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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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第8話・ヒロトVSライマル・2

 2人がぶつかり合う度に、青い光と赤と黄色の混色が明滅する。互いの猛攻は会場全体にまで及び、観客は頭部を守りながら必死に試合に食いついた。




「速すぎてよくわからんが、試合が始まってどれくらいたった?」

「30分くらいだ……」

「あのスピードでこの時間をやり合ってるのか。恐ろしいガキ共だ」

「にしてもよ――っ!?」




 ライマルの電気に弾き飛ばされたヒロトが観戦者の近くまで吹き飛ぶ。すぐに起き上がると、瞬間移動のごとく会場へと踵を返す。




「今の危なかったな」

「ギリギリだ。なにか言いかけてなかったか?」

「ああ。西猛のガキは傷だらけだけど、北闇のガキは無傷だなと思って。今だってあんだけぶっ飛ばされたってのに、ほら……」




 男が指をさすと、会話していた客が目を見開いた。




「まったく傷がねぇ……。いくらなんでも、火の性質じゃなければあそこまでの治癒能力はないはずだ」

「だよな。まだあるぜ」

「それは俺も気づいてた」

「言霊を使っていない」「言霊を使ってねぇ」




 声が重なると、観客はまた会場へと視線を戻した。


 一方で、ヒロトとライマルは互いに似たような文句を吐いていた。




(ここにナオトがいなけりゃな……)(ここに観客がいなければ……)




――本気を出せるのに、と。


 試合の様子を苛立たしげに伺うモモカが、ライマルの心中に触れる。




「タモン様ったら、あえてこんな会場を用意したんだわ」




 二階席を仰ぐ。そんな彼女はちゃっかりとイオリの隣を陣取っている。




「十分じゃねえのか?」

「南光の格闘技場はこれの倍ほど広くて、混血者が本気で戦えるように配慮されてますの。木々も植えられているし、岩だって置かれている。けれど、ここには身を隠す場所もなければ、広さもそんなにない……。色々と想定した上での試験ですわね」




 そこへレンがやって来た。彼は、この試合の後にナオトと戦う。




「いつもは班員しかいないからね。人に被害を与えずしてどこまでやれるか……ってことでしょ」




 モモカがイオリに教えようとしていた事を涼しい顔で述べたレン。モモカの額に血管が浮き出る。




「雑魚は黙ってなぁあ!! 邪魔してんじゃねえぞ!! 首をへし折られたいのか!?」

「ご、ごめん」



 

 やりにくい試合の中で、ヒロトはあることを確信していく。




(氷の性質でよかったぜ)




 そう心で呟いて、突進してきたライマルを羽交い締めにした。暴走したような電気の塊がヒロトの腕に絡まるも、彼は平然としている。


 ヒロトの腕は氷で強固にされていることの他に変化はないのだが――。


 


「電気は厄介だけど、俺には効かねぇぞ」

「なんでだよ!!」

「氷は絶縁体の役目を果たす。だから俺には電気が通じない」

「――っ、らあああああ!!」




 力強く締め上げてくるヒロトの冷たい腕を力尽くで広げる。脱出に成功したものの、ライマルは肩で息をしている。




「俺ってば、こんなところで立ち止まるわけにはいかねえんだ。自分の家族を見つけるためにも、……あいつを引きずり下ろすためにもな!!」




 二階席を睨みつける。そこには今しがた戻って来たオウガの姿がある。


 ヒロトが口の端を吊り上げた。




「なにがあったのかは知らねぇけど、俺たちはダチになれそうだ」

「ん?」




 一点を見つめたまま、急に動きを止めたヒロト。瞳が収縮していく。




「我が一族から詐取(さしゅ)した物、その全てが取り返せない物であっても、報いは必ず受けてもらう……」

「ど、どうしたんだよ。詐取って、金目のもんを王家に取られたってことか?」

「奴らが奪ったのは、我が君の尊い命だ」




 一変した喋り方に反応したのはライマルの中にいる生き物だった。トラガミだ。耳元で囁かれているみたいに声が聞こえてくる。




(ライマルよ、この戦、引いた方がいい)

「いったい何が起きてるんだ?」

(こやつ、もしかすると……)




 トラガミが言い終える前にヒロトが自我を取り戻す。首を激しく横に振って空を仰いだ。




「んだよ、俺の話を聞いてなかったのか?」

「へ?」




 上ずった声が出る。まるで二重人格のようなヒロトの態度にライマルは困惑を隠せなかった。




「これって、西猛の襲撃の時にお前が重度にぶっ放したやつじゃねえの? さすがに防げるかわかんねえな……。いいぜ、受けて立つ」

「な、なんだって? さっきからなに言ってんだよ」




 ふと、ライマルの視野に観客たちが入った。全員、空を仰いでいるではないか。釣られるようにライマルも頭上を仰ぐ。そして、




「はは、なんだアレ。俺ってば、なーんにもしてねぇぞ」




 いつの間に発生したのだろうか。晴天に似つかないどす黒い雲が、ゆっくりと会場の上を広がっていく。本来の白い雲よりも位置が低いことから、あれがただの雲ではないことは一目瞭然であった。


 ゴロゴロと稲光が発生し始める。ライマルの顔に焦りが見られた。




「じゃあ、誰が?」

「わっかんねぇよ!! あの技は俺だけのもんだ!! それなのになんで万矢鉄槌があるんだ!?」




 焦りようから、ライマルが言霊を唱えていないことがわかる。と、その時だ。稲光が激しさを増し、一点に集中し始めたではないか。


 この時、ライマルだけが気がついた。ヒロトの背後から血相を変えたナオトが走ってくる。青島もまた、ヒロトに向かって走っていた。


 それだけではない。二階席からはタモンが飛び降りたかと思いきや、今度はライマルの足もとの地面が陥没する。ライマルは何者かに足首を引っ張られた。


 その間に、ナオトは両手を伸ばして、ヒロトの背中を突き飛ばすような仕草を取った。


 気配に、ヒロトが振り返った。




「ナオ……ト……?」

「ヒロト、逃げろぉお!!!!」




 ヒロトがナオトに突き飛ばされた直後、太い一本の稲妻がナオトを貫通した。シューシューと蒸発するナオトの身体に、ヒロトの目が釘付けとなる。焼けただれた肉、消し飛んだ上着、白目を剥く大切な弟が横たわっている。


 そんなナオトの横に突如として現れたのは、テンリだった。

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