第6話・ダイジェスト
モニターに次の対戦者が表示される。ヒロトとキンド役のハクマだ。
ニチ班にとって第三試験の合否はどうでもいい。試験後に控えている作戦の方が大切だ。作戦に備えて第三試験を辞退する気でいたのだが、会場の雰囲気がそうはさせない。
ソウジとハルイチは見事な戦いぶりを見せつけ、ネネに至っては一方的にやられたものの、彼女の声は観衆の心を惹きつけた。次の試合はどうなるのかと期待が高まっている。
ツキヒメやカナデには劣るものの、それでも可愛いとフウカに絶賛されたキンド。ヤンキー座りで頭を抱えて、何度も舌打ちをしている。口が裂けても可愛いとは言えない。
「どうするよ……。この雰囲気じゃ辞退なんて無理だ」
「どうにかして敗けてこい」
「それはそれで俺のプライドが……」
「もう、ハクマ。時間がないんだよ? ユズキに怒られたいの?」
ハクマの顔面は真っ青だ。
「嫌なこと想像させるなよな……」
スピーカーからツキヒメ声が流れる。ハクマがのそりと立ち上がった。
数分後、控え室に顔をパンパンに腫らせたハクマと、手の平を合わせて謝りまくるヒロトが戻って来た。
試合開始後、数分をほど体術でやり合った2人。目で追えない激しい攻防戦に観衆が熱い声援を飛ばす。ハクマはここで手を抜いた。観衆の期待に応えたのだから、後はヒロトに敗ければいいだけだ。戦う事をやめ、ヒロトの攻撃を待った。
すると、ヒロトはこう言った。
「お前、女なのにすげえよ!! 途中からマジになっちまった」
「どうも」
「ここからは言霊も使うぜ!」
最後に一発殴られてリタイアしようと目論んでいたハクマ。思い描いていたラストと違う。
「氷・射弾速峰!!」
これは、お姫様奪還作戦の時に、仲間相手にヒロトが使った言霊の一段階上のものだ。こちらが完成形で、あの時は抑えめに発動させていた。
ヒロトが人差し指と親指を銃のように構える。指先から氷の塊が何発も発射され、目視できない速さでハクマに撃ち込まれた。
ヒロトは、ハクマの俊敏な動きに、この言霊は簡単に避けられてしまうだろうと考えていた。しかし、
「勝者、走流野ヒロト!!」
「え?」
ヒロトの目に、女の子の顔がボッコボコに腫れ上がる姿が映し出される。体術ではない事に気を取られていたハクマは、顔面で氷の塊を受け止めてしまったのだ。
こうして控え室に戻って来た。
「嫁にもらって償わせて頂きます」
「心の底からお断りを申し上げるってんだ。このクソ野郎」
ヒロトは、始めて失恋を経験した気分だった。
次の対戦者はライマルとシンという名の男の子だ。彼は五桐班のメンバーである。
みんなが「いたっけ?」との疑問を顔に浮かべる。実はシン、驚くほどに影が薄いのだ。かといって暗い性格というわけではない。元気溌剌とした明るい性格の持ち主である。ネネが代わって紹介した。
「彼はシン。見ての通り、ちょっと変な子なの。害はないから安心して」
「ネネ様ひどいっすよー!! もっとマシな紹介あったでしょ!!」
気をつけて注視していなければ、声だけが聞こえるという謎の現象を生み出すゲン。こいつは強敵だ……と、ライマルが息を飲む。ところが、
「五桐班はもうシンだけよ。しっかりと成果を残してきてちょうだい」
「ムリっすよ! 人間ならまだしもライマルって半妖人でしょ? 秒殺ですって!」
「なによ、弱気になったの?」
「第二試験の時からずっとそうっすよ!! 置いて行かれるし、妖には追いかけられるし、奇声あげる受験生ばっかだし。かと思いきや、唯一の人間、ケンタ君が、オレの希望が失格だなんてどういうことっすか!? オレが勝てるの、あの子しかいなかったのにー!」
「あなた、最低ね」
「なんとでも言って下さい。人間ただ1人の第三試験……。この不安、皆さんにはわからないっすよ」
落ち込まれると余計に影が薄くなる。救いなのは声が大きいことだろう。シンの位置を知らせるのはそれだけだ。
とまあ、影が薄い=半妖人と推測していた受験生だったが、驚くことにシンは人間だ。しかも、第二試験をたった1人で突破するという、影の薄い強運の持ち主。
ということで、試合はというと――。
開始早々、シンの頭を掴んだライマルは、静電気を一気に流し込んだ。
「あばばばばばばっ!! リリリリタイイアアアアっっっすすす!!」
「……勝者、ライマル」
物の見事な秒殺であった。
試合の進行具合がモニターに映し出される。
次の試合は荒れそうだと、ナオトは会場を見渡した。




