――っ、いい加減にしろ!!」




 イツキをひっくり返してソウジが馬乗りになった。




「俺が謝る!! 混血者と国民に代わって、お前の過去に俺が謝るから!!」




 イツキは両腕で視界を覆った。嗚咽をあげ、頬を伝う涙にソウジが歯を噛み締める。




「ジンキやユズキに依存させるようなことをしたのは、紛れもなく俺たちだ。今まで本当にすまなかった……。すまない、本当に……。すまない……」




 イツキの泣き叫ぶ声が格闘技場に響き渡る。国民は誰1人としてイツキを直視できなかった。

 ブクマと評価、ありがとうございます!!


 次回、セメルが解放。意を決してタモンに真実を明かす。


 動揺を隠せない蛍と内通者。彼らの運命が大きく変わる。

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