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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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第13話・昇格

 ツキヒメに縄を取ってきてもらい、蛍の身体を拘束する。その間にツキヒメは懐かしい我が家へ戻り、少し小さくなった服に着替えた。


 外へ出る前に、ふと目についた鏡の前で立ち止まる。




「母様……」




 ナオトから貰った髪飾りを上手くつけることが出来ず、母親が手伝ってくれたのを思い起こす。おもむろに、母親の言葉を復唱した。




「諦めるならそこまでよ。お母さんだったら、負けたって納得がいくまで頑張るわ、か……」




 二度目に買って貰った髪飾りはなくさないようにアパートへ置いてきた。蛍の風で乱れた頭に手を添えて、外で待つナオトに微笑む。




「死にかけたのに、ナオトの言霊の中にいたとき、すごく幸せだった。上着を貸してくれたときも、ナオトが勝って喜ぶ姿をみたときも……。こんなに幸せでいいのかなぁ……」




 すると、どこから「たまには素直に、あなたらしくなりなさい。あなたらしく生きるのよ」と、死ぬ前の母親の声が聞こえてきたような気がした。




「母様、私、ナオトが好き。きっと棘の道だろうけど、それでも追いかけ続けるわ。2人みたいに幸せになって、ウイヒメの分まで笑ってみせるから」




 踵を返して外へ出る。そこには、今しがた到着したハルイチの姿があった。状況を説明している最中だったようだ。




「風……かい?」

「風を身体に纏って紫炎を防いでいたんだ。なにはともあれ、ツキヒメのおかげで捕獲に成功したってわけ」

「わ、私は何も……」




 ナオトがツキヒメの頭を撫でる。




「弱点を見つけるから、それまで耐久戦に持ち込んでって作戦をたてたのはツキヒメだ。だから俺を突き飛ばしたんだろ?」

「怒ってないの?」

「ビックリはしたけど、助かったよ。手を出すなって怒鳴っちゃってごめんな」




 2人のやり取りを見てハルイチが納得する。同時に、我が妹へどう報告しようかと頭を悩ませた。




「とにかく、蛍を連れて急いで北闇へ戻ろう。向こうは大変な事になっている。移動しながら話すぞ」




 ナオトの背中にツキヒメ、ハルイチの背中に蛍を背負って走り出す。


 ハルイチは格闘技場での出来事を話し始めた。




「テンリに技をコピーする能力があることがわかって、向こうからの一方的な攻撃が続いたんだ。それだと面白くないと思ったのか、今度は一般人を人質にとられた。タイミング良くタモン様が戻られて、オウガ様も加わり戦闘は続行……。これで決着がつくかもって思ったんだけど、地下から威支が現れた」

「そういえば、ライマルが引っ張り込まれていたような……」

「ナオト君、問題はここからなんだよ。黒い狼も一緒にいたんだけど、それを見た瞬間にテンリは逃亡したんだ。そしてその狼は、光の柱から地震の根源とされる生き物を回収した」

「回収?」

「封印を解き、解放し、去った。そのせいでイツキ君が……」

「――っ、急ごう!!」




 格闘技場に戻ると、そこは医療班でごった返していた。治療を受ける闇影隊と一般民が所狭しと横たわっている。端の方で腕を組んで立つタモンを発見する。




「タモン様、蛍を捕獲しました」

「よくやった」




 声に張りがない。いったいどうしたのだろうか。




「……ナオト、ユズキから何か聞いているか?」

「いえ、なにも。ハルイチから状況を聞いて驚いています。イツキは無事ですか?」




 タモンが視線をずらす。追うと、地面に抉ったような跡が10本残っていた。




「ユズキを追いかけようとしたイツキを全員で止めた。繋がりを断たれたと思い込んで、あいつは今ふさぎ込んでいる」

「繋がりって、ジンキですか?」

「そうだ。封印されていることで国民から蔑ろにされてきたあいつを受け入れたのは、ユズキが始めてだからな」

「だけど、封印は解かれた……。これでイツキは人間と同じってことですよね?」

「普通なら喜ぶ。だが、イツキの場合は逆で悲しんでいる」

「俺が話してみます」

「頼んだぞ」




 それでもタモンの態度は変わらなかった。不審に思ったナオトは、合流した精鋭部隊に蛍を任せ、再度タモンに向き直る。




「他になにかあるなら話して下さい。俺にも出来る事があるかもしれません」

「……前もって、光の柱を解放するとの話しはユズキから聞かされていた。封印を解くのは白草イッセイだとな。しかし、実際にはまったく違う生き物が土地神を解放した。しかもそいつは、ユズキの体内から現れた。意味わかるか?」

「いえ……」

「黒い狼に封印を解く能力が備わっていて、しかもユズキの仲間だということは、あいつは土地神の長の器だったってことになる。……全部、奪われたんだよ」

「――っ、王家は彼女を見過ごしませんよ!?」

「だから困ってるんだ。王家が彼女の怒りに触れたとき、いったい何が起きるのかと不安になる。まあ、手遅れかもしれんがな」

「え?」

「ユズキは威支に身を置き、重度の言動を逐一報告してくれた。全部知った上であいつは動いていたんだ」

「会えたときに話してみます」

「バカ言え。死に物狂いで説得しろ」

「どういう意味ですか?」

「青島班には国外へ出てもらう。威支と共に母親を捜せ。ユズキと過ごせる時間は十分にあるってことだ」

「それってつまり……」




 釣られるように、ツキヒメの瞳が輝く。




「おめでとう。走流野ナオト、お前を上級歩兵隊に昇格する」




 あともう少しで母親の姿を思い出せる。それまで待機していろ。そう言い残して、タモンは去って行った。

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