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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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第9話・テンリの狙い

 8つの入口からはグリードが土砂のように流れ込んできた。途端に恐慌をきたす観客席。出入り口をグリードに塞がれてしまい大パニックだ。


 テンリはその声を全身で感じていた。




「歓声というものは、こうでないと。そう思わないか? ナオト」

「お……まえ……」

「治癒能力とは実に厄介だ。もう意識を取り戻したか。本当にお前を殺すには苦労させられる。とはいえ、後回しの予定だったんだがな。よく守れたものだ」




 と、その時だ。会場に、観客の悲鳴よりも大きな声が響き渡る。




「皆さん、落ち着いて下さい。闘技場と客席を隔てる壁をグリードは越えられません。もし万が一、グリードがよじ登ろうとした場合には、桜姫を所持している闇影隊の方々で対応して下さい。いいですか、お年寄りと女性の方、子どもを通路側へ、大人の方は席の方へ、闇影隊は前へ。すぐに行動して下さい」




 その声はツキヒメだった。マイクを握る手は小刻みに震えている。グリードが怖いわけではない。彼女は怒り心頭に震えているのだ。


 同時に、怒りに支配されてはいけないと、タモンから助言を受けたことを思い起こす。桜姫の開発が決定された時だった。グリードを始末することよりも、いかに闇影隊を、国民を守ることが出来る物に仕上がるか。桜姫を作るには、先ず第一に防御という意味で構成しなければならない。


 憎いグリードを目の前にしながら、ツキヒメは何度も自分に言い聞かせる。落ち着け、冷静になれ、突発的に動くな、と。この行動には、ナオトへ「自分は大丈夫だ」と知らせる手段にもなった。


 ツキヒメの指示に従って闇影隊が実行していく。一般人を誘導し、隊員は縁へ移動した。


 ツキヒメの元へ精鋭部隊の者が訪れた。般若の面に角が〝二本〟。空総司令官ではない誰かだ。




「マイクをお借りしてもいいですか?」

「は、はい」




 国帝の護衛に就いている他の精鋭部隊が敬礼していることから、身分が格上であることがわかる。しかし、ツキヒメが注視しているのはそこではない。




(この人、私よりも少しだけ身長が高いくらいだわ。誰なの?)




 他の隊員と比べて、目線が近いのだ。ましてや、本部にいる時間の長いツキヒメは見たこともなかった。


 マイクを握ると、般若の面は縁にいる闇影隊に向いた。




「初めまして、北闇の精鋭部隊総隊長、(かい)だ。今から総指揮を執らせてもらう。会場にいる闇影隊は新たな指示が出るまでグリードの対応を頼む。第三試験に参加している受験生は、闘技場側から支援を。グリードを一匹たりとも逃がすな」




 受験生はすぐに動いた。闘技場は瞬く間に戦場と化していく。




「ツキヒメ様はタモン様と一緒にいて下さい。下の階へは別の者が同行します」

「でもっ」

「ナオトは我々が。必ず取り返します」




 海が斜め下に腕を振ると、どこに隠れていたのか、たくさんの精鋭部隊が闘技場へ現れた。北闇・東昇・西猛の精鋭部隊がテンリを取り囲む。そこに、海が音もなく飛び降りる。


 黒い雲に白い点がいくつも出現する。あれは万矢鉄槌が起こる前兆だ。海は片足で大地を叩いた。


 落雷と同時に地面が揺れる。精鋭部隊の頭上を守るように、土や石などが塊となって傘の役目を担う。


 テンリが手を叩いて拍手した。




「多くの情報を持つ俺でも、あなたに関する情報は一切手元にない。海総隊長、あなたは北闇の隠し球というわけですか」

「何をしに来た」

「彼の大切な物を奪いに……。邪魔されましたけどね」




 言いながら、ヒロトに振り向いてにたりと笑って見せる。そして、自身の腕を槍のように形成し、




「やあ、ヒロト」

「――っ!?」




 瞬時に移動してみせた。その間では青島と海が壁になっている。すかさず、精鋭隊員がナオトを保護した。


 ここから、テンリは一気に仕掛けていく。




「衝撃砲」




 ナオトの技を青島の腹に当て、




「壊柱撃」




 ソウジの技で海を捕らえる。さらには、




血千打界(けっせんだかい)




 レンの技でヒロトの身体を針で貫き、




虎雷(こらい)魑魅錯乱(ちみさくらん)




 フウカの技で残りの精鋭部隊を対処した。化け物染みた小さな虎が襲いかかる。


 これには、グリードを任された受験生も驚きを隠せないでいた。そして、黄瀬班が気がついた。




「あいつっ……。あたし達の技をパクってるっぴ!!」

「重度の隠れ家に行ったときだね。一斉に仕掛けた時に盗まれたんだ」




 テンリは情報のない海のもとへ歩みを寄せた。平気で火柱に手を突っ込み、首根っこを掴み上げ、へし折ろうと力を入れる。その腕を海が掴んだ。テンリの腕を伝って、ナニかが流れ込んでくる。彼は海から手を離そうとしたが、海がそうはさせなかった。




「貴様っ、このために避けなかったのか!?」

「お前のようなタイプは、まず自分にとって不利になる者から片付ける。遊び半分でナオトへ仕掛けるのとは違ってな!!」




 いったいナニを流し込まれたのだろうか。テンリの膝が折れ、吐き出そうと嗚咽をあげた。すると、テンリの口から黒い液体が逆流してきたではないか。


 海が面の奥で目を細める。




「吐き出すことも想定済みだ」

「――っ!?」




 水溜まりみたいに吐き出された黒い液体へ映るのは、テンリの過去だ。幼い頃の自分がそこにいる。


 赤毛の後ろ姿が見えたところで、テンリは足で踏みにじった。何度も、何度も、そうやって土と混ぜ合わせながら泥状にしていく。




「目標を当初の予定へと変更する!!」




 テンリが声を大にすると、グリードが攻撃を止めた。受験生を捉えていた瞳がタモンの方へ向く。そして、奇声と共に一斉に駆けだした。




「獅子夜行!!」




 海の足止めを霊体の虎に任せると、テンリは迷わずにツキヒメを浚った。もちろん、その後をタモンが追いかける。


 タモンが行く方向にテンリがいると気づいた蛍は、オウガを別の者に任せて踵を返した。オウガが険しい顔で見送る。




(狙いはタモンか……。テンリよ、この罪は重いぞ)




 テンリの出現により慌ただしくなった格闘技場。そこから、ナオトの姿も消えていた。

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