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俺の家族が全員最強でした――。チートは問答無用でフルボッコ!  作者: 犬丸
第二章・上級試験編(青年期編・3)
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第4話・ソウジVSハルイチ・2

 炎の塊は地面へ直撃し、一帯を丸焦げにした。ハルイチには当たっていないようで、すぐさま顔の前で腕をクロスさせ攻撃に備える。


 直後、高熱を帯びた身体でも感じるほどの冷気が顔と腕の間から流れてきた。瞳がゆっくりと下へ向く。鱗瞳丸の切っ先がソウジのあごを捉えているではないか。




「――っ!!」




 上体を後ろへ反らせる。そのまま後方回転で回避するも、あごの先は僅かに切れていた。




「やはり、身体能力は君の方が勝りますね。しかし、頭脳はどうでしょう」

「なに……?」




 ハルイチが口角を上げたのと同時に、ソウジの両足を痺れが襲った。どこに隠れていたのか、千蛇山乱から分裂した蛇が咬みついているではないか。




「火柱の中にいられては近寄れない。ならば、出すまでです」

「クッ……。すべて燃やし尽くしたはずだ!!」

「君を襲った蛇の数が多すぎて気づかなかったんですよ」




 わらわらとソウジに集まる大量の蛇。それは、観客席から現れた。




「君は人間に対する優しさを内に秘めている。その証拠に、観客席に言霊が届かないよう加減していた。口では人間を罵っていても、心が否定しているのですよ。同じじゃありませんか。先代と、ね」

「貴様っ……」




 痺れる両足に活を入れ、震えながらも膝をつくまいとするソウジ。横目に、担架で運ばれていく観戦者を見る。




「躾がなっていないようだな」

「中には自由を好む蛇もいます。君はどうですかい?」




 言い回しにソウジの血管が切れる。




「遙か昔から北闇を支えてきた我が一族たちは、誰もが身命を投げ打つことを惜しまなかった。先代や俺の父親もそうだ。まるで、教科書通りの生き様は、混血者の存在意義を説くものだった。俺自身、生まれながらに人間ではない生き物は人間へ尽くしていくしか生きる道はないのだと、そう思っていた」




 しかし、どうだろう。呪われた双子だと忌み嫌われる兄弟は、その運命を無視するかの如く楽しそうに遊んでいるではないか。ソウジの目には、兄弟の背から生える羽が映し出されていた。




「無意味だと悟った。先代の行いも、引退した父親が残した戦果も、全てがない物にされた。人間に従わず、己の意思のまま生き、好きなときに泣ける。……絶望した。先代はどうして逆らわなかったのかと考えた」




 答えは見つからなかった。そんななか、ソウジの目の前に現れたのは走流野ヘタロウだった。




「貴様の仲間であるあの男……。あいつが俺を浚ってくれたことに感謝している。おかげで俺は、可能性が最も低いとされていた火の性質を手に入れることができたのだからな。時代を変えるためにはいくらでも歯を食いしばれた。あの人と同じ能力があれば、どんな生き物も燃やし尽くせる!!」




 道を塞ぐ不穏分子どもを排除できる。自由を我が物に出来る。




「俺も配下も、人間になど絶対に頭を下げない!! 奴らのために死んでなるものか!!」




 まずは指先から。熱さに絶叫するソウジの幼い身体が激しく震える。遅すぎる治癒能力を頼って、彼は何度も、何度も、同じ事を繰り返した。


 訓練校に通い始めて数年、治癒能力が芽を出し始めた頃には、下半身を焚き火の中に入れていた。気がついた両親はバケツを片手に消化し、幾度となくソウジを咎めた。


 卒業まで残り1年になった頃、彼の全身は燃えていた。


 治癒能力をフルに使って痺れを解いたソウジは、構え直す間もなく一蹴りでハルイチとの間を詰めた。突きで片目を狙った鱗瞳丸の歯に噛みつき、ハルイチの身体を持ち上げる。


 大きく首を振って叩きつけると、ハルイチの口内から血が吹き出した。




「カハッ……」




 次いで、自己暗示のリミッターを外す。壊柱撃いらずで高温に達した身体から湯気がたちこめ、会場からは悲鳴が聞こえた。視点の合っていないソウジの目、乱れる呼吸、さらに膨張する四肢。明らかに様子がおかしい。




「あれって、獣化するんじゃ……」

「試験管、止めろ!! 彼は人に戻れなくなるぞ!!」




 言われるまでもなく、青島は動いている。しかし、




「少し頭を冷やした方がいい」




 ハルイチは横になったまま言霊を発動させた。


 その名は、




「蛇華・爆裂弾・改」




 ハルイチの身体が蜂に刺されたみたいに腫れる。本体はというとソウジの背後にあった。彼は、3秒ルールを屈指して分身を置いていったのだ。


 爆竹のような破裂音で分身が弾け飛ぶ。ミミズほどの大きさしかない蛇がソウジの視界を埋め尽くし、尻に従える針を向けた。これは、ハルイチの隠し技である。


 寸秒遅れで自我を取り戻したソウジだが、気がついた頃には全身針まみれだ。強制的に半獣化が解かれるのを肌で感じる。その瞬間、ソウジは嗅ぎ取ったハルイチのニオイで背後に向いた。


 そして、言霊ではなく、ただの正拳突きを食らわす。


 ハルイチの身体は観客席の壁まで飛んだ。背中を強打し、砕けた肋に顔を歪ます。




「まさか、俺の技を利用するなんて……」




 腹部にはいくつもの針が刺さっていた。


 両足を引きずりながらハルイチへ歩いて行く。半獣化が解かれると針は全て抜き落ち、ぼろぼろのソウジが現れた。


 座り込むハルイチの目の前に立つと、震える右手に拳を構える。しかし、




「もう、俺も君も、体力は残っていませんよ」

「そのようだ……」




 ハルイチの横にソウジが倒れると、試合終了が告げられた。




「君は勘違いをしている。ヘタロウさんの炎は自由を意味するものじゃありません。あの人の炎は、第一に家族を、そして国を守るためのものなんです。なぜなら、国というのは、家と同じですからね。国を守ることは家族や仲間を守ることに繋がる。君は気づいていたかい?」




 駆けつけた医療隊が2人の身体を調べる。その横で、青島は判断を下した。




「この勝負、引き分けとする!! よって、通過者なし!!」




 熱い試合に観客は立ち上がって拍手をした。


 担架で運ばれながら、ソウジが答える。




「頭では理解している。ただ、そう簡単に解決できるほど、俺は大人じゃない……」

「はは、俺もですよ。だけど、こう思うんです。避けられない死の裏には、俺たちには想像もつかないほどの覚悟があったのではないでしょうか。だからこうして、不自由なく暮らすことができ、種を越えて友人を得られる。俺は、父上のおかげでナオト君やイオリ君、イツキ君に出会うことができたとそう思っています。もちろん、君も例外ではありません」

「友人……」




 ソウジの頭にイオリの姿が過ぎる。





「とはいえ、自分なりに解釈しただけで、もともとはある女の子の言葉です。亡くなった父上にも同じ葛藤があったと考えたことはないのか? 父上が選択した道はどうだった。両方を救おうと戦場を駆け抜けた、立派な兵士じゃないか、と。父上の死を悲観し、人間を恨んでばかりいた俺ですが、一度足りとも褒めたことはありませんでした」

「褒める……?」

「ええ。立派な兵士だなんて、君はそう感じたことがあるかい?」




 ソウジは何も答えることができなかった。


 こうして、第一試合は幕を閉じた。

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